家族単位か個人単位かが対立点だ:バックラッシャー長谷川三千子氏が、個人単位のワーク・ライフ・バランスを批判
070526
アベ少子化会議の「働き方の改革分科会」(主査;樋口美雄慶大教授)の議事要旨(4月27日)において、長谷川三千子委員(昔から男女平等に反対してきた確信犯バックラッシャー)は次のようなことを言っています。私が彼女の主張を翻訳しますと、
ワーク・ライフ・バランスというが、これを個人単位で、男性個人、女性個人で考えるべきではない。男女夫婦2人で、バランスが取れていれば、性分業があってもいい。いやむしろ、女性は育児に専念し、子どもが大きくなると少し短めに働き、男性は育休など取らず一貫してフルタイムで働くのが一番よい、と。だから少子化対策としては、男女共同参画ではなく、男性の正社員化こそが大事だ、と。
なんという、わかりやすい、復古主義的な反ジェンダー平等論でしょう。こんな人を委員に選ぶところに、安倍内閣の政治性がでています。時代錯誤の意見ですが、バックラッシュ派は結局、個人単位を批判し家族単位を押し出してくるという典型です。だからこそ、私は昔から個人(シングル)単位論を提唱してきました。
大沢真理さんの主張――男性稼ぎ主型世帯から共働きカップルを基本とする「両立支援型」(男女ともに仕事と家庭)にすべきだ――は、私の従来の主張(シングル単位論)とかなり近いですが、結婚しない人もいる、異性愛でない人もいる、離婚もあるなどという点から、男女共働きカップルを標準にするのではなく、多様な個人を基本単位にすべきという私の主張に比べて、まだ妥協的過ぎる(異性愛カップル中心的すぎる)と思っています。はっきり個人単位といわないのは、それだとラジカルすぎて、反対が多いという戦略的判断かもしれません。
しかし長谷川氏がこのように、明確に家族単位というように、対立点は、家族単位か個人単位かとなっているのです。
長谷川氏は家族単位の視点を持ってきて、「男女共同参画=ジェンダー平等」自体を骨抜きにしようとしているのです。
以下、長谷川氏の驚くべきバックラッシュ発言
・・・それをワーク・ライフ・バランスという考え方でとらえるときに、これまでの御発表を拝見していますと、どちらかというと個人単位で考えていらっしゃる。ところが、子どもというのは家庭に生まれてくるものです。ですから子育てに関する少子化対策の問題を考えるときには、ワーク・ライフ・バランスは家庭単位で見ていくことも必要になっていくのではあるまいかと考えております。
(略)
ここでいろいろ資料に書いてございますが、大事なワンポイントとしましては、次のことを申し上げたい。例えば先ほどから男性の子育ての時間が少ないということが問題とされております。女性に子育てを丸投げしているという、あたかもそれでバランスが崩れているようなお話なのですが、家族単位でワーク・ライフ・バランスを考えるなら、家族全 体の中でそのバランスがお金と手間、どちらもしっかりと調達されているという形であれば、その家庭はかなり安心して子どもを産み育てられる家庭だというふうに評価することができると思います。ついでながら、単身の家庭の場合にはそれが非常に難しいことになるという、そういうことも家族単位で考えると見えてまいります。
もう一つ、家庭単位でワーク・ライフ・バランスを考える場合に大事なことは、そのメンバーに余り大きな負担のアンバランスがないようにということなんです。ですから極端な話、男性が完全に家事をして、女性がお金を専ら調達するという形も十分にあり得るのですが、こと子育てになりますと、今申し上げたように、1年間はどうしても男性に肩代わりしてもらえない大きな負担が女性にかかってきます。その1年間、女性1人に家族を支えるだけのお金を稼ぐべくバリバリ働けといっても、これはものすごく不公平なことになります。
そういう意味では、時々批判されます男女性別役割分担というものも実はかなり合理的な家庭内のワーク・ライフ・バランスだということも言えるのではないかという気がします。もちろん今の経済状況では、一人の収入で完全に家族を賄うのは難しくなっていますから、共働きが増えてくる。これは阿部委員がおっしゃったとおりだと思います。しかし、その場合も必ずしも1対1のバランスで働く必要はない。1対0.5というバランスもあり得る。
一番大事なのは、家族全体として、金と手間の両方がしっかり安定して確保されているか。そして各家族構成員のメンバーの間で著しいアンバランスがないかということなのです。
その観点から、最後の2分で、宿題の方に戻りますと、男性が正社員でない場合に結婚意欲が非常に低くなっている。これは今見たところからのごく当然の現象で、若い男性の大多数はとっても常識にかなった考 え方をしている、といえると思います。つまり女性が子どもを産むとなると、最低でも1年あるいは2年バリバリ働けない時期を迎える。その ときに安定した収入をもう片方のパートナーが持っていないと、これは到底安心して子どもを産める状況にない。
同じ若者の雇用不安の解決といっても、男性の正社員化を目指すのか、両方均等に目指すのか、これは雇用均等法との絡みで大変難しいと思いますが、少子化対策という点から考えると、男性の方に重点を置いた施策をすべきだという結論が出てくるという気がいたします。
略
なお、注目していただきたいのは、3枚目の図4です。「女性の希望する就職形態」、これも先ほどお話がありましたが、子どもが1歳になるまでの間、子どもが3歳になるまでの間、これは育児休業か、あるいは非就業か、少なくとも殊に1歳になるまでの間はほとんど9割近い人が、自分は仕事をしたくないというふうにおっしゃっていらっしゃる。これも今述べたところからごく常識的な希望だと思います。決してわがままでもなまけ心でもなくて、女性は片方で産児、育児という大事な仕事に体を張って参加するのだから、この期間はちょっと働くのを休ませてくださいと。たしかに、企業の側からいうと、こういうブランクのある人間をトップにつけるのは難しいという話にあるいはなるかもしれない。しかし、これをいろんな小手先の施策で解決しようと思っても難しいような気がします。
私はむしろ女性が安心して、また職場に復帰できるときに、また、きっちり働ける。最初に阿部委員が御提案になったような、そういう復帰のシステム というものを確保することが大事なのではあるまいかと思います。
したがって、宿題に対する私の答えとしては、差し当たっての雇用不安という点では、まず男性の方に重点を置いて施策をするべきである。もう一つは、女性の再就職のシステム化、これも本気で取り組むべきことではなかろうか、そんなふうに御提案したいと思います。
長谷川氏のレジメの最後
「このように考えてくると、ある時点で、いわゆる『男女共同参画』の発想と、純然たる少子化対策の観点とが、衝突しあうことを覚悟しなければなるまい。このことは、他の分科会にも、問題提起として投げかけたいところである。」