いきいき介護セミナー2004第6回目
日 時;平成16年10月24日(日) 10:00〜15:30
場 所;第一生命ビル
講 師;中田光彦先生
テーマ;「排泄がわかれば、ケアは楽しくなる」
今日は、神奈川県鎌倉市から来た。ヘルパーとしての経験を含め合計22年になる。はじめて施設に勤務したときに、民謡を歌ったり風船遊びをしたりといった「わざとらしい」介護が嫌になった。「子どもの遊びに行きたくない。」という老人に「何がしたいか」と言うので「パチンコに行きたい」とリクエストされて、台の前に座っているだけでもいいかと思って連れて行ったら、目が輝いて、見事な出玉であった。よく、この老人は「やる気がない、元気がない」と決め付けるが、横になった状態でやる気・元気がないのは当たり前。帰ってみると、老人が行方不明になったと大騒ぎになっていた。老人の相手をする介護より、職員をどう動かすかというのが難しかった。職員を動かすにあたって一番の説得力となったのが、老人の笑顔。何故、普段笑わない老人が笑顔になったのか、他の職員も興味をもってその原因に迫ろうとする。
職員を納得させる、ということにも成功すると、施設での仕事に飽きてしまった。次は在宅に挑戦してみようと思った。施設経験があるので、在宅は簡単だろうと思っていたが、そうは行かなかった。在宅のヘルパーを「家庭奉仕員」と呼んでいた当時、初めて訪ねて行った家で、インターホンを押すと「帰れ」と言われた。家に入れてもらわないことにはお金にならないので、何度もインターホンを押し続けて、ようやく入れてもらったが、はじめに介護に取り掛かろうとすると、それ以前に洗濯や買い物という家事が待っていた。
そして、買い物ひとつをとってみても、買い物をした食料品に日付を書き入れること、その人に合った味付けを探すといったいろいろな必要事項を伴った。施設での栄養士やその他のスタッフの有難さを痛感した。
うまくいった施設の取り組み事例を聞くと、たまたま条件がそろったからだろう。うちではできないと思う人がいる。しかし、スウェーデンもはじめから条件がそろっていたのではなく、足りない部分を補ってきた結果。設備がない、スタッフがない、というマイナス条件(×)を先に言う人がいる。しかし良い面(○)もあるのではないか。たとえば、在宅については、嫌な上司・スタッフと顔を合わせなくてもよい。また、順番をいろいろやりくりしながら、トータルの3時間の枠の中で自由に予定を組むことが出来る。(ただし、時間のやりくりは施設でも不可能ではない。夜勤のときはいろいろ自分が好きなことを試してみたらよい。石焼き芋が9時に売りにきて、アナウンスを入れたら注文が殺到した。試したことをスタッフの間に広めると面白い。とにかく朝までにもとに戻しておけば誰も文句を言わない。在宅は狭い方がプラスに働く。特に広いトイレはマイナス。学者は、狭いスペースはバリアフリーでないと嫌がるが、現場にいる人間にとってはその良さが分かるはず。ベッドについては、褥瘡ができないようにするため、寝返りができる条件が望まれる。手すりをつけた古い家が好都合。
徘徊があっても何かいいところがあるはず。職員についても一緒。×でなく○に着目しましょう。
在宅では、いろいろな関係者が、いろいろな方法を提言する。そこで、おむつや食事の方法について、必ず1ヶ月は猫をかぶったまま、何も言わないようにしている。2ヶ月経ってからはじめて、「自分で顔を拭いてみたら」と言ってみる。7年間顔を拭かなかった人が、ちゃんと拭けて、奥さんも驚いたことがある。
いい部分を見るようにしようと言っても、どうしてもその人を好きになれないこともあろう。好きになれない、それは福祉の精神がないからだと言われるが、嫌いなものは嫌い。嫌な人に会ったとき、本人の前で言うのは問題だが、いらいらを解消するために毒を吐くことも必要。そんな時は、環境を変えてみるとよい。海岸に散歩に連れて行くなど、いつもと違う環境に切り替わると、自然と話題も変わる。すると、その人の別の面も見えてくることもある。
介護は難しい。「引きこもり」には何か理由があるのか?と思うと必ずそういうわけではない。経験どおりにいかないことも多い。一回風呂に入ってもらって、これからは風呂に入りたいと言うかと思うと、そうはいかない。
老人だけでなく障害者の方の介護をした経験がある。片足だけ自由が効いた人で、筆談をしていたが、いちいち意思確認するのに時間がかかったので、トーキングエイドを使ったが、15万9千円もしたトーキングエイドはとにかく声のトーンが暗い。1万円もしない(6980円)アンパンマンの文字盤に変えたところ、明るい気分になれた。
介護の仕事はスペシャリストでなくてもうまくいく。一品料理ができる、歌が歌えるということが武器になる。「パチンコ等に連れて行く時間がとてもない」と言いたい気持ちはよく分かるが、これからはイベントに積極的な業者が選ばれるはず。あるパチンコ屋に連れて行ったら、あいにく席がスライドせず、車椅子が入れなかったのでどうしようかと思ったら、若いアルバイトの店員が4,5人で早速、固定席のネジをはずしてくれた。
今の世の中で、待機者がいっぱいいて黙っていても客がついてくるという業界は、介護の世界くらいなもの。もう何年もすると間違えなく営業努力が必要になる。モーターボートに老人を乗せたり、ビアガーデンに連れて行ったり、スキーに連れて行ったり、海水浴に連れて行ったり、という「非行のすすめ」の所以。
20代の間に冒険をして下さい。褒められて30代になると、ろくなことはない。幸いなことに、不況でいろんな業界を経験した人が介護の世界に入ってくるので、違った発想を持ち込んでほしい。若い人だけ頑張れとは言わない。おじさんおばさんも頑張ってほしい。
我々が年をとったときに入りたい施設にしたい。
「海に行きませんか」と言ったときに、老人がイヤだというのは何故か?排泄や食事の心配ではなく、日焼けの心配とかをしていることもある。海まで連れて行っても、実際に海に入ることができる人は50人のうち5〜6人であろうが、海に入れない人も来年こそは入ろうと水着を買う。
介護保険の二次審査を行う介護認定審査会の委員を務めているが、その重要書類である「医者のコメント」には何も書いていないものもある。ちゃんと細かく書いてくれる医者もいるが、ほとんどはひどいもの。抗議しても全然改善されない。
チェックがほとんどついていないのに要介護2、いっぱいついていても自立となっている書類が上がってくるなど判断基準が一定しない。
昨年バイクで事故をして「片麻痺」になったが、健足から上げる等、動作確認するいい機会になった。もう歩いていいと言われて、普通に歩きはじめて、正座ができるようになるまで半年くらい要した。いかに急性期のとき寝たきりとならない施設に連れていくかということが重要かを思い知った。
<書籍の紹介>
○特養時代に書いた本
・今をときめいて
・老人介護のあそび学
○ヘルパーその他時代に書いた本
・ついでひらめき無計画
・アドリブケアのすすめ
・わたしはトメ、19歳
・もっとアドリブケア
・楽する老人介護
以下、講義資料に沿って
<ケア編>
(1) ケアは目的づくりから
〜カラオケへ行こう。だから、トイレへ行こう・歩く練習をしよう〜
介護→目的でなく、目的→介護という方向で、表情が甦る。
介護だけでも忙しいのに・・・というのはおかしな理屈で、目的に近づいてくるうちに、ADL・QOLが自然と向上してくる。
朝だから着替える、というのも不思議な理屈で、出掛ける等の目的があって着替える。
「やる気がない老人のやる気を出すにはどうするか」というのもおかしな命題。せっかく花を見るために外出するようにしても、その目的が終わってしまうと外出しなくなった、というのも自然な姿。あじさいを見に行った後、また寝たきりになってしまった、というのとケアマネの勉強を試験が終わってしまうと勉強をやめてしまうのと、どちらも人間の当たり前の姿。
(2)楽しさに理由づけ(−訓練、−療法、−効果)はいらない。専門バカになってはいけない
〜楽しさ=ADL(日常生活動作Activities of Daily Living)・QOL(生活の質Quality of Life)の向上〜
「そのカラオケは何療法?」というのは必要ない。「何故楽しかったの?」と理由を求める専門バカには、専門用語(可動域が広がるから)等、適当に理由付けしておけばよい。
(3)あたり前の"こだわり"を持ってもらう。ついでに感性も引き出してみよう
〜見る・聞く・しゃべる・笑う・食べる・嗅ぐ・考える・歩く・書くetc〜
朝起きて何をしたか?と言われて思い浮かぶ行為、たとえば顔を洗った、トイレに行ったという行為、それをしなくなると寝たきりになってしまう。
(4)昼間活動するから夜はよく眠れる。薬の乱用・抑制をやめよう
〜離床は褥瘡・骨粗鬆症・関節拘縮・筋力低下・便秘・失禁・食欲不振・肺炎・痴呆等の防止〜
足をお湯につけるとよく眠れると大学の教授が言っていたが、そんなのは嘘で、昼間活動するから眠くなる。
(5)TPO(時Time場所Place場合Occasion)に合わせたオシャレ。美白・顔黒OK。ビジュアル系介護!
〜ジャージと名前の入ったバレーシューズ、職員はユニフォームで付き添う外出はヘン〜
ユニフォームで ジャージを来てディズニーランドに行くと、気が付くとふと空しい気持ちになる。「仕様がないもん、介護の付き添いなんだから」ではなく、それはおかしいということに気付きたい。
(6)おいしい食事は、適度な活動・椅子に座って・入れ歯で食べる。最初から鼻腔栄養にしない
<口から食べるとこんなに体が働く>
[食べる →手][食べるものを見る →目][咀嚼(そしゃく:噛むこと→頭・歯・歯茎)]
[味わう →舌][食べる音を聞く→耳][唾液の分泌→消化の援助・口腔の殺菌]
[香りを嗅ぐ→鼻][嚥下(えんげ・飲み込むこと)→食道][消化→胃・腸・他消化器官・その他]