いきいき介護セミナー2004(第4回目)
日時:平成16年8月29日(日) 10:00〜15:30
場所:第一生命ビル
講師:藤本直規先生
テーマ:「痴呆がわかれば、ケアは楽しくなる」

○最初に学んだこと
1992年に熊本の菊池病院に一週間の研修に行った。そこで室伏君士(むろふし くんし)先生(説得より納得、なじみの関係とか)有名な先生に出会った。滋賀県にも何度か来て頂き、私の一番の恩師です。本がたくさん出ていて、痴呆介護の原点。また、小沢勲先生の岩波からでている本「痴呆を生きるということ」を読んでください。小沢先生は、室伏先生の弟子。僕がその下の方の弟子である。小沢先生は洛南病院で副院長として活躍され、その後広島県の老健におられた。老健でいろんな事をされている。落語をしたり、衣装を着てお祭りだと先頭立って道化師の役で踊られたり・・・スタッフとも同化してやってられた。スタッフにはとってもきびしい、でもとっても優しい面があったりとステキな人であった。命がけで痴呆のケアと医療をやってられて、現在は体調を崩しておられ、脳に転移があり放射線治療を受けられているが、明るくて病気を見せない。痴呆ケアというのは、人をきちっと見ていくということ。自分の意思を命がけで伝えたいと言うことで頑張っておられ、もう一冊本を書くといっておられたので、お元気に過ごされていると思う。菊池病院で一週間の泊り込み研修をして、一番最初に心を打たれたのは、その痴呆病棟で働けることが、菊池病院の看護師さんの誇りである。そのため希望を出しても競争率が高く、なかなかそこで働かせてもらえない。それは、色々なものを失いながら、一生懸命頑張って生きているのだという姿をみて、看護師とケアワーカーの人たちは、ご自分の身にひきつけて、しょうもないことで悩まんとこ、この人たちが頑張っているのに情けないやないの・・・とまた頑張れる!ということらしい。 それともう一つは、そこで男の人が、短パン姿で一緒にお風呂に入ったり、ご飯を食べさせている人がいる。誰かなぁと思ってみてみると、論文や本を書いて有名な後藤先生たちドクターで、今ならそんなこと思わないが、10数年前ですから、何で一緒にお風呂に入ってるんですか? 「たんへんですねぇ先生」とかいうと、「はぁー」といわれて、だって一緒に生活しないと解らないじゃないですかといわれ、ドヒャー!! となった。そこはCTや検査をしない。CTぐらいはとった方が良い、それは治療可能な痴呆が混ざっているからですが、それはまずいと思っていますが、例えばどこが萎縮しているか、症状をみればわかる。前頭葉型とアルツハイマー型の2人の人がいて、室伏先生が会話をするとわかる。脳血管性とアルツハイマー型をみれば、本に書いてある通りなんです。それが僕の痴呆ケアの原点です。一所懸命生きたはる人であることと生活の中で色んなことがわかるのだということです。つまり、室伏君士先生のメンタルケアと北欧の福祉原理と福祉制度を整えること!!北欧の福祉原理はビケット・ミケルソンのやっていること。制度には岡本祐三先生(阪南中央病院で在宅をやり、神戸看護大学で教授、今は岡本クリニックで往診を中心にした臨床をされている)がいる。


※ここからは、スライドが始まります。【  】はスライドの表題です

【介護保険開始後に起こったこと】
1、 介護は社会が支えるという考え方の定着
2、 介護サービスへの権利意識向上と選択権の保証
3、 介護サービスへの新規参入者の増加(異業種、NPO)
4、 介護サービスへの競争原理の導入(ケアの質の競争)
5、 介護への医師の意識向上(認定審査会、主治医意見書)
6、 保健・医療・福祉・利用者の連携(ケアマネジャー)

【もう一度見直すこと】
痴呆患者と介護者の理解について
1、「人」 についての理解
2、「痴呆」についての理解
3、「家族」についての理解

生活史には色々あって、介護にも色々、家族の成り立ちも色々、100あったら100違う、介護の影にそれがあるのを知っておかなければならない。良い家族、悪い家族といった分け方は、好きでない。障害を持っているお嫁さんがなかなか厳しくて、でも一生懸命にデイサービスに送迎している。言動が厳しくて、きついことを言うが、送迎はしている。
もう少しやさしくするように、言って下さいなぁ。でも、待ってよ。このお嫁さん障害者。
障害を持って暮らしていて、自分の障害と闘いながら介護をしていて、一生懸命送迎をしていた。それを持ってがんばっているのに、きつい嫁さんなんて言えない。よくやってますねぇ! 家族を見るときに注意をしなければならない。

【痴呆とは】
獲得された精神の動きが何らかの病気のために障害されること

「人間とは」に戻らなければならない。痴呆の症状を見なければならないが、その人の感情とかを常に意識している。

知・情・意・人格  これは資料に書いている。情と意欲は、意欲はとても大切。情は腹が立つことを表現できることが大切。子供が事件を起こすと、大変やんちゃだったか、親に一度も逆らったことのないとてもよい子だったとか、こんなひどい発言はないのです。人間とは思春期になったときに自立する気持ちが芽生えて、親とけんかして当たり前なのです。親は、世間体は言うし、嘘つくし、今日と明日ということ違うし、どうやねん!!
子供は純粋で、親の言うとおりに受け止める。勉強せんでいいよ遊び。お父ちゃんは、阪神―巨人見たいから・・・阪神負けると勉強しい!! 大人は手前勝手に動く。何で毛を染めたら学校行けないの? それを説明できない。規則やから・・・  ちゃんと説明しない。 しかし自分は白髪を染めている。!!

脱線しました

知的な道具を使うことがうまくいかない。 戦争で右手が動かなくなった人がいる。すると利き手交換をするか、自助具なんかを使うか、援助する。痴呆の人も代替のことをするかであるが、見えないから困る。しかし、それを理解してくれるところがあると安心して暮らせる。
ある人が、スーパーに行って物を盗って帰る。病気なら病院、病気でなければ警察です。
スペクトやペットで大体解る。

【痴呆は、状態を表わす言葉で病名ではない】
・ 貧血(状態を表す言葉)
   鉄欠乏性貧血、悪性貧血、再生不良性貧血(病名を表す言葉)
・ 痴呆(状態を表す言葉)
   アルツハイマー型痴呆、レヴィ小体病、前頭側頭型痴呆、脳血管性痴呆(病名を表す言葉)

【老人性痴呆という言葉】
・ 老人に起こった痴呆をいう
・ アルツハイマー型痴呆や脳血管性痴呆など

【痴呆の診断基準】(ICD−10国際疾病分類第10版)
G1:記憶障害と判断力・思考力の障害により、日常生活の活動に支障をきたすこと
G2:意識障害がないこと
G3:次に示す情動の統制や動機づけの減退および社会行動上の変化のうち、少なくと
も1項目を認めること
@ 情動不安定
A 易刺激性
B 無関心
C 社会行動における粗雑さ
G4:G1が明らかに少なくとも6ヶ月以上続くこと

【記憶障害】
障害されやすいもの
  記銘力   (覚え込むこと)
  エピソード記憶(生活経験の出来事の記憶)
障害されにくいもの
  長期記憶  (昔覚えた記憶)
  手続き記憶 (昔あるいは長らく習熟して会得や習得した技の記憶)
  意味記憶  (長く保存された知識の記憶)

【見当識障害】
@ いつ(時間の見当識)、どこで(場所の見当識)、誰と(人の見当識)いるのかを見当つける能力 
A 変化度の大きいものから忘れやすい。誕生日は変わらないから覚えている。年齢は変わるから覚えにくい。曜日は日付より覚えやすい。

【アルツハイマー型痴呆初期の言語障害】
1、 名前が出ない
2、 単語数が減少し、代名詞が増える
3、 発話量や流暢性は保たれる
4、 具体的な内容の会話は困難になる
5、 言葉の理解は保たれる

よくしゃべるが、内容的には浅い話しをする

【実行機能の障害】
1、 何かをしようと思いつくことの障害
2、 具体的な計画をたてることの障害
3、 計画を実際行うことの障害
4、 効果的に行動を維持することの障害


【失行・失認】
1、 失行:運動機能に障害がないのに行為ができない
2、 失認:視力など基本的な知覚に障害がないのに行為ができない


【アルツハイマー型痴呆初期の妄想】
・ 被害妄想(物盗られ妄想)
・ 嫉妬妄想

威張っている男性に多い。茶・飯・新聞と威張っていても痴呆が出て、男性は性的にうまくいかなる、悲しいかなしょぼくれる。だから性的に威張る。妻に性的に迫る。断ると男がいるのやろ、となる。(嫉妬妄想)

【徘徊と周徊】
1、 徘徊:道に迷う、最終的に居場所が分からなくなる(地誌的障害)(後方型)
2、 周徊:同じ道のりを行ったり来たり、最終的出発点に戻る(常同行為)(前方型)

例えば、50歳台と思っている86歳の高齢者は、50歳と思うから○○に行く。そう思わないようにするには、"誕生日大作戦"をする。一ヶ月前から予告をして86歳大誕生日大会をする。朝起きると部屋に「86歳誕生日おめでとう」と書いてある。廊下に出ると「86歳誕生日おめでとう」と書いてある。トイレに座ると戸に「86歳誕生日おめでとう」と貼ってある。・・・どこに行っても「おばあちゃん86歳誕生日おめでとう」と書いてある。大誕生日パーティーをする。これで止まりました。
大津のおじいちゃんは、夕方に帰ると家に帰ると言い出す。ここのお嫁さんは考えた。仏壇を閉めておいて、おじいちゃんが「帰りますわ」というと、お嫁さんが、仏壇をパッと開けて、「お父さんこの仏壇は誰が守るのよ」というと、「わしやー」、一時間くらいすると、また「帰りますわ」お嫁さんがパッと開けて、「お父さんこれは誰が守るのよ」というと、「わしやーなぁ」・・・・
なかなか厳しいし、合わすのも一つの方法。

おばあちゃんが、風呂敷で包み実家に帰ると言い出す、お嫁さんが「おかあさん、実家にお電話しておいて下さい」という。実家の人とは、先に打ち合わせしておいて、おばあさんが電話をすると、小姑さんが実家に成りすまし「もしもし実家です。一旦嫁に出たからは、お盆と正月以外は帰ってこないで」「わかりました」となる。若い人には通じない。

痴呆ケアは時代とともに変わる!!

(旅館バージョン)「そろそろ帰りますわ」「おだいは7500円になります」「でも奥様このお代には明日の朝食も付いてます」「ほなもったいないし食べて帰るわ」

(自宅バージョン)「帰るわ」すると息子さんが「送っていきますわ」といって、車に乗せて、町内を一周して帰ってきて「お家が見えてきましたよ」といって、帰る。


【模倣行為】
1、 検者の動作を模倣する
2、 医師が手を頭に持っていくと、そのまままねる
3、 意味がない動作でも模倣する(環境依存症候群)(前方型)


家族がへんだなぁ というと、何かがある。先に情報を知っておく必要があるが、おかしなことに気づく必要がある。

うつと痴呆の違いは、よく言われている。
急に起こってきたり、抑うつ的で、答え方が特徴的でごまかしながらするけど、最後までごまかす。うつの人は、簡単に「わからん」という。答える気がない。できないできないというが、痴呆の人は、そんなにひつこく言わない。
せん妄は、意識障害。意識障害でも目は開いている。うつとせん妄は、痴呆のない人に起こると、痴呆のように見える。(仮性痴呆)混乱しているので変な行動を起こすので、痴呆と間違えられる。気をつけてください。もうひとつは、うつとせん妄は、痴呆の人にはとても起こりやすい。一見急に悪くなったように見える。せん妄は、急に起こる。入院したりすると混乱して急に起こる。症状は、変動する。朝と昼と晩と違ったりする。日勤で見ていた人は、しっかりしてるでー、というが、夜の人は、ぐちゃぐちゃやでーという。朝になるとケロッとしているという。それと、痴呆はすぐに3つのオウム返しはできるが、せん妄はできなくなる。せん妄は意識障害、せん妄は治療できる。脱水とか基本がある。

【前頭側頭がた痴呆の主な症状】
1、 わが道を行く行動(身勝手、他人の気持ちに配慮しない)
2、 常同行動(同じフレーズを繰り返す)
3、 考え無精(深く考えない)
4、 立ち去り行動(突然立ち去る)
5、 食行動異常(おひつを抱えて食べる)
6、 病識の欠如

【以下のような小さな変化はアルツハイマー型痴呆の兆候である場合がある】
・ 同じことを言ったり聞いたりする
・ 人と会う約束やその日時を忘れる
・ 最近の出来事が思い出せない
・ 大切なものをなくしたり、置忘れたるする
・ 水道やガス詮の締め忘れが目立つようになった
・ 物の名前が出てこなくなった。

・ 今まで好きだった物に対して興味関心がなくなった
・ 服装がだらしなくなった
・ 日課をしなくなった
・ 身だしなみに気をかけなくなった

【痴呆の早期発見が必要な理由】
1、 治る痴呆がある
2、 痴呆の悪化を遅らせる
3、 告知ができる
4、 介護者を支える

【治る痴呆がある】
・ 仮性痴呆:意識障害、うつ病、健忘
・ 治療可能な痴呆:甲状腺機能低下症、慢性硬膜下血腫、良性脳腫瘍など

【痴呆の悪化を遅らせる】
・ 薬の治療:塩酸ドネペジル、うつの薬など
・ リハビリ:デイサービス、デイケアなど
・ こころの治療:個別対応、環境調整など
・ からだの治療:脱水、便秘、尿失禁など