「女」の生き方、2つの道:認め合ってエンパワメント
070429
専業主婦と歌手志望の女性の出会いと交流:TV『一期一会』(NHK、2007年4月放送)
20歳のまゆみさんは、結婚して、夫・子どもがいて楽しい、その楽しさを伝えたいと番組に応募。
20歳の歌手志望のかえでさんは、音楽がすべてで、結婚はいらないと考えている人。
その二人が出会い、お互いの生活を見て、話し合う番組。
どうなるのか、少し心配した。お互いが否定しあわないか、逆に相手を見てうらやましくなって、自分の道に自信をなくして自己否定的になってしまわないか。
でもよかった。いい番組になっていた。お互いが否定し合うことなく、また自分の道に自信をなくすことなく、励ましあう感じになっていた。
かえでにとって、歌はすべてで、お客さんの顔が見えるところでうたって、つながっていきたいと強く思っている。今も充実しているし、将来、カナダにいってライブハウスで鍛えられたいと思っていた、だから英語の勉強も苦にならない。めっちゃがんばっている。そんな彼女にとって、結婚は、自分の夢を捨てることのように思える。結婚というと、自己犠牲で、責任を持たなくてはならず、家事や育児におわれてしまうこと。恋愛はOKだが結婚は自分を捨てることのように感じる。だから20歳で主婦って、どうなんだろう、自分にはできないと思っていた。自分がかわいい、だから自分のために生きたい、家族のために犠牲になりたくないと。
まず、まゆみが、かえでのライブを見にいく。かえでは輝いている。メジャーじゃないけど、売れるとかそんなことめざしていない。うたうよろこび。小さな会場でお客の顔が見えてつながれる喜び。
家事や育児に追われているまゆみは、久しぶりにそういう派手な場所に行った。圧倒された。カッコイイと思った。そして自分にも夢があったことを思いだした。バスガイドになりたいと思い、念願かなってバスガイドになったのだった。好きな仕事だった。でも、子どもができて結婚することになり、2ヶ月で退職。だから、かえでが目立ってパフォーマンスしているのを見て、少し動揺する。正直、うらやましいと感じた。主婦は裏方だ。表に立つのではない。でも、いまの自分は主婦で、本当に幸せだとも思っている。子どもと公園にいると1日中遊んでいられる。こうした派手な場所は自分の居場所じゃないと感じた。家庭こそが私の居場所と思った。
つぎにかえでがまゆみの家に行く。まゆみの生活の一端を垣間見る。まゆみはたのしそうだし、さすが主婦、母親って感じ、で慣れている。かえでは最初とまどう。自分が一日中、ずっと家事などをするのはストレスだなと思う。まゆみが2日家を離れていると、たまった食器の洗物や洗濯がある。夫はいい人だが、大学をすぐに辞めぶらぶらしているような人で、できちゃった結婚してからはがんばって働いている。でも給料は17万円ほどで安い。貧しいけど助けってがんばっている、仲のいい夫婦だ。
かえでは二人に聞く。「お互いを信頼しあってる?」
どうしてそんなことを聞くかというと、いままでのかえでの恋愛経験では、男ってつきあうといろいろダメなところが出てくるし、裏切られたというようなことが何度もあったから。信じるってどうしたらできるのか? 何を根拠に信頼できるのか?結婚といっても形式に過ぎず、人の気持ちって縛れないのだから、絶対的に信じられるっていえるのか?
まゆみはいう。信頼していると。夫のほうも、働いてきた給料全部渡すんだから、そういう意味で信じていると。口が達者なインテリ系ではない二人。エリートではない二人。でも、それなりに信頼感があり、がんばってやっていこうとし、愛情を持っている。
それを見て聞いて、“信じあっている二人”というリアルな実例を感じて、かえではなにか幸せな気分になった。 「心から信じあえるという事実がある」ということが感動だと。
二人は微笑み合って別れ、お互いの生活に戻っていく。でもお互いが、相手の幸せを願い、自分の夢に向かってがんばろうという気持ちで終わった。
友情? まさに一期一会。
まゆみの将来は平穏ではないかもしれない。これからいろいろあるだろう。心乱れるときもあるだろう。でも、20歳のあの時点において、私は一生懸命生きていた、といえるだろう。
かえでも、今後いつまで夢を追っていられるか。それはわからない。当面はがんばれるだろう。強烈な意志を持ち、とてもがんばっているから、そこそこ望んでいるものを手に入れられるだろう。でも挫折もあるだろうし、ゆれることもあるだろう。でも、でも、私は生きている!という実感を持って彼女は歩み続けるだろう。
そうした二人が、出会い、異質なもの同志が認め合う時間をもてたこと。番組に出たこと。いっそう、自分というものがわかったこと。そしてかすかな、友情のような“音”がそこに確かに流れたこと。
だからいい番組だったと思う。ケンカでなく、微妙に揺れながらも性格のいい二人は適度な距離を持ちながら、素直に認め合っていた。そして自己を肯定できていた。
テレビ番組の見方はそれぞれだけど、若い人が自分の〈たましい〉に耳を傾けるきっかけになるような番組だったと思う。学生の皆さんが見て、深く自分を見つめる機会になるだろう。
浅く「女の幸せは結婚・専業主婦だ」といってみたり、「いや、自立して仕事持つとか夢を目指すのがいいこと」といってみたりするのでなく、自己への肯定感(私は私のままでいいんだ)がありつつ、異質な他者を認められるというバランスをもてるところへ、多くの人が至れればいいな。まゆみさんとかえでさんのように。
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