いきいき介護セミナー2005(第2回)
日時;平成17年6月19日(日) 10:00〜15:30
場所;大津第一生命ビル
講師;湊川短期大学教授 大西雅裕先生

【午前の部】
1.はじめに
・湊川短期大学について
湊川のほとりに建てられていたが、昭和13年神戸大水害を経て、三田に再建。兵庫県では最も古い歴史をもつが、最も田舎にある大学であるので、あまり知名度は高くないのでは。
・介護福祉士を養成する湊川短期大学の人間生活学科の教員となって4年になる。
・対人援助の本を山本克彦氏と一緒に出版し、好評だが売れない。どうやら教員のネタ本として使われ、学生には売れていない様子である。
・筒井先生が講師をされた前回、KJ法の実践をされたということを聞いた。今日は、自身が社会福祉の現場で指導をしたことをお話しながら、身近なところで使える対人援助ワークをご紹介したい。
2.ソーシャルワーカーとして必要な専門性について
・専門技術を頂点、次に専門知識、底辺に福祉倫理の3つの構成要件からなるピラミッド。
・福祉倫理とはすなわち、その人の価値観であるが、価値観とは人と対話をする上で一番大切にすべきこと。その人の人権・考えを大切にするというのが価値であり、倫理とはたとえば守秘義務のように守らなければならないもの。
・自立・自律および自己実現のための手助けが福祉であり、専門知識とは、さまざまな社会資源を紹介し活用してもらうために必要なもの、あるいはわれわれが一つの社会資源となること。隣接した知識、たとえば高齢化進展の中、さまざまな病気に関する知識も必要となる。
・まだ社会福祉学は確立された学問でなく、心理学を始めさまざまな関連部分からの借り物から成り立っているため、専門技術は多岐にわたる。
・以上が、一般の教科書に書かれているような内容であるが、われわれは、援助者である前に人間であり、ピラミッドの底辺には人間としての価値観が存在している。
(実例1:自己覚知をどのようにして行っているか?)
@「あなたはどんな人間でしょうか?」(15分間で20項目書いてみる)
・5分程度で書き終えた方が中にはいらっしゃった。学生は5分で書き終えると、残りは休憩タイムにしてしまうが、皆さんは、見直しに時間を使われていた。その見直しが重要な意味をもっている。
(実例2:実技1を行った感想を書く)(5分間)
・ここでも同じく、自分が書いた内容を見直してみるというプロセスが重要。
・「体験」は気づくというプロセスの促しであることから、気づくためには見直しが非常に重要。頭に入っている何か分からないものを、文字で表すことでビジュアルに表現され、問題点が指摘される。それについての感想を書くことでより鮮明に意識化される。さらにそれについて、分析(意味づけ)・仮説化することで理解が深まり、学びを行動へ(=かわる)プロセスに移ることができる。その螺旋階段を回ることで、自己の成長につながる。
・よって、研修を受けて、単に楽しかった良かったと思うだけでなく、何故そうだったのかということを問うことが重要。
・違う切り口から、援助者に必要な力について考えてみたい。
@捉える力
何気ない場面を「捉え」ようとする力または姿勢のこと。利用者が何か寂しそうだ、というような気配を感じる力が必要。捉えるためにはしっかり観る(look)・聴く(listen)力を動員しなければならない。
A気づく力
心の中に大きなアンテナをはりめぐらせる。
B考える力
問題を分析し、本質を掘り下げていく。
C整理する力
いろいろな情報を集めて、それを考える上での前提。
Dまとめる力
目標を見据えるといった予想する力や、このような工夫が必要でないかといった創造性。
E伝える力
いわゆるプレゼンテーション能力。インプットした情報を相手にあわせてわかりやすくアウトプットする説明能力。医療関係者が専門用語を駆使し、患者を何となくありがたい気持ちにさせるような伝達ではなく、利用者が自分で考えていただく前提となる情報をわかりやすく伝える力。
Fふりかえる力
本当にそれでよかったのか吟味する力。自己評価。
・これらを総称すると、五感をフルに活用してしっかり感じ取れるように、ということで、これらの力をわれわれは元々もっているので、それらを意識化する、ということでないか。
(実例3:じゃんけんゲーム)
@普通にじゃんけんをします
A後出しじゃんけんをします
B連続後出しじゃんけんをします
C後出し負けじゃんけんをします
D連続後出し負けじゃんけんをします
・何故、後出し勝ちはしやすいのに、後出し負けは難しいのか。ということに「気づいた」か。われわれが普段、じゃんけんをするときの勝ちたいという気持ちが作用しているのではないか。逆に負けるとペナルティを科されるなど、負けたくないという気持ちも働いている。それがわれわれの日々の価値観であるし、さらに、後出しという体験もあまりないはず。ちょっと無理があったのかもしれないが、決められたルーチンに対する疑いのきっかけとなれば、という例。
(実例4:「よろしくね」ゲーム)
@知らない人を見つけて握手をする。
Aよろしくね。といいながら握手をしながら、首を傾けながら、にこっと笑う。その方向が揃った場合には、紙に相手の名前を記す。10名集められた人から座席に座る。
・挨拶は、きちんと姿勢を正してはっきりと声に出して行うもの。それによって、相手と面頭向かっていますよ、今日、あなたと関わらせていただきます、一緒に仕事をしますよ、と言う出会いの確認、意識化を行うもの。顔も合わせずウッスという挨拶では、コミュニケーション・チームワークは期待できない。
・今回の実例では、もちろん、10名集めてくださいという目的を優先したので相手との係わりは次の目的となってしまわざるをえないが、しっかりと挨拶に集中しなければ、なかなか心は伝わらない。
・挨拶によって、相手と係わりたいという意識を記号とし、信号として送る。それを相手がキャッチして、その記号の意味を解読する、というのがプロセスの中で、その信号が共通化したものでない場合をはじめとして、いろいろと間違えが起こる。
・そこで、受け取った側が、受け取った内容を記号にし、それを信号にして送り返す、という双方向で確認することによって、イメージが共通化する。
・このようなコミュニケーションのプロセスで大きな役割を果たすものは、大別すると日本語という言葉と、ボディーランゲージ。
(実例5:ノンバーバルな会話(テレパシー))
@2人1組となって、最初に普通にじゃんけん
A勝った人がグーチョキパーを念じて伝える。負けた人がそれを感じ取る。
Bそれをもとに実際に出してみる。
C今度は送り手・受け手を交替してAを繰り返し
DBを繰り返し
E伝えるときに、両手を握って伝える。
・普通に念じて伝えたのと、手を握って伝え合ったのと、どちらが伝わったか、これは人によって差があったかと思われる。
・ちょっとした握りの強さでグーか、というサインや相手の何らかの変化を感じ取ったものであろうと思われる。
【午後の部】
(実例6:サイレントトーク)
@昨日食べたもの、10個を紙にリストアップする。(2分間)
A二人一組で、じゃんけんをして、勝った人から負けた人に対して口(クチ)パクオンリーで、相手に伝達する。(2分間)この時点では、受け手は、自分の書いた答えを送り手に見せず、答えあわせもしない。
B答え合わせをする。
C送り手・受け手交替。
D答え合わせをする。
(実例7:ジェスチャー付きのサイレントトーク)
@二人一組で、「この一週間でとても楽しかったこと」について、一方から他方へジェスチャーと口パクで伝える。(2分間)受け手は、それを紙に記す。
A答えあわせをする。
B送り手・受け手交替。「学校で一番印象に残っていること」について、同様に伝達。(2分間)
C答えあわせをする。
(実例8:実例6・7=ノンバーバルな会話の体験についての感想を書く)
・ノンバーバルな会話を行ってみて、感じたことを書き留める。(3分間)
(実例9:「星取りゲーム」:言葉による一方向のコミュニケーション)
(与えられた紙に、先生の指示に従って絵をかく)
@紙の右上の端から左下に向かって線を引く
A引き終わったところに星を一つ書く
B星の右側に三日月を書く
C星の左上側に雲を書く
D三日月の下に家を1軒書く
E家の横に木を3本書く
F地平線を書く
(以上を、見比べる)
・紙を横に置いたか、縦に置いたかでまず、違いがでる。「絵をかくから横と思った。」「何となく。」斜めに置いた人はいなかったが、縦に置いた人は、恐らく講義形式だから縦書き、という意識からそのようにしたと思われる。B4の紙で行った場合は、試験と捉えた場合は縦、資料と捉えれば横を選択したのではないか。まず、紙の方向について、指示が与えられていないので、皆さんで勝手に判断せざるをえない。
・左下に向かって、というところがミソで、左下まで線を引いてしまったら、スペースがあまりなくなってしまう。伝え手は、真ん中くらいで線をとめて、という意識であった。
・このように一方向だけであれば、肝心なポイントについて相手の意を確認することができず大きな誤解が生じる。
(実例10:「星取りゲーム」についての感想を書き記す)(2分間)
(実例11:ノンバーバルな肩たたき・肩もみ)
@2人1組で、黙っていて相手が気持ちよいであろうという方法で肩たたき・肩もみをする。どうしても痛くてたまらないときだけ、離脱する。(1分間)
A交替、同じ方法で行う。(1分間)
(実例12:受け手のリクエストに応えた肩たたき・肩もみ)
@叩き・もみ手側にたくさん注文を出し、叩き手・もみ手もそれに応える。(1分間)
A交替、同じ方法で行う。(1分間)
(実例13:実例11および12を通した感想を書き記す)(2分間)
(実例14:実例13で記した感想を意見交換する)(2分間)
(実例15:会話をしながらの肩たたき・肩もみ)
@叩き・もみ手が昨日から今日にあったこと、その時どう感じたかについて話しながら、肩を叩く(もむ)。受け手は、しっかり内容を把握しつつ相槌を打つ。(2分間)
A交替、同じ方法で行う。(2分間)
Bそれぞれが話した内容は、こういうことであったということを、感想を交えつつ確認する(各々1分間)
・昨日、今日の出来事と感想を、要約して返す、ということがしっかりできて相手に喜んでもらえて自分も嬉しいという意味がある。
(実例16:グループディスカッションによる本日の内容のシェアリング)
・6人のグループでシェアリング(わかちあい)35分話し合い、その後に発表
・今までの学習での気づき、体験したこと、紙に書いたこと
<参考文献>
・「対人援助ワークブック」対人援助実践研究会HEART編 久美出版
・「新グループワーク・トレーニング」日本レクリエーション協会 監修 遊戯社
・「コミュニケーション・スキルを磨こう」諏訪茂樹監修 中央法規出版
※ワークは、大西オリジナルや、上記文献より大西がアレンジしたものもあります。
【ワークショップ】
各グループの代表が出てきて、じゃんけん(7グループ)して、発表の順番を決める
@昨日の事など身近なことを材料にGワーク、対人援助―固定観念を取り外す事が大事
表情をゆるめたり、動いたりすることで時間が早く感じた。
A自己覚知、よい自分が見つけられた。悪いところ見つけられた→自分の振り返りになった。肩もみ→任せた方がよい。相手の反応を見ることがよい。
ジェスチャー→自分の感情が入り込み、相手の気持ちがわからなかった。
言葉にして確認する事大事。相手の眼を見て話すこと大事。一対一気持ちが出し易い
色々な人がいるので否定したり、決め付けたりしない。受容が大事。
Bサイレントトーク→聞く態度ができたら、相手の言う事がわかった。
先入観を持たずに相手の話を聞く。相手の話を鵜呑みにしない。
コミュニケーションをどんどんとって相手の事をわかるように。
Cジェスチャー→わかりにくい。クチパクの方がわかり易い(大きく分かるようにする
ので)コミュニケーション→徘徊一緒に付き合うことで、行動が分かるのではないか。
一緒のことをしてみる。
D気づけるー相手を知る、アンテナを広げる。顔を見て挨拶すること大事。
自己覚知→いいこと書けない。仕事と私的では違う。
テレパシー→手を握らない方がよくみえた。その人の表情からわかることもある。
高齢者の生きてきた過程を知る→固定概念をプラスして考える。
今後→常に振り返りをして、皆で話しプラン。自分のケアプランを振り返りながら
ケアプランを立てる。
E自己覚知→自分のこと再確認できた。文章に書くと難しい。
クチパク→伝えようとするとわかる。ジェスチャーは、より細かくわかる。
主観をいれずに聞く。お互い共感しあうには、言葉を入れる。
F思い込みで行動してしまっている事に気づいた。自分で判断するのでなく、確認しな
がらすすめる。
まとめ
・人は、0.01秒で人を判断する。
・先入観を持ち続ける
・思ったことだけで判断せず、コミュニケーションをとりながら、変えていく=専門職
・知った情報で塗り替える(新しく変えていく)
・サイレントトーク→ジェスチャーよりクチパクのほうが良くわかった。
・自己覚知→性格はなかなか直らない。こういう側面もあり、それを受け入れ考えていく
・生活する=生き生きすること。色々な人との関係の中で、体験し共有する
・主観の判断 その人がどう思っているかを自分で感じる。
その人がどう思っているかを聞いてみる。→その人の人生を背負うことは出来ない。
・自分の判断した事に責任を持つ
・利用者を第一に考える。知る・感じる・専門的な感性。