西島栄訳『総括と展望』の検討

  (ト ロツ キー研究所Webサイト「トロツキー・ライブラリー所収」

 
 トロツキーの著作『総括と展望』は原暉之氏によるロシア語 からの翻訳がある(『わが第一革命』現代思潮社、1970年

所収)が、トロツキー研究所では、最近、新訳をその
Webサイに発表した。なぜわざわざ新訳を世に 送ったのか?

 訳者は「解説」にこう記している。

 「本文については、すでに、1970年に出版された現代思潮社の『わが第一革命』 にすでに、原暉之氏によるロシア語

からの優れた翻訳が収められているが、それは少し直訳調であり、また、誰で あれ避けがたいケアレスミス的な誤訳や脱漏

も いくつか見られ
、さらには「ヘゲモニー」を「主導権」「指導権」と訳しているので、原氏の訳を参照にしながらも、今

回、ロシア語原書から改めて訳しなおし
た。」

 新訳発表の理由は、要するに、原氏の訳に瑕疵があるということ。そして新訳にさいしては、原訳を「参照」にしつつ

も、「ロシア語原書から改めて訳しなおした」というのである。
 
 私も部分的にではあるが、
『ロシア革命史』を翻訳したさいに、「付論」としてついていた『総括と展望』からの「抜

粋」を訳しているので、 西島訳がいかに原訳を「改訳」しているかに興味をおぼえ、両者を照合してみた。

 『わが生涯』の邦訳でも唖然としたが、今度も再び唖然とすることになった。主要部分を吟味しただけであったが、率直

な感想を言えば、ロシア語の原文なぞ見なくても可能な「改訳」のたぐいであった。訳文の構造はほとんどの場合、原訳そ

のままであり、新味は、原氏の訳語を別の同義語ととりかえたり、原訳の訳文の語順を並べ替えたりして加工されたりした

ものであることがわかった。もっともあちこちに 西島氏の独創がわずかに見られなくもないし、確かに原訳の瑕疵を訂正し

ている箇所もなくはなかった。しかし、瑕疵に気づかず見逃しているところも多々あった。

  西島氏は「原氏の訳を参照にしながら」と称しているが、 西島が「ロシア語原書から改めて訳しなおした」としている

文のほぼ90%近くが原訳そのまま(言いかえ部分を含めれば99%にもなるかもしれない)だとするなら、そのような「訳

業」は「盗訳」と言わざるをえないのではないだろうか? 


 以下、そうした吟味結果を報告する。
 



 Nは 西島訳、Hは原訳をさす。N訳の朱色部分は、H訳と違っているところ、{ }はHの語句の順序を入れ替えている

部分を示す。<>はH訳から削除した部分があることそ示す。

 F以下は筆者のコメント。



 導入部

N
 ロシアの革命は社会民主党を除くすべての人々にとって予期せざるもので あった。 マルクス主義は、以前からロシア革

の不可避性を 予言していた。ロシア革命は、発展しつつある資本主義の滞した絶対主義のとの衝突の結果とし

て、 勃発せざるをえなかった
<>。 マルクス主義は、来るべき革命の社会的内容をあらかじめ見定 めていた。それをブル

ジョ
革命と呼ぶことによって、 マルクス主義 は、革命の 直接的客 観的 課題が全体としてのブル ジョ社会の発展のため

の「正常な」条件
を創出することに ある<>ことを指摘していた

 マルクス主義の正しさは明らかになった——そ して、もはやこのことを言い争っ たり証明したりする必要はない。マルク

ス主義者
の前にあるのは、まっ たく別の種類の課題、すなわち、発展しつつある革命の内的メカニズムを分析すること

よって、
その革命の「可能性」を明らかにするこ とである。われわれの 革命を1789〜93年の、あるいは1848年の

諸事件と単純に同一視することは
馬 鹿げた誤りであろう。歴史的アナロジーは 自由主義の糧でありその飯の 種で あるが、

社会的分析
の代わりにはならない

ロシア革命は<>まったく独特な性格を持っている。この独特な性格は、わが国に おける社会的歴 史的発展全体の特珠性

結果であるがそれはまた、まったく新しい歴史的展望を切り開くものでもある


 H

 ロシアの革命は社会民主党を除くすべての人々にとって不意打ちで あった。 マルクス主義は、以前からロシア革命が不可

避であること
を 予言していた。それは資本主義発展の諸力と停滞した絶対主義の諸力との対立の結果として、 勃発せざるを

えなかった
のである。マルクス主義 は、来るべき革命の社会的内容をあらかじめ位置づけてい た。それをブルジョ革命と

呼ぶことによって、マルクス主義 は、革命の 直接的
客 観的 任務が全体としてのブルジョ社会の発展のための「正常な」条

の創出にある、ということを指摘し てきたのである

 マルクス主義の正しさは明らかになった。もはやそ れを論駁したり論証し たりする必要はない。マルクス主義者が直面し

てい
るのは、 まっ たく別の種類の任務、すなわ ち、展開しつつある革命の「可能 性」をその内的メカニズムの分析に よっ

て、
明らかにすることである。われわ れの 革命を一七八九ー九三年の、あるいは一八四八年の諸事件と単純に同一視するこ

とは
馬鹿げた誤りであろう。歴史 的類比は自由主義のお得意であるが、社会的分析にとって代ることはできない

 ロシア革命は、わが国社 会的歴史的発展全体の特珠性の総 括であるとともに、一方ではまったく新しい歴史的展望を切

り拓いているところの、きわめて
独 特な性格をもっている。


 F

 Nの文章の構造はHとまったく同じ。訳語・訳文をほとんどそっくり「踏襲」。なぜ別の同義語に変える必要があるのか?

 なぜ原訳のままでいけないのか? 変える必然性がない。単に、同じ語句を使いたくないためであろう。「独創」を

 よそおうために? 

 言いかえの例:<不可避であること>→<不可避性を>;簡潔に名詞化。だが別の所では逆に、<分析によって><分

 析することによって>。言い換えは恣意的。要するに変えること自体が目的。


 
 Nの「ロシア革命は、<発展しつつある資本主義の力>」はなぜ?  Hの<資本主義発展の諸力>でなぜまずい?


  ロシア語原文どおり訳すなら、Hが正しい。意味が違う。Hは「直訳調」ではない。したがって、ここはむしろNの方が

 が誤訳。

 ★ Nの<自 由主義の糧でありその飯の 種で ある>も、Hの<自 由主義のお得意>も疑問。原文は

 которыми питается и живет либерализмで<
自 由主義がそれを糧とし、それによって生きている......>


 原訳に瑕疵というほどの問題は見あたらない。それなりに工夫した訳文・訳語になっている。NはHの苦心の所産を「踏

襲」している。


  ********


 第1章 歴史的発展の特殊性

 N

 {ロシアの社会的発展をヨーロッパ諸国の発展と比較するならば——ただし、ヨー ロッパ諸国において最も似った共通

の特徴をなす
もの、その歴史をロ シアの歴史から区別するものを一くくりにして取り上げた場合 のことだが——、ロシアの

 社会<>発展の基本的特徴<>は、その相対的な原初性と緩慢
で あると言うことができる。}

 われわれはここでこの原初性の自然的諸原因に ついて詳しく 述べるつもりはないが、ロシア社会がより原始的でより

な 経済的
土台の上に成されたという事実そのものは、疑う余地のないことだと 思われる。

 マルクス主義は、社会的・歴史的運動の土台に は生産力の発展があるこ とを教えて いる。経済的諸集団・諸階級・諸身分

の形成は、
生産力が一定の 高さにまで発展した場合のみ可能となる。身分および階 級分化は、分業の発展および、より特

 殊化された社会的諸機能の発生<>によって規定されるが、そうした分化が生じるには、直接
的な物質的生産に従事する住

民部分が、剰余生産物
自らの消 費越 えた余剰)をつくり出すことが必要であり、非生産的諸階級の発生と形成は、こ

余剰を収奪することによっての み可能となる。さらに、生産的諸階級そのも のの 内部における分業は、非農業人口に農業

生産物を保障しうる<>
水準ま で農業が発展する場合のみ考えられる<>。社会<>発展に関するこれらの基的諸命題

は、
すでにア ダム・スミスによって明確に定式化されていた。


H

   ヨー ロッパ諸国を、その最も似か よった共通の特徴をなすとともにその 歴史をロシアの歴史から区別するような点で 一

括して考えるとして、
ロシアの社会的発展をヨーロッパ諸国の発展と比較するならば、ロシアの 社会的発展の基本的特徴を

なさいているものは、その相対的な原初性と緩慢
で あると言うことができる。

 われわれはここでこの原初性の自然的諸原因詳 しく 述べるつもりはないが、ロシア社会がより原始的でより貧弱な 基礎

の上に構成
されたという事実その ものは、疑う余地のない ことだと思われる。

 マルクス主義は、生産諸力の発展が社 会的・歴史的運動を基礎づ けているというこ とを教えて いる。経済的諸集団・諸階

級・諸身分の形成は、この発展の一定水準において
の み、可能となる。分業の発展と、 より特 殊化された社会的諸機能の発

生とによって規定される身分
的・階 級的分化のためには、直接物質的生産に従事する住民部分が、剰余生産物、すなわち

らの消費
を超える超 過分をつくり出すことが必要であり、非生産的諸階級の発生と形成は、この超過分の外 化よってのみ

可能となる。さらに、生産的諸階級そのも のの 内部における分業は、非農業人口に農業生産物を保障しうるような農業発展

の一定水準においてのみ
、考えら れることである。社会的発展に関するこれらの基礎的 諸命題は、つとににア ダム・スミス

によって明確に定式化されていた。



 F 

  N <直接的な物質的生産に従事する> H <直接物質的生産に従事する>   原文ではнепосредственно 副詞で

<直接(に)>。Hが正しい。

    N <余剰を収 奪すること> H <超過分の外 化

  原語は
 отчуждение で<国家や社会組織の所有物にするために財産などをとりあげるこ と>という意味。ここでは

 Nのほうが正しく、Hの<
外 化>は不可解。
 
 
★  さらにケアレスミスを探すなら、N とHの「生産的諸階級そのもの」の部分で、「そのもの」にあたる原語は

 <самих→原形は сам>
で正確には 「自身、自体」の意。


************

  N

 このことから自然と 帰結されるのは、次のことであるすなわち、わが国の歴史のノ<>ヴゴロト<>時代 (1) はヨー

ロッパ中世史の
開始と一致してい るにもかかわらず、自 然的・歴史的諸条件(より不利な地理的環境と人口の稀薄性)に

よってもたらされた経済発展の緩 慢なテンポ
のおかげで、階級形成 の過程が抑制され、より原初的な 性格を帯びることに

なった、ということが
それである

 もし<>ロシア社会がそれに内在する諸傾向だけに まかされ、 <>孤立し形成過程をた どったならば、ロシア社会の歴

史は
どうなって いただろうか? これについて判断を下すのは困難である。そういうことはな かったと言え ば足りるであろ

う。一 定の内的な経済的
土台の上に形成 されたロシア社会は、たえず 外的な社会的・歴史的環境の影響下に、それどころか

その圧力 下にさえ、置かれてきたのである。


 H

 ここから当然、わが国の歴史のノーヴゴロト朝時代 はヨーロッパ中世史の始期に一致しているにもかかわらず、自然的・

歴史的諸条件(より不利な地理的環境と人口の稀薄性) によってもたらされた経済発展の緩 慢なテンポは、階級形成の過程

を抑制し、より原初的な性格をそれに与えることになった、ということが帰結される。


 もしもロシア社会がそれに内在する諸傾向だけの力で、外から孤立して形成されたならば、どうなっていたか。これはな

んとも言いがたい。そういうことはな かったと言えば足りるであろう。一 定の内的な経済的基礎の上に形成されたロシア

社会は、たえず外的な社会的・歴史的環境の影響下に、むしろその圧力下にさえ、置かれてきたのである。



  F ここでは新たな試みとして、能動態が受動態に変えられたり
 
  H=N  ともに<自然的・歴史的諸条件>と訳しているが、原文は、естественноисторические なので<自然史的諸条

 件>とすべきであろう。

  N   <ロシア社会がそれに内在する諸傾向だけにまかされ>は意味不明。原文 は、под влиянием одних внутренних

  тенденций  <国内の動向だけの影響のもとで>。

 *******

 N

  形成途上のこの社会<>・国家<>組織と<>他の隣国の社会・国家組織と が衝突しあう過程において決定的 役割を果た

たのは、一方における経済的諸関係の原初性、他 方におけるその相対的高さであった。

 原始的な経済的土台の 上に形成されたロシア国家は、より高 度でより強力な経済的基礎の上に 形成されたもろもろの国家

組 織と関係を
つようになり、衝突 を交 えるようになった。そこは二つ の可能性があった。すなわ ち、{キプチャク汗

国 (2) がモスクワ公国 (3) との戦争の中で崩壊したように、ロシア国家が
隣国との闘争の 中で崩壊するか (4) 、 それとも、

自分自身の発展の中で経済的諸関係の発展を追い越して、孤立
し た発 展のもとで可能となるよりもはるかに多くの生きた

液を吸収 するかしなければ ならなかった。ロシアの経済は第1の
結末を向かえるほ ど<> 原初的ではなかった。国家は崩壊

せず、国民経済<>の力の恐るべき緊張のもとで成長を
開始し た。


H

 形成途上のこの社会的・国家的組織と諸他の隣接組織との衝突過程において、決定的役割を演じたのは、一方における経済

的諸関係の原初性であ り、他 方におけるその相対的高さであった。


 原始的な経済基盤の上に形成されたロシア国家は、より高度でより強固な経済的基礎の上に形成されたもろもろの国家組

織と関係をもつようになり、衝突を交 えるようになった。そこには二つの可能性があった。すなわち、ロシア国家はキプ

チャク汗国  がモスクワ公国 との戦争の中で崩壊したように、それら諸国との戦争の中で崩壊するか  、 それとも、自分自身

の発展の中で経済的諸関係の発展を追い越して、孤立的発展のもとで可 能となるよりもはるかに大きな生命の樹液を吸収す

るかしなければ ならなかった。ロシアの経済は第1の出口をとるほど、
十分に原初的で はなかった。国家は崩壊せず、国民

経済的諸力の恐るべき緊張状態のもとで成長を始めた。



 F 

 ★  H≒N 
孤 立的発展のもとで可能となるよりも>  чем это могло бы иметь место 仮定法


**********

 N

 したがって、問題 はロシアが四を敵に取り囲まれていた<>ことにあったのではな い。これだけでは不十分である。 実

際、このことは
おそらくイギリ スを除けば他のあらゆるヨーロッ パ諸国にもあてはまる。しかし ヨーロッパ諸国は相互

 の生存闘争においてほぼ
同水準の 経済基盤に立脚しており、そのためこれらの諸国の発展はロシアにおけるような強力な

外圧を
こうむらずにすんだのであ る。


H
 このように、問題はロシアが四囲を敵にとりかこまれていたということにあったのではな い。このことだけでは足り

ない。実際、このことはおそらくイギリスを除けば他のどんなヨーロッパ国家にもあてはまる。しかしヨーロッパ諸国は相

互 の生存闘争においてほぼ同様の経済基盤に立脚していたのであって、そのためこれらの諸国の発展はあのように強力な外

圧を蒙らずにすんだのである。






 トロツキーが『ロシア革命史』付論で取りあげている部分。


  4 革命とプロレタリアート

 N

 プロレタリアートは資本主義の成長とともに成長し、強固になる。この意味で資本 主義の発展は、プロレタリアートの独

裁へ向かっての発展である。しか し、権力が労働者階級の手に移行する日時は、生産力の水準に直接<>依存しているので

はなく、階級闘争の諸関係や国際情勢さらには、伝統やイニシアチブ、闘争準備といった一連の主体的契機にも依存し

て いる…。

 プロレタリア独裁を、国の技術的な力や手段に何か自動的な 形で依 存させるという考え方は、極端なまで に単純化された

「経済主義的」唯物論の偏見である。このような見解はマルクス主義となんらの共通点ももたない。


H

 プロレタリアートは資本主義の成長とともに成長し、強固になる。こ の意味で資本主義の発展は、プロレタリアートの独

裁へ向かっての発展である。しかし、権力が労働者階級の手に移行する日時は、生産力の水準に直接に依存しているのでは

なく、階級闘争の諸関係や国際情 勢、そして伝統やイニシャティヴ、闘う決意といった一連の主体的契機にかかっている。

 プロレタリア独裁を、国の技術的な力や手段に何か自動的に依存させるという考え方は、 極端なまで に単純化された「経済

主義的」唯物論の偏見である。このような見解はマルクス主義となんらの共通点ももたない。


   Пролетариат растет и крепнет вместе с ростом капитализма. В этом смысле развитие капитализма есть развитие пролетариата к диктатуре. Но день и час, когда власть перейдет в руки рабочего класса, зависит непосредственно не от уровня производительных сил, а от отношений классовой борьбы, от международной ситуации, наконец, от ряда субъективных моментов: традиции, инициативы, боевой готовности...

   Представление о какой-то автоматической зависимости пролетарской диктатуры от технических сил и средств страны представляет собою предрассудок упрощенного до крайности "экономического" материализма. С марксизмом такой взгляд не имеет ничего общего.

F

  H=N <
国の 技術的な力や手段に何か自動的に依存させるという考え方>   私の原文理解では、<プロレタリア独裁が

の技術的な力や手段に自動的
に依存してでもいるかのような考え方>。

*******


 {ロシア革命は、われわれの意見によれば、}ブルジョ自由主義の政治家たちが<>その政治的能力全面的に発展さ

せる可能性を得る以前に、権力がプロレタリアートの手 に 移りうる(革命が勝利すれば移らなければならない) という条件

をつくり出している。



 われわれの考えによれば、ロシア革命は、ブ ルジョワ自由主義の政 治家たちが完全な形でその政治的才能を展開する可能

性を得る以前に、権力がプロレタリアートの手に移りうる(革命 の勝利の際には移らねばならぬ)という条件をつくり出し

ている。

  
Русская революция создает, на наш взгляд, такие условия, при которых власть может (при победе революции должна) перейти в руки пролетариата, прежде чем политики буржуазного либерализма получат возможность в полном виде развернуть свой государственный гений.


 ★ H=N <移りうる(革命の勝利の際には移らねば ならぬという条件>→ <移りうる(革命の勝利の際には移るは

ような条件>

********

 N

 工業プロレタリアートの数、その集中度、<> 文化度、<> 政治的重要性などは、疑いもな く資本主義工業の発展水準

依存する。しかしこの依存は直接的ではない。一国の生産<>力とその国にお ける諸階級の政治的力量とのには、個々の

時点におい て、国内的および国際的性格を持ったさまざまな社会的・政治的諸要因が横たわっており、それらの諸要因は、

経済的諸関係の 政治的表現を歪め、完全に変形さ せさえする。アメリカ合衆国の生産力はわが国のそれより10倍も 高いと

いう事実にもかかわらず、ロシアのプロレタリアートの政治的役割、自国の政治に及ぼ すその影響力、世界政治に近い将来

及ぼすであろうその影響力の可能性は、アメリ カのプロレタリアートの役割や重 要性よりも比較にならないほど高いのであ

る。




工業プロレタリアートの数、その集中度、その文化度、その政治的重要度などは、疑いもな く資本制工業の発展の程度に依

存する。しかしこの依存は直接的ではない。一国の生産諸力と、そこでの諸階級の政治的力量とのあいだには、所与の各時

点にお い て、国内的および国際的性格の種々の社会=政治的諸要因が横たわっており、それらの諸要因は、経済的諸関係の

政治的表現を歪め、完全に変形さ せさえする。アメリカ合衆国の生産力はわが国のそれよ り一〇倍も高いという事実にもか

かわらず、ロシアのプロレタリアートの政治的役割、自国の政治に及ぼ すその影響力、<世界政治に及ぼすその密接な影響

力の可能性>は、アメリカのプロレタリアートの役割や重要性よりも比較にならないほど高いのであ る。

 Численность промышленного пролетариата, его концентрированность, его культурность, его политическое значение зависят, несомненно, от степени развития капиталистической индустрии. Но это зависимость не непосредственная. Между производительными силами страны и политическими силами ее классов в каждый данный момент пересекаются различные социально-политические факторы национального и интернационального характера, и они отклоняют и даже совершенно видоизменяют политическое выражение экономических отношений. Несмотря на то что производительные силы индустрии Соединенных Штатов в десять раз выше, чем у нас, политическая роль русского пролетариата, его влияние на политику несравненно выше, чем роль и значение американского пролетариата. <>

<> F

  H= N 
政治的表現を歪め>  原文では отклоняют <拒否する

 ★ H=N <アメリカ合衆国の......生産力> 原文で は<......>にиндустрииという語がある。

 つまり、NはHの「ミス」を正せていない。

***********

  5 権力についたプロレ タリアートと農民

N

  革命決定的な勝利を収めた場合<>、権力は、闘争で導的な役割を果たした階級の手に、言いかえればプロレタリアートの手に移行する。もちろん、{ここで言っ ておくが、このことは、プロレタリアートではない社 会集団の革命的代表が政府に参加することを排除するものではけっし てない。}

 彼らは政府に参加することがで きるし、参加しなければならない。{プロレタリアートは小ブルジョアやインテリゲンツィや農民の有力な指導者を権力に参加させるであろうし、それが健全な政策であろう}。問題はあげてが政府の政策に内容を与えるか、そしてが政府内部に等質な多数派を構成する、という点にある。

 労働者が多数派を構成する政府に、人民の民主主義的諸階層の代表が参加すること と、まぎれもないブルジョ民主主義政府に、プロレタリアートの代表が多かれ少なかれ名誉職的な 人質として参加することとは、まったく問題である。

H

革命の決定的な勝利の場合に、権力は闘争で主導的な役割を演じた階級の手に、別の言葉で 言えばプロレタリアートの手に

移行する。もちろん、このことは、非プロレタリア的社会集団の革命的代表が政府に参加することを排除するものでは決し

てな い、ということを
ここでは言っ ておこう <> 彼らは政府に参加できるし、参加すべきである。健全 な政策は、プ ロレタリアートをして小市民やインテリゲンツィヤ、
農民の影響力ある指導者を権力に参加させるであろう。問題はすべて、だれが政府の政策に内容を与えるか、そしてだれが政府内部に等質な多数派を 結集するか、という点にある。

 労働者が多数派を構成する政府に、人民の民主主義的諸階層の代表が参加すること と、明確なブルジョワ民主主義政府に、プロレタリアートの代表が多かれ少なかれ名誉職的な人質として参加することとは、別である。


     В случае решительной победы революции, власть переходит в руки класса, игравшего в борьбе руководящую роль, -- другими словами, в руки пролетариата. Разумеется, скажем тут же, это вовсе не исключает вхождения в правительство революционных представителей непролетарских общественных групп... <>Весь вопрос в том, кто даст содержание правительственной политике, кто сплотит в ней однородное большинство? Одно дело, когда в рабочем по составу своего большинства правительстве участвуют представители демократических слоев народа, -- другое дело, когда в определенном буржуазно-демократическом правительстве участвуют, в качестве более или менее почетных заложников, представители пролетариата.

 F 

    N≒H <ここでは言っ ておこう> 原文は тут жеで、<この場ですぐに>という意味。

   N <構成する> 原語は сплотит で、Hが適切。Nは改悪。

 
 N=H<> <名誉職的>; 原語は почетный で、その意味は<名誉ある>。そのままでなぜいかない。 

***********

 だがプ ロレタリアートは、革命の基盤を拡大することなしには自らの 権力を打ち固めることできない<>。勤労大衆の

多くの諸階層、とりわけ農村における<>諸階層は、革命の前 衛たる都市 プ ロレタリアートが国家権力を獲得した後ではじ

めて
革命引き込まれ、政治的に組織されるで あろう。

 この点で、ブルジョ革 命のすべての重みをプロレタリアートの双肩に課している わが国の社会的・歴史的諸関係の性格は、労働者政府にとって、巨大な困難をも たらだけでなく、少なくともその成立の最初の時期には、測り知れない優位性 をも与えるであろう。このことはプロレタリアートと農民との関係のうち示されるであろう

ロシア革命は、民主主義の最も初歩的な課題を解決しうるようならかのブルジョ立憲主義的体制が確立されるのを許

ないし、長期にわたっては許さないであろう。その結果、農民——階層として のすべての農 民とさえ言ってよい——の最も

基本的で革命的な利の運命 は、革命全体の運命、すなわちプロレタリアートの運命結びついている。権力に就いたプ

ロレタリアートは、農民の前に、彼らを解放する階級として登場するであろう。



 プロレタリアートは、革命の基盤を拡大せずには自らの権力を強固にする ことできないであろう。勤労者大衆の、とり

わけ農村 におけるそ
の厖大な諸階層は、 革命の前衛たる都市プ ロレタリアートが国家権力に就いた後でのみ、はじめて革命

の中に引き込まれ、政治的に組織されるであろう。

 
 この点で、ブルジョワ革命の全重をプロレタリアートの双肩に課している わが国の社会的・歴史的諸関係の性格は、労働者政府に とって、巨大な困難を創り出すばかりでなく、少なくともそれが存在しはじめる最初の時期には、測り知れない利点 をも与えるであろう。このことはプロレタリアートと農 民との関係に現れるであろう。
 ロシア革命は、民主主義の最も初歩的な課題を解決しうるような、なんらかのブル ジョワ立憲体制に落着くことを許して

いないし
、さらにいつまでも許さないであろう。

 このことの結果、農民——身分と しての農民とさえ言ってよい——の最も基本的革命的な利害の運命は、革命全体の運命、すなわちプロレタリ アートの運命と結びついている権力に就いたプロレタ リアートは、農民の前に、彼らを解放すべき階級として立ち現れるであろう

 Пролетариат не сможет упрочить свою власть, не расширив базы революции. Многие слои трудящейся массы, особенно в деревне, будут впервые вовлечены в революцию и получат политическую организацию лишь после того, как авангард революции, городской пролетариат, станет у государственного кормила.

 Характер наших социально-исторических отношений, который всю тяжесть буржуазной революции взваливает на плечи пролетариата, создаст для рабочего правительства не только громадные трудности, но, по крайней мере, в первый период его существования, даст ему также и неоценимые преимущества. Это скажется в отношениях пролетариата и крестьянства.

Русская революция не дает и еще долго не даст установиться какому-нибудь буржуазно-конституционному порядку, который мог бы разрешить самые примитивные задачи демократии... Вследствие этого судьба самых элементарных революционных интересов крестьянства -- даже всего крестьянства, как сословия, -- связывается с судьбой всей революции, т. е. с судьбой пролетариата. Пролетариат у власти предстанет пред крестьянством как класс-освободитель.

 
 ★ 
N=H
 <... の双肩に課しているわが国の社会的・歴史的関係の性格は......> 
 原文は、<который
всю тяжесть буржуазной революции взваливает на плечи пролетариата,>で、который以下の従属 節は

<性格>にかかっている。訳文では、<わが国><関係><性格>のいずれにかかるかが曖昧になるので、訳文を工夫する

必要がある。

 ★ H <......にとって......与える......>という邦文は変。

   H <なんらかのブル ジョワ立憲体制に落着くことを許していないし、さらにいつまでも許さないであろう。>
 
  <に落着く 原語は  установиться で、Nの<確立される>が適切。
  
  
許していない 原語は не дает で、ここでは一般論をのべているので、Nの<許さない>が適切。

**********



しかし、もしかすると、農民自身がプロレタリアートを押しのけて、自らその地位を 占めるのではあるまいか? 

 これは不可能<>である。すべての歴史的経験がそうした予想に反駁している。歴史的 経験は、農民が独立した政治的役割

を担う能力を完 全に欠いていることを示している。

 ロシアのブルジョジーは、革命の陣地をすべてプロレタリ アートに明け渡している。彼らは農民に対する革命的ヘゲモニーを も明け渡さなければなら ないだろう。プロレタリアートヘの権力移行によってつくり出 される<>情勢のもとで、農民には、労働者民主主義体制に同調する以外に道は残されていない<>。た とえ農民が普段ブルジョ体制に同調しているときほどの意識性さえ持たずにそうしたとしても、それはそれでよい! しかし、農民の票を牛耳っているどのブルジョア政党も、あり とあらゆる期待や約束によって農民をだまし欺くために権力を 利用し、その後自分自身にとって 最悪の事態になったときには、他の資本主義政党に急いで席を譲るのに対して、プロレタリアートは農民に依拠し つつ、農村の文化水準向上させ農民の政治意 識を高めるために全力を尽くす



 しかし、もしかすると、農民自身がプロレタリアートを押し のけて、自らその席を占めるのではあるまいか? これ は不

可能事である。 歴史的経験の
すべてがそういう予想に対して異議を申し立てている。歴史的経験は、農民が独立した政治的

役割を担う能力を完全に欠いていることを示し ている。

 ロシアのブルジョワジーは、革命の陣地をすべてプロレタリ アートに明け渡している。彼らは農民に対する革命の主 導権をも明け渡さねばなら ないだろう。プロレタリアートヘの権力移行によって創り出されるであろう状況のもとで、農民には、労働者民主主義体制に同調する以外に道は残されていない であろう。農民は、平常ブルジョワ体制に同調している程度の意識性し かなくても、そうするであろう! しかし、各ブルジョワ政党は農民の票を支 配して、農民をありとあらゆる期待や約束によって釣り、欺くために、急いで権力公使し、やがて彼らにとって 最悪の場合に、他の資本家政党に急いで席を譲るのに対して、プロレタリアートは農民に依拠しつつ、農村の文化水準の向上と農民の政治意 識の昂揚に全力をあげてとり組むであろう。

Но может быть, само крестьянство оттеснит пролетариат и займет его место? Это невозможно. Весь исторический опыт протестует против этого предположения. Он показывает, что крестьянство совершенно неспособно к самостоятельной политической роли.

Русская буржуазия сдает пролетариату все революционные позиции. Ей придется сдать и революционную гегемонию над крестьянством. При той ситуации, которая создастся переходом власти к пролетариату, крестьянству останется лишь присоединиться к режиму рабочей демократии. Пусть даже оно сделает это не с большей сознательностью, чем оно обычно присоединяется к буржуазному режиму! Но в то время как каждая буржуазная партия, овладев голосами крестьянства, спешит воспользоваться властью, чтобы обобрать крестьянство и обмануть его во всех ожиданиях и обещаниях, а затем, в худшем для себя случае, уступить место другой капиталистической партии, -- пролетариат, опираясь на крестьянство, приведет в движение все силы для повышения культурного уровня деревни и развития в крестьянстве политического сознания.

 F

  H =N <に明け渡してい る<>>  この訳文だと、<明け渡してしまっている> という完了形に聞こえる。原語 は、сдаетなので、<明け渡しつつある>がいいのでは?

 ★  <<><>常ブルジョワ体制に同 調している程度の意識性し かなくても、そうするであろう> 原文は Пусть даже оно сделает это не с большей сознательностью, чем оно обычно присоединяется к буржуазному режиму!<>
 複雑な構文である。

 Пусть даже оно сделает это <それをおこなってもかまわない>
 
не с большей сознательностью, чем... <...よりも大きな自覚を もってでなく>≒<同じくらいの自覚>



6 プロレタリア体制



  プロレタリアート{が権力に到達しうるのは、国民的高揚と全人民の意志に立脚した場合のみである}。プロレタリアートは、国民の革命的代表 者として、絶対主義 と農奴制的野蛮に対する闘争の公認の国民的指導者として、政 府に加わるであ

ろう。しかし権力に就いたプロレタリアートは新しい時代——革命的立法と積極 的政策の時代——を切りくであろう。


そしてこの分野では、<>国民の公認の代弁者としての役割がプロレタリアートに保持されうるかどうかは、まったく保証

の かぎりではない…。

  一つのことだけは確実である。日を逐うごとに、権力に就 いたプロレタリアートの政策はしだいに深化るであろうし、

<>ますますその階級的性格 明確にるであろう。そしてそれとともに、プロレタリアート と国民との革命的結びつき

破壊されるであろう。農民の階級 <>分化は政治的形態をとって現われる であろう。労働者政府の政策が自立したものとな

、一般民主 主義的なものから階級的なものになるにつれて、<>構成部分相互の対立は 増大してゆくであろう。




 プロレタリアートは、国民の昂揚、全人民の意気に依拠 してのみ、権力に到達することができる。プロレタリアートは、国

民の革命的代表者として、絶対主義 と農奴制的暴虐に対する闘争の公認の国民的指導者として、政府に加わるであろう。し

かし権力を握れば、プロレタリアートは新しい時代——革命的立法と積極 的政策の時代——を切り拓くであろう。そしてそ

こでは、彼らに国民の公認の代弁者としての役割が保持されうるかどうかは、まっ たく保証されていないのである。


  一つのことだけは確実である。新たな毎日は、権力に就いたプロレタリアートの政策を深化させるであろうし、しかもま

すますその階級的性格を 明確にするであろう。そしてそれとともに、プロレタリアートと国民との革命的な紐帯は破壊され

るであろう。農民の階級的分化は政治的形態をとって現われる であろう。労働者政府の政策が確立され、一般民主主義的な

も のから階級的なものになるにつれて、諸構成部分相互の対抗関係は増大してゆくであろう。

  Достигнуть власти пролетариат может, только опираясь на национальный подъем, на общенародное воодушевление. Пролетариат вступит в правительство как революционный представитель нации, как признанный народный вождь в борьбе с абсолютизмом и крепостным варварством. Но, став у власти, пролетариат откроет новую эпоху -- эпоху революционного законодательства, положительной политики, -- и здесь сохранение за ним роли признанного выразителя нации вовсе не обеспечено.

Каждый новый день будет углублять политику пролетариата у власти и все более и более определять ее классовый характер. И вместе с тем будет нарушаться революционная связь между пролетариатом и нацией, классовое расчленение крестьянства выступит в политической форме, антагонизм между составными частями будет расти в той мере, в какой политика рабочего правительства будет самоопределяться и из общедемократической становиться классовой.

  F

  ★    <確立され>   <自立したものとなり> 原語  самоопределяться <自決>;<自主的に決定されるように

なるにつれて>の意。


**********


 身分制的農奴制を根絶することは、地主から収奪されている身分としての全農民 の支持を受けるであろう。累進所得税も農民の大多数の支持を受けるであろう。しかし農業プロレタリアートを擁護する立法措置は、そのような多数の積極的 な共感を得ないばかりか、少数の積極的な敵対にさえぶつかるであろう。

 プロレタリアートは、階級闘争を農村に持ち込まざるをえず、そのことによって、 比較的狭い枠内とはいえ疑いもなく農民全体<>に存在するあの利害の共性を<>破壊せざるをえない。プロレタリアートは、その支配のごく早い時期において、富農 に貧農を、農業ブルジョジーに農業プロレタリアートを対置 することによって<>支柱を求めなければならないであろう。


 身分制的農奴制の一掃は、租税負担身分としての全農民 の支持を受けるであろう。累進所得税も農民の大多数の支持を受けるであろう。しかし農業プロレタリアートを擁護する立法措置は、そのような多数部分の積極的 な共感を得ないばかりか、少数部分の積極的な抵抗にさえぶつ かるであろう。

 プロレタリアートは、階級闘争を農村にもたらさざるをえず、そのことによって、 比較的狭い枠内とはいえ疑いもなく全農民のあいだに存在している利害の共同性を、破壊せざるをえない。プロレタリアートは、自らの支配の当面の時点において、富農 に貧農を、農業ブルジョワジーに農業プロレタリアート対置 することによって支柱を求め、 支柱を求めねばならないであろう。

 Уничтожение сословного крепостничества встретит поддержку всего крестьянства, как тяглого сословия... Но законодательные меры в защиту земледельческого пролетариата не только не встретят такого активного сочувствия большинства, но и натолкнутся на активное сопротивление меньшинства.

 Пролетариат окажется вынужденным вносить классовую борьбу в деревню и таким образом нарушать эту общность интересов, которая несомненно имеется у всего крестьянства, но в сравнительно узких пределах. Пролетариату придется в ближайшие же моменты своего господства искать опору в противопоставлении деревенской бедноты деревенским богачам, сельскохозяйственного пролетариата -- земледельческой буржуазии.

 F

 ★ N <地主から収 奪されている身分>  原文は тяглого сословия. тяглоはロシア史上の ターム。H <租税負担身分>が適切。

 ★ Nの<多数派>は変。Hの<多数部分>よりは<多数者>がいいのでは。

 ★ N=H  <対置 することによって支柱を求め> 原文は искать опору в противопоставлении деревенской
 бедноты деревенским богачам...することによって支柱を求め>は変。ここは противопоставление<対抗>=< опора

という構文である。<XにYを対抗させる、XとYの間に対抗関係をつくりだすこ と>が支配を維持する支えになるという意味である。


********

<> N
 しかし、ひとたび権力が、社会主義者が多数を占める革命<>政府の手中にる なら ば、ただちに、最小限綱領と最大限綱領との区別は原則的意 義も、直接的実践的意義も失ってしまう。プロレタリア政府は、この線引きの枠の中にとどま ることはけっしてできないであろう。

 H
しかし、ひとたび権力が、社会主義者が多数を占める革命的政府の手中にあるなら ば、ただちに、最小限綱領と最大限綱領との区別は原則的意義も、直接 的・実践的意義も失ってしまう。プロレタリア政府は、この境界の枠の中に自らを抑制す ることは決してできないであろう。

<>Раз власть находится в руках революционного правительства с социалистическим большинством, как тотчас же различие между минимальной и максимальной программой теряет и принципиальное, и непосредственно практическое значение. Удержаться в рамках этого разграничения пролетарское правительство никоим образом не сможет. 
<>
F
 H <この境界の枠の中に自ら を抑制す る> も、 N <この線引きの枠の中にとどまる
>もУдержаться в рамках этого разграничения の意味を生かしきれていない。要は、<最小限綱領と最大限綱領との区別がなくなってしまう>ということ。
<>
*******
N
 無力な人質としてではなく、導 的な勢力として政府に参加する以上、プロレタリアートの代表はまさにそのことによって、最小限綱領と最大限綱領との境界を突破しているのであり、すなわ ち、集産主義日程にのぼせているのである。{この方向においてプロレタリアートがどの点で押しとどめられるかは、力関係によるのであっ て}、プロレタリア政党の所期の意図によるのではない。

H

 無力な人質としてではなく、主導 的な勢力として政府に参加する以上、プロレタリアート の代表はまさにそのことによって、最小限綱領と最大限綱領との境界を突破しているの であり、すなわ ち、集産主義を日程にのぼせているの である。どの点で、プロレタリアートがこ の方向を遮られることになるかは、力関係によるのであっ て前々からのプロレタリア政党の意図によるのではな い。

Вступая в правительство не как бессильные заложники, а как руководящая сила, представители пролетариата тем самым разрушают грань между минимальной и максимальной программой, т. е. ставят коллективизм в порядок дня. На каком пункте пролетариат будет остановлен в этом направлении, это зависит от соотношения сил, но никак не от первоначальных намерений партии пролетариата. 

<>******** <>
<>  N
 まさにそれゆえ、ブルジョ革 命におけるプロレタリア独裁の何らかの特殊型、す なわちプロレタリアートの(あるいはプロレタリアートと農民の)民主主義独裁のようなものは、問題になりえないのである。労働者階級は、自 らの民主主義<>綱 領の枠を乗り越えずには、自らの独裁の民主主義的性格を保証 することはできないであろう。この点に関しては、いかなる幻 想も完全に致命的であろう。
<> 
 H
 まさにそれゆえ、なにかブルジョワ革命におけるプロレタリア独裁の特殊型、つま りプロレタリアートの(あるいはプロレタリアートと農民の)民主主義的独裁のよ うなものは、問題になりえないのである。労働者階級は、自ら の民主主義的綱 領の枠を踏み越えずには、自らの独裁の民主主義的性格を保証することはできないであろう。この点に関しては、どんな幻想も完全に致命的であろう。

Вот почему не может быть и речи о какой-то особенной форме пролетарской диктатуры в буржуазной революции, именно о демократической диктатуре пролетариата (или пролетариата и крестьянства). Рабочий класс не сможет обеспечить демократический характер своей диктатуры, не переступая за границы своей демократической программы. Всякие иллюзии на этот счет были бы совершенно пагубны.

 F この前後は主にNのH酷似度を確認するだけ。

<>*******

 プロレタリアートの党は、ひとたび権力を掌握したなら、最後までこの権力のため に闘うであろう。権力を維持し強化するためのこの闘争の一つの手段が<>{煽動と組織化、とくに農村におけるそれであるとすれば}、他の手段は集産主義の政策であ る。集産主義は、権力に就いた党の地位から不可避的に出てくる 帰結であるだけでなく、この地位をプロレタリアートに依拠し つつ維持する手段でもあ


プロレタリアートの党は、ひとたび権力を掌握したなら、最後までこの権力のため に闘うであろう。権力を維持し強化するためのこの闘争の一つの手段が、とくに農村における煽動と組織化であるとすれば、他の手段は集産主義 の政策であ る。集産主義は、権力に就
いた
党の地位から生ずる不可 避的な帰結であるばかりでなく、この地位をプロレタリアートに依拠しつつ保持する手段でもあろう。

Раз партия пролетариата возьмет власть, она будет бороться за нее до конца. Если одним средством этой борьбы за сохранение и упрочение власти будет агитация и организация, особенно же в деревне, то другим средством будет коллективистская политика. Коллективизм станет не только неизбежным выводом из положения партии, но и средством сохранить это положение, опираясь на пролетариат.

**********

N 
 絶対主義および民的隷属状態の清算を、激化する社会的衝 突、大衆の新たな決起、支配階級の政治的・経済的特権に対するプロレタリアートの中断する ことのない攻撃などをともなう社会主義革命に結びつけるという、連続革命 思想が社会主義派の新聞において定式化された とき、「進歩的」マスコミは、異口同音に憤激の叫び声を発し た。

 同じ民主主義派でも、より急進的な代表者たちは、....

ロシアにおける労働者政府という思 想そのものを夢想とみなしているだけで なく、当面する歴史時代においてヨーロッパに社会主義革命が 起こる可能性<>さえ否している。「必要な前提」がまだないというのだ。はたしてそうだろうか?  問題は、もちろん、社会主義革命の日時を指定すること<> ではなく、それを現実の歴史的展望の中に位置づけることある。

 H

 絶対主義および国民的隷属状態の清算を、激 化する社会的衝突、大衆の新 たな階層の蜂 起、支配階級の政治的・経済的特権に対す

<>プロレタリアートの攻撃などをともなう社会主義 革命に結びつけるという、連続革命の考えが社会主 義新聞において定式化されたと

き、わ が「進歩的」論壇は、異口同音に憤激の叫び声を発した。

 同じ民主主義派でも、より急進的な代表者たちは、....

ロシアにおける労働者政府という考えそのものを夢想とみなしているだけで なく、きわめて近い将来の歴史時代においてヨーロッパに

社会主義革命が起こる可能性をさえ否認している。必要な「前提」には、まだ当面していないというのだ。はたしてそうだろうか?  

問題は、無論、社会主義革命の日時を指定することに ではなく、それを現実の歴史的展望の中に見定めること にある。


 Когда в социалистической прессе была формулирована идея непрерывной революции, связывающей ликвидацию абсолютизма и гражданского крепостничества с социалистическим переворотом рядом нарастающих социальных столкновений, восстаний новых слоев массы, непрекращающихся атак пролетариата на политические и экономические привилегии господствующих классов, наша "прогрессивная" печать подняла единодушный негодующий вой.

Более радикальные представители той же демократии... не только считают фантастической самую идею рабочего правительства в России, но и отвергают возможность социалистической революции в Европе в ближайшую историческую эпоху. Еще нет налицо необходимых "предпосылок". Верно ли это? Дело, конечно, не в том, чтобы назначить срок социалистической революции, а в том, чтобы установить ее в реальные исторические перспективы...

 F

 Hには<непрекращающихся>の訳が脱落し ているが、Nはそれを補正している。

  ロ シアの労働者政府と社会主義

 N

<> すでに述 べた ように、社会主義革命の客観的諸前提は、先 進資本主義諸国の経済発展によってすでにつくられている。しかし、この点にお いて、ロシアに関しては何を語ることができる だろうか? ロシア・プロレタリ アートの手中への権力の移行は、わが国の国民経済を社会主義的原則にもとづ いて変革する端緒になる<>と期待することができるだろう か? 

 H

  上述したように、社会主義革命の客観的諸前提は、先 進資本主義諸国の経済発展によってすでにつくられている。しかし、この点に

関して、ロシアについては何を語ることができるだろうか? ロシア・プロレタリ アートの手中への権力の移行は、わが国の国民経

済を社会主義的原則に基づいて改造する端緒になるであろう、と期待することができるだろうか?

Выше мы показали, что объективные предпосылки социалистической революции уже созданы экономическим развитием передовых капиталистических стран. Но что можно в этом отношении сказать относительно России? Можно ли ожидать, что переход власти в руки русского пролетариата будет началом преобразования нашего национального хозяйства на социалистических началах?

********

 N

 パリの労働者は<>コミューンに奇を 要求しはしなかった、とマルクスは言う。今日においても、プロレタリアートの独裁に即座

の奇を期待することはできない。国家権力は全能ではない。{プロレタリアートが権力を獲得しさえすれば、いくつかの布告を出

すことによって資本主義を社会主義 に置きえることができるだろう}、などと考えるのは馬鹿げ ている。経済体制は国家<>活動の

産物ではない<>。プロレ タリアートにできることはただ、集産主義に向 けた経済的進化の道程を容易にし短縮するために、全力をあ

げて国家権力を行使することだけである。

<>
 H

パリの労働者は、コミューンに奇蹟を要求しはしなかった、とマルクスは言う。今日においても、プロレタリアートの独裁

に瞬時の奇蹟を期待することはできな い。国家権力は全能ではない。権力を握りさえすれば、プロレタリアートは布告を

数回出すことによって資本主義を社会主義 に置き換えることができるだろう、などと考えるのは馬鹿げている。経済体制は

国家の活動の所産ではないのである。プロレタリアートにできることはただ、集 産主義の側への経済的進化の道程を容易に

し短縮するために、全力をあげて国家権力を発動することである。

 Парижские рабочие, как говорил Маркс, не требовали от Коммуны чудес. Нельзя ждать мгновенных чудес от диктатуры пролетариата и теперь. Государственная власть не всемогуща. Нелепо было бы думать, что стоит пролетариату получить власть -- и он путем нескольких декретов заменит капитализм социализмом. Экономический строй не есть продукт деятельности государства. Пролетариат сможет лишь со всей энергией применять государственную власть для того, чтобы облегчить и сократить путь хозяйственной эволюции в сторону коллективизма.

*******

 N

 生産の社会化は、困難の最も少ない部門から着手される。最初の時期は、社会化された生産は、商品流通の法則によって私的経済企 業と結びついているオアシスのようなものであろう。社会化さ れた経営にすでに包含されている領域が広くなればなるほど、その有利さはよりいっそう明瞭にな り、新しい政治体制はよりいっそう強固になったと感じられ<>、{プロレタリアートのその後の経済的措置はよりいっそう大胆なものとなろう。これらの措置を実するにあたって、プロレタリアートは国内の生産力だけでなく、国際的 な技術にも依拠することができるし、依拠するだろう。それはちょうど、プロレタリアー トがその革命的政策を実行するにあたって、国内の階級関係の経験だけでなく、国際的なプロレタリアートの全歴史的経験にも依拠するのと同じである。


 生産の社会化は、困難の最も少ない部門から着手される。はじめのうち は、社会化された生産は、商品流通の法則によって私的産業企業と結びついているオアシスを思わせるであろう。社会化された経営にすでに把握されている分野が広 くなればなるほど、その有利さはよりいっそう明瞭にな り、新しい政治体制はよりいっそう強固になったと感じられるであろうし、以後のプロレタリアートの経済的諸方策はよりいっそう大胆なものとなろう。これら の諸方策を 実行 するにあたって、プロレタリアートは国内の生産力だけでなく、国際的な技術にも依拠するであろうし、それは可能なことであろう。それはあたかも、プロレ タ リアー トがその革命的政策を実行するにあたって、国内の階級関係の経験だけでなく、国際的なプロレタリアートの全歴史的経験にも依拠するのと同じである。

Обобществление производства начнется с тех отраслей, которые представят для этого наименьше затруднений. В первый период обобществленное производство будет представлять собой оазисы, связанные с частными хозяйственными предприятиями законами товарного обращения. Чем шире будет поле, уже захваченное обобществленным хозяйством, тем очевиднее будут его выгоды, тем прочнее будет себя чувствовать новый политический режим, тем смелее будут дальнейшие хозяйственные мероприятия пролетариата. В этих мероприятиях он сможет и будет опираться не только на национальные производительные силы, но и на интернациональную технику, подобно тому как в своей революционной политике он опирается не только на опыт национальных классовых отношений, но и на весь исторический опыт международного пролетариата.


★  <依拠するであろうし、それは可能なことであろう>は変 では? 原文は、 он сможет и будет опираться...

ここは  <依拠することができるだろうし(未来時制)、依拠することになろう>という意味。

********

 N

 プロレタリア体制がまず最初にしなければならないことは、{農業問題の解決に着手することである。この問題は、ロシアの膨大な住民大衆の運命をめぐ る問題と結びついている。}この問題の解決にあたって、他のすべての問題と同様、プロレタリアートはその経済政策の基本的な志向、すなわち社会主義経済の 組織化のためにできるだけ大きなを掌握しようとする志向出発点とするろう。ただしその際、農業問題におけるこの政策の形態とテンポは、プロレタリ アートがわがものとしうる物質的資源によって<>規定される だろうし、それとともに、潜在的同盟者を反革命の陣営に追い やらぬよう自らの活動に配慮する必要性 によっても規定される。

 H

プロレタリア体制がまず最初にしなければならないことは、ロシアの大多数の住民の運命をめぐ る問題にかかわる農業問題の解決にと

り組むことである。}この問題を解決するにあたって、他のすべての問題についても同じであるが、プロレタリアートはそ の経済政策

の基本的な志向、すなわち社会主義経済の 組織化のためにできるかぎり大きな分野を掌握しようという志向から出発するであろう。し

かし、農業問題におけるこの政策の形態とテンポは、プロレタリ アートが掌握しうる物質的資源によって、あるいはまた潜在的同盟

者を反革命の陣営に追いやらぬよう、自らの活動に気を配らね ばならぬという必要性 によって、 決定されねばならない。


Пролетарский режим на первых же порах должен будет приняться за разрешение аграрного вопроса, с которым связан вопрос о судьбе огромных масс населения России. В решении этого вопроса, как и всех других, пролетариат будет исходить из основного стремления своей экономической политики: овладеть как можно большим полем для организации социалистического хозяйства, причем формы и темп этой политики в аграрном вопросе должны определяться как теми материальными ресурсами, которыми сможет овладеть пролетариат, так и необходимостью располагать свои действия так, чтобы не отталкивать в ряды контрреволюции возможных союзников.

 F

 ★ Nは、 
должны  <...ねばならない>を無視。Hは訳出している。

 ★ Hの<あるいはまた>は変、<как...、так и...>がわからなかったか? ここは<...によっても、...によっても>の意。

<>*********<>


 しかし、ロシアの経済的諸条件のもとで、労働者階級の社会主義的政策をどこまで押し進めることができるのだろうか? 次のことだけは確信をもって 言うことができる。それは国の技術的後進性につまずくよりもずっと前に、政治的障害にぶつかるであろう。{ヨーロッパ・プロレタリアートの直接的な国 家的支持なしには、ロシアの労働者階級は}権力にとどまることはできないし、その一時的支配 を長期的な社会主義的独裁に転化することもできない<>。

 H

しかし、ロシアの経済的諸条件のもとで、労働者階級の社会主義的政策はどこまで貫徹されうるだろうか? 次のことだけは確信を

もって 言うことができる。それは国の技術的後進性につまずくよりもずっと前に、政治的障害にぶつかるであろう。ロシアの労働者階

級はヨーロッパ・プロレタリアートの直接的な国 家的支持がなければ、権力にとどまることはできないしそ の一時的支配を長期的な

社会主義的独裁に転化することもできないであろう


Но как далеко может зайти социалистическая политика рабочего класса в хозяйственных условиях России? Можно одно сказать с уверенностью: она натолкнется на политические препятствия гораздо раньше, чем упрется в техническую отсталость страны. Без прямой государственной поддержки европейского пролетариата рабочий класс России не сможет удержаться у власти и превратить свое временное господство в длительную социалистическую диктатуру...


 F
 

 ★ H=N ともに<рабочий класс России не сможет удержаться у власти и превратить>の時制(未来)を無視(Hは前半)。
文脈によっては、未来時制でも<できる>と訳していい場合もあるが、一般論になりかねない場合は要注意。問題の一節は、いわゆる

一国社会主義革命にかかわる重要命題であるだけになおのこ と慎重であるべき。

 な お <и>は <удержаться у власти>と< превратить свое временное господство в длительную социалистическую диктатуру>

を結ぶ接続詞なので、<
権力にとどまって、そ の一時的支配を長期の社会主義的独裁に転化することができないだろう>と続けて

訳すべきである。



*****

  西島訳の吟味はこれで終わりにする。それははたして「原氏の訳を参照にしながらも、今回、ロシア語原書から改めて訳しなおし

たものと言えるだろうか? 「改めて訳し直した」にしては、あまりに原訳を踏襲(=<そのまま>ということ)しすぎてはいない

か? そして「踏襲」していない部分もほとんど、原氏の訳語・訳文を、別の同義語で言いかえているだけでしかないのではないか?

もちろん、ごくわずかではあるが、原訳の瑕疵を補正しているところもなくはない。同時に、原訳の「ミス」に気づかず、補正できな

いでいるものも少なくない。

 以上のような「訳業」を仰々しく「今回、ロシア語原書から改めて訳しなおし」たなどと称し て、トロツキー研究所の「トロツ

キー・ライブラリー」に載せるのはいかがなものであろうか? 当の原氏は、 西島氏の「訳業」についてどう評するだろうか?

<> 原氏がトロツキーのこの著作の翻訳にとりくんだのは、露和辞典がきわめて貧弱で、語義も用例も不適切なものが多かった時代であ

る。露露辞典も十分にあるとは言いがたかった。そうした時代的制約のもとでの原氏の苦心作である邦訳を、辞典類が比べものになら

ないほど充実している現時点で、原文から新たに、「改めて訳しなおす<>」という苦労を実際にはおこなわ ず、先人の訳業をいわば<盗

用>してすますとは!

 





自分の名で世に送るとは、なんたる怠慢? 海賊行為?