いきいき介護セミナー2006(第6回目)
日時;平成18年11月11日(土) 10:00〜15:30
場所;第一生命ビル
講師;氏家 幹夫 先生(社会福祉法人四天王寺福祉事業団 四天王寺悲田院)
   海 岸  秀 先生(社会福祉法人真盛園)

【氏家先生】「大阪のコミュニティソーシャルワーク実践」
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(はじめに)
今年30歳。今年5月に子供が生まれた。社会人として駆け出しの段階だが、コミュニティソーシャルワーカーという仕事は、人生の酸いも甘いもかみ分けていないと務まらない仕事だなと、つくづく思っているところ。
 私の施設は羽曳野市にある。保育園・障害者施設を含めた複合施設。地域支援係というのは、実は私1人だけで、児童・障がい者・高齢者のセクターそれぞれが地域とかかわる窓口役割を負っている。 
地域支援係ができた経緯について。2003年の1月に、職員の意見を集約した道筋・方針として事業団が宣言を出した。ポイントは3つ。人の幸せを喜びとする仕事、私達は地域の一員という認識の下での地域貢献、安全なサービス提供・主体性の尊重。2つ目の、地域貢献実践のために地域支援係が同年4月に創設された。よって、設立されてまだ3年。

コミュニティソーシャルワーカー(CSWr)について。ソーシャルワーカーとコミュニティワーカーとコミュニティソーシャルワーカーとどう違うのか。わかりやすくいうと、コミュニティワーカーは地域支援、すなわち地域の支援・福祉力を目的として地域の住民・組織を活動範囲としている。コミュニティソーシャルワーカーはその活動も行う。あわせてケースワーク(対人援助)もする。両方するということ。私自身、3年前はCSWrの言葉すら知らなかった。係が創設されて1年経過したくらいにその言葉を知った。

悲田院の院長からの指示は、これまで児童・障害者・高齢者それぞれのセクターが地域とばらばらに関わってきたが、悲田院として地域との窓口機能を果たしてほしい、という漠然としたものであった。3ヶ月ほど、羽曳野市の社協に出向してコミュニティワークについて勉強させてもらった。そこで地域というのはこういうところか、と少し分かったような気がする。人口12万人くらいの羽曳野市に何があるかの。地域の困っている人を助けるというコミュニティソーシャルワークをするために、どういうところにどういうリソース・問題があるかという福祉マップを児童・障害者・高齢それぞれについて作成した。実は四天王寺悲田院は職員でも迷子になるような施設なのでその中にどういう機能があるかということすら知らなかった。

こうして一定程度、社会資源を整理することができた。地図は視覚的に訴える効果があった。それを糸口に社協・子育て支援の連絡会と一緒に子育てマップをつくったり、身体障害者連絡協議会と一緒に車椅子お出かけマップをつくる作業に携わった。そういったつながりは、何が足りないかという現況把握につながったし、ネットワークを広げるコトに役立った。何故ネットワークを広げる必要性があるのか。地域支援を行う人は、「全部やっている」という看板を掲げている以上、「他に行ってくれ」とは言えない。身一つではすぐに動くことができなくなるので、様々な連絡先をもっておく必要がある。色々な資源を持つことで色々な角度から支援が可能となる。

2003年の夏が過ぎて悲田院に戻って、ボランティアコーディネーターの役割を担うことを目的に10以上あるセクターのアンケートをとった。悲田院全体で2,30の団体にボランティア参加いただいているが、それぞれのセクターでなく院全体として状況を把握し、ガイドライン作成をつくることを目的としたものであったが、返ってきたアンケートはたった1通のみ。地域支援に理解があるのだろうと漫然と考えていたが、地域の方の理解はともかく施設の理解もそのような状況であったということ。地域の人は、四天王寺悲田院という存在も知らない人が多い。近所の人も存在は知っていても保育園があるということを知らない人も多かった。また、介護保険の存在も知らないという人もいる。
「どれだけええもんがあっても、人に知られていなかったら全然役に立たへんな」と思った。今まで情報収集に専念していたが、情報発信していくことも同様に大事だということが分かった。アピールするにあたって大事なことは、決して自分の事業所を売り込もうとしないということ。自分の事業所を売り込むことを目的としていない、ということを理解いただくことで信頼を得た。

私のCSWr活動を後押ししてくれているが3つある。1つ目は所属組織(事業団としての支援)。所属組織が地域との係わりに時間を割くことの重要性について理解があるというのが活動にとって不可欠。

2つ目は、羽曳野市のふれあいネットみやび。全市を挙げての取り組みで、民生委員を含め、地域の人が中心となった住みやすいまちづくりを社協のバックアップの下でつくりあげているが、そうした地域ネットワークに専門職(保健士、市役所の担当部局、医師会、薬剤師会など)のネットワークをリンクさせたところが特徴。小学校区ごとに事例検討・広報誌作成などを通じて行っている。介護のセミナーのような勉強会も開催している
(地域と連携した事例)
奥さんを亡くされた認知症の疑いのある90歳の男性Aさん。耳が不自由であるが、夜中に隣が大音量を発すると思って、隣に静かにするよう怒鳴るので、逆に隣から苦情が入っている。配食サービスを通じてこの事例が明らかになり、幸いにも同時期、保健センターの保健士からも相談が入った。訪問してみると、Aさんは医療関係に従事されていた方で、理路整然とおしゃべりになられ、騒音の模様も筋が通っているので、あるいは本当にあったことかな、とさえその時点では思った。交番に尋ねるとやはり騒音の事実はないとのこと。介護保険やヘルパーの制度についてお奨めしても、人には任せられない、自分の身の回りのことは自分でやるから、と頑なにおっしゃる。保健士の提案の下、家族と話し合いをもつことに。家族も問題を認識しており家族会議を開いて一生懸命対応を検討しているところで、地域がしっかり関心をもって動いてくれているということに家族から大変感謝してもらった。特効薬はないものの、声掛けの回数を増やす、見守り体制を構築するといった対応を行う。そのうち本人は主治医の話だけは聞くということがわかって、主治医から専門医の診断を受けてもらうことを薦めてもらう方向で、現在動いている。
こうした事例をフィードバックして、地域も、このような問題が発生したらどこに相談してどのように対応するか、ということを学んでいく。地域の福祉力を高めるというところにつながっていく。

3つめは社会貢献事業。大阪府社会福祉協議会老人施設部会の事業。社会福祉法人への税制優遇など、一般事業者との制度的なイコールフッティングの意見が高まる中、社会福祉法人の独自制・存在感を出すという観点もあり、当事業を開始。
 社会貢献基金は年間8,000万円。各施設にCSWrを配属する。老人施設部会の事業であるが、CSWrは老人だけを対象とせず、制度利用を拒否・情報入手されていない方にアウトリーチして大丈夫ですか?と問いかけるという活動を展開する。
特徴的なのは、社会貢献基金から、制度の谷間にあって受給できない人を対象に、10万円を上限にそれぞれの施設長の支給可否判断の下、一時的に資金投入できるという非常に柔軟な制度。これは、相談もできるし金銭的給付もある、ということで強力な宣伝効果をもっている。
以上の3つの後押し。

CSWrの実情についての整理。
3種類のCSWrがいる。
@)大阪府社協老人施設部会のCSWr
   大阪府内全域300施設で約340人配置(@580万円)   
A)大阪府健康福祉部高齢介護室在宅課のCSWr(iのCSWrをバックアップ)
  大阪府社協が施設等に配置、大阪府内全域に48人配置(@300万円)
B)大阪府県健康福祉部地域保健福祉室地域福祉課のCSWr
   5年間(平成20年度)で全中学校区に配置276人
   大阪市・堺市・高槻市のぞく 平成17年度までに57人配置
 
地域健康福祉セーフティネット=いきいきネットのイメージ
中学校区にCWSrを配置し、多様な団体等が参画するプラットホーム・市町村と連携。

B)大阪府県健康福祉部地域保健福祉室地域福祉課のCSWrは、ケースワーク的なところが弱い。何をやったらいいか分かりません、というところが出てきている。@)大阪府社協老人施設部会のCSWrはアイデンティティ確立を模索する必要性上、モチベーションが高い。

CSWrの専門性は非常に重要。認知症を一括りにしてしまうことはできない。社会福祉士の資格を持っているだけでは何もできない。地域のことも知らないといけない。そういった学習していく方法論というのが存在しないのが問題。また、医師は何をする人かという社会の認知に類するような、専門職として相談援助のスキルであり方法論をもった社会的認知がない。何でも聞いてくれて取次ぎしてくれる人、という認知が必要。アセスメントの力が必要となるが、そこは自分で勉強していくしかない。そういった専門性が必要。

<レジュメの内容>
@大阪のコミュニティソーシャルワーカー(CSWr)は3種類
@)大阪府社協老人施設部会のCSWr
A)大阪府健康福祉部高齢介護室在宅課のCSWr(iのCSWrをバックアップ)
B)大阪府県健康福祉部地域保健福祉室地域福祉課のCSWr
◇CSWrとコミュニティワーク(ワーカー)の違いとは

A@)の実践内容について(Aにも触れながら)
◇私がCSWrとしてとった活動履歴
・資源マップの作成

・在介としての個別ケースを地域と協働しながら支える

・地域の福祉力を高める(地域の核となる方々のスキルアップ)
◇社会貢献事業が始まって
・支援困難ケース、地域から排除されているケース、地域と情報共有しにくいケース
→専門職同士のネットワークを強化。生活保護等行政への働きかけ
・民生委員との連携を徐々に進める
BB)の実践内容について
◇委託先に社協が多い→コミュニティワーク的な色彩が濃い 
◇@)と比べ、その成り立ちに違いがあり、そのためモチベーションに差が生じている
・@)の場合、社会福祉法人のあり方が疑問視される中、アイデンティティの確立を模索
・B)の場合、大阪府主導で委託金も出るが、委託先事業所が必要性を感じているか疑問   

Cコミュニティソーシャルワーク、コミュニティソーシャルワーカーの専門性について
  ◇ソーシャルワークができる人材
  ◇社会福祉士のあり方について


【海岸先生】「老いも若きも語ろうや」

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○法人事業内容 
・第一施設部
介護老人福祉施設   115名
ショートスティ     10名
・第二施設部
養護老人ホーム     33名
特定施設入居者生活介護 27名
・在宅事業部
デイサービスセンター
在宅介護支援センター
居宅介護支援事業所
訪問介護事業所「和顔」
訪問介護ステーション「和顔」
地域交流センター「老いも若きも」

今日は、このうち地域交流センター「老いも若きも」。何の制度的裏づけもなく、何のお金も出ないもの。

○設立の動機
・社会福祉法人として何ができるのか
公益性(来るもの拒まず)
・地域の皆様に還元できること
・何のために私たちが働いているのか
・地域が真に求めている事が知りたい
・高齢者のみにとどまらず、子供からお父さん、お母さん等様々な世代まで
・地域福祉の発信地になれば・・・。
「このゆびとまれ」の惣万さんには、先を越された、と思っている。地球上いろいろな人がいるのに、地域に色々な人がいるのが当たり前なのに、何故、いろいろな世代間交流がないのか、というところが疑問で仕方がなかった。
渡りに船で滋賀県で事業が発案された。

○みんなであったか地域ファミリーステーション作り事業
(滋賀県の16〜17年度事業)
目的
 民家や空き店舗などの既存施設を活用し、地域の高齢者や子供、障害者など、誰もが介護、子育てサービス、生活支援など多様なサポートが受けられ、さらには環境、文化など町作りの拠点ともなる場を整備することにより、共に生き、共に支える「くらし安心県」の実現を図る。

○事業計画
 ・総工費   590万
滋賀県補助 150万
大津市補助  75万
設置者負担 367万
 ・面積   482.50u
・床面積  155.37u
 ・起工 平成16年11月24日

畳と襖と水まわりを替えただけ。
  「施設」でなく、あくまで家でないと意味がないと思っていた。

○補助基準額
@拠点機能整備費補助金  3,000千円以内
Aコーディネーター配置費補助金
   1〜2年目        3,000千円以内
3年目        1,500 千円以内
     *専属コーディネーター 2名配置 

実際受給したのは3年間で250万
○「老いも若きも」基本理念=地域支え合い
高齢者、障害者を持つ人たち、地域で暮らす人たち、子供たち、おとうさんおかあさん

「合い」という言葉が好き。ベクトルが両方に発生しているということ。利用者に職員が支えられている。

○地域支え合い 
・キーワードは・・
・共存・共生・〜合い
・安心して年をとれる・・・子供が産める・・・
  ・・・子育てができる・・・仕事ができる・・・
  そんな地域で暮らしたい、そんな地域でありたい
  そんな地域を創っていきたくて・・・。

一番身近な人(家族)、親戚、・・・日本人。飛行機事故で「日本人は乗っていませんでした」という報道に代表されるように、近いところ近いところに親近感がわくというのが人間の性。飛行機事故で「日本人は乗っていませんでした」というのはそういうこと。
福祉職の給料が低い。福祉職がいきいき働いて子供も産めるようでなければ。せめて奥さんも専業主婦でいられるようなステータスを。

○事業内容
・赤ちゃんから高齢者まで様々な世代間交流
・介護や子育てのサポート支援
・情報交換・ネットワークづくり
・子供会、老人会、趣味の会、文化会などの活動支援
老人会は、集まりの後、一杯が楽しみ。しかし、公民館などは禁酒が多い。
そこで家で集まる。たった一杯だけで酔っ払い、半日続く。
・ふれあいサロン
食べ物があった方がいいのでは、ということで「老い若ランチ」を500円で提供(本来880円必要なメニューだが)。
・逆デイサービス

○平成17年1月24日開所。
新しい福祉施設を建設するには地元の了解が必要となるため、説明会を行ったが、ほとんど参加者がいなかった。蓋を開けて見なければ分からないという状況であったが、開所後、50人も入ったら一杯の場所だが、100人もの人が参加、行列ができた。店なら捌けていくが、「普通の家」なので、地べたに座り込んでなかなか帰らない。バリアフリー等の「変な」仕組みを入れなくて良かったとつくづく思った。

○育てていくのは地域の役割
これからは私たちの役割ですね、と地元の方がおっしゃってくれたのがありがたかった。「老いも若きも」の工事をしてくれた大工さんは、変わった性格だが、腕は確かだった。お菓子とお茶をいっぱいあったので、道行く人に声を掛けて呼び止めてお茶とお菓子をとりながら「老いも若きも」の宣伝を一人でしてくれた。それが、開所後の盛況につながった。そのときはお菓子とお茶の仕掛けを意図したものではなかったが、この仕掛けは今後も使いたい。さらに、大雪の時は自分の本業より、「老いも若きも」の雪かきを優先してくれた。

○利用状況
平成17年2月〜平成18年8月
1年7ヶ月間の実績 (平成17年1月24日オープン)
総利用者数 8,500名 
月平均 447名
1日平均 20名(延べ日数428日)

○月別利用者状況
毎月400名前後が利用。利用料を一人10円でもとっておけば、とも思うが、有料にするのも・・・というところ。食べ物・飲み物の持ち込みOKなので、喫茶収入等もほとんどない状況。

○利用者の内訳
50%が高齢者。大人が28%。子供が22%。
リピーターが8割ということだが、これは思い通りの結果。

○「死ぬこともできない・・・」
「ヘルパーの派遣時間はいていただかないと困ります」
冷蔵庫の中にはスーパーのパック詰めのお惣菜がいっぱい
  一人の人を支えるってどういうこと?
  くらしを見ていくことの難しさ
  本音で語りたいのに聞いてもらえないもどかしさ
  「生きていてもいいの?」と語る人たち・・・・・

「ヘルパーの派遣時間はいていただかないと困ります」・・・は、ヘルパー派遣事業者からあった苦情の電話だが、ケアプランが本人に合わせるのでなく、ケアプランに合わせて本人が動いているという状況を皮肉にもよく表している。 

○制度の中にいては見えてこない
・地域の方達のふつうのくらし
・支えが必要な人も、一方では誰かを支えていること
・制度の利用前にもっと地域の力を引き出す方法
・自分の居場所・らしさが発揮できる場所
・「わたし」が人の役に立つこと
・「地域」が「わたし」を必要としていることが実感できる場所
何か人の役に立った、笑ってくれた、というのが最も輝き自分の存在感を確認できる瞬間ではないか。
   
○毎月の行事計画
・しかけ作り
さあゲームをしましょう、ということはしない。談笑している輪もあれば、その隣ではゲームしている輪もある。昔、三世代で相撲のテレビ中継を見て、それぞれが会話するわけではないが同じ空気を共有していたのと通ずるものがある。子供は走り回っているが、不思議にもお年寄りにぶつかることはない。そういう子供を見て、お年寄りは「こけんときや、こけんときや」と独り言のように繰り返す。そういった光景。
・心が動く
・人が人を理解できるような仕組み
・助け合うことが自然な行為であるように
 
○みんなで作り上げた動きを大切に
・俳句の会
・大正琴を楽しむ会         
・絵手紙の会
・フラワーアレンジメント
・ビーズ人形つくり
・絵画教室
・習字教室
・「老いも若きも」の歌

これが「老い若か」を名づけた子ども。母親が「老い若か」に勤めていることもあって、小学校からの帰り、「老い若か」に寄ってランドセルを放り出すのが日課。
私の持論として、この世に無敵のものが2つ存在する。1つは小学校1年生。天真爛漫。遠慮がない。3時くらいにこの子らが帰ってきてランドセルを放り出すと「老い若か」の雰囲気が一変する。もう1つは大阪のおばちゃん。
   
母親の会の様子。子育ては、家の中だけで行うとストレスがたまる。3日前も、お母さん同士楽器の練習をしていた。レイカディア大学の卒業生のスーパーボランティア(紙芝居をされているお2人)にたまたま来てもらったときにサンタさんを演じてくれた様子。
 
 中学生軍団。これと小学生軍団が絡み合うと面白い。いろいろな軍団が集まり、おやつが加わることで、誰がテーブルをふくかというところにはじまって社会が形成される。お盆に親戚同士集まると社会が形成され、子供たち自身で育ち合った様子と共通点が見られるのでないか。

はじめて、行事をしようということで、雛祭りで三色団子をつくることとなった。おばさん3人に味見をしてください、と頼んだところ、こんなのあかん、といってその後の段取り全てやってくれた。そのときわかったのは、何もしないほうがみんな喜んでくれる、ということ。それに気付かず団子を食べるだけの楽しみで終わるところであった。福祉関係者は、あれもこれもやらなければ、というお節介を焼きすぎることに気をつけなければならないなと再確認した瞬間。
○今後の課題
・無料での利用に限界(法人の負担が大)
・利用される地域の方からの提案
 利用者は「お金をとって」とおっしゃるが、そういわれると逆にとりにくい。
 「おみくじ」などの小道具で小金を稼ぐしかないかな、と思っている次第。
・レギュラーで利用される方たちの居場所
 常連さんが幅をきかせるようになり、誰か新しい顔が来たなということになると、悪気はないが玄関をぱっと見るようになってしまって一見さんがなかなか来にくい雰囲気。
・利用される方たちの人間関係
「あの人来てはらへん?」と確認の電話が入って「ほなら行くわ」ということも。
・認知症高齢者に対する理解の不足
・地域と施設の歩み寄り(逆デイサービス等)

○地域福祉の拠点として
・地域交流・ネットワーク
・古い家ならではの独特の雰囲気・力
古い家の醸し出す雰囲気は鉄筋コンクリートの施設では出せない独特のもの。カレーを食べるには買物に行かなければならないし、料理も必要。認知症の方も上手にじゃがいもの皮をむく。その様子を見てもらおうと招いた家族の顔を見たとき、特養では顔を認識できなかったのが、認識できた。柱とか天井とか刻まれた古い家の歴史がそういう力を与えたのでは。
・「こんな所(居場所)が地域のあちこちにあればいいなあ〜」

今後、来年3月に小規模特養をつくるが、いろいろなネットワークをつくりたい。福祉業界だけでなくいろいろな業界やお店・病院と安心できる地域づくりをできればな、と夢を持っている。


<ディスカッション>司会 山口浩次氏(大津市社会福祉協議会)

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(山口氏)
社会福祉法人の社会貢献について歴史性・地域性のある取り組みをご紹介いただいた。「大阪えらいこと始めたな」、ということで騒動となっている。困った人に10万円、施設長の決裁で出される、という非常に特徴的な取り組みという旬の話をしてもらったところ。氏家さんに、具体事例を交えながら、社会貢献事業の詳細を紹介いただきたい。
(氏家氏)
3年経つが、利用者数の方は増えている、基金からの支援件数は初年度5年、次年度6年、今年度は現時点で既に10何件。基金を出すということに限っての数字なので、相談数はもっと多い。
午前中の事例以外の事例ということで、保健士からの相談経路をたどった女性で子供が生まれた、という事例。出産・3ヶ月健診の家庭訪問のとき、お金がない、との相談を受ける。お母さんは母子家庭で2人の娘を育てたという、ダブルで母子の家庭。どうしたらいいか?頭に浮かばない。衣食住でいうと、衣はある。食住の不自由が大きい。冷蔵庫には何もないし、家賃滞納で追い出される寸前。困窮の背景、つまりお母さんが働かないということであったり、いい加減な男と付き合ったというような、いろいろな事情があったのであろうが、目の前の現実にそうした困窮の問題がある。行政窓口からは「あんたら悪いんちゃうんですか?」という扱いを受けている。4人家庭を支えるには社会貢献事業の10万円では全然足りない。生活保護を受けることはできないのか?ということで生活保護課にいくと、ワーカーは、妊娠した娘さんはともかくお母さんは働けるでしょ?との見解で、どうするか決めてからきてくださいという投げかけをされたとのこと。生活保護課に相談に行くだけでもハードルが高い。それをもう一回来いということか。一緒に窓口に付いていって、緊急的な保護という扱いを認めてもらう。ただし、働く、ということもしてもらなければいけないので、しっかりその意識をもって就職活動をする、という条件。また、他の用途に使われないようにするために現金給付でなく、現物給付であったので、一緒にスーパーにおむつや食料を買いに行く。滞納家賃を社会貢献事業の10万円で対応。一言で言えば、「生活力が乏しい人」ということになるのであろうか。しかも親子揃って3人も、ということで、知的障害ではないが、生活上の弱さをもっている人たち。こうした人たちは、もちろん制度のネットにひっかからない人たちだが、そういう人が目の前で困っているのが現実。われわれの活動で困っている人たちに喜んでいただければ嬉しい。
(山口氏)
こうした事業が滋賀県にも大津にも欲しいな、ということを感じた人が多いと思う。羽曳野市だけでなく大阪府全体でやっている。厚生労働省も関心を深めている。こうした最新の状況をうかがうことができた。
海岸さん、持ち出し1,000万ときいている。採算抜きとのことで、地域の人は大歓迎だろうが、施設の中での見方は?
(海岸氏)
真盛園の職員120人、全員に聞いたわけでないが、本体経営に影響あり、職員の給料にも影響ありということなので、いつまで続けるのか、という声なしではない。ただ、きれいごとになるかもしれないが、お金に変えがたいものを得たので、われわれはこれを今後の活動にどう結び付けていくか前向きに考えていくべき。
氏家さんが「たらい回し」の実情をおっしゃったが、困った人の10人に9人は相談に行くことができず、その中の1人が「たらい回し」に遭う、これが社会福祉か?「目の前で困っている人を見捨てるのが社会福祉か?よく社会福祉の看板を掲げているな」と学生時代に論文を書いたのを思い出す。困った人のSOSに手を差し伸べるということができるのが社会福祉。「老い若か」をはじめて、私達はこんな困った状況をこれまで知らなかったのか、ということを知ってしまうと「老い若か」をやめられない。一人でも多くの理解を求めたい。
氏家さんからは行政とタイアップした事例を紹介いただいた。大阪では実現できた。歴史が変わったと思う。「熱い思いをもつ」ということを超えて、その先の行政を動かして制度化までもっていくというところは難しいこと。小さいことの積み重ねをしないといけない。
(山口氏)
氏家さんのおっしゃった生活保護に行ったらもう一回来てと言われた事例。行政の窓口にも心ある人が2、3人はいる。事前に電話すると、アドバイスをくれる、そうした、サクラを行政の中につくることができると心強い。そして申請には我々自身は付いて行かない。地区担当の民生委員とできればその地区の会長さんに付いていってもらう、申請に必要な通帳、印鑑などは忘れない、通帳残額は5万以下としておく、等の残額とする、などがノウハウか。
社会福祉法人の社会貢献ということで語ってもらったが、お二人の切り口は違ったと思う。それぞれの感想をうかがいたい。
(氏家氏)
海岸さんはおもしろい、ということをうかがっていた。お話も上手。お話の中身も一言で言うと「うらやましい」。行政から「何かやってください」という要請を受けてやってきたということもあるが、施設としてどうしていくか。地域の中の拠点が欲しいな、とい望みを私ももっているが、施設の中の「措置体質」が残っており、それをぬぐうステップを、私自身も含めて踏まなければならない。
(海岸氏)
目の前の困っている人に、お金(公金)を施設長の決裁で出せる仕組みがあるというのが非常に印象的。演技で泣きつく人もいるであろうし見極めるのが難しいだろう、というのは事実だが、まずは、思いのある人がうねりをおこすということか。そこから国・県の首を縦に振らせるというのもいいだろうが、大阪のようにちょうどよいタイミングで行動を起こした行政とタイアップできたというのは非常に羨ましい。
(氏家氏:社会貢献基金の創設の詳細な経緯)
 審議会で、社会福祉法人の新たな地域貢献。その中で施設の無料宿泊などいろいろな案が出されたが、最も有効な方策として相談員の人材資源を活かしそれに金銭的援助を組み合わせるという答申を行った。社会福祉法人がそれぞれ持ち出しで行ってきた形に出てこない部分をはっきりする形で、オール大阪で施設規模等に応じて基金を拠出し事業を創設することとなった。
以  上