いきいき介護セミナー2006第2回目
日時;平成18年6月24日(土) 10:00〜15:30
場所;大津第一生命ビル
講師;堀井とよみ 先生(滋賀県立大学人間看護学部教授)

(はじめに)
色々な「肩書」を紹介していただいたが、いずれ地域に帰りたいと思っている。県立大学で地域看護に関して、"実践をした人がいなければ"ということで、県立大に属しているが、地域に育ててもらったことは死ぬまで地域に還元していきたい。
一昨年NPO法人を立ち上げた。制度対応上、普通のデイサービスセンターであるが、認知症の方を対象としている。地域の専門職の方に認知症のことを知っていただくために認知症の方を対象としたケアを実践し、実際にそれが正しい方向であれば、お年寄りの方の認知症が悪くならない方向に・悪くなってもそのスピードを遅くする、ということで地域に還元することを目的としたもの。
4年前、オーストラリアの認知症の研修を受けた。より長期に滞在して技術を向上させたい、と思うほど質が高く、オーストラリアの良さを日本にアレンジできればと思った。 しかし、今日はそのことではなく、基本的に地域で住民が生活するにあたって行政がどのようなサポートができるか、自分の意志で(認知症とはいえ瞬時瞬時の判断力はある)施設に入った場合に、その意志を大切にするにはどうしたらいいか、その人が望むところで最期を迎えるにはどうしたらいいのか、という点について認知症を中心にお話したい。
平成5年にデンマークに行ってから、施設入居希望者が何百人待ちという状況はおかしいと確信した。施設に入りたい人、というのは在宅での生活が難しい状況にあり、そんな人を1,2年も待たせるということはあってはならない。デンマークでは言葉だけでない本当の「ノーマライゼーション社会」を実現している。ノーマライゼーション社会の要素として、障害を持った人が一般社会の中で健常者と一緒に生活する、という要素のみならず、健康な人が自分の目指す生活ができること、という要素もある筈。本当のノーマライゼーション社会においては、いつでもどこでもだれでも、自分の人生設計が意のままでなければならない。「いつでも」に関しては、施設のような24時間体制が整備されていないと、在宅において、サポートする家族も生活で大きな制約を受ける。
今回の制度改正によって、在宅支援が普及するかどうかは疑問。今回の介護報酬で24時間体制の在宅サービスを行った場合、経営面で立ち行くか。採算がとれないものは民間が基本的に行わないので、行政がそれを考えなければならない。何が足りないために住民が自分の意を全うできていないのか、というのを真剣に考えるのが行政の仕事。
S59年から認知症にかかわり、当初介護技術の本がない頃、米国の本を頼りに勉強するところからはじまった。
地域で暮らしたいと思う人が受け入れてもらえる社会を目指している。本人は施設に納得しているか、本人が帰りたいと言ったら受け入れてもらえる地域なのか、ということを考え、もしこういうことができれば、ということについて考え、そのアイデアを温存してしっかりと持っておいてほしい。そして何か計画を立てるときにはそのアイデアを出すようにしてもらいたい。通常、寝たきりになったお年寄りは、どうして欲しいという要望を出さないので、私達専門家がこうしたらお年寄りが幸せになれるということを言わないといけない。デンマークではチューブをつけた人も、計画策定の場に出てくる。日本ではどこか悪くなったら一方的に病院や家にこもってしまう。皆さんは困っている人の意見の代弁者だという意識をもって欲しい。
(本論:認知症の基礎知識とかかわり方(認知症を正しく知る))
一般の方は皆さんを頼りにしている。不用意なこと、「それは年齢のせいですわ」という安易なことを言わないこと。いろいろ相談を受けて何気なしに答えるのではなく、内容に責任をもってほしい。
○加齢に伴う精神機能の低下
・知能の変化
・性格の変化
・感情の変化
健康な高齢者のもの忘れ認知症性高齢者のもの忘れ
原因 脳の老化脳の病気
状態体験の一部を忘れる体験全体を忘れる
進行しない進行する
自覚を持つ自覚を持たない
介護必要なし必要あり
一番大事なのは、体験の一部を忘れるか、体験全体を忘れるか。今朝朝ご飯を食べたか?昨晩食べたか?それでは昨日のお昼のおかずは何であったか?10秒以内に思い出せたか?食べたもの全てを思い出せなくてもいい。とにかく食べたという体験を忘れていなければ、その中身を忘れていても健常な人のもの忘れ。今朝や昨晩は食べたことを覚えているが、昨日の昼は食べたことは覚えていないというのもおかしい。食べたという事実を言い切れないとおかしい。言い切れないのであれば、若年性であれ高齢であれ、認知症の可能性がある。
「もの忘れが激しいのですけど」から相談されることが多い。「そりゃ年取ったら忘れるで。」と言うが、本当か?認知症ではない95歳の人に聞いたら、思い出すのに時間がかかっても、食べたということは思い出す。認定審査会の中で、調査員が、ある老人が「財布を忘れた」と言う、だから認知症のところに○にした、と報告することがあるが、正確に言うならば、老人が財布を探してみて、あったという場合は○にしてはならない。認知症は、財布を自分がしまったということを覚えていない。いつもしまうところに入れていないにもかかわらず、それに気づいていない。「嫁がパンツを盗る」ということに真剣に悩んでいるのは、これまで表面で取り繕っていたが「自分の息子をとった人」、と言う内心が転化したものかもしれない(息子さんが悪いということは本当に最後の最後、誰が誰か分からなくなってからでないと言わない)。こうした被害妄想は、体験全体を忘れてしまって、私は悪くない、誰さんが何した、というところから出てくる。
私はなかなか人の顔を覚えられないが、会ったという体験を忘れていないし、今日講演に来なければならない、といいうことも忘れていないので認知症ではない、と思っている。
○認知症とはどのような状態か
・一度獲得した知的機能が低下する障害
※記憶障害の著しいことが特徴。私たちが日常に経験する単なる物忘れの域を超えた著しいもの忘れ
IQが高い140の人が110になったとして、それが正常範囲であっても、その人にとっては始まりなのかもしれない。診断の領域かもしれないが、「以前はできていたのに」、というのは指標のひとつとなる。
○認知症の診断
(1)記憶障害があること
(2)失語、失行、失認、実行機能障害のうち一つ以上あること
(3)(1)(2)により日常生活に支障をきたす
(4)意識が鮮明であること
(5)(1)と(2)の原因と思われる脳器質性変化がある
*米国精神医学会の診断統計マニュアルWより
○認知症の種類
・アルツハイマー型認知症
・脳血管性認知症
・レヴィ小体病
・アルコール性認知症
・前頭側頭型認知症 他
テキスト(滋賀県健康福祉部元気長寿福祉課発行「認知症の理解とケア」)の6頁以下を参照。
脳血管性認知症について、たくさんの毛細血管が詰まる場合(多発性脳梗塞)が分かりにくい。私の顔は覚えられないが、お金の計算は決して間違えない、というようなケースで、家族にとって釈然としないため、やればできるはずと思って叱咤激励する。ところがある部位は既に確実にやられている。残された部位でやっていけるようなサポートが必要となる。
レビィ小体病について、パーキンソン症状(パーキンソン病そのものではない)と幻視・幻覚・妄想がある。
ピック病について、テキストには載っていないが、およそ1年で人格が崩壊し、2年半で亡くなる。見付かった時には既に相当進行している例が多い。
アルコール性認知症について、アルコール依存症のうち何とか日常生活を続けられるのは3割で、残り7割は肝硬変で死んだり、脳の障害が起こったりする。肝臓についてはアルコール耐性が強いからといって、脳の耐性が強いとは限らない。虫が見えたり、卑猥なことを平気で言ったり、性的におかしな行動に出ることが多い。専門家が診ればすぐわかるが、最初はなかなか気づかない。
前頭側頭型認知症について、前頭葉は人格をつかさどっている部位。人間は動物には無い前頭葉が発達しているので、人間的な行動をする。それがなくなり欲望のまま突き進むこととなる。ある町内の人の例だが、毎日八百屋さんに行って店頭からすいかを盗ってくることを始めた。次には高い盆栽を盗ってきた(高い盆栽がどれかを判別する能力は残っている)。重度になると、施設で隣の人の食べているのをとって食べたり、他の面では元気なのに、一見、突然盗癖が現れたのではないか、というような場合。
○認知症と間違えられやすい症状
・廃用性変化:知的刺激の乏しい環境のなかでの短調な生活、消極的で依存的な生活が続く
至れり尽くせりのお嫁さんは認知症を養成しているようなもの。自分が勤めに出ているにもかかわらず、お昼のご飯までつくっていったり、「ようしてくれるわ」というお嫁さんがいると、今日のお昼は何にしようということを考えなくても済んでしまう。冷蔵庫にあるものを探して、食べるものを決めて、必要なら買い物に行って、ということがなくなってしまい、ただぼーっとした生活となる。
そういった事情でぼーっとしている段階なのか、本当に認知症になってしまうかの違いはあるが、間違えなく認知症を養成している。
・うつ状態による変化:気力の低下や注意力低下等
早い段階で治療すればうつは治るので、早く判断する必要あり。
・せん妄による変化:注意が散漫で理解や判断が悪く、場所や時間の検討が悪く、とんちんかんな言動が現れる。
夜間せん妄だけでなく昼間のせん妄もある。せん妄かどうかの見分け方は、大声でわめいた後、普通の表情に戻ってまともな会話ができるようになって、聞いてみると覚えていないというのであれば、せん妄。その瞬間の意識がすっかりなくなっている。「ゆうべこうやったな」と尋ねると、認知症の人は、きょとんとはしていても何となく、そのときの意識が残っており、ばつのわるそうな顔をする。
○認知症の症状(中核症状)
記憶障害、見当識障害(時間・場所・人)、失行、失認、実行機能の障害(手段・段取り)、判断力低下、人格変化、意欲低下、構成障害、計算力障害、感情障害
テキスト3P参照。
記憶障害と一言で言っても、最初に脳のなかにしまいこむというところの記銘力の障害、記憶を保持するところ、すなわち記憶力の障害、脳の中にしまいこんだものを然るべき時に取り出すという想起力の障害がある。記憶力が弱ってくると、新しい出来事から記憶が失せていき、今の家に来たという記憶が消失し、「実家に帰ります」と言い出す。若い頃、子どもの頃に帰っていく。
失行は、排泄する時の手順や、歩き方を忘れる。しかし、あるとき突然歩き方を思い出すので、介護している人は「何と都合がいいのか」と思ってしまう。
失認は、これがパソコン、これがパンフレットという識別ができなくなり、空間失認のときは段差や階段を識別できなくなり危険が生じる。
実行機能の障害は、ある目的をするにはどういうプロセスをたどって、どのくらい前から準備を始めたらよいかということがわからなくなる。
感情障害について、大声を出して笑うのはいいが、泣くというのは脳細胞に良くない影響を及ぼす。軍歌はよほどメンバーをみて使わないといけない。意欲を鼓舞するようにつくられているが、それに付随して悲しいこと気分が滅入ることがある場合は注意が必要。集団で使うと怖い。最近、モーツアルトの曲は認知症の人に良い、脳の細胞を活発化すると言われている。ベートーベンやシューベルトは選曲が必要。自身の体験でもたしかにモーツアルトをBGMに流すと認知症の人が落ち着いた。
○周辺症状
徘徊・周徊、作話、攻撃的行為、精神症状、妄想、幻覚、不安や焦燥感、意識障害(せん妄)、行動障害(迷子、火や水の不始末、暴言・暴力、不潔行為、異食、性的な問題行動)
○悪化の原因(心理・社会的要因)
・環境変化に弱い
・以前できていたことが次第にできなくなる
・新しい物を覚える能力が低下
※ 精神症状や問題行動は影響を受けやすい
地域の中で暮らしたいと望む認知症の人が地域で住むには、悪化させない、ということが不可欠で、特に認知症の人は環境変化に弱いという点に気配りが必要。
オーストラリアの施設では、1人1部屋で家で使っていたものを全て部屋に持っていく。前の部屋の雰囲気をそのまま持ち込む。放射線状につくられていて、どこから出ても庭があり、洗濯物干がおかれて家庭的雰囲気を保って、どっかの家の庭を散歩しているような感覚。あまり顔見知りでない人を見学等に入れて刺激しない配慮も行っている。
認知症の人の家族に、家の新築だけはやめてほしいと言っている。
施設も、できるだけ今までの環境を変えないような作り方が必要。グループホーム、特養によっては、二重に鍵をかけて自由な行き来を阻害し、みんな各部屋にこもりっきりというところがあるが、その部屋には自分が使っていたものが全然無い。「管理をしよう」という発想からスタートするとこうなる。
オーストラリアは施設は、建物は日本ほど立派でないが、少なくとも広い敷地の中で自由に行き来ができる。
ケアする人の気持ち、どういう生活をしてもらいたいかということが中心であって、どうしたら管理しやすいか、ということではない。高齢者が長年働いて、運悪く認知症になり、いろいろな事情もあって施設に入ってきた。そこでどうしたら、その人にとって最も過ごしやすいかということを考えるのがわれわれの役目ではないか。
○悪化の原因(つづき)
・社会的喪失(定年を迎え社会活動の第一線から引退)
・経済的損失(仕事を退職し、収入が減少)
・人間関係の喪失(同胞、先輩、友人たちの死)
・家族の喪失(配偶者と死別、子供の独立)
私達は自分の責任で、自分の身の置き場を確保しておくということも必要だろう。私の活動は退職者が中心。その人たちは少なくとも元気でいれる。その人たちの働く場を、ということも活動の主目的。
退職というのは一つの節目となる。退職した人がどういう生活をしていくかということを考えて欲しいし、施設においても退職者を活用してほしい。給料が安くなっても働きたいという人は多い。そうすることで、介護が必要な人も減る。
私が雇っているのは89歳の看護婦さんで救急自体が発生した時のてきぱきぶりは見事。社会的役割を与えるということが非常に重要。
ボランティアと働くということは、少し違う。働く場所がなければボランティアでもいいが、勤労することで何がしかのお金をもらうというのがあったほうがよい。
今の国の介護予防の施策において、雇用政策の観点が完全に欠落している。死ぬまでびしばし働いてもらうというのが良い。
◇水口町の実例(ビデオ:介護保険前にNHKの「列島福祉」で紹介された)
・24時間ケアサービスを在宅介護支援センターを基点に保健・福祉・医療の連携の下で実践。
・訪問看護師もヘルパーもいるという点は日本もデンマークも同じだが、その連携の仕方次第でサービスの質が異なってくる。
・相談を受けると3日以内にお年寄りの状態を調査、家でどのようなケアが必要かを調査。例えば病院から家に移るお年寄りの場合であれば、病院から状態を念入りに聞き取りを行う。家族からも具体的ニーズ・生活スタイル・家の構造等の聞き取りを行う。調査結果をもとにケアプラン策定会議を開く。最初の相談から10日で、サービスが開始される。
・サービスは有料。4〜5万円の自己負担。
・限られた看護師とヘルパーを効率的に配置。それらがばらばらであったならば、間隔が空いたり、同時刻に訪問してしまったりという非効率を回避。ケアを共有することで「夜の徘徊を減らすために」といった共通テーマを持たせることも可能。
・異なる職種がばらばらにサービスを提供していた時と比べて、それぞれの職種が家族にそれぞれに違うアドバイスをしたり、看護師が体温調整をするために冷房をつけたのに次に来たヘルパーがスイッチを切ったりということもなくなる。職種ごとに役割分担するものの、共通のテーマの下で動く。その人にとっていちばんいいケアを考えると、異なる職種の連携が不可欠。
・24時間ケアサービスの司令塔を一つにということで、福祉課の一部を保健予防課が行うこととした。普通は福祉士がおこなうことも保健予防課が行うことを町として決定した。
・情報の共有化について。(「巡回訪問記録表」等により確実に引き継ぐとともに、ケアの方針に変更が必要か等の検討も加える)。保健・医療・福祉のスタッフがチームとしての一体感をもって取り組みを行う。
(先生補足)
当時(1995年)、介護技術も未成熟な部分はあったなという点がビデオを見ると見当たるものの、国が介護保険で制度改革を行う以前に、認知症・寝たきりの方が重くなる前にどうしたらいいかということに取り組み、数値データでも確かに効果があった。(2005〜06年のデータが出ていないが、甲賀市と合併し、数値が悪化している可能性が高い)
○水口町24時間在宅ケアシステム実施の成果
在宅療養者の増加(=施設入所希望者の減少)
軽度障害者の増加(=重度障害老人の減少)
住民の介護に対する意識の変化
施設入所者数 128人
全高齢者中 2.2%
在宅療養者数 475人
全高齢者中 8.1%
適切なケアは在宅でもできる。正しいケアは、家族の介護者にいくら指導してもできない。専門者が代行するシステムが重要。
※前回の質問(医療行為をどの程度ヘルパーが行ってよいか)についての回答
原則を言うと、看護師がやらないといけないのは状態の変化があってそれに即した行為が必要な場合。状態が安定している場合の行為はヘルパーが行ってよい。
医療処置は、基本的に、医師・看護師以外の人が行えば違法性あり。痰の吸引について、3年間の経過観察を経て4月からは一定の条件下で、医師・看護師以外も行えるようになった(法律改正ではなく通知という形式で)。一定の条件というのは、指導を受けて技術も確立しているという条件。
大津市内のあるところではヘルパーが吸引しているときくが、それは管理を十分に行ってのことで法的な問題はない。
これらの原則に則れば、爪切りは状態監視や血圧を測ったりということを伴わないので問題ないということが一般論としては言える。しかしながら、状態が安定しない人(少しでも体にさわったら異変が生じる、動かすと呼吸がとまりそう)が相手であれば、事情は変わる。ある定点の状態が同じであっても、状態が安定的なのか、ターミナル期に移行しつつあるのかというのは普段訪問している中で、判断できるであろう。
点眼でもいろいろな種類がある。ドライアイならOK。瞳孔が開くものについては、それによって歩いたら倒れるかもしれない。
重要なのは、行為で判断するのでなく、何を目的としたものを使うのか、ということによって判断して欲しい。しかも、個人の判断でなく医師も含めたチームの判断として行うということ。
湿布を貼るというのは、外傷も何もないときに問題なさそうだが、自分で判断して貼るというのはやめてほしい。関節痛・捻挫も冷・温湿布かも含めて状態が変わるごとにチームで判断すべき。
塗り薬も種類による。塗って痛みを止めるものもあるし、座薬も頻繁につかうと腸に穴があくものもある。
髪のカットも爪切りにならえばよいか。その人の状態が安定している時はいいが、安定していない時は疑問。
お互いが安心して仕事できる環境をつくるというのが重要。どういう状態であれば、どういうことを行って、それをどのように報告するか、ということを事細かにマニュアル化した方がいい。
流動食について、注入する準備はいいが、注入そのものはやめた方がいい。いれる速度、たしかに胃に入っているか等、慣れないとわからない。
(講義つづき)
○まだら症状
脳血管性認知症
(1)脳卒中など明白な脳血管障害の病歴のある人が多い
(2)高血圧、糖尿病、心疾患、動脈硬化をもつ人が多い。
(3)構音障害、嚥下障害、四肢の片麻痺などの局所性神経症状とそれに関連した歩行障害やADL低下がみられる人が多い。
(4)感情失禁(突然泣き出す、笑い出す)が見られる場合は大抵は脳血管障害である。
○すべての認知症に共通する介護の基本
(1)身体的悪条件の排除
@身体的合併症に対して適切な治療
AADLを低下させないケアを工夫し、リハビリテーション療法などによりADLの向上
基本的な普通の高齢者に対するケアについても言えることが、健康な人に対するように「こうしましょう」といっても駄目。歩いたらいいですよという言葉でなく、一緒に歩く、指を動かしましょうというだけでなく、一緒にその作業をする。
B栄養障害や脱水が起こらぬように注意
施設の場合は大丈夫だが、在宅は頻繁に起こる。
C薬物の副作用に注意し、随時投与薬の点検、見直し
特に胃薬。薬局が出している1枚ものの副作用くらいは確認して、ノートにはっておいて欲しい。
3日に1日は、ちゃんと決められた量を飲んでいるか必ず確認すること。どんなに大丈夫そうでも点検が必要。「そっと見ること」が重要で、「あなた飲んでますか」とあからさまにいわないこと。
(2)心理的・環境的悪条件の排除
@日常生活におけるさまざまなストレスが認知症患者の症状に大きな悪影響を与えることを認識
さまざまなストレスについて、ストレスはその人にとって異なる。
あの人が来ると表情が固まる、あの人と一緒なら楽しそうといった微妙なこと。どうもこのケアワーカーさんに合わないのでは、とチームで事例検討を行うことが必要。Aさんは大丈夫だが、Bさんのときは、といったようなことが浮かび上がってくるはず。
A認知症患者に対する接し方の基本をわきまえる
人との接し方の基本、と言い換えてもいいが、人としゃべるときは、相手がしゃべるのを待つ、相手が待っている時は自分から話すということ。認知症の人についても、相手の人のことを考え、今どういう状態かということをアセスメントする。「次だれだれさん、お風呂ですよはい、はいはい」となっていないか。認知症の人、これからお風呂に入るということを全く理解しておらず、わけもわからず服を脱がされようとしたと勘違いするかもしれない。
B人はそれぞれ違うので個別的で柔軟な対応が必要
C情緒障害や異常行動に対して薬物治療が有効な場合がある、薬物の効果を軽視すべきではないが、注意深い使用が大切
専門の人からもらったものを使う。残った薬を飲ませるのは厳禁。
(3)残存能力の活用
@残存能力あるいは潜在能力に注意
A一方的な働きかけは逆効果
B当人の心理状態を考慮し、QOLの向上を念頭において上手な働きかけを工夫
残存能力の見分け方について。細かに日頃記録していないとわからない。散歩の途中でかわいい犬がいてかわいいといった、飼いたいといった、といったものを書き留めなければならない。ペットが好きであればアニマルセラピーも有効で、えさやりの仕事をしてもらうということも方法としてある。
○アルツハイマー型認知症の具体的ケア
・既知・同類感の仲間の集まり
虚構の世界の容認、だれも同じよう、なじみの関係
・自己意識化の方向
仲間のなかで指導
・非論理的思考(矛盾の不在)と感性的判断
説得でなく納得(なじみ感の利用)
レベルのあまりちがう人、アルツハイマー型でない人と組むと、どちらかに悪影響あり。
男性はどちらかというとグループ化を好まないが女性は好むということが一般論として言える。女性は会話は通じていないといっても、「楽しそうやな」ということであればそれでいい。中身を追求しないこと。聞いているという姿勢を示せば、相手は落ち着いてくる。「そんなことないやろ」というのは厳禁。
また、何か残存能力を発見したら、必ずオーバーに褒めること。「こんなことできるんや」という言葉はだめで、「今度教えてな」というのがよい。そうした、この人は私を認めてくれた人という感情は忘れない。次のケアにつながる。
納得しているということを態度で示すこと。
○アルツハイマー型認知症の具体的ケア(つづき)
・良いコミュニケーション
抱きついたり、というオーバーアクションも認知症の方には結構有効。手を握ったりというのも有効。外国人みたいといわれてでも試してみる価値はある。
・良い刺激
昔に努力して習得した記憶(小学校唱歌、童謡、おとぎ話など)
童謡は一緒に歌うこと。終わったら必ず褒める。
習慣的に実行していた技、動作(ラジオ体操、自転車乗り、踊り、遊びなど)
自転車の車輪を棒で回す遊びは、結構、男性は喜ぶ。
遊びでやっていけないのは、福笑いとすごろく。認知症の人は、眉毛がどこにあるかわからない。すごろくは、さいころの数にあわせて駒を進めるというかなり高度な技が必要。風船遊びも、アルツハイマーの人を円陣に組ませて、私のほうに打って、というのは無理。打つ、しかも誰かの方に、という2つの要素があるため。「○○さん、打てたな、すごいな」それだけでいい。
・生活を通して(昔から経験している生活体験の反復)
お茶碗を片付けるというとき、必ずどこに片付けるか誘導する、あるいはすぐ直せる場所に置くということが必要。生活体験を反復しているとそのうち頭でなく条件反射的に体で覚えることができる。自分は結構まだやれると自覚することで悪くなるスピードは鈍化する。
○アルツハイマー型認知症の具体的ケア(つづき)
・パターン化して
繰り返して
・自分忘れ(自失)の傾向
放置しない
・存在不安の解消
安定の位置(場・人)
動くこともできないという人には、音なしということではなく、一度は声を掛けるということが必要。ある時間に限って、その人ができることを通じてゆっくり時間を過ごすということも大切。その人が安定する位置を変えない、ということで言えば、本人は散らかっていることで安定しているのかもしれないので、ほこりをはらっても、変色した造花をほかすことはやめるように。癒される居場所を残すこと。
○脳血管性認知症の具体的ケア
・知己のペア(異性のペア)の人間関係づくり
優越性の問題、特定の人、頼りの関係
・自己調整化(記憶のアンバランス)の方向
個別的に対応
・自己本位で抑制のない短絡的思考や判断
対抗的でなく引き離して転換(信頼感の利用)
・個性に沿って
機に応じて
・精神的にも廃用性低下が強い
寝込ませない
・情緒不安の解消
現実的に対処
重度になれば重度のアルツハイマーのケアに準ずればいいが、そこに至るまでは、独特なケアが必要。ペアについては、男女の馬の合うペアで。ケアする側はこの部分はだめ、これはできるということをこまめに記録をとって、ケアを行う人によって対応がちがうということではなく統一的な対応をすること。執着している・意識が集中しすぎているところから、一旦引き離してみるということも必要。できるだけ体を動かせるようにする。
○地域の認知症高齢者
・極軽度;健常者と区別がつかない
・軽度;障害はあるが自立して生活できる
・中等度;自立して生活することは不可能でかなりの介護が必要
・重度;日常生活の活動性が非常に障害されており、常時介護が必要
・最重度;コミュニケーションが取れない、最低限の身の回りのこともできない
多分、中等度以上を皆さんは扱われているのではないか。
地域では、認知症ということがわからない極軽度の方と日常的に接しているはず。その人たちでグループを作って旅行の計画をしたりボランティアをする、という今で言う介護予防をH5,6,7年あたりに行った。
男性はリーダーをさせることで悪くならないことが多い。女性はリーダーをさせることで悪くなることもある。
○認知症高齢者の希望
・家族とともにすごす生活
・住み慣れた地域、顔なじみのいる地域
・住み慣れた家での生活
10年ほど前の調査であるが、高齢者は20%は施設に入ってもよいという割合で残りは在宅を希望。お世話をするであろう女性にきいたところ、看たい、看てもよいというのは34%。このギャップを埋めるべく、地域で安心して住めるような環境作りが必要。
○認知症予防が可能か
認知症には必ず前兆がある
・病的記憶障害に気づく(年のせいではないと気づく)
・その人らしくない行動をとる
・意欲があるのに、途中で投げ出す。計画性がない。
・いくつかの課題を同時にできない。
・心気的訴えがひどく多い。
○具体的行動として現れるのは?
・同じものの二度買い
・冷蔵庫に同じものがたくさん入っている
・留守番で伝言を忘れる
・食事は作れるが味付けが変わってくる
・日付は考えないと浮かばない
・几帳面な人が家の中を丸く掃く
・服装や化粧に気を使わない
・仕事の段取りが悪く、会社でクレームがつく(若年性)
・役職につくと挨拶はできるが、実務には援助が必要
○ボランティアによるミニサークル
閉じこもり予防のための小人数の集まり
介護予防を地域住民がする事業
○軽度認知機能障害(前臨床症状MCI)
・記憶障害の訴えがある
・日常生活活動は正常
・全般的な認知機能は正常
・年齢に比して記憶力が低下(標準化された検査により)
・認知症と診断されていない
・本人と家族が記憶力の衰えに気づいている
・日常生活に問題は無いが、複雑な行為に障害がある(金銭管理・旅行の計画・自宅への招待等)
・MCIと診断された人からアルツハイマー型認知症を発症する率6〜25%(一般 70代 0.5〜2%、80代1.5〜5%)
これをつかまえられれば、悪化のスピードをおくらせることにつながるのではないか。
○認知症を見つけるのは誰
・前兆を見つけるのは身近な人
日常生活の中で見つけることが可能=生活障害の発見
以 上