*エホバの証人輸血事件*
関係者
・花子(仮名)
昭和4年生まれ、昭和38年からエホバの証人の信者。
いかなる時も輸血をしない意思をもっていた。
長男もエホバの証人の信者。
夫はエホバの証人ではないが、花子の信仰を理解、輸血に関する意思を尊重していた。
平成9年、訴訟係属中に死亡(享年66歳)。
・連絡委員会
エホバの証人の信者によって構成され、必要なときに信者に対し協力的な医師を紹介するなどの活動をしているグループ。
・医師A
エホバの証人対する無輸血手術に理解のある医者として知られていた。
花子に手術を行った。
事件の概要
1.エホバの証人である花子は、体の不調を感じ、立川病院で診察を受けた、悪性の肝臓血管腫であると診断を受けた。手術が必要であったが、立川病院では無輸血の手術はできないため、立川病院から退院した。その後、輸血をせずに手術をできる医療機関を探し、連絡委員会に相談した。
2.連絡委員会は、医師Aに、「患者はエホバの証人で、肝臓癌かと思われますが、地元の病院では無輸血は難しいので、先生にお願いしたいのです」と依頼した。医師Aは「転移していなければ無輸血腫実は可能なので、すぐ検査を受けてもらいたい」と言って原告の診察を了解した。
3.花子とその家族との最初の面談の際、医師Aは、「(花子の腫瘍は)大きいけれど、心配いりません。ちゃんと治療できます。」と言い、また、花子の息子が、「母は30年間エホバの証人をしていて、輸血することはできません」と言ったところ、「本人の意思を尊重して、よく話し合いながら、きちんとやっていきます。」などと言ったことから、花子とその家族は、花子の希望通りに無輸血で手術してもらえるものと思った。
4.医師Aは、原告の意思を尊重し、手術に当たっては出血量を減らす方針をとっていたが、花子の腫瘍は大きく、不測の事態から大量出血に至る恐れがあったので、あらかじめ血液を準備しておいた。
5.手術の前に、花子の息子は、医師Aに、免責証書をわたした。それには、「私は、血液または血液成分のいかなる輸注も受け入れることができません。この指示は、私が無意識状態にあっても変わることはありません。私はこの指示に従ったことによって生じるどんな損傷に関しても、医師、病院当局、並びに病院職員の方々の責任を問うことはありません。」といったことが書かれていた。医師Aはこれを形式的なものと考えて受け取った。医師Aは、花子の生命を守るためには手術をせざるを得ないと考えており、輸血についてくわしく説明すると、花子が手術を拒否すると考え、あえて説明しなかった。
6.手術直後、花子は、出血によりショック状態になっていたため、医師Aは、輸血を行った。
※この事件の概要は、地裁の事実認定を元に作成した。