西島 栄 訳『永続革命論』の問題点


 西島氏の『永続革命論』の新訳が トロツキー研究所発行の『トロツキー研究』に発表された。ロシア語の原文

から訳出したものだという。これま で日本に流布していたものは、英訳から重訳された姫岡玲治氏のもの(現代思潮

社)であった。トロツキーの「永続 革命論」に論及する者は、ロシア語の原書に依拠する可能性をもたない限り、こ

の訳書に拠るしかなかった。もっと もロシア語が読める者でも原書を入手することは容易ではなかった。

 私事にわたるが、私の場合、大学 院時代(1960年代)にある古書店でまったく偶然に、1930年のベルリン「グラ

ニート」出版から刊行された初版本 を発見・入手していた。トロツキー=反革命分子説を疑っていなかった時代で

あったが、オリジナルであったった ため、稀覯書という魅力にひかれて興奮して購入したのであった。私が所蔵する

唯一のトロツキー著作のオリジナル =初版本である。




 もっとも、その所蔵本をはじめて 繙くことになったのは、トロツキーをまともに研究しようと思い立ってからのこ

とで、1980年代に入ってからで ある。

 ところで、その姫岡訳も、その底 本である英訳本もその後調べてみると、トロツキーの原書に照らして、必ずしも

正確とは言えなかった。後述するよ うに、「永続革命論」の「基本命題」の重要部分が、ほとんど逆の意味に訳され

ていたりした(英訳とそこからの重 訳)。だから、原書に依拠できないで「永続革命論」に論及する論者の所論

はーートロツキー派であれ、反トロ ツキー派であれーー、かなり眉唾ものであったはずである。

 したがって、ロシア語原書からの 的確な翻訳が久しく待望されていたと言える。私自身、一時、訳業にとりかかる

覚悟を固めつつあった。しかし、純 粋の理論書ではなく、トロツキーの「永続革命論」にたいするいわれなき論難の

いちいちに、さまざまな文書から長 い、細部におよぶ引用文をもちだして反証するという記述で構成される著作の翻

訳は、いかにもしんどそうで、なか なかとりかかる気になれなかった。

 そこへ西島氏のロシア語からの新 訳が出た。本来なら、困難な訳業を完成させた快挙として、諸手を挙げて歓迎す

べきであった。

 しかし、氏の新訳を読みすすめ て、いらいらし、首をかしげることが激しくなっていった。姫岡訳にみられた瑕疵

がそのまま踏襲されていたり、意味 不明の訳文が続出したりするからであった。長年の経験で、意味不明の邦文は訳

者が原意をとらえきれないときの現 象であることを知っていた私は、そうした部分を原文と照合してみた。案の定で

あった。

 結局、西島訳を冒頭から吟味する ことになった。その吟味結果をすべて報告することはひかえて、重要部分につい

てのみ報告する。

 今回は西島訳の吟味にあたって心 強い協力者があらわれた。トロツキー研究者であり、『トロツキー研究』誌の執

筆者でもある中島章利さんである。 共同作業の実現によって、単独での点検作業にともなう独断・独善を避けること

ができるようになったことはたいへ んありがたいことであった。中島さんは、 コメント欄で西島訳をきわめて綿密に

吟味している。
そちらもあわせてご覧いただきたい。読者から のコメントもお願いしたい。

 


 1 
『永続革命論』序論

 2 第10章

 3 その他