『四旧事紀』と『紀』における神武天皇二年の定功行賞比較表 |
|||||||||||
| 区 分 | 白 河 本 旧 事 紀 A | 日 本 書 紀 B | 十 巻 本 旧 事 紀 C | 延 宝 本 旧 事 紀 D |
鷦 鷯 伝 大 成 経 E | 備 考 |
|||||
| 定 功 | 行 賞 | 定 功 | 行 賞 | 定 功 | 行 賞 | 定 功 | 行 賞 | 定 功 | 行 賞 | ||
| 宇摩志麻治 命 |
勲功至大 忠節至切 |
授神霊之剣 股肱之職 白食国政大夫 |
ー | ー | 勲功大功 忠節至忠 |
授神霊之剱 股肱之職 |
勲功大功 忠節至忠 |
授神霊剣 股肱之職 |
勲功大功 忠節至忠 |
授神霊之剣 股肱之職 |
1、宇摩志麻治命は、DとEでは熟美真味命と作る。 2、天香語山命は、DとEでは、天隠山命と作る。 3、道臣は、Dでは導臣と作る。 4、椎根津彦は、Bでは珍彦とも作る。 5、弟磯城黒速は、DとEでは弟磯城と作る。 |
| 天日方奇日 方命 |
皇后之兄 | 白食国政大夫 | ー | ー | 皇后之兄 | 申食国政大夫 | ー | ー | ー | ー | |
| 天香語山命 | 功尤大 感得神剣 救朕危急 |
侍臣 諫諍之職 |
ー | ー | ー | ー | 功大 得神剣 救我皇元急 |
侍臣 諫諍 |
功大 得神剣 救我皇元急 |
侍臣 諫諍 |
|
| 道 臣 命 | 忠且勇 導之功 奉承密策 掃蕩妖邪功 大 |
道臣 賜宅地築坂 邑 寵異 |
ー | 賜宅地坂 邑 寵異 |
忠而且勇 導功 奉承密策 掃蕩妖邪功 |
道臣 軍将 宅地居築坂 邑 優寵 |
忠甚而多 導皇軍 奉承密策 掃蕩妖邪大功 |
導臣 軍将 宅地居築坂 邑 優寵 |
忠而以勇 導功 奉承密策 掃蕩妖気 |
道臣 軍将 宅地居築坂 邑 優寵 |
|
| 椎根津彦 | 迎引御船 避海難 起功草香津 表績香来山 |
大和国造 | ー | 倭国造 | 迎引皇舟 表績香来山巓 |
倭国造 | 迎引皇舟 表香来山巓 |
倭国造 | 迎引皇舟 表香来山巓 |
倭国造 | |
| 弟 猾 | 功大背兄帰 順 顕陰謀 救朕危急 謀香山之神 助 撃賊虜 |
兎田県主 | ー | 猛田県主 | ー | ー | 功大佳 顕兄猾謀害 救朕危 亡逆賊 取天香山土 |
兎田県主 | ー | ー | |
| 弟磯城黒速 | 功至 兄逆悪速従 命 大賊降伏成功 |
磯城県主 | ー | 磯城県主 | 兄逆賊機首 | 磯城県主 | 尤有功 兄逆賊 速従募命 大賊従伏 |
磯城県主 | 尤有功 兄逆賊機首 奏之勇 |
磯城県主 | |
| 釼 根 | ー |
ー | ー | 葛城国造 | ー | ー | ー | ー | ー | ー | |
| 頭八咫烏 | 導王師之功 | 入恩賞之列 | ー | 入賞列 | 道皇之功 | 入賞列 | 功徳太多 成徴敵使 |
裔葛野県主 | 功徳太多 成徴敵使 |
裔葛野県主 | |
| 注1、白河本旧事紀欄の記述は、三重貞亮訓解・松下松平解題『旧事紀白河家三十巻本』新国民社・昭和60年による。 注2、日本書紀欄の記述は、国史大系普及版『日本書紀』吉川弘文館・平成4年による。 注3、十巻本旧事紀欄の記述は、天理大学出版部『先代旧事本紀』八木書店・昭和53年による。 注4、延宝本大成経欄の記述は、小笠原春夫校注『先代旧事本紀大成経』神道大系編纂会・平成11年による。 注5、鷦鷯伝大成経欄の記述は、宮東斎臣編『鷦鷯伝先代旧事本紀大成経』先代旧事本紀刊行会・昭和56年による。 |
|||||||||||
2005・11・追加
『四旧事紀』と『紀』における神武天皇二年の定功行賞比較
一 四旧事紀(くじき)と日本書紀
1、『白河本旧事紀(しらかわぼんくじき)』は、昭和六十年(一九八五)に三重貞亮(みえさだあきら)訓解・松下松平解題『旧事紀(先代旧事本紀・さきつよふることのもとつぶみ)・白河家三十巻本』として世に出たが、成立当時の三十巻のうち現在十七巻しか伝えられず、しかも訓解のなかに存在するのみである。
2、『日本書紀』は、養老四年(七二〇)に編纂された。
3、『十巻本旧事紀』は、平安朝初期に成立したと言われる。
4、『延宝本(えんぽうぼん)大成経』すなわち『延宝本旧事紀大成経』は、江戸時代の延宝年間(一六七三−一六八一)に出版されているが、その稿本は意外と古そうである。
5、『鷦鷯伝(ささきでん)大成経』すなわち『鷦鷯伝旧事紀大成経』は、『延宝本旧事紀大成経』に先行して刊行されたが、内容を比較すると仲哀天皇の聖寿を五十二歳と記載するなど『延宝本大成経』を『日本書紀』寄りに改訂していると考えられる。
二 神武天皇二年ころの重臣(『白河本旧事紀』の記述による)
1、宇摩志麻治命(うましまじのみこと)は、物部氏の始祖である。
2、天日方奇日方命(あまのひかたくしひかたのみこと)は、神武天皇の皇后の兄で、大神君(おほんがのきみ)すなわち三輪氏の始祖である。
3、天香山命(あまのかごやまのみこと)は又の名を高倉下命(たかくらしたのみこと)といい、饒速日尊(にぎはやひのみこと)の長子で、宇摩志麻治命の腹違いの兄にあたり、尾治氏(尾張氏)の始祖である。
4、道臣命(みちのおみのみこと)は、大伴氏の始祖である。
なお、白食国政大夫は「けくにのまつりごとまうすまちぎみ」と読む。
三 比較表の特異点
1、『日本書紀』には定功行賞すなわち論功行賞のうち定功の記載がまったくない。
2、『日本書紀』には物部氏、大神氏(三輪氏)、尾治氏(尾張氏)の始祖の行賞がまったく記載されていない。
『日本書紀』は記載のないほうが都合のいい人々によって作られたと思う。
四 『日本書紀』の成立時の情勢
藤原不比等が没したのは養老四年の『日本書紀』成立直後である。藤原一族にとって物部氏、大神氏(三輪氏)、尾治氏(尾張氏)の始祖の定功行賞など不要だったと思われる。
★『日本書紀』のいい加減さに唖然としてしまう。