フリードマンという「賢い学者」

 (09年4月ブログ記事)

白石一文『この胸に深々と突き刺さる矢を抜け』では、新自由主義の思想と政策の典型的な人とされているミルトン・フリードマン(1976年にノーベル経済学賞受賞)という人の考え方のおかしさを浮き彫りにするために、1973年の『PLAYBOY』での彼のインタビューを紹介している。(p102−111)

(後にフリードマン『政府からの自由』に収録)

 

そのあまりの現実をしらない単純さと馬鹿なヘリクツを平気で言える傲慢さにはあきれるというしかない。

一つ例を挙げれば、最低賃金の引き上げを要求しているのは金持ちだけで、貧しい人は求めていない、などと言っている。理屈は、金持ちは貧しい労働者の流入を防ぐために求め、貧乏人は最賃制度によって働けなくなる、というものである。

最低賃金を上げたら日本企業が外に出て行くという議論と同じ構造である。

 

その他、世の中に問題が起こるのは経営者が悪いのではなく、資源が相対的に希少で、世の中自体が不完全だからしかたない、市場に任せるのが一番よく、政府の介入がとにかく悪い、腐った肉を売る企業は自然と倒産するだろうからほっとくのが一番いいし、もしなにか問題があればその人個人が訴訟すればいいだけ、政府が法律で公害規制をしなくても汚染物質を垂れ流すと環境税が上がるなど問題が起こるので企業はみずから規制するはずだ、経営者が公害対策などをするのは株主や労働者などの金を使って変なことをしていることになる、経営者は儲けて株主に高い配当を与えることが使命だ、公害対策などをしたいなら経営者をやめて個人的に自分の金でやればいい、・・・

など、飛躍だらけのむちゃな話をする。

まあ他のところも読んでほしい。愚かとはわかっていても、あまりの「現実を知らない」むちゃな意見にやっぱり胸糞悪くなる。これが竹中君などと同類の、ノーベル賞をとるほど賢い経済学者さんである。

 

この種の人間は多い。

島田晴雄(千葉商科大学長)は、企業は競争に勝つのが最大の使命であり、生産があって企業が儲かるから雇用が維持されるので、企業の雇用責任を言って非正規切捨てを批判するのは間違いだ(冷静ではない意見だ)といっている。(『朝日新聞』09年2月9日)それを「雇用というのは生産の『派生需要』にすぎない」「企業が生きのびるために雇用調整という経営判断をしたことはまったく正しい」等ともったいぶっていう。そして派遣切りの議論のときに、対策として法人税をもっと下げろという。

 

小嶌典明(大阪大学教授)は、『日経新聞』09年4月1日で、現行法でも派遣期間が3年超だけでは直接雇用の義務は生じない、と言う一面的な情報を出して、まるで今の派遣雇止めに対して直接雇用しろという要求や09年問題といわれている問題は法律を知らない間違った感情論、法律無知論であるかのようにいう。まったく現場を知らない馬鹿な学者である。そして、派遣法を日雇い派遣禁止などの改正すると、直接雇用のリスクが高まり派遣を使うメリットが減って、製造業が海外流出するから法改正には慎重になれという。法改正を進める意見は良識がないという。この小嶌は前から財界側にたって理屈をこねてきた学者だ。

 

大竹文雄(大阪大学教授)は「正社員の雇用保障を弱め社会の二極化を防げ」(『WEDGE』09年2月号)で、非正規雇用への規制を強化すると、企業の競争力が減退するだけで、別の抜け穴がまた利用され、貧富の格差構造は変わらない、真に問題を解決するには、正規雇用労働者の賃金を下げたり、正社員も有期雇用にしたり、解雇しやすくするような構造改革である、と論じている。

 

同じ雑誌で、昔からパート法の労働者に有利な改正に反対し続けてきた水町勇一郎(東大教授)も、法律ではなく労使交渉で解決せよ、今後は法学者もあるべき社会の規範を提起していくべきだ、などとほざいている。いままで財界側の理屈を述べてきた学者が、よく言うよ、である。

 

池田信夫(上武大学教授)は『週刊ダイヤモンド』09年3月21日号で、正社員解雇規制が強すぎて非正規が増えている中、失業率が高まっているから、正社員解雇規制を緩和しろという。

 

 

ここに少し名前を並べたように、フリードマン的な発想の人は竹中へいぞうなどたくさんいて、それが「一流学者」とされており、審議会などで政策決定に関わっており、メディアで繰り返しこの種の意見がだされ、ウェブなどでも匿名の素人的な有象無象が同種の議論を訳知り顔に書いている。こうした学者は、企業からもちろん重宝がられ、お金もたくさんもらえる。権力側の人(宣伝・広報担当者)ということである。

 

「現実には問題解決にはならない、ひどくなるようなことも、もっともらしく一つの考えのように正当化のヘリクツをつける」ということだだらけ。

 

で、僕はもうそういうのを相手にすることに疲れたんだね。こんなバカたちに僕はもういちいち時間と労力を使ってられない。

でも結局、こうしたむちゃなことをいうやつが権力志向で、厚顔無恥ゆえに、影響を与えているの事実があるので、だから若い研究者や活動家の皆さんは、ばからしくともひとつひとつ徹底的に潰していってほしい、と思う。

 

この世の中は、経済や政治や法律だけで動いているのではない。表面的な理屈など何の意味もない。表面的な物事の対立の背景には、その下に、感情の違いがあり、その下に(立場性や個別性に基づく)価値観、世界観の違いがある。

目に見える「事実」をそこだけで理解しようとしてもダメである。

 

長い人類の歴史で、おろかな人が大きな声を出し、権力を持つ、ということが続いてきた、という問題。その中で、まともな人はどう生きてきたのだろうか。