DVはちゃぶ台をひっくり返せば住む程度の問題と思っているひとがいる

070527

07年5月19日付「読売新聞」の「編集手帳」というコラムにおいて、元暴力団員の男による立てこもり事件は、もともと「ちゃぶだいをひっくり返せば気が済む」程度の家族内のいざこざに過ぎないのに、それに巻き込まれて優秀な警官が死んだのは理不尽だという意見が述べられた。

だが、元暴力団員の男はDV加害者で、接近禁止命令も出ていたというではないか。DVは犯罪であり、人権侵害であり、しばしばいのちを危険にさらす深刻な問題である。

読売のコラム記者は、DVの深刻さがまったくわかっていないということを露呈している。このような記者がいて、それを載せる報道機関があることが、暴力を容認する社会を象徴している。

DVを「ちゃぶだいをひっくり返せば気が済む」問題ととらえるような「男の感覚」が、「女性」のいのちを大事にしていないのだ。

コラム記者は、優秀な「男性」警官の死を悲しむ「感性」をもってはいるが、DVに長年さらされ、接近禁止命令が出ても追いかけられ、銃を持って脅し続けられるという環境にいる「妻や子どもたち」の人権(恐怖・不安感)を感じ取る感性を持っていない。

つまり事実上、「女」のいのちより「男」のいのちを重視している。DV男にこの妻が殺されても悲しまないが、警官が殺されると悲しむのである。

これはまさにジェンダー・バイアスであり、DV容認社会の一側面である。今の社会の秩序上位者(力を持っているもの)のいのちを重視し、秩序の下位者(弱者、女、子ども)のいのちを軽視するという、DV的な感覚を、まさに、この記者は、犯人(DV加害者)と共有している。 

(アウェアの「デートDV防止プログラム ファシリテーター養成講座」をうけている夜のメモ:07526日記)

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以下、当該記事



「読売新聞」 07年5月19日付 編集手帳

 ギリシャ神話には、運命をつかさどる3人の女神がいる。クロトが糸巻き棒から運命の糸をつむぎ、ラケシスが長さを測り、アトロポスが鋏(はさみ)で糸を断つ
◆糸の長さが生命の時間という。女神といえども測り誤ることはあるだろう。日々の紙面を顧みれば新聞の社会面とは、女神に宛(あ)てた異議申し立ての記録であるのかも知れない。どうにも納得できません、と。
◆愛知県長久手町で起きた元暴力団員の男による立てこもり事件で、県警特殊急襲部隊の林一歩(かずほ)巡査部長(23)が拳銃で撃たれて死亡した。男は自宅で元妻と復縁話をしていて激高し、その場にいた子供2人に発砲の末、籠城(ろうじょう)したという

◆怒りの種が何であれ、家族同士である。卓袱台(ちゃぶだい)をひっくり返せば気が済む程度のことだろう。こんな馬鹿(ばか)者の手にかかり、先々いかようにも花が咲いただろう人生が終わる。危険と日夜隣り合う仕事とはいえ、気の毒でならない。

◆警察官になって6年目、警察学校での成績はトップであったといい、同僚からは「いっぽ君」と呼ばれて親しまれていた。昨年7月に生まれた長女がいる。娘の1歳の誕生日も祝うことができない◆警察の救出態勢や装備が適切であったか、これから詳細な検証がなされるだろう。いまはただ、あまりにも短く断ち切られた生命の糸にこうべを垂れるばかりである。
2007519152 読売新聞)

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