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日蓮大聖人御書全集
0801~0900
0801 0802 0803 0804 0805 0806 0807 0808 0809 0810
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0861 0862 0863 0864 0865 0866 0867 0868 0869 0870
0871 0872 0873 0874 0875 0876 0877 0878 0879 0880
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0891 0892 0893 0894 0895 0896 0897 0898 0899 0900

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  一薬王品
01   御義口伝に云く此の品は薬王菩薩の仏の滅後に於て法華を弘通するなり、 所詮焼身焼臂とは焼は照の義なり照
02   は智慧の義なり智能く煩悩の身生死の臂を焼くなり、 天台大師も本地薬王菩薩なり、能説に約する時は釈迦な
03   り衆生の重病を消除する方は薬王薬師如来なり又利物の方にて薬王と云う自悟の方にては薬師と云う、 此の薬
04   王薬師出世の時は天台大師なり薬王も滅後に弘通し薬師如来も像法暫時の利益有情なり、 時を以て身体を顕し
05   名を以て義を顕す事を仏顕し給うなり、 薬王菩薩は止観の一念三千の法門を弘め給う、其の一念三千とは所謂
06   南無妙法蓮華経是なり云云。
  一妙音品
01   御義口伝に云く此の菩薩は法華弘通の菩薩なり故に卅四身を現じて十界互具を顕し給い利益説法するなり、 是
02   れ又妙法の妙音なれば十界の音声は皆妙音なり、 又十界悉く卅四身の所現の妙音なり、又蓮華の妙音なれば十
03   界三千の音声皆無染清浄なり、 されば慈覚大師をば 妙音の出世と習うなり 之に依つて唐決の時・引声妙音
04   をば伝え給えり何故有りてか法華を誹謗して大日経等に劣りたりと云うや云云、 所謂法界の音声・南無妙法蓮
05   華経の音声に非ずと云う事なし云云。
  一観音品
01   御義口伝に云く此の品は甚深の秘品なり息災延命の品なり当途王経と名く、 されば此の品に就て職位法門を継
02   ぐぞと習うなり、 天台も三大部の外に観音玄と云う疏を作り章安大師は両巻の疏を作り給えり能く能くの秘品
03   なり、観音・法華・眼目異名と云いて観音即ち法華の体なり所謂南無妙法蓮華経の体なり云云。
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  一陀羅尼品
01   御義口伝に云く此の品は二聖・二天王・十羅刹女・陀羅尼を説きて持経者を擁護し給うなり、所詮妙法陀羅尼の
02   真言なれば十界の語言・音声皆陀羅尼なり、 されば伝教大師の云く「妙法の真言は他経に説かず普賢常護は他
03   経に説かず」陀羅尼とは南無妙法蓮華経の用なり、 此の五字の中には妙の一字より陀羅尼を説き出すなり 云
04   云。
  一厳王品
01   御義口伝に云く 此の品は二子の教化に依つて父の妙荘厳王邪見を飜し 正見に住して沙羅樹王仏と成るなり、
02   沙羅樹王とは梵語なり此には熾盛光と云う、 一切衆生は皆是れ熾盛光より出生したる一切衆生なり、此の故に
03    十界衆生の父なり、 法華の心にては自受用智なり忽然火起焚焼舎宅とは是なり、煩悩の一念の火起りて迷悟
04   不二の舎宅を焼くなり邪見とは是なり、 此の邪見を邪見即正と照したる南無妙法蓮華経の智慧なり所謂六凡は
05   父なり四聖は子なり四聖は正見・六凡は邪見故に六道の衆生は皆是れ我が父母とは是なり云云。
  一勧発品
01   御義口伝に云く此の品は再演法華なり本迹二門の極理此の品に至極するなり、 慈覚大師云く十界の衆生は発心
02   修行と釈し給うは此の品の事なり、 所詮此の品と序品とは生死の二法なり序品は我等衆生の生なり此の品は一
03   切衆生の死なり生死一念なるを妙法蓮華経と云うなり品品に於て初の題号は生の方終の方は死の方なり、 此の
04   法華経は生死生死と転りたり、 生の故に始に如是我聞と置く如は生の義なり死の故に終りに作礼而去と結した
05   り、 去は死の義なり作礼の言は生死の間に成しと成す処の我等衆生の所作なり、 此の所作とは妙法蓮華経な
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01   り、 礼とは不乱の義なり法界妙法なれば不乱なり、天台大師の云く「体の字は礼に訓ず礼は法なり各々其の親
02   を親とし各々其の子を子とす出世の法体も亦復是の如し」と、 体とは妙法蓮華経の事なり先づ体玄義を釈する
03   なり、 体とは十界の異体なり是を法華経の体とせり此等を作礼而去とは説かれたり、法界の千草万木地獄餓鬼
04   等何の界も諸法実相の作礼に非ずという事なし是れ即ち普賢菩薩なり、 普とは法界賢とは作礼而去なり此れ即
05   ち妙法蓮華経なり、爰を以て品品の初めにも五字を題し終りにも五字を以て結し前後・中間・南無妙法蓮華経の
06   七字なり、末法弘通の要法唯此の一段に之れ有るなり、 此等の心を失うて要法に結ばずんば末法弘通の法には
07   不足の者なり剰え日蓮が本意を失う可し、 日蓮が弟子檀那別の才覚無益なり、 妙楽の釈に云く「子父の法を
08   弘む世界の益有り」と、 子とは地涌の菩薩なり父とは釈尊なり世界とは日本国なり益とは成仏なり法とは南無
09   妙法蓮華経なり、 今又以て此くの如し父とは日蓮なり子とは日蓮が弟子檀那なり世界とは日本国なり益とは受
10   持成仏なり法とは上行所伝の題目なり
11 御義口伝卷下
12       弘安元年戊寅正月一日                  執筆 日興
13 御義口伝終
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御講聞書目録
01  一、妙法蓮華経序品第一の事────────807  一、今我喜無畏の事────────────816
02  一、妙法─────────────────808  一、我聞是法音疑網皆已除の事───────816
03  一、蓮華─────────────────808  一、以本願故説三乗法の事─────────817
04  一、本因本果の事─────────────809  一、有大長者の事─────────────818
05  一、爾前無得道の事────────────809  一、多有田宅の事─────────────819
06  一、序品の事───────────────809  一、等一大車の事─────────────820
07  一、品と云う事──────────────808  一、其車高広の事─────────────820
08  一、如是我聞の事─────────────810  一、是朽故宅属于一人の事─────────820
09  一、如是の二字──────────────810  一、諸鬼神等揚声大叫の事─────────821
10  一、耆闍崛山の事─────────────811  一、乗此宝乗直至道場の事─────────821
11  一、与大比丘衆の事────────────813  一、若人不信毀謗此経則断一切世間仏種の事─822
12  一、爾時世尊の事─────────────813  一、捨悪知識親近善友の事─────────823
13  一、浄飯王摩耶夫人成仏証文の事──────813  一、無上宝聚不求自得の事─────────824
14  一、方便品の事──────────────813  一、薬草喩品の事─────────────824
15  一、仏所成就第一希有難解之法唯仏与仏の事─814  一、現世安穏後生善処の事─────────825
16  一、十如是の事──────────────815  一、皆悉到於一切智地の事─────────825
17  一、自証無上道大乗平等法の事───────815  一、此の一切智地の四字──────────826
18  一、我始坐道場観樹亦経行の事───────816  一、根茎枝葉の事─────────────827
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01  一、枯槁衆生の事─────────────827  一、六万八千人の事────────────837
02  一、等雨法雨の事─────────────827  一、妙荘厳王の事─────────────837
03  一、如従飢国来忽遇大王ゼンの事──────828  一、華厳大日観経等の凡夫の得道の事────837
04  一、大通智勝仏 不得成仏道の事──────829  一、題目の五字を以て下種の証文と為す可き事837
05  一、貧人見此珠其心大歓喜の事───────830  一、題目の五字末法に限て持つ可きの事───838
06  一、如甘露見潅の事────────────831  一、天台云く是我弟子応弘我法の事─────838
07  一、若有悪人以不善心等の事────────832  一、色心を心法と云う事──────────838
08  一、如是如是の事─────────────832  一、無作の応身我等凡夫也と事───────838
09  一、是真仏子住淳善地の事─────────832  一、諸河無鹹の事─────────────838
10  一、非口所宣非心所測の事─────────833  一、妙楽大師の釈に末法之初冥利不無の釈の事839
11  一、不染世間法如蓮華在水従地而涌出の事──833  一、爾前経瓦礫国の事───────────839
12  一、願仏為未来演説令開解の事───────834  一、無明悪酒の事─────────────839
13  一、譬如良医智慧聡達の事─────────834  一、日蓮己証の事─────────────840
14  一、一念信解の事─────────────835  一、釈尊の持言秘法の事──────────840
15  一、見仏聞法信受教誨の事─────────835  一、日蓮門家大事の事───────────840
16  一、若復有人以七宝満是人所得其福最多の事─835  一、日蓮が弟子臆病にては叶う可からざる事─840
17  一、妙音菩薩の事─────────────836  一、妙法蓮華経の五字を眼と云う事─────840
18  一、爾時無尽意菩薩の事──────────836  一、法華経の行者に水火の行者の事─────841
19  一、観音妙智力の事────────────836  一、女人と妙と釈尊と一体の事───────841
20  一、自在之業の事─────────────836  一、置不呵責の文の事───────────842
21  一、妙法蓮華経陀羅尼の事─────────836  一、異念無く霊山浄土へ参る可き事─────842
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01  一、不可失本心の事────────────842  一、授職の法体の事────────────845
02  一、天台大師を魔王障礙せし事───────843  一、末代譲状の事─────────────845
03  一、法華経極理の事────────────844  一、本有止観と云う事───────────845
04  一、妙法蓮華経五字の蔵の事────────844  一、入末法四弘誓願の事──────────845
05  一、我等衆生の成仏は打かためたる成仏と云う    一、四弘誓願応報如理と云う事───────846
06    証文の事───────────────845  一、本来の四弘の事────────────846
07  一、爾前法華の能くらべの事────────845
  已上九十ケ条
01   右日向記の目録は、現行板本の目録に脱せる「如是我聞の事」及び「法華経の行者に水火の行者の事」の二条を
                                                 加え、新曾
02  本に明かに「已上九十ケ条」とあるに合せて、新たに作製せり。現行板本に八十八箇条とあるは誤なり、但し巻頭
                                                  の「総」
03  は新曾本にも数えず、故に本目録にも記載せず。なお同一箇条にして、別条に御講示ある場合、即ち「等雨法雨の
                                                  事」「根
04  茎枝葉の事」等は、新曾本も現行板本も、共に一条に数うるを以て、本目録も亦た其れに従えり。
05 已上四行の附記は全く日宗社本に依る。 編者。
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御講聞書
    自2弘安元年三月十九日1連連御講至2同三年五月二十八日1也仍記レ之畢          日向記之
01   凡そ法華経と申すは一切衆生皆成仏道の要法なり、 されば大覚世尊は説時未至故と説かせ給いて説く可き時節
02 を待たせ給いき、 例せば郭公の春をおくり鶏鳥の暁を待ちて鳴くが如くなり、 此れ即ち時を待つ故なり、 され
03 ば涅槃経に云く以知時故名大法師と説かれたり、  今末法は南無妙法蓮華経の七字を弘めて利生得益あるべき時な
04 り、 されば此の題目には余事を交えば僻事なるべし、 此の妙法の大曼荼羅を身に持ち心に念じ口に唱え奉るべき
05 時なり、之に依つて一部二十八品の頂上に南無妙法蓮華経序品第一と題したり。
01   一妙法蓮華経序品第一の事   玄旨伝に云く、一切経の惣要とは謂く妙法蓮華経の五字なり、又云く、一行一
02 切行恒修2 此三昧1文、云う所の三昧とは即ち法華の有相無相の二行なり、 此の道理を以て法華経を読誦せん行
03 者は即ち法具の一心三観なり云云、 此の釈に一切経と云うは近くは華厳・阿含・方等・般若等なり、遠くは大通仏
04 より已来の諸経なり、本門の意は寿量品を除いて其の外の一切経なり、 惣要とは天には日月・地には大王・人には
05 神・眼目の如くなりと云う意を以つて釈せり、 此れ即ち妙法蓮華経の枝葉なり、 一行とは妙法の一行に一切行を
06 納めたり、 法具とは題目の五字に万法を具足すと云う事なり、  然る間・三世十方の諸仏も上行菩薩等も・大梵天
07 王.帝釈・四王・十羅刹女.天照太神・八幡大菩薩・山王二十一社.其の外.日本国中の小神・大神等・此の経の行者を
08 守護すべしと・法華経の第五巻に分明に説かれたり、影と・身と・音と・響との如し、 法華経二十八品は影の如く
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01   響の如し、題目の五字は体の如く音の如くなり、題目を唱え奉る音は十方世界にとずかずと云う所なし、 我等
02 が小音なれども、 題目の大音に入れて唱え奉る間、 一大三千界にいたらざる所なし、 譬えば小音なれども貝に
03 入れて吹く時・遠く響くが如く、 手の音はわずかなれども鼓を打つに遠く響くが如し、 一念三千の大事の法門是
04 なり、 かかる目出度き御経にて渡らせ給えるを、 謗る人何ぞ無間に堕在せざらんや、法然弘法等の大悪知識是な
05 り。
01   一妙法   の二字は一切衆生の色心の二法なり、一代説教の中に法の字の上に妙の字を置きたる経は一経もな
02 し、 涅槃経の題目にも大涅槃経と云いて大の字あれども妙の字なし、 但し大は只是れ妙と云えり然れども大と妙
03 とは不同なり、 同じ大なれども華厳経の大方広仏華厳経と云える題号の大と、涅槃経の大と天地雲泥なり、 華厳
04 経の大は無得道の大なり。 涅槃経の大は法華同醍醐味の大なり、 然れども然涅槃尚劣と云う時は法華経には劣れ
05 り,此の事は涅槃経に分明に法華経に劣ると説かれたり,涅槃経に云く如下法華中八千声聞得レ受2記ベツ1成中大果
06 実上如3秋収冬蔵更無2所作1云云、此の文分明に我と法華経に劣れりと説かせ給えり。
01   一蓮華   とは本因本果なり、此の本因本果と云うは一念三千なり、本有の因・本有の果なり、今始めたる因
02 果に非ざるなり、 五百塵点の法門とは此の事を説かれたり、 本因の因と云うは下種の題目なり、本果の果とは成
03 仏なり、 因と云うは信心領納の事なり、 此の経を持ち奉る時を本因とす其の本因のまま成仏なりと云うを本果と
04 は云うなり、日蓮が弟子檀那の肝要は本果より本因を宗とするなり、 本因なくしては本果有る可からず、 仍て本
05 因とは慧の因にして名字即の位なり、本果は果にして究竟即の位なり、 究竟即とは九識本覚の異名なり、 九識本
06 法の都とは法華の行者の住所なり、 神力品に云く若しは山谷曠野等と説けり 即ち是れ道場と見えたり豈法華の行
07 者の住所は生処・得道・転法輪・入涅槃の諸仏の四処の道場に非ずや。
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01   一本因本果の事   法界悉く常住不滅の為体を云うなり、されば妙楽大師・此の事を釈する時・弘決に云く当
02 知身土一念三千・故成道時称2此本理1一身一念遍2於法1界云云、 此の釈分明に本因本果を釈したり、身と云う
03 は一切衆生なり、土と云うは此の一切衆生の住処なり一念とは此の衆生の念念の作業なり、故成道時称2此本理1と
04 は本因本果の成道なり、 本理と本因本果とは同じ事なり法界とは五大なり、 所詮法華経を持ち奉る行者は若在仏
05 前蓮華化生なれば称此本理の成道なり、 本理に称うとは妙法蓮華経の本理に称うと云う事なり、 法華経の本理に
06 叶うとは此の経を持ち奉るを云うなり、若有能持則持仏身とは是なり。
01   一爾前無得道の事   此の法門は蓮華の二字より起れり、其の故は蓮華の二字を以て云うなり、三世の諸仏の
02 成道を唱うるは蓮華の二字より出でたり、 権教に於て蓮華の沙汰無し 若しありと云うとも有名無実の蓮華なるべ
03 し、 三世の諸仏の本時の下種を指して華と名け、 此の下種の華によつて成仏の蓮を取る、 妙法蓮華即ち下種な
04 り、下種即ち南無妙法蓮華経なり、 華は本因・蓮は本果なれば華の本因を不信謗法の人豈具足せんや、 経に云く
05 若人不信毀謗此経則断一切世間仏種云云、 此の蓮華に迷う故に十界具足無し、 十界具足せざれば一念三千跡形無
06 きなり、 一切の法門は蓮華の二字より起れり、 一代説教に於て無得道と云うも蓮華の二字より起れり深く之を案
07 ず可し。
01   一序品の事   此の事は、教主釈尊・法華経を説き給わんとて先ず瑞相の顕れたる事を云うなり、今末法に入
02 つて南無妙法蓮華経の顕われ給うべき瑞相は 彼には百千万倍勝るべきなり、 其の故は雨は竜の大小により蓮華は
03 池の浅深に随つて其の色不同なるが如くなるべし。
01   一品と云う事   品とは、釈に云く義類同と云えり、此の法華経は三仏寄合い給いて定判し給えり、三仏とは
02 釈迦・多宝・分身是なり、 此の三仏・評定してのたまわく一切衆生皆成仏道は法華経に限りて有りと、皆是真実の
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01 証明・舌相梵天の誠証・要当説真実の金言・此等を義類同して 題したる品の字なり、 天竺には跋渠と云う此には
02 品と云えり、 釈迦・多宝・分身の三仏の御口を以て指し合せ同音に定判し給える我等衆生の成仏なり、譬えば鳥の
03 卵の内より卵をつつく時・母又同じくつつきあくるに・同じき所をつつきあくるが如し、 是れ即ち念慮の感応する
04 故なり、 今法華経の成仏も此くの如くなり、 三世諸仏の同音に同時に定め給える成仏なり、故に経に云く従仏口
05 生如従仏口等云云。
01   一如是我聞の事   仰に云く如と云うは衆生の如と仏の如と一如にして無二如なり、然りと雖も九界と仏界と
02 分れたるを是と云うなり、 如は如を不異に名く即ち空の義なりと釈して少しも・ことならざるを云うなり、 所詮
03 法華経の意は煩悩即菩提・生死即涅槃・生仏不二・迷悟一体といえり、是を如とは云うなり、されば如は実相・是は
04 諸法なり、又如は心法.是は色法・如は寂.是は照なり、如は一念・是は三千なり、今経の心は文文・句句・一念三千
05 の法門なり、 惣じて如是我聞の四字より外は今経の体全く無きなり 如と妙とは同じ事 ・是とは法と又同じ事な
06 り、法華経と釈尊と我等との三・全く不同無く・如我等無異なるを如と云うなり、 仏は悟り・凡夫は迷なりと云う
07 を是とは云うなり、我聞と云うは、我は阿難なり、 聞とは耳の主と釈せり、聞とは名字即なり、 如是の二字は妙
08 法なり、 阿難を始めて霊山一会の聴衆・同時に妙法蓮華経の五字を聴聞せり仍つて我も聞くと云えり、 されば相
09 伝の点には如は是なりきと我れ聞くといえり、 所詮末法当今には南無妙法蓮華経を我も聞くと心得べきなり、 我
10 は真如法性の我なり、 天台大師は同聞衆と判ぜり同じ事を聞く衆と云うなり、 同とは妙法蓮華経なり、聞は即身
11 成仏・法華経に限ると聞くなり云云。
01   一如是の二字   を約教の下に釈する時・文句の一に又一時に四箭を接して地に堕せしめざるも未だ敢て捷し
02 と称せず、 鈍驢に策つて跋鼈を駈る尚し一をも得ず何に況や四をや云云、 記の一に云く、大経に云く迦葉菩薩問
0811top
01 うて云く云 何か智者・念念の滅を観ずと、 仏の言く譬えば四人皆射術を善し聚つて一処に在りて・各一方を射る
02 に念言すらく・我等は四の箭・倶に射て倶に堕せんと、 復人有りて念ずらく・其の未だ堕せざるに及んで我れ能く
03 一時に手を以て接取せんというが如し、 仏の言く、捷疾鬼は復是の人よりも速なり是くの如く、飛行鬼・四天王・
04 日月神・堅疾天は展転して箭よりも疾し、 無常は此れに過ぎたりと、此の本末の意は他師・此の経の如是に付て釈
05 を設くと云えども・更に法蓮華の理に深く叶わざるなり、 一二だも義理を尽さざるなり況や因縁をや、 何に況や
06 約教・観心の四をやと破し給えり、 所詮法華経は速疾頓成を以て本とす、 我等衆生の無常のはやき事は捷疾鬼よ
07 りもはやし、 爰を以て出ずる息は入る息を待たず、 此の経の如是は爾前の諸経の如是に勝れて超八の如是なり、
08 超八醍醐の如是とは速疾頓成の故なり、 妙楽大師云く 若し超八の如是に非ずんば、 安ぞ此の経の所聞と為さん
09 と云云。
01   一耆闍崛山の事   仰に云く耆闍崛山とは霊鷲山なり、霊とは三世の諸仏の心法なり必ず此の山に仏法を留め
02 給う、 鷲とは鳥なり此の山の南に当つて尸陀林あり死人を捨つる所なり、 鷲此の屍を取り食うて、此の山に住む
03 なり、さて霊鷲山とは云うなり、 所詮今の経の心は迷悟一体と談ず、霊と云うは法華経なり、 三世の諸仏の心法
04 にして悟なり、鷲と云うは畜生にして迷なり、 迷悟不二と開く中道即法性の山なり、 耆闍崛山中と云うは迷悟不
05 二・三諦一諦・中道第一義空の内証なり、 されば法華経を行ずる日蓮等が弟子檀那の住所はいかなる山野なりとも
06 霊鷲山なり行者豈釈迦如来に非ずや、 日本国は耆闍崛山・日蓮等の類は釈迦如来なるべし、 惣じて一乗南無妙法
07 蓮華経を修行せん所は・いかなる所なりとも常寂光の都・霊鷲山なるべし、 此の耆闍崛山中とは煩悩の山なり、仏
08 菩薩等は菩提の果なり・煩悩の山の中にして法華経を三世の諸仏説き給えり、 諸仏は法性の依地・衆生は無明の依
09 地なり、此の山を寿量品にしては本有の霊山と説かれたり、 本有の霊山とは此の娑婆世界なり、 中にも日本国な
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01 り、法華経の本国土妙・娑婆世界なり、 本門寿量品の未曾有の大曼荼羅建立の在所なり云云、 瑜伽論に云く東方
02 に小国有り、 其の中唯大乗の種姓のみ有り、 大乗の種姓とは法華経なり法華経を下種として成仏すべしと云う事
03 なり、所謂南無妙法蓮華経なり小国とは日本国なり云云。
01   一与大比丘衆の事   仰に云く文句の一に云く釈論に明す、大とは亦は多と言い亦は勝と言う、遍く内外の経
02 書を知る故に多と言う、又数一万二千に至る故に多と言う、 今明さく大道有るが故に・大用有るが故に・大知有る
03 が故に・故に大と言う、勝とは道勝れ・用勝れ・知勝る、故に勝と言う、多とは道多く・用多く・知多し故に多と言
04 う、 又云く含容一心・一切心なり、故に多と名くるなり、 記の一に云く一心一切心と言うは心境倶に心にして各
05 一切を摂す、 一切三千を出でざるが故なり、 具に止観の第五の文の如し、若し円心に非ざれば三千を摂せず、故
06 に三千惣別咸く空仮中なり、 一文既に爾なり 他は皆此れに准ぜよ、 此の本末の心は心境義の一念三千を釈する
07 なり、 止観の第五の文とは夫一心具十法界乃至不可思議境の文を指すなり、 心境義の一念三千とは此の与大比丘
08 衆の大の字より釈し出だせり、大多勝の三字・三諦・三観なり、円頓行者起念の当体・三諦三観にして大多勝なり、
09 此の釈に惣と云うは一心の事なり、 別とは三千なり、一文とは大の一字なり、 今末法に入つては法華経の行者・
10 日蓮等の類、 正しく大多勝の修行なり、 法華経の行者は釈迦如来を始め奉りて悉く大人の為に敬い奉るなり誠に
11 以て大曼荼羅の同共の比丘衆なり、本門の事の一念三千・南無妙法蓮華経・大多勝の比丘衆なり、文文・句句・六万
12 九千三百八十四字の字ごとに大多勝なり、 人法一体にして即身成仏なり、 されば釈に云く大は是れ空の義・多は
13 是れ仮の義・勝は是れ中の義と、一人の上にも大多勝の三義・分明に具足す、大とは迹門・多とは本門・勝とは題目
14 なり、 法華経の本尊を大多勝の大曼荼羅と云うなり、 是れ豈与大比丘衆に非ずや、二界・八番の雑衆悉く法華の
15 会座の大曼荼羅なり、 法華経の行者は二法の情を捨てて唯妙法と信ずるを大というなり、 此の題目の一心に一切
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01 心を含容するを多と云うなり、 諸経・諸人に勝れたるが故に勝と云うなり、 一切心に法界を尽す一心とは法華経
02 の信心なり、信心即一念三千なり云云。
01   一爾時世尊の事   仰に云く世尊とは釈迦如来・所詮世尊とは孝養の人を云うなり、其の故は不孝の人をば世
02 尊とは云わず 教主釈尊こそ世尊の本にては御座候え、 父浄飯王・母摩耶夫人を成道せしめ給うなり ・されど今
03 経の座には父母御座さざれば方便土へ法華経をば送らせ給うなり、 彼土得聞とは是なり、 但し法華経の心は十方
04 仏土中・唯有一乗法なりトウ利天に母摩耶夫人生じ給えり、トウ利天に即したる寂光土なり、方便土に即したる寂光
05 土なり、四土一念・皆常寂光なれば、 何れも法華経の説処なり、 虚空会の時の説法華に豈トウ天もるべきや寂光
06 土の説法華に豈方便土もるべきや、何れも法華経の説所なれば同聞衆の人数なり云云。
01   一浄飯王摩耶夫人成仏証文の事   仰に云く方便品に云く我始坐道場・観樹亦経行の文是なり、又寿量品に云
02 く、然我実成仏已来の文是なり、 教主釈尊の成道の時・浄飯王も摩耶も得道するなり、 本迹二門の得道の文是な
03 り云云、此の文日蓮が己心の大事なり、 我始と我実との文・能く能く之を案ず可し、 其の故は爾前経の心は父子
04 各別の談道なり、然る間成仏之れ無し、 今の経の時・父子の天性を定め父子一体と談ぜり・父母の成仏即ち子の成
05 仏なり、子の成仏・即ち父母の成仏なり、 釈尊の我始坐道場の時・浄飯王・摩耶夫人も同時に成道なり、釈尊の我
06 実成仏の時・浄飯王・摩耶夫人同時なり始本共に同時の成道なり、 此の法門は天台・伝教等を除いて知る人一人も
07 之れ有る可からず、 末法に入つて日蓮等の類・堅く秘す可き法門なり、 譬えば蓮華の華菓の相離せざるが如くな
08 り、然れば法華経の行者は男女悉く世尊に非ずや、 薬王品に云く於一切衆生中亦為第一文、 此れ即ち世尊の経文
09 に非ずや、是真仏子なれば法王の子にして世尊第一に非ずや。
01   一方便品の事   妙法蓮華経の五字とは名体宗用教の五重玄義なり、されば止観に十章を釈せり此の十章即ち
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01 妙法蓮華経の能釈なり、夫れとは釈名は名玄義なり、体相摂法の二は体玄義なり、偏円の一は教玄義なり、 方便・
02 正観・果報の三は宗玄義なり、 起教の一は用玄義なり、 始の大意の章と終の旨帰との二をば之を除く、此の意は
03 止観一部の所詮は大意と旨帰とに納れり 無明即明の大意なる故なり、 無明とも即明とも分別せざるが旨帰なり、
04 今妙法蓮華経の五重玄義を修行し奉れば・煩悩即菩提・生死即涅槃の開悟を得るなり、 大意と旨帰とは法華の信心
05 の事なるべし、以信得入・非己智分とは是なり、 我等衆生の色心の二法は妙法の二字なり無始色心・本是理性・妙
06 境妙智と開覚するを大意と云うなり、 大は色法の徳・意は心法の徳なり大の字は形に訓ぜり、今日蓮等の類・南無
07 妙法蓮華経と唱え奉る男女・貴賎・等の色心本有の妙境妙智なり、 父母果縛の肉身の外に別に三十二相・八十種好
08 の相好之れ無し即身成仏是なり、 然る間大の一字に法界を悉く収むるが故に法華経を大乗と云うなり、 一切の仏
09 菩薩・聖衆・人畜・地獄等の衆生・の智慧を具足し給うが故に・仏意と云うなり、大乗と云うも同じ事なり是れ即ち
10 妙法蓮華経の具徳なり、 されば九界の衆生の意を以て仏の意とす、一切経の心を以て法華経の意とす、 於一仏乗
11 分別説三とは是なり、 かかる目出度き法華経を謗じ奉る事・三世の諸仏の御舌を切るに非ずや、 然るに此の妙法
12 蓮華経の具徳をば仏の智慧にてもはかりがたく 何に況や菩薩の智力に及ぶ可けんや、 之に依つて大聖塔中偈の相
13 伝に云く、 一家の本意は只一言を以て本と為す云云、 此の一言とは寂照不二の一言なり或は本末究竟等の一言と
14 も云うなり、 真実の義には南無妙法蓮華経の一言なり、 本とは凡夫なり、 末とは仏なり、究竟とは生仏一如な
15 り、生仏一如の如の体は所謂南無妙法蓮華経是なり云云。
01   一仏所成就第一希有難解之法唯仏与仏の事   仰に云く仏とは釈尊の御事なり、成就とは法華経なり、第一は
02 爾前の不第一に対し・希有は爾前の不希有に対し・難解之法は爾前の不難解に対したり、 此の仏と申すは諸法実相
03 なれば十界の衆生を仏とは云うなり、 十界の衆生の語言音声成就にして法華経なり、 三世の諸仏の出世の本懐の
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01 妙法にして、 優曇華の妙文なれば第一希有なり、 九界の智慧は及ばざれば難解の法なり、成就とは我等衆生の煩
02 悩即菩提・生死即涅槃の事なり、 権教の意は終に不成仏なれば成就には非ず、迹門には二乗成仏顕れたり、 是れ
03 即ち成就なり、 是を仏所成就とは説かれたり、 されば唯仏とは釈迦・与仏とは多宝なり、多宝涌現なければ与仏
04 とは云いがたし、 然りと雖も終には出現あるべき故に・与仏を多宝というなり、所詮日蓮等の類いの心は・唯仏は
05 釈尊・与仏は日蓮等の類いの事なるべし、 其の故は唯仏の唯を重ねて譬喩品には唯我一人と説けり、 与仏の二字
06 を重ねて、方便品の末に至つて若遇余仏と説けり、 釈には深く円理を覚るは、 之れを名けて仏と為すと釈せり、
07 是れ即ち与仏と云うは法華経の行者男女の事なり、 唯我一人の釈尊に与し上る仏なり、此の二仏寄り合いて、 乃
08 能究尽する所の諸法実相の法体なり、 されば十如是と云うは十界なり、 十界即十如是なり、十如是は即ち法華経
09 の異名なり云云。
01   一十如是の事   仰に云く此の十如是は法華経の眼目・一切経の惣要たり、されば此の十如是を開覚しぬれば
02 諸法に於て迷悟無く、 実相に於て染浄無し、 之れに依つて天台大師は止観の十章も此の十如是より釈出せり、然
03 る間・十如是に過たる法門更に以て之れ無し、 爰を以て和尚授けて云く十大章は是れ全く十如是・若し大意を覚る
04 時・性如是の意を以て下の玄如の図を分別す可し、 十如是を十大章に習う事は性如是は大意・相如是は釈名・体如
05 是は体相・力如是は摂法・作如是は偏円・縁如是は方便・因如是は正観.果報如是は果報.本末究竟如是は旨帰なり、
06 此の中に起教の章は化他利物果上化用と云うなり云云。
01   一自証無上道大乗平等法の事   仰に云く末法当今に於て大乗平等の法を証せる事・日蓮等の類いに限れりさ
02 れば此の経文は教主大覚世尊・法華経の極理を証して番番に出世し給いて 説き給うなり、 所詮此の自証と云うは
03 三十成道の時を指すなり、 其の故は教主釈尊は十九出家・三十成道なり、然る間・自証無上道等文、所詮此の品の
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01 心は十界皆成の旨を明せり、 然れば自証と云うは十界を諸法実相の一仏ぞと説かれたり、 地獄も餓鬼も悉く無上
02 大乗の妙法を証得したるなり、 自は十界を指したり、恣ままに証すと云う事なり、権教は不平等の経なり、 法華
03 経は平等の経なり、 今日蓮等の類いは真実自証無上道・大乗平等法の行者なり、 所謂南無妙法蓮華経の大乗平等
04 法の広宣流布の時なり云云。
01   一我始坐道場観樹亦経行の事   仰に云く、此の文は教主釈尊・三十成道の時を説き給えり、観樹の樹と云う
02 は十二因縁の事なり、 所詮十二因縁を観じて経行すと説き給えり、 十二因縁は法界の異名なり又法華経の異名な
03 り、 其の故は樹木は枝葉華菓あり是れ即ち生住異滅の四相なり、 大覚世尊・十二因縁の流転を観じ・経行し給え
04 り、 所詮末法当今も一切衆生・法華経を謗じて流転す可きを観じて 日本国を日蓮経行して南無妙法蓮華経と弘通
05 する事・又又此の如くなり、法華の行者は悉く道場に坐したる人なり云云。
01   一今我喜無畏の事   仰に云く此の文は権教を説き畢らせ給いて法華経を説かせ給う時なれば喜びておそれな
02 しと観じ給えり、 其の故は爾前の間は一切衆生を畏れ給えり、 若し法華経を説かずして空しくやあらんずらんと
03 思召して畏れ深くありと云う文なり、 さて今は恐るべき事なく時節・来つて説く間・畏れなしと喜び給えり、今日
04 蓮等の類も是くの如く日蓮も三十二までは畏れありき、 若しや此の南無妙法蓮華経を弘めずして・あらんずらんと
05 畏れありき、 今は即ち此の恐れ無く既に末法当時 ・南無妙法蓮華経の七字を日本国に弘むる間恐れなし、 終に
06 は一閻浮提に広宣流布せん事一定なるべし云云。
01   一我聞是法音疑網皆已除の事   仰に云く法音とは南無妙法蓮華経なり、疑網とは最後品の無明を云うなり、
02 此の経を持ち奉れば悉く除くと説かれたり、 此の文は舎利弗が三重の無明・一時倶尽する事を領解せり、 今日本
03 国の一切衆生・法華経の法音を聞くと云えども 未だ能く信ぜず豈疑網皆已に除かんや、 除かざれば入阿鼻獄は疑
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01 無きなり、 疑の字は元品の無明の事なり此の疑を断つを信とは云うなり、 釈に云く無疑曰信と云えり身子は此の
02 疑無き故に華光仏と成れり、 今日蓮等の類は題目の法音を信受する故に疑網更に無し、 如我等無異とて釈迦同等
03 の仏にやすやすとならん事疑無きなり、 疑網と云うは色心の二法に有る惑障なり、 疑は心法にあり・網は色法に
04 あり、 此の経を持ち奉り信ずれば色心の二法共に悉く除くと云う事なり、 此の皆已の已の字は身子尊者・広開三
05 顕一を指して已とは云うなり、 今は領解の文段なり、身子・妙法実相の理を聴聞して心懐大歓喜せしなり、 所詮
06 舎利弗尊者程の智者・法華経へ来つて華光仏となり、 疑網を断除せり、 何に況んや末法当時の権人謗法の人人此
07 の経に値わずんば成仏あらんや云云。
01   一以本願故説三乗法の事   仰に云く此の経文は身子尊者.成道の国.離垢世界にて三乗の法は悪世には非ず、
02 然りと雖も身子本願の故に説くと云えり、 其の本願と云うは身子菩薩の行を立てしに 乞眼の婆羅門に眼を抉じら
03 れて、其の時・菩薩の行を退転したり、 此の菩薩の行を百劫立てけるに、 六十劫なして今四十劫たらざりき、此
04 の時・乞眼に眼を抉じられて其の時・菩薩の行を退して願成仏日・開三乗法の願を立てたるなり、上品浄土・不須開
05 漸なれば三乗の法を説く事は更に以てあるまじけれども 以本願故の故にて三乗の法を説くなり、 此の行は禅多羅
06 仏の所にして立つるなり、 此の事は身子が六住退とて大なる沙汰なり、 重重の義勢之れ在り輙く心得難きの事な
07 り、 或は欲怖地前の意、或は権者退云云、 所詮は六住退とは六根・六境に菩薩の行を取られたりと云う事なり、
08 之を以て之を思うに末法当今・法華経を修行せんには、 必ず身子が退転の如くなるべし、 所詮身子が眼を取らる
09 るは菩薩の智慧の行を取らるるなり、 今日蓮等の類い・南無妙法蓮華経の眼を持ち奉るに 謗法の諸人に障礙せら
10 るる・豈眼を抉り取らるるに非ずや、 所詮彼の乞眼の婆羅門・眼を乞いしは身子が菩薩の行を退転せしめんが為に
11 乞いて蹈みつぶして捨てたり、 全く菩薩の供養の方を本として 眼をば乞わざりしなり、 只だ退転せしめん為な
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01 り、 身子は一念菩薩の行を立ててかかる事に値えり、 向後は菩薩の行をば立つ可からず二乗の行を立つ可しと云
02 つて後悔せし故に成仏の日・説三乗法するなり、所詮乞眼婆羅門の責を堪えざるが故なり、 法華経の行者・三類の
03 強敵を堪忍して妙法の信心を捨つ可からざるなり信心を以て眼とせり云云。
01   一有大長者の事   仰に云く此の長者に於いて天台大師.三の長者を釈し給えり、一には世間の長者.二には出
02 世の長者・三には観心の長者是なり、 此の中に出世観心の長者を以て、 此の品の長者とせり、長者とは釈迦如来
03 の事なり、観心の長者の時は一切衆生なり、 所詮法華経の行者は男女共に長者なり、 文句の五に委しく釈せり、
04 末法当今の長者と申すは日蓮等の類い・南無妙法蓮華経と唱え奉る者なり 、されば三の長者を釈する時、 文句五
05 に云く、二に位号を標するに三と為す、 一は世間の長者・二は出世の長者・三は観心の長者なり、 世に十徳を備
06 う、一には姓貴.二には位高.三には大富.四には威猛・五には智深.六には年耆・七には行浄・八には礼備・九には上
07 歎・十には下帰なり云云、又云く、 出世の長者は、仏は三世の真如実際の中より生ず、功成り、道著われて、十号
08 極り無し、 法財万徳、悉く皆具に満せり、 十力雄猛にして、魔を降し外を制す、一心の三智通達せずと云うこと
09 無し、早く正覚を成じて、久遠なること斯くの如し、 三業智に随つて、運動して失無し、仏の威儀を具して、 心
10 大なること海の如し、十方の種覚・共に称誉する所なり、 七種の方便・而も来つて依止す、是を出世の仏大長者と
11 名く、 三に観心とは、 観心の智実相より出で生じて仏家にあり、 種性真正なり、三惑起らず、未だ真を発さず
12 と雖も是れ如来の衣を着れば、寂滅忍と称す、 三諦に一切の功徳を含蔵す、正観の慧・愛見を降伏す、 中道双べ
13 照して権実並に明なり、久く善根を積みて・能く此の観を修す、 此の観七方便の上に出でたり、此の観・心性を観
14 ずるを上定と名くれば、 即ち三業過無し、 歴縁対境するに威儀失無し、 能く此くの如く観ず、是れ深信解の相
15 諸仏皆歓喜して持法の者を歎美したもう、天竜・四部・恭敬供養す、下の文に云く、仏子是の地に住すれば、 即ち
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01 是れ仏受用し給い、 経行し及び坐臥し給わんと、 既に此の人を称して仏と為す、豈観心の長者と名けざらんやと
02 此の釈分明に観心の長者に十徳を具足すと釈せり、 所謂引証の文に、分別功徳品の則是仏受用の文を引けり、 経
03 文には仏子住此地とあり、此の字を是の字にうつせり、 経行若坐臥の若を及の字にかえたり、 又法師品の文を引
04 けり、所詮仏子とは法華経の行者なり、 此地とは実相の大地なり、 経行若坐臥とは法華経の行者の四威儀の所作
05 の振舞、悉く仏の振舞なり、 我等衆生の振舞の当体、仏の振舞なり、此の当体のふるまいこそ長者なれ、 仍つて
06 観心の長者は我等凡夫なり、 然るに末法当今の法華経の行者より外に、観心の長者無きなり、 今日蓮等の類い南
07 無妙法蓮華経と唱え奉る者、 無上宝聚不求自得の長者に非ずや、 既称此人為仏の六字に心を留めて案ずべきなり
08 云云。
01   一多有田宅の事  仰に云く田宅とは、長者の財宝なり、所詮田と云うは命なり、宅とは身なり、文句の五に田
02 宅をば身命と釈せり、 田は米なり、米は命をつぐ、宅は身をやどす是は家なり、 身命の二を安穏にするより外に
03 財宝は無きなり、 法門に約すれば田は定・宅は慧なり、 仍つて定は田地の如し、慧は万法の如し、我等一心の田
04 地より諸法の万法は起れり、 法華一部方寸知るべしと釈して 八年の法華も一心が三千と開きたるなり、 所詮田
05 は定なれば妙の徳、宅は慧の徳なれば法の徳、 又は本迹両門なり、止観の二法なり、 教主釈尊・本迹両門の田宅
06 を以つて一切衆生を助け給えり、田宅は我等衆生の色心の二法なり、 法華経に値い奉りて、 南無妙法蓮華経と唱
07 え奉る時・煩悩即菩提・生死即涅槃と体達するなり、 豈多有田宅の長者に非ずや、多有と云う心は心法に具足する
08 心数なり、色法に具足する所作なり、 然らば多有田宅の文は一念三千の法門なり、其の故は一念は定なり、 三千
09 は慧なり、既に釈に云く、 田宅は別譬なり、田は能く命を養う、禅定の般若を資するに譬う、 宅は身を栖ます可
10 し、実境の智の所託と為るに譬う云云、 此の釈分明なり、田宅は身命なり、身命は即ち南無妙法蓮華経なり、 此
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01 の題目を持ち奉る者は 豈多有田宅の長者に非ずや、 今末法に入つて日蓮等の類・多有田宅の本主として如説修行
02 の行者なり云云。
01   一等一大車の事   仰に云く此の大車とは直至道場の大白牛車にして其の疾きこと風の如し、所詮南無妙法蓮
02 華経を等一大車と云うなり、 等と云うは諸法実相なり、一とは唯有一乗法なり、大とは大乗なり、 車とは一念三
03 千なり、 仍つて釈には等の字を子等車等と釈せり、 子等の等と如我等無異の等とは同なり、車等の等は平等大慧
04 の等なり、 今日蓮等の類い・南無妙法蓮華経と唱え奉る者は男女・貴賎共に無上宝聚・不求自得の金言を持つ者な
05 り、智者愚者をきらわず共に即身成仏なり云云、 疏の五に云く一に等子・二に等車・子等しきを以ての故に則ち心
06 等し、一切衆生等しく仏性有るに譬う、 仏性同じきが故に等しく是れ子なり、 第二に車等とは法等しきを以ての
07 故に仏法に非ざること無し、 一切法皆摩訶衍なるに譬う、摩訶衍同じきが故に等しく是れ大車なり、 而して各賜
08 と言うは各々本習に随う、 四諦六度無量の諸法・各各旧習に於て真実を開示す、 旧習同じからず故に各と言う、
09 皆摩訶衍なり故に大車と言う云云。
01   一其車高広の事   仰に云く此の車は南無妙法蓮華経なり、即ち我等衆生の体なり、法華一部の総体なり、高
02 広とは仏知見なり、 されば此の車を方便品の時は諸仏智慧と説き其の智慧を甚深無量と称歎せり、 歎の言には甚
03 深無量とほめたり、 爰には其車と説いて高広とほめたり、 されば文句の五に云く其車高広の下は如来の知見深遠
04 なるに譬う、 横に法界の辺際に周く・堅に三諦の源底に徹す故に高広と言うなりと、 所詮此の如来とは一切衆生
05 の事なり既に諸法実相の仏なるが故なり、 知見とは色心の二法なり知は心法・見は色法なり、 色心二法を高広と
06 云えり、高広即本迹二門なり此れ即ち南無妙法蓮華経なり云云。
01   一是朽故宅属于一人の事   仰に云く此の文をば文句の五に云く出火の由を明す文、此の宅とは三界の火宅な
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01 り、火と云うは煩悩の火なり、 此の火と宅とをば属于一人とて釈迦一仏の御利益なり、弥陀・薬師・大日等の諸仏
02 の救護に非ず、教主釈尊一仏の御化導なり、 唯我一人・能為救護とは是なり、 此の属于一人の文を重ねて、五巻
03 提婆品に説いて云く観2三千大千世界1乃至無レ有マ如芥子許非是菩薩捨2身命1処上為2衆生1故文、妙楽大師此
04 の属于一人の経文を釈する時・記の五に云く、咸く長者に帰す・一色一香・一切皆然なりと判ぜり、既に咸帰長者と
05 釈して、 法界に有りとある一切衆生の受くる苦悩をば、釈尊一人の長者に帰すと釈せり、一色一香一切皆然なりと
06 は、法界の千草万木・飛華落葉の為体、 是れ皆無常遷滅の質と見て仏道に帰するも、 属于一人の利益なり、此の
07 利益の本源は 南無妙法蓮華経の内証に引入れしめんが為なり、 所詮末法に入つて属于一人の利益は日蓮が身に当
08 りたり、日本国の一切衆生の受くる苦悩は、 悉く日蓮一人が属于一人なり、 教主釈尊は唯我一人・能為救護、日
09 蓮は一人能為救護に云云、文句の五に云く、 是朽故宅属于一人の下、第二に一偈有り、失火の由を明す、 三界は
10 是れ仏の化応の処発心已来誓つて度脱せんと願う、 故に属于一人と云うと、此の釈に発心已来誓願度脱の文、 豈
11 日蓮の身に非ずや云云。
01   一諸鬼神等揚声大叫の事   仰に云く諸鬼神等と云うは親類部類等を鬼神と云うなり、我等衆生死したる時・
02 妻子眷属あつまりて悲歎するを 揚声大叫とは云うなり、 文句の五に云く 諸鬼神等の下・第四に一行半は被焼の
03 相を明す、或は云く親属を鬼神と為し・哭泣を揚声と為すと。
01   一乗此宝乗直至道場の事   仰に云く此の経文は我等衆生の煩悩即菩提・生死即涅槃を明せり、其の故は文句
02 の五に云く、 此の因易ること無きが故に直至と云う、 此の釈の心は 爾前の心は煩悩を捨てて生死を厭うて別に
03 菩提涅槃を求めたり、 法華経の意は煩悩即菩提・生死即涅槃と云えり、 直と即とは同じ事なり、 所詮日蓮等の
04 類い南無妙法蓮華経と唱え奉る者の、 住処即寂光土と心得可きなり、 然れば此の実乗に乗じて、忽ちに妙覚極果
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01 の位に至るを直至道場とは云うなり、 直至と云う文の意は、四十二位を爰にて極めたり、 此の直の一字は、地獄
02 即寂光・餓鬼即寂光土なり、 法華経の行者の住処、山谷曠野なりとも、直至道場なり、道場とは究竟の寂光なり、
03 仍つて乗此宝乗の上の乗は法華の行者、 此の品の意にては中根の四大声聞なり、惣じて一切衆生の事なり、今末法
04 に入つては日蓮等の類いなり、 宝乗の乗の字は大白牛車の妙法蓮華経なり、 然れば上の乗は能乗 ・下の乗は所
05 乗なり、宝乗は蓮華なり、 釈迦・多宝等の諸仏も、此の宝乗に乗じ給えり、此れを提婆品に重ねて説く時・若在仏
06 前蓮華化生と云云、 釈迦・多宝の二仏は我等が己心なり、 此の己心の法華経に値い奉つて成仏するを顕わさんと
07 して釈迦・多宝・二仏・並座して乗此宝乗・直至道場を顕わし給えり、此の乗とは車なり、車は蓮華なり、此の蓮華
08 の上の妙法は、 我等が生死の二法・二仏なり、 直至の至は此れより彼へいたるの至るには非ず住処即寂光と云う
09 を至とは云うなり、此の宝乗の宝は七宝の大車なり、 七宝即ち頭上の七穴・七穴即ち末法の要法・南無妙法蓮華経
10 是なり、此の題目の五字、我等衆生の為には、 三途の河にては船となり、紅蓮地獄にては寒さをのぞき、 焦熱地
11 獄にては凉風となり、死出の山にては蓮華となり、 渇せる時は水となり・飢えたる時は食となり、裸かなる時は衣
12 となり、妻となり、子となり、 眷属となり、家となり、無窮の応用を施して一切衆生を利益し給うなり、 直至道
13 場とは是なり、 仍つて此の身を取りも直さず寂光土に居るを直至道場とは云うなり、 直の字心を留めて之を案ず
14 可し云云。
01   一若人不信毀謗此経則断一切世間仏種の事   仰に云く此の経文の意は小善成仏を信ぜずんば一切世間の仏種
02 を断ずと云う事なり、 文句の五に云く、今経に小善成仏を明す、 此れは縁因を取つて仏種と為す、若し小善の成
03 仏を信ぜずんば、即と一切世間の仏種を断ずるなり文、 爾前経の心は小善成仏を明さざるなり、 法華経の意は一
04 華・一香の小善も法華経に帰すれば大善となる、 縦い法界に充満せる大善なりとも 此の経に値わずんば善根とは
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01 ならず、 譬えば諸河の水・大海に入りぬれば鹹の味となる、 入らざれば本の水なり、法界の善根も、法華経へ帰
02 入せざれば善根とはならざるなり、 されば釈に云く、断一切仏種とは浄名には煩悩を以て如来の種と為す、 此れ
03 境界性を取るなり、 此の釈の心は浄名経の心ならば 我等衆生の 一日一夜に作す所の罪業 ・八億四千の念慮を
04 起す、 余経の意は皆三途の業因と説くなり、 法華経の意は、此の業因・即ち仏ぞと明せり、されば煩悩を以て如
05 来の種子とすと云うは此の義なり、 此の浄名経の文は、正しく文在爾前・義在法華の意なり、 此の境界性と云う
06 は、 末師釈する時、能生煩悩・名境界性と判ぜり、我等衆生の眼耳等の六根に妄執を起すなり、 是を境界性と云
07 うなり、 権教の意は此の念慮を捨てよと説けり、法華経の心は、此の境界性の外に、三因仏性の種子なし、 是れ
08 即ち三身円満の仏果となるべき種性なりと説けり、 此の種性を、 権教を信ずる人は之を知らず此の経を謗るが故
09 に、 凡夫即極の義をも知らず、故に一切世間の仏種を断ずるなり、されば六道の衆生も三因仏性を具足して、 終
10 に三身円満の尊容を顕す可き所に、 此の経を謗ずるが故に、 六道の仏種をも断ずるなり、されば妙楽大師云く、
11 此の経は遍く六道の仏種を開す、 若し此の経を謗ずるは、義・断に当るなりと、 所詮日蓮が意は一切の言は十界
12 をさす、 此の経を謗ずるは十界の仏種を断ずるなり、 されば、誹謗の二字を大論に云く、口に謗るを誹と云い、
13 心に背くを謗と云うと、 仍つて色心三業に経て、法華経を謗じ奉る人は入阿鼻獄疑い無きなり、所謂弘法・慈覚・
14 智証・善導・法然・達磨等の大謗法の者なり、 今日蓮等の類い南無妙法蓮華経と唱え奉る、豈三世の諸仏の仏種を
15 継ぐ者に非ずや云云。
01   一捨悪知識親近善友の事   仰に云く悪知識とは在世にては善星.瞿伽利.提婆等是なり、善友とは迦葉・舎利
02 弗・阿難・目連等是なり、末法当今に於て悪智識と云うは法然・弘法・慈覚・智証等の権人謗法の人人なり、善智識
03 と申すは日蓮等の類の事なり、惣じて知識に於て重重之れ有り、 外護の知識・同行の知識・実相の知識是なり、所
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01 所詮実相の知識とは所謂南無妙法蓮華経是なり、知識とは形をしり、 心をしるを云うなり、 是れ即ち色心の二法
02 なり、 謗法の色心を捨てて法華経の妙境・妙智の色心を顕すべきなり、悪友は謗法の人人なり、 善友は日蓮等の
03 類いなり。
01   一無上宝聚不求自得の事  仰に云く、此の無上宝聚に於て一には釈尊の因行・果徳の万行・万善の骨髄を宝聚
02 と云うなり、 二には妙法蓮華経の事なり、 不求とは中根の四大声聞は此くの如き宝聚を 任運自在と得たり此実
03 我子我実其父の故なり、 総じては一切衆生の事なり、 自得と云うは自は十界の事なり、此れは自我得仏来の自と
04 同じ事なり、 得も又同じ事なり末法に入つては自得とは日蓮等の類いなり、 自とは法華経の行者、得とは題目な
05 り、 得の一字には師弟を含みたり、与うると得るとの義を含めり、 不求とは仏法に入るには修行・覚道の辛労あ
06 り、 釈迦如来は往来娑婆八千反の御辛労にして求め給う功徳なり、 さて今の釈迦牟尼仏と成り給えり、法華経の
07 行者は求めずして此の功徳を受得せり仍て自得とは説かれたり、 此の自の字は一念なり得は三千なり、 又自は三
08 千・得は一念なり、 又た自は自なり得は他なり、総じて自得の二字に法界を尽せり、 所詮此の妙法蓮華経を自よ
09 り得たり、自とは釈尊なり、 釈尊は即ち我が一心なり、一心の釈迦より受得し奉る南無妙法蓮華経なり、 日蓮も
10 生年三十二にして自得し奉る題目なり云云。
01   一薬草喩品の事   仰に云く薬とは是好良薬の南無妙法蓮華経なり、妙法を頂上にいただきたる草なれば、薬
02 に非ずと云う事なし、 草は中根の声聞なれども、惣じては一切衆生なり、 譬えば土器に薬をかけたるが如し、我
03 等衆生・父母果縛の肉身に南無妙法蓮華経の薬をかけたり、 煩悩即菩提・生死即涅槃は是なり云云、 此の分を教
04 うるを喩とは申すなり、 釈に云く、喩とは暁訓なりと、提婆・竜女の畜生・人間も、天帝・羅漢・菩薩等も、悉く
05 薬草の仏に非ずと云う事なし、 末法当今の法華の行者の日蓮等の類い、 薬草にして日本国の一切衆生の薬王なり
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01 云云。
01   一現世安穏後生善処の事   仰に云く所詮此の妙法蓮華経を聴聞し奉るを現世安穏とも後生善処とも云えり、
02 既に上に聞是法已と説けり 聞は名字即の凡夫なり妙法を聞き奉る所にて即身成仏と聞くなり、 若有能持即持仏身
03 とは是なり、 聞く故に持ち奉るの故に三類の強敵来る来るを以て現世安穏の記文顕れたり、 法華の行者なる事疑
04 無きなり、 法華の行者はかかる大難に値うべしと見えたり、 大難に値うを以て後生善処の成仏は決定せり是れ豈
05 現世にして安穏なるに非ずや、 後生善処は提婆品に分明に説けり、 所詮現世安穏とは法華経を信じ奉れば三途八
06 難の苦をはなれ善悪上下の人までも皆教主釈尊・同等の仏果を得て自身本覚の如来なりと顕す、 自身の当体・妙法
07 蓮華経の薬草なれば現世安穏なり、 爰を開くを後生善処と云うなり、妙法蓮華経と云うは妙法の薬草なり、 所詮
08 現世安穏は色法・後生善処は心法なり、 十界の色心・妙法と開覚するを現世安穏・後生善処とは云うなり、所詮法
09 華経を弘むるを以て現世安穏・後生善処と申すなり云云。
01   一皆悉到於一切智地の事   仰に云く一切智地と云うは法華経なり、譬えば三千大千世界の土地・草木・人畜
02 等・皆大地に備りたるが如くなり、 八万法蔵・十二部経・悉く法華に帰入せしむるなり、皆悉の二字をば善人も悪
03 人も迷も悟も一切衆生の悪業も善業も其の外薬師・大日・弥陀並びに地蔵・観音・横に十方・竪に三世有りとある諸
04 仏の具徳・諸菩薩の行徳・惣じて十界の衆生の善悪・業作等を皆悉と説けり、 是を法華経に帰入せしむるを一切智
05 地の法華経と申すなり、 されば文句の七に云く皆悉到於一切智地とは、地とは実相なり、 究竟して二に非ず故に
06 一と名くるなり、 其の性広博なり、故に名けて切と為す、寂にして常照なり、 故に名けて智と為す、無住の本よ
07 り一切の法を立す、 故に名けて地と為す、此れ円教の実説なり、 凡そ所説有るは皆衆生をして此の智地に到らし
08 む云云、 此の釈は一切智地の四字を委しく判ぜり、 一をば究竟と云い 切をば広博と釈し智をば寂而常照と云い
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01 地をば無住之本と判ぜり、 然るに凡有所説は約教を指し・皆令衆生は機縁を納るるなり、 十界の衆生を指して切
02 と云い凡有所説を指して、 究竟非二故名一也と云えり、一とは三千大千世界・十方法界を云うなり、其の上に人畜
03 等あるは地なり、 記の七に云く、切を衆に訓ずと文、仍つて一切の二字に法界を尽せり、 諸法は切なり実相は一
04 なり、所詮・法界実相の妙体・照而常寂の一理にして十界三千・一法性に非ずと云う事なし是を一と説くなり、 さ
05 て三千の諸法の己己に本分なれば切の義なり、 然らば一は妙・切は法なり、妙法の二字・一切の二字なり、無住之
06 本は妙の徳・立一切法は法の徳なり、 一切智地とは南無妙法蓮華経是なり一切智地・即一念三千なり、今末法に入
07 つて一切智地を弘通するは日蓮等の類い是なり、 然るに一とは一念なり切とは三千なり、 一心より松よ桜よと起
08 るは切なり、是は心法に約する義なり、色法にては手足等は切なり、 一身なるは一切なり、 所詮色心の二法・一
09 切智地にして南無妙法蓮華経なり云云。
01   一此の一切智地の四字   に法華経一部八巻文文句句を収めたり、此の一切智地とは三諦・一諦・非三非一な
02 り、三智に約すれば空智なり、 さては三諦とは云い難し、然りと雖も三諦・一諦の中の空智なり、 されば三諦に
03 於て三三九箇の三諦あり、 先ず空諦にて三諦を云う時は空諦と呼出だすが仮諦・空諦なるは空諦なり・不二するは
04 中道なり、 三諦同じく此くの如く心得可きなり、 所詮此の一切智地をば九識法性と心得可きなり、 九識法性を
05 ば、迷悟不二・凡聖一如なれば空と云うなり、 無分別智光を空と云うなり、此の九識法性とは、 いかなる所の法
06 界を指すや、法界とは十界なり、 十界即諸法なり、此の諸法の当体・本有の妙法蓮華経なり、 此の重に迷う衆生
07 の為に、 一仏現じて分別説三するは、九識本法の都を立出ずるなり、さて終に本の九識に引入する、 夫れを法華
08 経とは云うなり、 一切智地とは是れなり、 一切智地は我等衆生の心法なり心法即ち妙法なり一切智地とは是なり
09 云云。
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01   一根茎枝葉の事   仰に云く此の文をば釈には信戒定慧と云云、此の釈の心は草木は此の根茎枝葉を以て増長
02 と云うなり、 仏法修行するも又斯くの如し、 所詮我等衆生・法華経を信じ奉るは根をつけたるが如し、法華経の
03 文の如く是名持戒の戒体を本として、 正直捨方便・但説無上道の如くなるは戒なり、 法華経の文相にまかせて、
04 法華三昧を修するは定なり、 題目を唱え奉るは慧なり、所謂法界悉く生住異滅するは信・己己本分は戒・三世不改
05 なるは定なり、 各各の徳義を顕したるは慧なり、 是れ即ち法界平等の根茎枝葉なり、是れ即ち真如実相の振舞な
06 り、 所謂戒定慧の三学・妙法蓮華経なり、此れを信ずるを根と云うなり、 釈に云く三学倶に伝うるを名けて妙法
07 と曰うと云云。
01   一根茎枝葉の事   仰に云く此れは我等が一身なり、根とは心法なり茎とは我等が頭より足に至るまでなり、
02 枝とは手足なり、葉とは毛なり、 此の四を根茎枝葉と説けり、法界三千此の四を具足せずと云う事なし、 是れ即
03 ち 信戒定慧の体にして実相一理の南無妙法蓮華経の体なり、 法華不信の人は根茎枝葉ありて増長あるべからず枯
04 槁の衆生なるべし云云。
01   一枯槁衆生の事   仰に云く、法華経を持ち奉る者は、枯槁の衆生に非ざるなり、既に法華経の種子を受持し
02 奉るが故なり、 謗法不信の人は下種無き故に枯槁の衆生なり、されば、 妙楽大師の云く、余教を以て種と為さず
03 文。
01   一等雨法雨の事  仰に云く等とは平等の事なり、善人・悪人、二乗・闡提、正見・邪見等の者にも、妙法の雨
02 を惜まず平等にふらすと云う事なり、 されば法の雨を雨すと云う時は、 大覚世尊ふらしてに成り給えり、さて、
03 法の雨ふりてとよむ時は、 本より実相平等の法雨は、常住本有の雨なれば、 今始めてふるべきに非ず、されば、
04 諸法実相を、 譬喩品の時は風月に譬えたり、 妙楽大師は何ぞ隠れ何ぞ顕れんと釈せり、実相の法雨は三世常恒に
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01 して、隠顕更に無きなり、 所詮、等の字はひとしくとよむ時は、 釈迦如来の平等の慈悲なり、さて、ひとしきと
02 よむ時は、平等大慧の妙法蓮華経なり、 ひとしく法の雨をふらすとは、 能弘につけたり、ひとしき法の雨ふりた
03 りと読む時は、所弘の法なり、 所詮法と云うは、十界の諸法なり、 雨とは十界の言語・音声の振舞なり、ふると
04 は自在にして地獄は洞燃猛火、 乃至仏界の上の所作音声を、等雨法雨とは説けり、 此の等雨法雨は法体の南無妙
05 法蓮華経なり、 今末法に入つて、日蓮等の類いの弘通する題目は、等雨法雨の法体なり、此の法雨・地獄の衆生・
06 餓鬼・畜生等に至るまで 同時にふりたる法雨なり、 日本国の一切衆生の為に付属し給う法雨は題目の五字なり、
07 所謂日蓮建立の御本尊・南無妙法蓮華経是なり云云、 方便品には本末究竟等と云えり、 譬喩品には等一大車と云
08 えり、 此の等の字を重ねて説かれたり、 或は如我等無異と云えり、此の等の字は宝塔品の如是如是と同じなり、
09 所詮等とは南無妙法蓮華経なり、 法雨をふらすとは今身より仏身に至るまで持つや否やと云う 受持の言語なり云
10 云。
01   一等雨法雨の事  仰に云く此の時は妙法実相の法雨は十界三千・下は地獄・上は非想非非想まで横に十方・竪
02 に三世に亘つて 妙法の功徳をふるを等とは云うなり、 さてふるとは一切衆生の色心・妙法蓮華経と三世常住ふる
03 なり云云、一義に云く、 此の妙法の雨は九識本法の法体なり、 然るに一仏現前して説き出す所の妙法なれば、法
04 の雨をふらすと云うなり、 其の故は、ふらすと云うは・上より下へふるを云うなり、 仍つて従果向因の義なり、
05 仏に約すれば、第十の仏果より九界へふらす、 法体にては・ふる処も・ふらす処も、真如の一理なり識分にては八
06 識へふり下りたるなり、 然らば今日蓮等の類い南無妙法蓮華経を日本国の一切衆生の頂上にふらすを 法の雨をふ
07 らすと云うなり云云。
01   一如従飢国来忽遇大王ゼンの事  仰に云く此の文は中根の四大声聞・法華に来れる事、譬えばうえたる国より
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01  来りて大王のそなえに値うが如くの歓喜なりと云えり、 然らば此の文の如くならば法華已前の人は餓鬼界の衆生
02 なり、 既に飢国来と説けり、大王ゼンとは醍醐味なり、中根の声聞・法華に来つて一乗醍醐の法味を得て忽に法王
03 の位に備りたり、 忽の字は爾前の迂廻道の機に対して忽と云うなり、 速疾頓成の義を忽と云うなり、 仮令外用
04 の八相を唱うる事は所化をして仏道に進めんが為なり、 所詮末法に入つては謗法の人人は餓鬼界の衆生なり、 此
05 の経に値い奉り・南無妙法蓮華経に値い奉る事は併ら大王ゼンたり、 忽遇の遇の字肝要たり、釈に云く、成仏の難
06 きには非ず、 此の経に値うをかたしとすと云えり、 不軽品に云く復遇常不軽と云云、 厳王品に云く生値仏法云
07 云、大王のゼンに値いたり、 最も以て南無妙法蓮華経を信受し奉る可きなり、此の経文の如くならば法華より外の
08 一切衆生はいかに高貴の人なりとも餓鬼道の衆生なり、 十羅刹女は餓鬼界の羅刹なれども 法華経を受持し奉る故
09 に餓鬼に即する一念三千なり、 法華へ来らずんば何れも餓鬼飢饉の苦みなるべし、 所詮必ず中根の声聞領解の言
10 に我身を餓鬼に類する事は 餓鬼は法界に食ありと云えども食する事を得ざるなり、 諸法実相の一味の醍醐の妙法
11 あれども終に開覚に能えざる間 ・四十余年食にうえたり云云、 一義に云く序品方便より諸法実相の甘露顕れて南
12 無妙法蓮華経あれども 広略二重の譬説段まで悟らざるは餓鬼の満満とある食事をくらわざるが如し、 所詮日本国
13 の一切衆生は餓鬼界の衆生なり、大王ゼンとは所謂南無妙法蓮華経是なり、遇の字には人法を納めたり、 仍つて末
14 に如飢須教食と云えり、 うえたるとも大王のをしえを待ちて 醍醐を食するが如しと云えり、 今南無妙法蓮華経
15 有れども・今身より仏身に至るまでの受持をうけずんば 成仏は之れ有るべからず、 教とは爾前無得道・法華成仏
16 の事なり、 此の教をうけずんば法華経を読誦すとも 大王の位に登る事・之れ有る可からず醍醐は題目の五字なり
17 云云。
18   一大通智勝仏十劫坐道場仏法不現前不得成仏道の事   仰に云く此経文は一切衆生の本法流転を説かれたり、
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01 されば釈にも出世以前と判ぜり、 此は大通仏出世し給えども十小劫の間・一経も説給わずと云う経文なり、 仍て
02 仏法も現前せざる故に不得成仏と云えり、 されども釈を見るに出世以前と云う時は、 此の経文は何なる事ぞ此は
03 本法の重を説かれたり、 一仏出世すれば流転門となる、 一仏も出世無き時は、 本法不思議の体なり、迷悟もな
04 く、生仏もなく、 成仏もなく、不成仏もなきなり、 仍つて不得成仏道と云えり、抑も本法と申すは水があつくな
05 り、火がつめたくならば流転門なるべし、 水はいつもつめたく、火はいつもあつく、 地獄は何も火焔・餓鬼はい
06 つも飢渇・其の外・万法己己の当位・当位の侭なるを本法の体と云うなり、此の重を説き顕したる経文なり、 此の
07 本法の重は法華経なり、権教は流転なり、 此の流転の衆生を本法の重に引入せられんとての仏の出世なり、 其の
08 本法と云うは此の経なり、 所詮此の経文・本法とは大通智勝仏と云うは我等衆生の色心なり、 十劫と云うは十界
09 なり、 坐道場と云うは十界の住所其の侭道場なり、道場なれば寂光土なり、法界寂光土にして、 十界の衆生悉く
10 諸法実相の仏なれば一仏現ずべきに非ず、 迷の衆生無ければ説く可き法も無し、仍つて仏法不現前と云えり、 不
11 得成仏道とは始覚本覚の成仏と云う事も無し、 本法不思議の体にして万法本有なり、 之れに依つて釈には出世以
12 前と判ぜり、然らば、其の本法の体とは、 所詮南無妙法蓮華経なり、此の本法の内証に引入せんが為に、 仏は四
13 十余年誘引し、 終に第五時の本法を説き給えり、 今末法に入つて上行所伝の本法の南無妙法蓮華経を弘め奉る、
14 日蓮・世間に出世すと云えども、 三十二歳までは、此の題目を唱え出さざるは、仏法不現前なり、 此の妙法蓮華
15 経を弘めて、 終には本法の内証に引入するなり日蓮・豈大通智勝仏に非ずや、 日本国の一切衆生こそ十劫坐道場
16 とて十界其の侭・本法の南無妙法蓮華経へ引入するなり、 所詮信心を出だして 南無妙法蓮華経と唱え奉る可き者
17 なり云云。
18   一貧人見此珠其心大歓喜の事    仰に云く此珠とは一乗無価の宝珠なり、貧人とは下根の声聞なり、惣じて
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01 一切衆生なり、所詮末法に入つて此珠とは南無妙法蓮華経なり、貧人とは日本国の一切衆生なり、 此の題目を唱え
02 奉る者は心大歓喜せり、 されば見宝塔と云う見と此珠とは同じ事なり所詮此珠とは我等衆生の一心なり、 一念三
03 千なり此の経に値い奉る時、 一念三千と開くを珠を見るとは云うなり、 此の珠は広く一切衆生の心法なり此の珠
04 は体中にある財用なり、 一心に三千具足の財を具足せり、此の珠を方便品にして諸法実相と説き、 譬喩品にては
05 大白牛車・三草二木・五百由旬の宝塔、共に皆一珠の妙法蓮華経の宝珠なり、此の経文・色心の実相歓喜を説けり・
06 見此珠の見は色法なり、其心大と云うは心法なり、 色心共に歓喜なれば大歓喜と云うなり、 所詮此珠と云うは我
07 等衆生の心法なり、 仍つて一念三千の宝珠なり、所謂妙法蓮華経なり、 今末代に入つて此の珠を顕す事は日蓮等
08 の類いなり所謂未曾有の大曼荼羅こそ正しく一念三千の宝珠なれ、 見の字は日本国の一切衆生、 広くは一閻浮提
09 の衆生なり、 然りと雖も其心大歓喜と云う時は、 日蓮が弟子檀那等の信者をさすなり、所詮煩悩即菩提・生死即
10 涅槃と体達する、其心大歓喜なり、 されば、我等衆生・五百塵点の下種の珠を失いて、五道・六道に輪廻し、貧人
11 となる、 近くは三千塵点の下種を捨てて備輪諸道せり、 之れに依つて貧人と成る、 今此の珠を釈尊に値い奉り
12 て見付け得て本の如く取り得たり、 此の故に心大歓喜せり、 末法当今に於いて 妙法蓮華経の宝珠を受持し奉り
13 て、己心を見るに、十界互具・百界千如・一念三千の宝珠を分明に具足せり、 是れ併ら末法の要法たる題目なり云
14 云。
01   一如甘露見潅の事   仰に云く甘露とは天上の甘露なり、されば妙楽大師云く実相常住は甘露の如し是れ不死
02 の薬云云、 此の釈の心は諸法実相の法体をば甘露に譬えたり、 甘露は不死の薬と云えり、所詮妙とは不死の薬な
03 り、 此の心は不死とは法界を指すなり、 其の故は森羅三千の万法を不思議と歎じたり、生住異滅の当位当位・三
04 世常恒なるを不死と云う、 本法の徳として・水はくだりつめたく火はのぼりあつし、 此れを妙と云う、 此れ即
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01 ち不思議なり、此の重を不死とは云うなり、 甘露と妙とは同じ事なり、 然らば法界の侭に閣いて妙法なりと説く
02 を本法とも甘露とも云えり、 火は水にきゆる本法にして不死なり、十界己己の当位・当位の振舞・常住本有なるを
03 甘露とも妙法とも不思議とも本法とも止観とも云えり、 所詮末法に入つて甘露とは南無妙法蓮華経なり、 見潅と
04 は受持の一行なり云云。
01   一若有悪人以不善心等の事   仰に云く悪人とは在世にては提婆・瞿伽利等なり、不善心とは悪心を以て仏を
02 罵詈し奉る事を説くなり、滅後には悪人とは弘法・慈覚・智証・善導・法然等是なり、不善心とは謗言なり此の謗言
03 を書写したる十住心等・選択集等の謗法の書どもなり、 さて末法に入て善人とは日蓮等の類いなり 善心とは法華
04 弘通の信心なり所謂南無妙法蓮華経是なり云云。
01   一如是如是の事   仰に云く釈に云く法相の是に如し根性の是に如するなり文、法相の是に如すとは諸法実相
02 を重ねて如是と説かれたり、 根性の是に如すとは、九法界を説かれたり、 然れば機法共に釈迦如来の所説の如く
03 真実なりと証明し給えり、 始の如是は教一開会なり次の如是は人一開会なり、 権教の意は諸法を妄法ときらいし
04 隔別不融の教なり、 根性に於ては性欲不同なれば種種に説法し給えり、仍つて人も成仏せず、 今の経の心は諸法
05 実相の御経なれば十界平等に授くる所の妙法なり、 根性は不同なれども同じく如是性の一性なり、 所詮今末法に
06 入つての如法相是は塔中相承の本尊なり 如根性是也と云うは十界宛然の尊像なり法相は南無妙法蓮華経なり、 根
07 性は日本国の一切衆生広くは一閻浮提の衆生なり云云。
01   一是真仏子住淳善地の事   仰に云く末法当今に於て釈迦如来の真実の御子と云うは法華経の行者なり、其の
02 故は上の文に能於2来世1読2持此経1と説けり来世とは末法なり、読むと云うは法華経の如説修行の行者なり、弘
03 法・慈覚・智証・善導.法然等読みて云く第三の劣・戯論の法・捨閉閣抛.理同事勝等と読むは謗法にして三仏の御舌
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01 を切るに非ずや何に況や持たんをや、 伝教大師云く法華経を讚むると雖も還つて法華の心を死すとは是なり、 今
02 日蓮等の類い南無妙法蓮華経と唱え奉る人は、 読持此経の人なり、 豈是真仏子に非ずや 淳善地は寂光土に非ず
03 や、是真仏子の子の字は十界の衆生なり、 所詮此の子の字は法華経の行者に限る、 悉是吾子の子は孝不孝を分別
04 せざる子なり、我等皆似2仏子1の子は中根の声聞.仏子に似たりと説かれたり,為レ治2狂子1故の子は、久遠の下
05 種を忘れたれば物にくるう子なり、 仍つて釈尊の御子にも物にくるう子もあり、 不孝の子もあり、孝養の子もあ
06 り、所謂法華経の行者・真実の釈尊の御子なりと、釈迦・多宝・分身・三千三百万億那由佗の世界に充満せる諸仏の
07 御前にして孝・不孝の子を定めをき給えり、 父の業をつぐを以て子とせり、 三世の諸仏の業とは南無妙法蓮華経
08 是なり、 法師品に行如来事と説けり云云、 法華経は母なり釈尊は父なり 我等衆生は子なり、無量義経に云く諸
09 仏の国王と是の経の夫人と和合して 共に是の菩薩の子を生み給う文、 菩薩とは法華経の行者なり、法師品に云く
10 在家出家行菩薩道云云。
01   一非口所宣非心所測の事   仰に云く非口所宣は色法・非心所測は心法なり、色心の二法を以て大海にして教
02 化したる衆生を宣測するに非ずと云えり、末に至つては広導諸群生と説かれたり云云。
01   一不染世間法如蓮華在水従地而涌出の事   仰に云く、世間法とは全く貪欲等に染せられず、譬えば蓮華の水
02 の中より生ずれども淤泥にそまざるが如し、 此の蓮華と云うは地涌の菩薩に譬えたり、 地とは法性の大地なり所
03 詮法華経の行者は蓮華の泥水に染まざるが如し、 但だ唯一大事の南無妙法蓮華経を弘通するを本とせり、 世間の
04 法とは国王大臣より所領を給わり 官位を給うとも夫には染せられず、 謗法の供養を受けざるを以て不染世間法と
05 は云うなり、 所詮蓮華は水をはなれて生長せず水とは南無妙法蓮華経是なり、 本化の菩薩は蓮華の如く過去久遠
06 より已来・本法所持の菩薩なり蓮華在水とは是なり、 所詮此の水とは我等行者の信心なり、蓮華は本因本果の妙法
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01 法なりなり信心の水に妙法蓮華は生長せり、地とは我等衆生の心地なり涌出とは広宣流布の時一閻浮提の一切衆生・
02 法華経の行者となるべきを涌出とは云うなり云云。
01   一願仏為未来演説令開解の事 仰に云く此の文は弥勒菩薩等末法当今の為に我従2久遠1来教2化是等1衆の言
02 を演説令開解せしめ給えと請じ奉る経文なり、 此の請文に於て寿量品は顕れたり 五百塵点の久遠の法門是なり、
03 開解とは教主釈尊の御内証に 此の分ををさえ給うを願くは開かしめ給え 同じく一会の大衆の疑をも解かしめ給え
04 と請するなり、 此の開解の語を寿量品にして 汝等当信解と誡め給えり、 若し開解し給わずんば大衆皆法華経に
05 於て疑惑を生ず可しと見給えり、 疑を生ぜば三悪道に堕つべしと既に弥勒菩薩申されたり、 此の時寿量品顕れず
06 んば即当堕悪道すべきなり寿量品の法門大切なるは是なり、 さて此の開解の開に於て二あり、 迹門の意は諸法を
07 実相の一理と会したり、 さては諸法を実相と開きて見れば 十界悉く妙法実相の一理なりと開くを開仏智見と説け
08 り、 さて本門の意は十界本有と開いて始覚のきづなを解きたり、 此の重を開解と申されたり仍つて演説の二字は
09 釈尊・開解の両字は大衆なり、 此の演説とは寿量品の久遠の事なり、終に釈尊・寿量品を説かせ給いて一切大衆の
10 疑惑を破り給えり云云。
01   一譬如良医智慧聰達の事  仰に云く良医とは教主釈尊・智慧とは八万法蔵・十二部経なり聡達とは三世了達な
02 り薬とは妙法の良薬なり、 さて寿量品の意は十界本有と談ぜりされば此の薬師とは一切衆生の事なり、 智慧とは
03 万法己己の自受用報身の振舞なり 聡達とは自在自在に振舞うを聡達とは云うなり、 所詮末法・当今の為の寿量品
04 なれば 法華経の行者の上の事なり、 此の智慧とは南無妙法蓮華経なり、 聡達とは本有無作三身なりと云う事な
05 り、元品の無明の大良薬は南無妙法蓮華経なり、 智とは一切衆生の力なり、慧とは一切衆生の言語音声なり、 故
06 に偈頌に云く我智力如是慧光照無量と云えり云云。
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01   一一念信解の事   仰に云く此の経文は一念三千の宝珠を納めたる函なり此れは現在の四信の初の一念信解な
02 り、 さて滅後の五品の初の十心具足初随喜品も一念三千の宝を積みたる函なり、 法華経の骨髄・末法に於て法華
03 経の行者の修行の相貌分明なり、 所詮信と随喜とは心同じなり 随喜するは信心なり信心するは随喜なり 一念三
04 千の法門は信心随喜の函に納りたり、 又此の函とは所謂南無妙法蓮華経是なり 又此の函は我等が一心なり此の一
05 心は万法の総体なり 総体は題目の五字なり、 一念三千と云うが如く一心三千もあり釈に云く介爾も心有れば即ち
06 三千を具すと、又宝函とは我等が色心の二法なり。 本迹両門・生死の二法・止観の二法なり所詮信心の函に入れた
07 る南無妙法蓮華経の函なり云云。
01   一見仏聞法信受教誨の事    仰に云く此の経文は一念随喜の人は五十の功徳を備うべし、然る間見仏聞法の
02 功徳を具足せり、 此の五十展転の五十人の功徳を随喜功徳品には説かれたり、 仍つて世世・生生の間見仏聞法の
03 功徳を備えたり、 所詮末法に入つては仏を見るとは寿量品の釈尊・法を聞くとは南無妙法蓮華経なり、 教誨とは
04 日蓮等の類い教化する所の諸宗無得道の教誡なり、 信受するは法華経の行者なり、 所詮・寿量開顕の眼の顕れて
05 は、此の見仏は無作の三身なり、 聞法は万法己己の音声なり、 信受教誨は本有随縁真如の振舞なり、 是れ即ち
06 色心の二法なり、 見聞とは色法なり、 信受は信心領納なれば心法なり、 所謂色心の二法に備えたる南無妙法蓮
07 華経是なり云云。
01   一若復有人以七宝満是人所得其福最多の事   仰に云く此の経文は七宝を以て三千大千世界に満てて四聖を供
02 養せんよりは 法華経の一偈を受持し奉らんにはをとれりと説かれたり、 天台大師は 生養成栄の四の義を以て、
03 法華経の功徳を釈し給えり、 所詮末法に入つては題目の五字即ち是なり、 此の妙法蓮華経の五字は万法能生の父
04 母なり、 生養成栄も亦復是くの如きなり、仍て釈には法を以つて本と為すと釈せり、三世十方の諸仏は、 妙法蓮
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01 華経を以て父母とし給えり、 此の故に四聖を供養するよりも法華経を持つは勝れたり、 七宝は世間の財宝なり、
02 四聖は滅に帰する仏菩薩羅漢なり、 さて妙法の功徳は一得永不失なれば朽失せざる功徳なり、 此の故に勝れたり
03 云云。
01   一妙音菩薩の事    仰に云く妙音菩薩とは、十界の語言音声なり、此の音声悉く慈悲なり、菩薩とは是れな
02 り。
01   一爾時無尽意菩薩の事   仰に云く此の菩薩は空仮中の三諦なり、意の一字には一切の法門を摂得するなり意
02 と云うは中道の事なり無は空諦なり尽とは仮諦なり、 所謂意と云うは南無妙法蓮華経なり、 一切諸経の意三世の
03 諸仏の題目の五字なり所詮法華の行者は信心を以て意とせり云云。
01   一観音妙智力の事    仰に云く妙とは不思議なり、智とは随縁真如の智力なり、森羅三千の自受用智なり、
02 観音は円観なり、 円観とは一念三千なり、観音とは法華の異名なり、 観音と法華とは眼目の異名と釈する間法華
03 経の異名なり、観とは円観・音は仏機なり、 仍つて観音の二字は人法一体なり、所謂一心三観・一念三千是なり云
04 云。
01   一自在之業の事    仰に云く此の自在之業とは自受用報身の智力なり、森羅三千の諸法作業をさして云うな
02 り、 其の所作のまま法華経の意は不思議の自在之業なりと説けり、 此の自在之業の本は南無妙法蓮華経是なり云
03 云。
01   一妙法蓮華経陀羅尼の事   仰に云く妙法蓮華経陀羅尼とは正直捨方便・但説無上道なり、五字は体なり陀羅
02 尼は用なり妙法の五字は我等が色心なり、 陀羅尼は色心の作用なり、所詮陀羅尼とは呪なり、 妙法蓮華経を以て
03 煩悩即菩提・生死即涅槃と呪いたるなり、 日蓮等の類い南無妙法蓮華経を受持するを以て呪とは云うなり、 若有
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01 能持即持仏身とまじないたるなり、 釈に云く陀羅尼とは諸仏の密号と判ぜり、 所詮法華折伏破権門理の義遮悪持
02 善の義なり云云。
03   一六万八千人の事   仰に云く六とは六根なり、万とは六根に具わる処の煩悩なり八とは八苦の煩悩なり千と
04 は八苦に具足する煩悩なり、 是れ即ち法華経に値い奉りて六万八千の功徳の法門と顕るるなり、 所詮日蓮等の類
05 い南無妙法蓮華経と唱え奉る外に六万八千の功徳の法門之れ無きなり云云。
01   一妙荘厳王の事   仰に云く邪見即正の手本なり、所詮森羅三千の万法・妙を以て荘厳したる王なり妙とは称
02 歎の語なり荘厳とは色法なり 王とは心法なり諸法の色心を不思議とほめたり、 然れば、妙荘厳王の言・三千の諸
03 法・三諦法性の当位なり、 所詮日蓮等の類南無妙法蓮華経を以て色心を荘厳したり、 此の荘厳とは別してかざり
04 立てたるには非ず当位即妙の荘厳なり、煩悩即菩提・生死即涅槃是なり云云。
01   一華厳大日観経等の凡夫の得道の事   仰に云く彼等の衆皆各各其の経経の得道に似たれども真実には法華の
02 得道なり、 所謂三五下種の輩なり経に云く始見我身聞我所説文、 妙楽大師云く脱は現に在りと雖も具に本種を騰
03 ぐと云えり本種と云うは南無妙法蓮華経是なり云云。
01   一題目の五字を以て下種の証文と為すべき事    仰に云く経に云く教無量菩薩畢竟住一乗文、妙楽大師の云
02 く余教を以て種と為さず文、 無量の菩薩とは日本国の一切衆生を菩薩と開会して題目を教えたり、 畢竟とは題目
03 の五字に畢竟するなり 住一乗とは乗此宝乗直至道場是なり文、 下種とはたねを下すなり種子とは成仏の種の事な
04 り、 上の経文に教無量菩薩の教の一字は下種の証文なり 教とは題目を授くる時の事なり、権教無得道・法華得道
05 と教うるを下種とは云うなり、 末法に入つて此の経文を出ださん人は有る可からざるなり 慥に塔中相承の秘文な
06 り下種の証文秘す可し云云。
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01   一題目の五字末法に限つて持つ可きの事   仰に云く経に云く、悪世末法時・能持是経者文、此の経とは題目
02 の五字なり、 能の一字に心を留めて之れを案ずべし云云、 末代悪世・日本国の一切衆生に持てと云う経文なり云
03 云。
01   一天台云く是我弟子応弘我法の事   仰に云く我が弟子とは上行菩薩なり我が法とは南無妙法蓮華経なり、権
02 教・乃至始覚等は・随他意なれば他の法なり、 さて此の題目の五字は五百塵点より已来、証得し給える法体なり故
03 に我が法と釈せり、 天台云く此の妙法蓮華経は本地甚深の奥蔵なり、 三世の如来の証得し給える所とは 是れな
04 り。
01   一色心を心法と云う事   仰に云く玄の十に云く請を受けて説く時只だ是れ教の意を説く教意は是れ仏意なり
02 仏意は即ち是れ仏智なり 仏智至つて深し是の故に三止四請す此くの如きの艱難・余経に比するに 余経は則ち易し
03 云云、 此の釈の意分明なり教意と仏意と仏智とは何れも同じ事なり、 教は二十八品なり意は題目の五字なり惣じ
04 て仏意とは法華経の異名なり、 法華経を以て一切経の心法とせり又題目の五字を以て一代説教 ・本迹二門の神と
05 せり、 経に云く妙法蓮華経如来寿量品是なり、 此の題目の五字を以て三世の諸仏の命根とせり さて諸経の神法
06 華経なりと云う証文は妙法蓮華経方便品と題したる是なり云云。
01   一無作の応身我等凡夫也と云う事   仰に云く釈に云く凡夫も亦三身の本を得たりと云云、此の本の字は応身
02 の事なりされば本地無作本覚の体は無作の応身を以て本とせり 仍つて我等凡夫なり、 応身は物に応う身なり其の
03 上寿量品の題目を唱え出し奉るは真実に応身如来の慈悲なり云云。
01   一諸河無鹹の事   仰に云く此無鹹の事をば諸教無得道に譬えたり大海のしをはゆきをば法華経の成仏得道に
02 譬えたり、 又諸経に一念三千の法門無きは、諸河にうしをの味無きが如く死人の如し、 法華経に一念三千の法門
0839top
01 有るは・うしをの大海にあるが如く生きたる人の如し、 法華経を浅く信ずるは・あわのうしをの如し、深く信ずる
02 は、海水の如し、 あわはきえやすし、海水は消えざるなり、如説修行最も以て大切なり、然りと雖も、 諸経の大
03 河の極深なるも、 大海のあわのしをの味をば具足せず、 権教の仏は法華経の理即の凡夫には 百千万倍劣るなり
04 云云。
01   一妙楽大師の釈に末法之初冥利不無の釈の事   仰に云く此の釈の心は末法に於て冥の利益・迹化の衆あるべ
02 しと云う事なり,此の釈は薬王品の此経即為2閻浮提人病之良薬1若人有レ病得レ聞2是経1病即消滅不老不死云云,
03 此の経文の意を底に含めて釈せり、 妙楽云く然るに後五百は、 且らく一往に従う、末法の初冥利無きにあらず、
04 且く大教の流行す可き時に拠る、 故に五百と云う文、 仍つて本化の菩薩は顕の利益・迹化は冥の利益なるべし云
05 云。
01   一爾前経瓦礫国の事   仰に云く法華経の第三に云く、如下従2飢国1来忽遇中大王?上と云云、六の巻に云く
02 我此土安穏天人常充満我浄土不 レ毀云云、 此の両品の文の意は権教は悉く瓦礫の旅の国なり、 あやまりて本国と
03 思いて都と思わん事迷の故なり、 一往四十二年住したる国なれば衆生皆本国と思えり、 本国は此の法華経なり、
04 信解品に云く遇向本国と、 三五の下種の所を指して本国とも浄土とも大王ゼンとも云うなり、 下種の心地即ち受
05 持信解の国なり云云。
01   一無明悪酒の事  仰に云く無明の悪酒に酔うと云う事は弘法・慈覚・智証・法然等の人人なり、無明の悪酒と
02 云う証文は勧持品に云く、 悪鬼入其身是なり、 悪鬼と悪酒とは同じ事なり 悪鬼の鬼は第六天の魔王の事なり悪
03 酒とは無明なり無明即魔王魔王即無明なり、 其身の身とは日本国の謗法の一切衆生なり、 入ると呑むとは同じ事
04 なり、 此の悪鬼入る人は阿鼻に入る、 さて法華経の行者は入2仏知見道1故と見えて仏道に入る得入無上道とも説
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01 相構え相構えて無明の悪酒を恐るべきなり云云。
02   一日蓮己証の事   仰に云く寿量品の南無妙法蓮華経是れなり、地涌千界の出現・末代の当世の別付属の妙法
03 蓮華経の五字を 一閻浮提の一切衆生に取次ぎ給うべき仏勅使の上行菩薩なり云云、 取次とは取るとは釈尊より上
04 行菩薩の手へ取り給うさて上行菩薩又末法当今の衆生に取次ぎ給えり 是を取次ぐとは云うなり、 広くは末法万年
05 までの取次なり、是を無令断絶とは説かれたり、 又結要の五字とも申すなり云云、 上行菩薩取次の秘法は所謂南
06 無妙法蓮華経なり云云。
01   一釈尊の持言秘法の事   仰に云く持言の秘法の経文とは寿量品に云く、毎自作是念の文是なり、毎の字は三
02 世常住なり、是念の念とは、 わすれ給わずして内証に具足し給えり故に持言なり、 秘法とは南無妙法蓮華経是な
03 り秘す可し秘す可し云云。
01   一日蓮門家の大事の事   仰に云く此の門家の大事は涌出品の前三後三の釈なり、此の釈無くんば本化迹化の
02 不同・像法付属・末法付属・迹門・本門等の起尽之れ有る可からず、既に止善男子の止の一字は日蓮門家の大事なり
03 秘す可し秘す可し、 総じて止の一字は正しく日蓮門家の明鏡の中の明鏡なり 口外も詮無し、上行菩薩等を除いて
04 は総じて余の菩薩をば悉く止の一字を以て成敗せり云云。
01   一日蓮が弟子臆病にては叶う可からざる事   仰に云く此の意は問答対論の時は爾前迹門の釈尊をも用う可か
02 らざるなり、 此れは臆病にては釈尊を用いまじきかなんど思うべき故なり、 釈尊をさえ用う可からず何に況や其
03 の以下の等覚の菩薩をやまして謗法の人人に於ておや、 所謂南無妙法蓮華経の大音声を出だして 諸経諸宗を対治
04 すべし、巧於難問答其心無所畏とは是なり云云。
01   一妙法蓮華経の五字を眼と云う事   仰に云く法華第四に云く、仏滅度後能解其義是諸天人世間之眼と云云、
0841top
01 此の経文の意は、法華経は人天・二乗・菩薩・仏の眼目なり、此の眼目を弘むるは日蓮一人なり、 此の眼には五眼
02 あり、所謂肉眼・天眼・慧眼・法眼・仏眼なり、此の眼をくじりて別に眼を入れたる人あり、所謂弘法大師是なり、
03 法華経の一念三千・即身成仏・諸仏の開眼を止めて、 真言経にありと云えり、是れ豈法華経の眼を抽れる人に非ず
04 や、又此の眼をとじふさぐ人あり所謂法然上人是れなり、 捨閉の閉の文字は、閉眼の義に非ずや、 所詮能弘の人
05 に約しては、日蓮等の類い世間之眼なり、 所弘の法に随えば、此の大乗経典は、是れ諸仏の眼なり、 所詮眼の一
06 字は一念三千の法門なり、 六万九千三百八十四字を此の眼の一字に納めたり、 此の眼の字顕われて見れば煩悩即
07 菩提・生死即涅槃なり、今末法に入つて、 眼とは所謂未曾有の大曼荼羅なり、 此の御本尊より外には眼目無きな
08 り云云。
01   一法華経の行者に水火の行者の事   仰に云く総じて此の経を信じ奉る人に水火の不同あり、其の故は火の如
02 きの行者は多く水の如き行者はまれなり、 火の如しとは此の経のいわれをききて 火炎のもえ立つが如く貴く殊勝
03 に思いて信ずれども・やがて消失す、此れは当座は大信心と見えたれども・其の信心の灯・きゆる事やすし・さて水
04 の如きの行者と申すは 水は昼夜不退に流るるなり少しもやむ事なし、 其の如く法華経を信ずるを水の行者とは云
05 うなり云云。
01   一女人と妙と釈尊と一体の事   仰に云く女人は子を出生す、此の出生の子・又子を出生す此くの如く展転し
02 て無数の子を出生せり、 此の出生の子に善子もあり・悪子もあり端厳美麗の子もあり・醜陋の子もあり・長のひく
03 き子もあり・大なる子もあり・男子もあり・女子もあり云云、所詮・妙の一字より万法は出生せり地獄もあり・餓鬼
04 もあり・乃至仏界もあり.権教もあり・実教もあり・善もあり・悪もあり.諸法を出生せり云云、又釈迦一仏の御身よ
05 り一切の仏・菩薩等悉く出生せり、阿弥陀・薬師・大日等は悉く釈尊の一月より万水に浮ぶ所の万影なり、 然らば
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01 女人と妙と釈尊との三全く不同無きなり、 妙楽大師の云く妙即三千・三千即法云云、 提婆品に云く有2一宝珠1価
02 直2三千大千世界1是なり云云。
01   一置不呵責の文の事   仰に云く此の経文に於ては日蓮等の類のおそるべき文字一字之れ有り、若し此の文字
02 を恐れざれば縦い当座は事なしとも 未来無間の業たるべし、 然らば無間地獄へ引き入る獄卒なるべし夫れは置の
03 一字是なり云云、 此の置の一字は獄卒なるべし 謗法不信の失を見ながら聞きながら云わずして置かんは必ず無間
04 地獄へ堕在す可し、 仍つて置の一字・獄卒・阿防羅刹なるべし尤も以て恐る可きは置の一字なり云云、所詮此の経
05 文の内に獄卒の一字を恐るべきなり云云、 此の獄卒の一字を深く之を思う可し、 日蓮は此の字を恐る故に建長五
06 年より今弘安年中まで在在所所にて申しはりしなり 只偏に此の獄卒を脱れんが為なり、 法華経には若人不信とも
07 生疑不信者とも説き給えり、 法華経の文文句句をひらき涅槃経の文文句句をひらきたりとも 置いていわずんば叶
08 う可からざるは此の置の一字より外に獄卒は無きなり云云。
01   一異念無く霊山浄土へ参る可き事   仰に云く異念とは不信の事なり 若し我が心なりとも不信の意出来せば
02 忽に信心に住すべし、 所詮不信の心をば師となすべからず 信心の心を師匠とすべし 浄心信敬に法華経を修行し
03 奉るべきなり、 されば能持2是経1能説2此経1と説きて能の字を説かせ給えり霊山ここにあり四土一念皆常寂光
04 とは是なり云云。
01   一不可失本心の事   仰に云く此の本心と云うは法華経の信心の事なり、失と申すは謗法の人にすかされて法
02 華経を捨つる心の出来するを云うなり、 されば天台大師云く若し悪友に値えば則ち本心を失うと云云、 此の釈に
03 悪友とは謗法の人の事なり、 本心とは法華経なり、 法華経を本心と云う意は諸法実相の御経なれば十界の衆生の
04 心法を法華経とは申すなり、 而るに此の本心を引きかえて迷妄の法に着するが故に本心を失うなり、 此の本心に
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01 於ては三五の下種の法門なり、 若し善友に値う時んば失う所の本心を忽に見得するなり、 所謂迦葉・舎利弗等是
02 なり、 善友とは釈迦如来・悪友とは第六天の魔王・外道・婆羅門是なり、所詮末法に入つて本心とは日蓮弘通の南
03 無妙法蓮華経是なり、 悪友とは法然・弘法・慈覚・智証等是なり、若し此の題目の本心を失せんに於ては又三五塵
04 点を経べきなり、 但、如レ是展転至2無数劫1なるべし、失とは無明の酒に酔いたる事なり仍て本心を失うと云う
05 なり、此の酔をさますとは権教を捨てしむるを云うなり云云。
01   一天台大師を魔王障礙せし事  仰に云く此の事は随分の秘蔵なり、其の故は天台大師・一心三観・一念三千の
02 観法を説き顕さんとし給いしかば 父母・左右の膝に住して悩まし奉り障礙し給いしなり、 是れ即ち第六天の魔王
03 が父母の形を現じて障礙せしなり、 終に魔王に障礙せられ給わずして摩訶止観の法門起れり、 何に况や今日蓮が
04 弘むる南無妙法蓮華経は三世の諸仏の成道の師・十方薩タの得道の師匠たり、 其の上・正像二千年の仏法は爾前迹
05 門なれば、魔王自身・障礙をなさずともなるべし、 今末法の時は、所弘の法は、法華経・本門の事の一念三千の南
06 無妙法蓮華経なり、 能弘の導師は本化地涌の大菩薩にてましますべし、 然る間魔王自身下りて障礙せずんば叶う
07 可からざるなり、仍つて自身下りたる事分明なり、 所謂道隆・良観・最明寺等是なり、然りと雖も諸天善神等は日
08 蓮に力を合せ給う故に竜口までもかちぬ、 其の外の大難をも脱れたり、今は魔王もこりてや候うらん、 日蓮死去
09 の後は残党ども軍を起すべきか、 故に夫れも落居は叶う可からざるなり、 其の故は第六天の魔王の眷属日本国に
10 四十九億九万四千八百二十八人なりしが ・今は日蓮に降参したる事多分なり、 経に云く悪鬼入其身とは是なり、
11 此の合戦の起りも、 所詮南無妙法蓮華経是なり、 魔王に於て体の魔王・用の魔王あり、体の魔王とは法性同共の
12 魔王なり妙法の法是なり、 用の魔王とは此れより出生する第六天の魔王なり、 用の魔王は障礙をなす、然れども
13 体用同共の諸法実相の一理なり、 唯有一門の智慧の門に入り、無明法性一体なるべきなり云云、 所謂摩訶止観の
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01 大事の法門是なり、 法華経の一代説教に勝れたるは此の故なり、 一念三千とは是なり、法華経第三に云く魔及魔
02 民皆護2仏法1云云。
03   一法華経極理の事   仰に云く迹門には二乗作仏・本門には久遠実成此をさして極理と云うなり、但し是も未
04 だ極理にたらず、 迹門にして極理の文は諸仏智慧甚深無量の文是れなり、 其の故は此の文を受けて文句の三に云
05 く竪に如理の底に徹し横に法界の辺を窮むと釈せり、 さて本門の極理と云うは如来秘密神通之力の文是なり、 所
06 詮日蓮が意に云く法華経の極理とは南無妙法蓮華経是なり、 一切の功徳法門・釈尊の因行果徳の二法・三世十方の
07 諸仏の修因感果・法華経の文文句句の功徳を取り聚めて 此の南無妙法蓮華経と成し給えり、 爰を以て釈に云く惣
08 じて一経を結するに唯だ四のみ、 其の枢柄を撮つて之を授与す云云、 上行菩薩に授与し給う題目の外に法華経の
09 極理は無きなり云云。
01   一妙法蓮華経五字の蔵の事   仰に云く此の意は妙法の五字の中には一念三千の宝珠あり五字を蔵と定む、天
02 台大師玄義の一に判ぜり、 所謂此の妙法蓮華経は本地甚深の奥蔵なり云云、 法華経の第四に云く是れ法華経蔵と
03 云云、妙華厳法阿含蓮方等華般若経涅槃,又云く妙涅槃法般若蓮方等華阿含経華厳,已上妙法蓮華経の五字には十界三
04 千の宝珠あり、三世の諸仏は此の五字の蔵の中より或は華厳の宝を取り出だし或は阿含方等般若の宝を取り出だし種
05 種説法し給えり、 加之・論師・人師等の疏釈も悉く此の五字の中より取り出だして一切衆生に与え給えり、 此等
06 は皆五字の中より取り出だし給えども 妙法蓮華経の袋をば持ち給わず、 所詮五字は上行菩薩の付属にして更に迹
07 化の菩薩・諸論師いろはざる題目なり、 仍つて上行所伝の南無妙法蓮華経は蔵なり、 金剛不壊の袋なり此の袋を
08 そのまま日本国の一切衆生には与え給えり、 信心を以て此の財宝を受取るべきなり、 今末法に入つては日蓮等の
09 類い受取る所の如意宝珠なり云云。
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01   一我等衆生の成仏は打かためたる成仏と云う証文の事   仰に云く経に云く無上宝聚不求自得の文是なり、我
02 等凡夫即極とはたと打かためたる成仏なり所謂不求自得する所の南無妙法蓮華経なればなり云云。
01   一爾前法華の能くらべの事  仰に云く爾前の経にして十悪・五逆等の成仏の能なし、今法華経に十界皆成・分
02 明なり、爾前の経の無能と云う証文とは方便品に云く但以2仮名字1引2導於衆生1の文是なり、さて法華経は能と
03 云う証文は諸法実相の文是なり、今末法に入つて第一の能たる南無妙法蓮華経是なり云云。
01   一授職の法体の事   仰に云く此の文は唯仏与仏の秘文なり輙く云う可からざる法門なり、十界三千の諸法を
02 一言を以て授職する所の秘文なり、 其の文とは神力品に云く皆於此経宣示顕説の文是なり、 此の五字即十界同時
03 に授職する所の秘文なり十界己己の当体・本有妙法蓮華経なりと授職したる秘文なり云云。
01   一末代譲状の事   仰に云く末代とは末法五百年なり、 譲状とは手継の証文たる南無妙法蓮華経是なり此れ
02 を譲るに二義之れ有り、 一には跡をゆずり二には宝をゆずるなり、 一に跡を譲ると云うは釈迦如来の跡を法華経
03 の行者にゆずり給えり、 其の証文に云く如我等無異の文是なり、 次に財宝をゆずると云うは釈尊の智慧戒徳を法
04 華経の行者にゆずり給えり、 其の証文に云く無上宝聚不求自得の文是なりと云云、 さて此の題目の五字は譲状な
05 り云云。
01   一本有止観と云う事   仰に云く本有の止観と云うは大通を以て習うなり、久遠実成道の仏と大通智勝仏と釈
02 尊との三仏を次の如く仏法僧の三宝と習うなり、 此の故に大通は本有の止観なれば 即ち三世の諸仏の師範と定め
03 たり、仍つて大通仏を法と習う、 此の法は妙法蓮華経是なり、 仍つて証文に云く大通智勝仏十劫坐道場の文是な
04 り十劫は即ち十界なり云云。
01    一入末法四弘誓願の事  仰に云く四弘誓願をば一文に口伝せり、其の一文とは所謂神力品に云く於2我滅度
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01 後1応レ受2持斯経1是人於2仏道1決定無レ有疑と云云 、 此の経文は法華経の序品より始て四弘誓願の法門を説
02 き終りてさて上行菩薩に妙法蓮華経を付属し給う時・妙法の五字に四弘誓願を結びて結句に説かせ給えり滅後とは末
03 法の始の五百年なり、 衆生無辺誓願度と云うは是人の人の字なり、 誓願は地涌の本化の上行菩薩の誓願に入らん
04 と此れ即ち仏道の二字度脱なり、 煩悩無辺なれども煩悩即菩提・生死即涅槃と体達す、 仏道に入つては煩悩更に
05 なし受持斯経の所には法門無尽誓願知分明なり 無上菩提誓願証と云うは 是人於仏道決定無有疑と定めたる四弘誓
06 願分明なり、 教主釈尊・末法に入つて四弘誓願も此の文なり、 上行菩薩の四弘誓願も此の文なり深く之を思案す
07 可し云云。
01   一四弘誓願応報如理と云う事   仰に云く衆生無辺誓願度は応身なり、煩悩無辺誓願断は報身なり、法門無尽
02 誓願知は智法身なり、 無上菩提誓願証は理法身なり、所詮誓願と云うは題目弘通の誓願なり、 釈に云く彼が為に
03 悪を除くは即ち是れ彼が親なりと是なり云云。
01   一本来の四弘の事   仰に云く諸法の当体本来四弘なり、其の故は衆生と云うは法界なり、所詮法界に理智慈
02 悲の三を具足せり、 応報法の三身・諸法の自体なり、 無作の応身を以て衆生無辺誓願度と云うなり、無作の報身
03 には智徳断徳の二徳を備えたり、 煩悩無辺誓願断を以て本有の断徳とは定めたり、 法門無尽誓願知を以て本有の
04 智徳とす、 無上菩提誓願証を以て無作の法身と云うなり、 所詮四弘誓願の中には衆生無辺誓願度を以て肝要とす
05 るなり、 今日蓮等の類いは南無妙法蓮華経を以て衆生を度する 此より外は所詮なきなり、 速成就仏身是なり云
06 云、所詮四弘誓願は一念三千なり、 さて四弘の弘とは何物ぞ、所謂上行所伝の南無妙法蓮華経なり、 釈に云く四
07 弘能所泯すと云云、 此の釈は止観に前三教を釈せり、 能と云うは如来なり所とは衆生なり能所各別するは権教の
08 故なり、 法華経の心は能所一体なり泯すと云うは権教の心は機法共に一同なれば 能所泯すと云うなりあえて能所
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01 能所一同して成仏する所を泯すと云うには非ざるなり、今末法に入つて法華経の行者は四弘能所感応の即身成仏の四
02 弘なり云云。
03       御講聞書 終
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四十九院申状
01   駿河の国蒲原の庄・四十九院の供僧等謹んで申す。
02   寺務・二位律師厳誉の為に日興並に日持.承賢.賢秀等・所学の法華宗を以て外道大邪教と称し往古の住坊並に田
03 畠を奪い取り寺内を追い出さしむる謂れ無き子細の事。
04   右釈迦一代教の中には天台を以て宗匠と為す、如来五十年の間は法華を以て真実と為す、 是れ則ち諸仏の本懐
05 なり抑亦多宝の証誠なり、上一人より下万民に至るまで帰敬年旧り渇仰日に新なり。
06   而るに厳誉の状に云く「四十九院の内・日蓮が弟子等居住せしむるの由・其の聞え有り、彼の党類仏法を学し乍
07 ら外道の教に同じ正見を改めて 邪義の旨に住せしむ以ての外の次第なり、 大衆等評定せしめ寺内に住せしむべか
08 らざるの由の所に候なり」云云。
09   茲に因つて日興等忽に年来の住坊を追い出され已に御祈祷便宜の学道を失う、 法華の正義を以て外道の邪教と
10 称するは何の経・何れの論文ぞや、 諸経多しと雖も未だ両眼に触れず 法華の中に諸経を破るの文之有りと雖も諸
11 経の裏に法華を破るの文全く之無し、 所詮已今当の三説を以て教法の方便を破摧するは 更に日蓮聖人の莠言に非
12 ず皆是れ釈尊出世の金口なり。
13   爰に真言及び諸宗の人師等・大小乗の浅深を弁えず権実教の雑乱を知らず、 或は勝を以て劣と称し或は権を以
14 て実と号し意樹に任せて砂草を造る、 仍て愚癡の輩・短才の族・経経顕然の正説を伺わず 徒に師資相伝の口決を
15 信じ秘密の法力を行ずと雖も真実の験証無し、 天地之が為に妖蘗を示し 国土之が為に災難多し、 是れ併ら仏法
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01 の邪正を糺さず 僧侶の賢愚を撰ばざる故なり、 夫れ仏法は王法の崇尊に依つて威を増し 王法は仏法の擁護に依
02 つて長久す、 正法を学ぶの僧を以て外道と称せらるるの条理豈然る可けんや外道か外道に非ざるか早く厳誉律師と
03 召し合わせられ真偽を糺されんと欲す。
04   且去る文応年中・師匠日蓮聖人・仏法の廃れたるを見・未来の災を鑒み諸経の文を勘え一巻の書を造る立正安国
                                                 論と号す、
05 異国の来難果して以て符合し畢んぬ未萠を知るを聖と謂つ可きか、大覚世尊.霊山・虚空.二処・三会・二門・八年の
06 間.三重の秘法を説き窮むと雖も仏滅後二千二百二十余年の間・月氏の迦葉.阿難・竜樹・天親等の大論師・漢土の天
07 台・妙楽・日本の伝教大師等・内には之を知ると雖も外に之を伝えず第三の秘法今に残す所なり、 是偏に末法闘諍
08 の始・他国来難の刻・一閻浮提の中の大合戦起らんの時・国主此の法を用いて兵乱に勝つ可きの秘術なり、 経文赫
09 赫たり所説明明たり、 彼れと云い此れと云い国の為・世の為・尤も尋ね聞し食さるべき者なり、仍て款状を勒して
10 各言上件の如し。
11                                     承賢
12                                     賢秀
13                                     日持
14                                     日興
15       弘安元年三月 日
滝泉寺申状    弘安二年十月    五十八歳御代作
01   駿河の国・富士下方滝泉寺の大衆・越後房日弁・下野房日秀等謹んで弁言す。
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01   当寺院主代・平左近入道行智・条条の自科を塞ぎ遮らんが為に不実の濫訴を致す謂れ無き事。
02   訴状に云く日秀・日弁・日蓮房の弟子と号し法華経より外の余経或は真言の行人は皆以て今世後世叶う可からざ
03 るの由・之を申す云云取意。
04   此の条は日弁等の本師日蓮聖人・去る正嘉以来の大彗星大地動等を観見し 一切経を勘えて云く当時日本国の体
05 たらく権小に執著し 実経を失没せるの故に当に前代未有の二難を起すべし所謂自界叛逆難・他国侵逼難なり、 仍
06 て治国の故を思い兼日彼の大災難を対治せらる可きの由、 去る文応年中・一巻の書を上表す 立正安国論と号す勘
07 え申す所皆以て符合す既に金口の未来記に同じ宛も声と響との如し、 外書に云く「未萠を知るは聖人なり」内典に
08 云く「智人は起を知り蛇は自ら蛇を知る」云云、 之を以て之を思うに本師は豈聖人なるかな 巧匠内に在り国宝外
09 に求む可からず、 外書に云く「隣国に聖人有るは敵国の憂なり」云云、 内経に云く「国に聖人有れば天必ず守護
10 す」云云、 外書に云く「世必ず聖智の君有り而して復賢明の臣有り」云云、此の本文を見るに聖人・国に在るは日
11 本国の大喜にして蒙古国の大憂なり諸竜を駆り催して 敵舟を海に沈め梵釈に仰せ付けて蒙王を召し取るべし、 君
12 既に賢人に在さば豈聖人を用いずして徒に他国の逼を憂えん。
13   抑大覚世尊・遥に末法闘諍堅固の時を鑒み 此くの如きの大難を対治す可きの秘術を 説き置かせらるるの経文
14 明明たり、然りと雖も如来の滅後二千二百二十余年の間・身毒・尸那・扶桑等・一閻浮提の内に未だ流布せず、随つ
15 て四依の大士内に鑒みて説かず 天台伝教而も演べず時未だ至らざるの故なり、 法華経に云く「後の五百歳の中に
16 閻浮提に広宣流布す」云云、 天台大師云く「後五百歳」妙楽云く「五五百歳」伝教大師云く 「代を語れば則ち像
17 の終り末の初め地を尋ぬれば唐の東・羯の西・人を原ぬれば則五濁の生・闘諍の時」云云、 東勝西負の明文なり。
18   法主聖人・時を知り国を知り法を知り機を知り 君の為臣の為神の為仏の為 災難を対治せらる可きの由・勘え
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01 申すと雖も御信用無きの上・剰さえ謗法人等の讒言に依つて 聖人・頭に疵を負い左手を打ち折らるる上・両度まで
02 遠流の責を蒙むり門弟等所所に射殺され切り殺され毒害.刃傷.禁獄・流罪・打擲・擯出・罵詈等の大難勝げて計う可
03 からず、茲に因つて大日本国・皆法華経の大怨敵と成り 万民悉く一闡提の人と為るの故に 天神・国を捨て地神・
04 所を辞し天下静ならざるの由・粗伝承するの間・其の仁に非ずと雖も愚案を顧みず言上せしむる所なり、 外経に云
05 く「奸人朝に在れば賢者進まず」云云、内経に云く「法を壊る者を見て責めざる者は仏法の中の怨なり」云云。
06   又風聞の如くんば高僧等を崛請して蒙古国を調伏す云云、其の状を見聞するに去る元暦・承久の両帝・叡山の座
07 主・東寺・御室・七大寺・園城寺等検校長吏等の諸の真言師を請い向け 内裏の紫宸殿にして咒咀し奉る故源右将軍
08 並に故平右虎牙の日記なり、 此の法を修するの仁は敬つて之を行えば 必ず身を滅し 強いて之を持てば定めて主
09 を失うなり、 然れば則ち安徳天皇は西海に沈没し 叡山の明雲は流矢に当り 後鳥羽法皇は夷島に放ち捨てられ東
10 寺・御室は自ら高山に死し北嶺の座主は改易の恥辱に値う、 現罰・眼に遮り後賢之を畏る聖人・山中の御悲みは是
11 なり。
12   次ぎに阿弥陀経を以て例時の勤と為す可きの由の事、 夫れ以みれば花と月と水と火と時に依つて之を用ゆ必ず
13 しも先例を追う可からず、 仏法又是くの如し時に随つて用捨す、其の上・汝等の執する所の四枚の阿弥陀経は四十
14 余年未顕真実の小経なり、 一閻浮提第一の智者たる舎利弗尊者は 多年の間・此の経を読誦するも終に成仏を遂げ
15 ず然る後・彼の経を抛ち末に法華経に至つて華光如来と為る、 況や末代悪世の愚人・南無阿弥陀仏の題目計りを唱
16 えて順次往生を遂ぐ可しや、 故に仏・之を誡めて言く法華経に云く「正直に方便を捨て但無上道を説く」と云云教
17 主釈尊正しく阿弥陀経を抛ちたまう云云 又涅槃経に云く「如来は虚妄の言無しと雖も 若し衆生の虚妄の説に因る
18 を知れば」と云云、 正しく弥陀念仏を以て虚妄と称する文なり、法華経に云く「但楽て大乗経典を受持し乃至余経
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01 の一偈をも受けざれ」云云、 妙楽大師云く「況や彼の華厳但以て称比せん此の経の法を以て之を化するに 同じか
02 らず故に乃至不受余経一偈と云う」云云、 彼の華厳経は寂滅道場の説・法界唯心の法門なり、 上本は十三世界微
03 塵品・中品は四十九万八千偈・下本は十万偈四十八品今現に一切経蔵を観るに唯八十・六十・四十等の経なり、其の
04 外の方等・般若・大日経・金剛頂経等の諸の顕密大乗経等を尚・法華経に対当し奉りて仏自ら或は未顕真実と云い或
05 は留難多きが故に或は門を閉じよ或は抛て等云云、 何に況や阿弥陀経をや、 唯大山と蟻岳との高下・師子王と狐
06 兎との捔力なり。
07   今日秀等専ら彼等小経を抛ち専ら法華経を読誦し法界に勧進して 南無妙法蓮華経と唱え奉る豈殊忠に非ずや、
08 此等の子細御不審を相貽さば高僧等を召され是非を決せらる可きか、 仏法の優劣を糺明致す事は月氏・漢土・日本
09 の先例なり、今明時に当つて何ぞ三国の旧規に背かんや。
10   訴状に云く 今月二十一日数多の人勢を催し弓箭を帯し院主分の御坊内に打ち入り下野坊は乗馬相具し熱原の百
11 姓・紀次郎男・点札を立て作毛を苅り取り日秀の住房に取り入れ畢んぬ云云取意。
12   此の条・跡形も無き虚誕なり日秀等は損亡せられし行者なり 不安堵の上は誰の人か日秀等の点札を叙用せしむ
13 可き将た又オウ弱なる土民の族・日秀等に雇い越されんや、 然らば弓箭を帯し悪行を企つるに於ては行智云く近隣
14 の人人争つて弓箭を奪い取り 其の身に召し取ると云うが如き子細を申さざるや、 矯飾の至り宜しく賢察に足るべ
15 し。
16   日秀・日弁等は当寺代代の住侶として行法の薫修を積み 天長地久の御祈祷を致すの処に行智は乍に当寺霊地の
17 院主代に補し寺家・三河房頼円並に少輔房日禅・日秀・日弁等に行智より仰せて、 法華経に於ては不信用の法なり
18 速に法華経の読誦を停止し 一向に阿弥陀経を読み 念仏を申す可きの由の起請文を書けば安堵す可きの旨下知せし
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01 むるの間、 頼円は下知に随つて起請を書いて安堵せしむと雖も 日禅等は起請を書かざるに依つて 所職の住坊を
02 奪い取るの時・日禅は即ち離散せしめ畢んぬ、 日秀・日弁は無頼の身たるに依つて 所縁を相憑み 猶寺中に寄宿
03 せしむるの間此の四箇年の程・日秀等の所職の住坊を奪い取り厳重の御祈祷を打ち止むるの余り悪行猶以て飽き足ら
04 ず為に法華経行者の跡を削り謀案を構えて種種の不実を申し付くるの条・豈在世の調達に非ずや。
05   凡そ行智の所行は法華三昧の供僧・和泉房蓮海を以て法華経を柿紙に作り紺形を彫り堂舎の修治を為す、 日弁
06 に御書下を給い構え置く所の上 葺榑一万二千寸の内八千寸を之を私用せしむ、 下方の政所代に勧め去る四月御神
07 事の最中に法華経信心の行人・四郎男を刄傷せしめ 去る八月弥四郎坊男の頚を切らしむ、 日秀等に頚を刎ぬる事
08 を擬して此の中に書き入れ 無智無才の盗人・兵部房静印より過料を取り 器量の仁と称して 当寺の供僧に補せし
09 め、或は寺内の百姓等を催し鶉狩・狸殺・狼落の鹿を取りて別当の坊に於て之を食らい 或は毒物を仏前の池に入れ
10 若干の魚類を殺し村里に出して之を売る、見聞の人・耳目を驚かさざるは莫し仏法破滅の基悲んで余り有り。
11   此くの如き不善の悪行・日日相積るの間日秀等愁歎の余り依つて 上聞を驚かさんと欲す、行智条条の自科を塞
12 がんが為に種種の秘計を廻らし 近隣の輩を相語らい遮つて 跡形も無き不実を申し付け 日秀等を損亡せしめんと
13 擬するの条言語道断の次第なり、 冥に付け顕に付け戒めの御沙汰無からんや、 所詮仏法の権実沙汰の真偽・淵底
14 を究めて御尋ね有り且は誠諦の金言に任せ 且は式条の明文に准し禁遏を加えられば 守護の善神は変を消し擁護の
15 諸天は咲を含まん、 然れば則ち不善悪行の院主代・行智を改易せられ 将た又本主此の重科を脱れ難からん何ぞ実
16 相寺に例如せん、 誤まらざるの道理に任せて日秀・日弁等は安堵の御成敗を蒙むり 堂舎を修理せしめ天長地久御
17 祈祷の忠勤を抽んでんと欲す、仍て状を勒し披陳言上件の如し。
18       弘安二年十月 日                 沙門 日秀日弁等上
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百六箇抄   (血脈抄)   弘安三年    五十九歳    与日興
01      具騰本種・正法の実義本迹勝劣正伝、本因妙の教主本門の大師日蓮謹んで之を結要す。
02      万年救護写瓶の弟子日興に之を授与す云云、脱種合して一百六箇之れ在り、 霊山浄土・多宝塔中・久遠
03     実成・無上覚王・直授相承本迹勝劣の口決相伝譜、 久遠名字より已来た本因本果の主・本地自受用報身の
04     垂迹上行菩薩の再誕・本門の大師日蓮詮要す。
    (本迹)     (本迹)
01   理の一念三千・一心三観本迹          三世諸仏の出世成道の脱益寿量の義理の三千は釈迦諸仏の仏
                           心と妙法蓮華経の理観の一心とに蘊在せる理なり。
    (本迹) (経の本迹常の如し) 
02   大通今日・法華本迹           久遠名字本因妙を本として中間今日下種する故に久成を本と為し中
                        間今日の本迹を倶に迹と為る者なり。
03   応仏一代の本迹           久遠下種霊山得脱妙法値遇の衆生を 利せん為に無作三身寂光浄土従り三
                    眼三智をもつて九界を知見し迹を垂れ権を施す後に説く妙経の故に今日の本
                    迹共に迹と之を得る者なり。
04   迹門為理円の一致の本迹           松柏風波万声一如諸法実相の理上の観心は 応仏の域を引かえた
                         る故に本迹とは別れども唯理の上の法相なれば本迹理観の妙法と
                         顕す、迹化は付属無きが故に之を弘めず。
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    (母の義なり)(地の義なり) 
01   心法即身成仏の本迹         中間・今日も迹門は心法の成仏なれば華厳・阿含・方等・般若法華の安
                      楽行品に至るまで円理に同ずるが故に迹は劣り本は勝るる者なり。
    (女の義なり)  
02   心法妙法蓮華経の本迹        山家云く一切諸法・従本已来・不生不滅・性相凝然・釈迦口を閉ぢて身
                      子言を絶す云云、 方便品には理具の十界互具を説く 本門に至つて顕
                      本理上の法相なれば 久遠に対して之を見るに 実相は久遠垂迹の本門
                      なる故に色法に非るなり。
03   従因至果・中間今日の本迹         像法の修行は天台・伝教・弘通の本迹は中間・今日の迹門を因と
                         為し本門修行を果と為るなり。
04   本果の妙法蓮華経の本迹         今日の本果は従因至果なれば本の本果には劣るなり、寿量の脱益・
                        在世一段の一品二半は舎利弗等の声聞の為の観心なり、 我等が為
                        には教相なり、 情は迹劣本勝なり、 又滅後像法相似観行解了の
                        行益も以て是くの如し、南岳・天台・伝教の修行の如く末法に入つ
                        て修行せば帯権隔歴の行と成つて 我等が為には虚戯の行と成る可
                        きなり、日蓮は一向本・天台は一向迹・能く能く之を問う可し。
01     疏の九に云く爾前皆虚にして実ならず迹門は一虚一実・本門は皆実不虚云云、爾前二種の失の事・一には存
02     行布故仍未開権とて迹門の理の一念三千を隠せり、二には言始成故尚未発迹とて 本門の久遠を隠せり迹門
03     方便品は一念三千・二乗作仏を説いて爾前・二種の失一つ脱がれたり、本門に至りて迹門の十界因果を打破
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04     る是即ち本因本果の法門なり、 実の一念三千も顕れず二乗作仏も定らず云云、世間の罪に依つて悪道に堕
05     ん者は爪上の土・ 仏法に依つて悪道に堕ちん者は十方の土の如し、故は信心の根本は本勝迹劣余の信心は
06     枝葉なり。
01   余行に渡る法華経の本迹          一代八万の諸法は本因妙の下種を受けて説く所の教なるが故に一
                         部八巻乃至一代五時次第梯 ・は名字の妙法を下種して熟脱せし
                         本迹なり。
02   在世観心法華経の本迹          一品二半は在世一段の観心なり天台の本門なり、日蓮が為には教相
                        の迹門なり云云。
03   脱益の妙法の教主の本迹          所説の正法は本門なり能説の教主釈尊は迹門なり、法自ら弘まら
                         ず人法を弘むる故に人法ともに尊し。
04   脱益の今此三界の教主本迹           天上天下唯我独尊は迹身門・密表寿量品の今此三界は即本身
                           門なり。
05   脱益像法時剋弘経の本迹          天台の本迹は倶に日蓮が迹門なり時剋亦天地の不同之在り。
06   脱益迹門修行の本迹          正法一千年の修行の徳より像法一日の徳は勝れたるなるべし。
07   脱益迹門自解仏乗修行の本迹          熟益は迹・脱益は本なり之に就いて之を思惟す可し。
08   脱の五大尊の本迹          他受用応仏は本・普賢・文殊・弥勒・薬王は迹なり。
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    (本迹天台)  
01   脱の真俗二諦の本迹         天台大師弘通の本迹前十四品は迹門に約し後十四品は本門に約す云云、
                      是法住法位世間相常住文。
02   前十四品悉く流通分の本迹           如来の内証は序品より滅後正像末の為なり、薬王菩薩は像法
                           の主天台是なり、密表の法師品に云く今此三界文。
03   脱益理観一致の本迹         本迹殊なりと雖も不思議一と云うは今日乃至中間の本迹は本迹と分別す
                      れども本因妙を下種として説く所の本迹なれば迹の本は本に非ず云云。
04   脱益戒体の本迹          爾前迹門熟益の戒躰を迹とし脱益の戒躰を本と為るなり、迹門の戒は爾前
                     大小の戒に勝れ本門の戒は爾前迹門の戒に勝るるなり。
05   脱の迹化七面の本迹          像法には理観を本と用うるなり故に天台は迹を本と為し本を迹と行ず
                       るなり。
06   脱の迹化本尊の本迹         一部を本尊と定むるに前十四品は迹・後十四品は本と云云、是は一部八
                      巻なり云云。
07   脱益守護神の本迹         守護する所の法華は本・守番し奉る処の神等は迹なり、本因妙の影を万水
                     に浮べたる事は治定と云云。
08   脱益山王の本迹        久遠・中間に受くる処の法華は本・夫れより守り来る所は垂迹なり、下種は本
                   因妙なり云云。
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01   脱迹十羅刹女の本迹         久遠・中間・今日の理事は本・中間・大通・今日出世冥守する処は垂迹
                      なり、下種は前の如し云云。
02   脱迹付属の本迹          脱益の迹化付属は中間大通を本とし今日初住の終を迹とするなり、受くる
                     正法は本持つ方は迹なり。
03   脱迹開会の本迹           大通の初を開と云い今日初住の終りを会と云うなり、本は大通迹は初住
                      なり、初顕を開と云い終合を会と云う云云、案位も理上の案位なり。
04   脱益成仏の本迹         寿量品は本応仏は迹なり、無作三身寂光土に住して三眼・三智をもつて九界
                    を知見す云云。
05   脱迹三種教相の本迹        二種は迹・無開会・一種は本有の開会なり、一種は開顕・二種は不開会・
                     所従眷属の教相なり云云。
06   脱の五味所従の本迹            天台・伝教の五味は横竪ともに所従なり、五味は本修行の人は迹
                         なり、在世以て此くの如し云云。
07   脱迹父子の本迹         応仏は本・迹仏は迹なり、子父の法を弘むるに世界の益ありと云云。
08   脱迹師弟の本迹         義理共に上に同じ是れ我が弟子応に我が法を弘む可し弘む可し云云。
09   脱益感応の本迹         久遠の天月の影を中間・今日の脱益の水に移すなり、衆生久遠に仏の善巧を
                    蒙るとは是なり
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01   脱益寂照の本迹         理の上の寂照は妙覚・乃至観行等の解了なり、理即の凡夫は無躰有用の本迹
                    なり。
02   脱益随縁不変の本迹          在世と像法と之同じ真如の義理なり、随縁も不変も共に理の一段の本
                       迹なり。
03   脱益九法妙の本迹         三法妙に各三法妙を具すれば九法妙なり、法中の心法妙より起る所の生仏
                     二妙なり本迹知るべし。
04   脱益八相八苦習合の本迹         八相は本・八苦は迹・同躰の権実是なり。
05   脱益潅頂等の本迹        潅頂とは至極なり後世・仏・菩薩の潅頂は法華経なり、迹門の潅頂は方便読
                    誦.欲令衆生開仏知見なり、本門の潅頂は寿量品読誦.然我実成仏已来なり。
                   (事戒)   (理戒)
06   脱益説所戒壇本迹       霊山は本・天台山は迹・久遠と末法とは事行の戒・事戒・理戒・今日と像法と
                   は理の戒躰なり。
07   脱益三世三仏利の本迹          世世番番の教主は本・所化の衆生は迹なり、世世已来常に我が化を
                        受け番番に出世し師と倶に生ず。
08   脱益証明・多宝仏塔の本迹         妙法蓮華経皆是真実は本・多宝仏は迹・迹門八品乃至本門之を指
                         すなり云云。
09   脱益序正流通現文の本迹          経文釈義の如く理の上の正宗流通序文なれども 本は勝れ迹は劣
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                         るなり、然るに迹は本無今有なれば久遠の迹を脱として今日の本
                         を説くなり云云。
01   脱益摂受折伏の本迹          天台は摂受を本とし折伏を迹とす、其の故は像法は在世の熟益冥利の
                       故なり福智具足の故と云えり。
02   脱益二妙の本迹        相待妙は迹・絶待妙は本・妙法の外に更に一句の余経無し云云、独一法界の故
                   に絶待と名くるの釈之を思う可し。
03   脱益十妙の本迹         本果妙は本・九妙は迹なり在世と天台とは機上の理なり、仏は本因妙を本と
                    為し所化は本果妙を本と思えり。
04   脱益六重所説の本迹          已今を本と為し余は迹なり本迹殊なりと雖も不思議一と云云、理具の
                       本迹なれば一部倶に迹の上の本迹なり。
05   脱益六即所判の本迹          妙覚は本余は迹なり。
                       玄九に云く初の十住を因と為し十行を果と為す十行を因とし十廻向を
                                                  果とし十
                       廻向を因とし十地を果とし十地を因と為し等覚を果とし等覚を因とし
                                                  妙覚を果
                       と為す云云。
06   脱益十不二門の本迹          理の上の不変の不二にして事行の不二門には非るなり。
07   脱益十界互具の本迹          理具の十界互具にして事行の互具には非ざるなり、九界の理を仏界の
                       理に押し入るる方ならでは脱せざるなり。
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01   脱益十二因縁四諦の本迹          経に云く無明乃至老死云云、苦集滅は迹なり道諦は本なり。脱益
                         三土の本迹 報土は本同居方便は迹なり。
01     妙楽云く雖脱在現本迹理上の一致なり心は寿量品も文は現量なれども上行所伝の本因妙を唱え顕して後は只
                  久遠の教相にて成仏肝要の観心には非ずと云云。籤一に云く本中体等迹と殊なら
02    ず 脱益の妙覚乃至観行相似等の妙法蓮華経は理に即して事を含む、然も本迹一致に非ず破廃立本云云。玄七に
                    云く権実は智に約し教に約す化他不定の時施す所の権実八教なり両所殊なら
03    ず久遠の本・今日の脱益と両所なり。 籤七に云く理浅深無し故に不殊と曰う本因本果の理を今日中間にも寿量
                           顕本の理に推し入れて顕すと釈するなり。籤七に云く経に約
04    すれば是れ本門と雖も既に是れ今世迹中の本名本門と為す故に知んぬ、今日正く迹中利益に当る,乃至本成已後
05    倶に中間と名く中間本を顕すに利益を得る者尚迹益を成ず況や復今日をや文。 意は久遠本果の迹を中間・今日
                                  の本と為す、又久遠名字の妙法の影を中間今
06    日に垂迹する故に下種に対して脱益寿量を迹と得たる証拠に釈する是なり。 疏の一に云く衆生久遠に仏の善巧
                               を蒙る久遠下種山得脱。霊籤十に云く故に知んぬ今
07    日の逗会は昔の成熟の機に赴くことを霊山下種・久遠得脱の益。 記二に云く本時の自行は唯円と合す本時とは
                                           本因妙の時なり。化他は
08    不定亦八教有り中間今日・化導の儀式なり。玄七に云く迹の本は本に非ず今日の本果妙の事なり。 本の迹は迹
                                         に非ず本因妙の事なり。本迹
09    殊なりと雖も不思議一なり本因妙の外全く迹無きなり 迹門は即ち顕本の後は本無今有の方便無得道なりと中島
の証俊何にと問われし時、俊範法印答えて云く不思議一と、求めて云く其の義如何、答えて云く文在迹門義在本門云云と
                                                  、会して
10    云く迹門既に益無し本門益有り本迹勝劣不思議一と云云。妙楽云く権実は理なり本迹は事なり 天台云く本迹を
                               二経と為すと云えり如来の本迹は理上の法相なり日
11    蓮の本迹は事行の法相なり
         以上・脱の上の本迹勝劣口決畢んぬ
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01   事の一念三千・一心三観の本迹         釈迦三世の諸仏・声聞・縁覚・人天の唱る方は迹なり、南無
                           妙法蓮華経は本なり。
02   久遠元初直行の本迹          名字本因妙は本種なれば本門なり、本果妙は余行に渡る故に本の上の
                       迹なり、久遠釈尊を口唱を今日蓮直に唱うるなり。
03   久遠実成直体の本迹          久遠名字の正法は本種子なり、名字童形の位、釈迦は迹なり我本行菩
                       薩道是なり、日蓮が修行は久遠を移せり。
04   久遠本果成道の本迹          名字の妙法を持つ処は直躰の本門なり 直に唱え奉る我等は迹なり。
05   久遠自受用報身の本迹         男は本女は迹知り難き勝劣なり。 能く能く伝流口決す可き者なり。
06   久成本門為事円の本迹         上行所伝の妙法は名字本有の妙法蓮華経なれば 事理倶勝の本なり、
                       日蓮並に弟子檀那等は迹なり。
07   色法即身成仏の本迹          親の義なり父の義なり、 涌出品より已後我等は色法の成仏なり不渡
                       余行の妙法は本・我等は迹なり。
08   色法妙法蓮華経の本迹       男子と成つて 名字の大法を聞き己己・物物・事事・本迹を顕す者なり、
                     又今日の二十八品・品品の内の勝劣は 通号の本なり 勝なり・別号は迹
                     なり劣なり云云。
01     妙楽疏記九に云く故に知んぬ迹の実は本に於て猶虚なり、籤十に云く、今日は初成を以て元始と為し爾前迹
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01     門は大通を以て元始と為し迹門本門は本因を以て元始と為す本門。
02     此の釈は元始本迹遠近勝劣を判ずるなり、本果妙は然我実成仏已来猶迹門なり、迹の本は本に非ざるなり、
03     本因妙は我本行菩薩道真実の本門なり、本の迹は迹に非ず云云、我が内証の寿量品は迹化も知らず云云、重
04     位秘蔵の義なり本迹と分別する上は勝劣は治定なれども末代には知り難き故云云。
01   久遠従果向因の本迹         本果妙は釈迦仏・本因妙は上行菩薩・久遠の妙法は果・今日の寿量品は
                      花なるが故に従果向因の本迹と云うなり。
02   本因妙法蓮華経の本迹          全く余行に分たざりし妙法は本・唱うる日蓮は迹なり、手本には不
                        軽菩薩の二十四字是なり、又其の行儀是なり云云。
03   不渡余行法華経の本迹           義理上に同じ直達の法華は本門唱うる釈迦は迹なり、今日蓮が修
                         行は久遠名字の振舞に芥爾計も違わざるなり。
04   下種の法華経教主の本迹          自受用身は本・上行日蓮は迹なり、我等が内証の寿量品とは脱益
                         寿量の文底の本因妙の事なり、其の教主は某なり。
05   下種の今此三界の主の本迹          久遠元始の天上天下・唯我独尊は日蓮是なり、久遠は本・今日
                          は迹なり、三世常住の日蓮は名字の利生なり。
06   下種得法観心の本迹          久遠下種の得法は本なり、今日中間等の得法観心は迹なり、分別功徳
                       品の名字初随喜の文の如し云云。
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01   下種自解仏乗の本迹          名字の妙法を上行所伝と聞き得る方は自解仏乗の本なり、聞き得て後
                       受持する我等は迹なり、故に伝教より日蓮は勝るなり云云。
02   末法時刻の弘通の本迹          本因妙を本とし今日寿量の脱益を迹とするなり、久遠の釈尊の修行
                        と今日蓮の修行とは芥子計も違わざる勝劣なり云云。
03   本門修行の本迹         正像二千年の修行は迹門なり、末法の修行は本門なり、又中間今日の仏の修
                    行より日蓮の修行は勝るる者なり。
04   本門五大尊の本迹        久遠本果の自受用報身如来は本なり、上行等の四菩薩は迹なり。
05   日蓮本門弘通の本迹       本因妙は本なり我本行菩薩道は迹なり云云。
06   本化事行一致の本迹          本迹殊なりと雖も不思議一云云、本因妙の外に並に迹とて別して之無
                       し故に一と釈する者なり、真実の勝劣の手本の義なり云云。
07   後十四品皆流通の本迹         本果妙の釈尊本因妙の上 行菩薩を召し出す事は 一向に滅後末法利
                       益の為なり、然る間日蓮修行の時は後の十四品皆滅後の流通分なり。
08   下種戒体の本迹            爾前迹門の戒躰は権実雑乱、本門の戒躰は純一無雑の大戒なり。
                       勝劣天地水火尚及ばず具に戒躰抄の如し云云。
09   本化七面の本迹         末法には事行を本とし在世と像法とには理観を本とするなり、天台の本書は
                    理の上の事なれば一向迹門の七決、我家の本書は事の上の本なり。
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01   下種三種法華の本迹         二種は迹なり一種は本なり、迹門は隠密法華・本門は根本法華・迹本文
                      底の南無妙法蓮華経は顕説法華なり。
02   本化本尊の本迹         七字は本なり・余の十界は迹なり、諸経諸宗中王の本尊万物下種の種子無上
                    の大曼荼羅なり。
03   下種守護神の本迹          守護し奉る所の題目は本・護る所の神明は迹なり、諸仏求世者現無量神
                      力云云。
04   下種山王神の本迹         久遠に受くる所の妙法は本・中間・今日・未来までも守り来る所の山王明
                     神は即迹なり。
05   下種十羅刹女の本迹         此の義理上に同じ唯神明と十女を本迹に対する時・十羅刹女は本・神明
                      は迹なり。
06   本門付属の本迹        久遠名字の時・受る所の妙法は本・上行等は迹なり、久遠元初の結要付嘱は日
                   蓮今日寿量の付属と同意なり云云。
07   本門開会の本迹        久遠の本会を本と為す、今日寿量の脱を迹と為るなり。
                              妙楽云く始顕を開と云い終合を会と云う文。
08   下種成仏の本迹         本因妙は本・自受用身は迹成仏は難きに非ず此の経を持つこと難ければなり
                    云云。
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01   下種三種教相の本迹          二種は迹門・一種は本門なり、本門の教相は教相の主君なり、二種は
                       二十八品一種は題目なり、題目は観心の上の教相なり。
02   五味主の中の主の本迹           日蓮が五味は横竪共に五味の修行なり、五味は即本門修行は即迹
                         門なり。
03   本種師弟不変の本迹         久遠実成の自受用身は本・上行菩薩は迹なり、三世常恒不変の約束なり
04   本種父子常住の本迹         義理上に同じ、 久遠の名字即の俗諦常住の父子は 今日蓮が修行に殊
                      ならず、世間相常住是なり。
05   四土具足の本迹         三土は迹・常寂光土は本なり、四土即常寂光寂光即四土の浄土は唯本門弘経
                    の道場なり。
06   下種感応日月の本迹       下種の仏は天月・脱仏は池月なり。天台云く不識天月但観池月云云。
07   下種随縁不変の本迹       体用同時の真実・真如・一口の首題なり、 本有の迹・ 本有の一念三千是
                    なり、随縁不変一念寂照の本迹なり。
08   下種九法妙の本迹        久遠下種の妙法は本・已来の九法は迹なり。
09   下種人天の本迹         久遠下種の妙法は本なり、已来の人天は迹なり。
10   下種八相八苦習合実勝の本迹          脱の八相は迹・種の八相は本・脱の八苦は迹・種の八苦は本
                           なり煩悩即菩提・生死即涅槃・常在此不滅と云えり。
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01   下種最後直授摩頂の本迹          久遠一念元初の妙法を受け頂く事は最極無上の潅頂なり法は本・
                         人は迹なり。
02   下種弘通戒壇実勝の本迹          三箇の秘法建立の勝地は富士山本門寺本堂なり。
                            (上行院は祖師堂云云弘通所は総じて院号なるべし云云)
03   下種寂照・実事体用無上の本迹           生仏一如の事の上の本覚の寂照なり人は迹・仏は本なり
                             云云。
04   下種三世・三仏実益の本迹        日蓮は下種の利益・三世・九世・種熟脱・本有一念の利益なり、天
                        台云く若しは破若しは立皆是法華の意の修行の利益なり。
05   下種証明・多宝仏塔の本迹        久遠実成・無始無終・本法の妙法蓮華経皆是真実は本なり、 久遠
                        の本師は妙法なり、本有実成釈迦多宝は迹なり。
06   下種序正流通・文底の本迹        応仏と天台とは 正宗一品二半を本門と定め現文の勝劣、 報仏と
                        日蓮とは流通を本と定む文底の勝劣なり。
07   下種摂折二門の本迹         日蓮は折伏を本とし摂受を迹と定む法華折伏破権門理とは是なり。
08   下種二妙実行の本迹         日蓮は脱の二妙を迹と為し種の二妙を本と定む、然るに相待は迹・絶待
                      は本云云。
09   下種十妙実体の本迹          日蓮は本因妙を本と為し、余を迹と為すなり、是れ真実の本因本果の
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                       法門なり。
01   下種六重具騰の本迹          日蓮は脱の六重を迹と為し、種の六重を本と為るなり云云。
02   下種六即実勝の本迹          日蓮は脱の六即を迹と為し種の三世一即の六即・案位の理即は開会の
                       妙覚・開会の理即は本覚の極果を本と為るなり。
03   下種十二因縁の本迹          日蓮は応仏所説の十二因縁を迹と為し、久遠報仏所説の十二因縁を本
                       と定むるなり。
04   下種十不二門の本迹          日蓮が十不二門は事上極極の事理一躰用の不二門なり。
05   下種十界互具の本迹         唱え奉る妙法・仏界は本・唱うる我等九界は迹なり、妙覚より理即の凡
                      夫までなり、実の十界互具の勝劣とは是なり。
06   下種境智倶実の本迹         脱の境智は迹・種の境智は本なり、名字即の境智は境智倶に本・観行即
                      の境智は境智倶に迹なり云云。
01      意は十界仏性只一口に呼び顕すなり本因口唱の勝るる南無妙法蓮華経なり、初心成仏抄の如きなり、弘一
02      に云く理造作に非ざる故に天真と曰い証智円明の故に独朗と云う云云、久遠の理と今日の理と理に造作無
                             し、然れども久遠は事上の理なり今日は理上の理なり故
03      に知んぬ本因妙の理は勝れ今日本果妙の理は劣るなり是理の本迹なり是の故に独朗と云うなり、又云く独
         一法界の故に絶待と名く云云。天台は唯大綱を存して網目を事とせず此の釈の意は大綱は本・網目は
04       迹なり、天台伝教の修行は網目・日蓮日興等の修行は大綱なり云云。如来秘密神通之力意得可し是事理の
       如来の本迹なり、秘密の如来は理性の如来なり、我等なり、神通の如来は世尊なり秘密は本地神通は垂迹
                                               なり、世世以来
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01  常受我化・我本行菩薩道所成寿命今猶未尽復倍上数云云。本迹勝劣其理甚遠なり、仏若し説かずんば弥勒尚暗し何
                                           に況や下地をや何に況や
02  凡夫をや、本仏本化乃能究尽云云、妙楽云く具騰本種本勝迹劣故に但名に於て以て本迹を分つ下種名字妙法事行の
                                           勝劣なる所を判ずるなり
03  本迹は身に約し位に約す久遠名字即の身と位との判なり本従り迹を垂れ迹は本に依る迹は究竟に非ず、玄の一に開
                                                   示悟入
04  是れ迹の要なりと雖も若し顕本し已れば即ち本要と成るなり、 籤の一に若し迹中の事理乃至権実無くん
05  ば何ぞ能く長寿の本を顕さん云云。
           已上種の本迹勝劣畢んぬ
01  右此の血脈は本迹勝劣其の数一百六箇之を注す数量に就て表事有り之を覚知すべし。
02  釈迦諸仏出世の本懐・真実真実.唯為一大事の秘密なり、然る間.万年救護の為に之を記し留む就中六人の遺弟を定
03  むる表事は先先に沙汰するが如し云云、但し直授結要付属は一人なり、白蓮阿闍梨日興を以て惣貫首と為して日蓮
                                        が正義悉く以て毛頭程も之れを
04  残さず悉く付属せしめ畢んぬ、上首已下並に末弟等異論無く尽未来際に至るまで予が存日の如く日興嫡嫡付法の上
                                         人を以て惣貫首と仰ぐ可き者
05  なり。
06  又五人並に已下の諸僧等日本乃至一閻浮提の外・ 万国に之を流布せしむと雖も日興嫡嫡相承の曼荼羅を以て本堂
                                         の正本尊と為す可きなり所以
07  は何ん在世滅後殊なりと雖も付属の儀式之同じ譬えば四大六万の直弟の本眷属有りと雖も上行薩タを以て結要の大
                                         導師と定むるが如し、 今以
08   つて是くの如し六人以下数輩の弟子有りと雖も日興を以て結要付属の大将と定むる者なり。
09  又弘長配流の日も文永流罪の時も其の外諸処の大難の折節も先陣をかけ日蓮に影の形に随うが如くせしなり誰か之
                                         を疑わんや、 又延山地頭発
10  心の根元は日興教化の力用なり、遁世の事甲斐の国三牧は日興懇志の故なり。
11  又御本尊書写の事予が顕し奉るが如くなるべし、 若し日蓮御判と書かずんば天神地祇もよも用い給わじ、上行無
                                         辺行と持国と浄行安立行と毘
12  沙門との間には若悩乱者・頭破七分・有供養者・福過十号と之を書す可きなり、 経中の明文等意に任す可きか。
13  又立つ浪・吹く風・万物に就いて本迹を分け勝劣を弁ず可きなり。
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本因妙抄   法華本門宗血脈相承事   本因妙の行者日蓮之を記す。
01   予が外用の師.伝教大師生歳四十二歳の御時.仏立寺天台山仏隴寺の大和尚に値い奉り義道を落居し生死一大事の
                                                   秘法を
02 決したもうの日、大唐の貞元二十一年太歳乙酉五月三日・三大章疏を伝え各七面七重の口決を以て治定し給えり、所
03 謂玄義七面の決とは正釈五重列名に約して決したもう。
04   一に依名判義の一面・名とは法の分位に於いて施設す.体とは宰主を義と為す.宗とは所作の究竟なり、受持本因
05 の所作に由つて口唱本果の究竟を得、 用とは証体本因本果の上の功能徳行なり、 教とは誡を義と為す誡とは本の
06 為の迹為れば 迹は即ち有名無実 ・無得道なるを実相の名題は本迹同じければ 本迹一致と思惟す可き事を大に誡
07 んが為に三種の教相を起て種熟脱の論不論を立つる者なり、 経文解釈明白なり、 此くの如く文文・句句の名・妙
08 正の深義・本迹勝劣の本意を顕し給う者なり、 然りと雖も天台伝教の御弘通は偏に理の上の法相・迹化付属・像法
09 の理位・観行五品の教主なれば 迹を表と為して衆を救い、 本を隠して裏に用る者なり 甚深甚深秘す可し秘す可
10 し。
11   二に仏意.機情・二意の一面、仏意は観行.相似を本と為し機情は理即・名字を本と為す、何れも体用を離れず体
12 用は法華の心智に依つて一代五時の次第浅深を開拓す、 次に機情とは大通結縁の衆の為に四味の調養を設け法華に
13 来入す、本迹二門乃至文文・句句此の二意を以て分別す可き者なり。
14   三に四重浅深の一面、名の四重有り.一には名体無常の義・爾前の諸経諸宗なり、二には体実名仮・迹門.始覚無
15 常なり、三には名体倶実・本門本覚常住なり、 四には名体不思議是れ観心直達の南無妙法蓮華経なり、湛然の云く
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01 「雖脱在現・具騰本種」云云次に体の四重とは一に三諦隔歴の体・爾前権教なり、二に理性円融の体・迹門十四品な
02 り、三に三千本有の体・本門十四品なり、四に自性不思議の体・我が内証の寿量品・事行の一念三千なり、次に宗の
03 四重とは一に因果異性の宗・方便権教なり、二に因果同性の宗・是れ迹門なり、三に因果並常の宗・即ち本門なり、
04 四に因果一念の宗・文に云く「芥爾も心有れば即ち三千を具す」と、是れ即ち末法純円・結要付属の妙法なり云云、
05 次に用の四重とは一に神通幻化の用・今経已前に明かす所の仏・菩薩・出仮利生の事、二に普賢色身の用・即ち一身
06 の中に於て十界を具する事なり本迹一代五時に亘る、 三に無作常住の用・証道八相有り無作自在の事なり、 四に
07 一心の化用・或説己身等なり、次に教の四重とは一には但顕隔理の教・権小なり、二には教即実理の教・迹門なり、
08 三には自性会中の教・応仏の本門なり、 四には一心法界の教・寿量品の文の底の法門・自受用報身如来の真実の本
09 門・久遠一念の南無妙法蓮華経・雖脱在現具騰本種の勝劣是なり。
10   第四に八重浅深の一面なり、名の八重とは一に名体永別の名.二に名体不離の名.三に従体流出の名・四に名体具
11 足の名・五に本分常住の名・六に果海妙性の名・七に無相不思議の名・八に自性己己の名・乃至教知る可し云云、文
12 に任せて思惟す可きなり。
13   第五に還住当文の一面、四八の浅深を以て本迹勝劣を知る可し。
14   第六に但入己心の一面、始め大法東漸より第十の判教に至るまで文の生起を閣おき一向に心理の勝劣に入れて正
15 意を成ず可し、 謂く大法とは即ち行者の己心の異名なり云云、 釈の意は文義の広博を離れて首題の理を専にすと
16 釈し給うなり。
17   第七に出離生死の一面、心は一代応仏の寿量品を迹と為し内証の寿量品を本と為し釈尊久遠名字即の身と位とに
18 約して南無妙法蓮華経と唱え奉る是を出離生死の一面と名く、本迹約身約位の釈之を思う可き者なり已上。
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01 玄文畢る。
02   文句の七面の决とは、一に依名の一面.其の義上の如し、二に感応の一面.三時弘経に亘る可し、爾前迹門の正像
03 二千年弘経の感応より本門末法弘通の感応は真実真実勝るなり、 三に四教の一面・四に五時の一面・五に本迹の一
04 面・六に体用の一面・七に入己心の一面・悉く皆其の心前に同じ、 智威大師の伝には玄義文句の両部には爾前迹門
05 に各三十重の浅深を以て口决し給えり、具には伝教大師七面决の如し。
06   又摩訶止観一部には十重顕観を立てて是を通じ給えり、一は待教立観.爾前・本.迹の三教を破して不思議実理の
07 妙法蓮華経の観を立つ、 文に云く円頓者初縁実相と云云、 迹門を理具の一念三千と云う脱益の法華は本迹共に迹
08 なり、 本門を事行の一念三千と云う下種の法華は独一の本門なり、是を不思議実理の妙観と申すなり、 二に廃教
09 立観・心は権教並に迹執を捨て本門首題の理を取つて事行に用いよとなり、 三に開教顕観・文に云く一切諸法・本
10 是仏法・三諦の理を具するを名けて仏法と為す 云何んぞ教を除かん云云 文意は観行理観の一念三千を開して名字
11 事行の一念三千を顕す、大師の深意・釈尊の慈悲・上行所伝の秘曲・是なり、四に会教顕観・教相の法華を捨てて観
12 心の法華を信ぜよと、 五に住不思議顕観・文に云く理は造作に非ず故に天真と曰う・証智円明なるが故に独朗と云
13 う云云、 釈の意は口唱首題の理に造作無し、 今日熟脱の本迹二門を迹と為し久遠名字の本門を本と為す、信心強
14 盛にして唯余念無く南無妙法蓮華経と唱え奉れば凡身即仏身なり、是を天真独朗の即身成仏と名く。
15  問うて曰く前代に此の法門を知れる人之有りや、 答えて曰く之有り、 求めて云く誰人ぞや、示して云く釈尊是
16  なり、 尋ねて云く仏を除き奉つて余に之を知れる人師論師有りや、 答えて曰く天台の云く「天親竜樹・内鑒冷
17  然.外適時宜」と、今日南無妙法蓮華経は南岳.天台.妙楽・伝教の内鑒冷然.外適時宜なり、内鑒冷然外適時宜の修
18  行の日は本迹一致なり・有智無智を嫌わず円頓者初縁実相の理は 造作に非ざる故に天真と曰う・証智円明の故に
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01  独朗と曰うと云つて理位観行に趣かしめ利益を為し末法の時を待つ者なり、 故に天台云く「但当時大利益を獲る
02  のみに非ず後五百歳遠く妙道に霑う」と云云、 天台.章安・妙楽.伝教等の大聖は内証は本迹勝劣.外用は本迹一致
03  なり、其の故は教相も観心も相似観行解了の人師・時機亦像法なり、 付属は即妄授余人・御身も亦迹化の衆・観
04  音・妙音.文殊・薬王等の化身なり、今末法は本化の薩タ.上行等の出世の境・本門流宣の時尅なり、何ぞ理観を用
05  いて事行を修せざらんや、 予が所存は内証・外用共に本迹勝劣なり、 若し本迹一致と修行せば本門の付属を失
06  う物怪なり。
07  本迹の不同は処処に之を書す、 然りと雖も宿習拙き者本迹に迷倒せんか 若し本迹勝劣を知らずんば未来の悪道
08  最も不便なり 宿業を恥じず還つて予を恨む可きか、 我が弟子等の中にも天台伝教の解了の理観を出でず、本迹
09  に就て一往勝劣再往一致の謬義を存して 自他を迷惑せしめんの条宿習の然らしむる所か、 閻浮提第一の秘事為
10  りと雖も万年救護の為に之を記し留る者なり、 我が未来に於て予が仏法を破らん為に一切衆生の元品の大石・大
11  六天の魔王・師子身中の蝗蟲と成つて 名を日蓮に仮りて本迹一致と云う 邪義を申し出して多の衆生を当に悪道
12  に引くべし、 若し道心有らん者は彼等の邪師を捨てて宜く予が正義に随うべし、 正義とは本迹勝劣の深秘・具
13  騰本種の実理なり、 日蓮一期の大事なれば弟子等にも朝な夕なに教え 亦一期の所造等悉く此の義なり、然りと
14  雖も迹執を出でず.或は軽見惑或は蔑思惑或は癡塵沙惑或は迷無明惑,故に日蓮が立義を用いざるか,予が教相.観心
15  は理即・名字・愚悪愚見の為なり。
16  日蓮は名字即の位 弟子檀那は理即の位なり、 上行所伝結要付属の行儀は教観判乗・皆名字即・五味の主の修行
17  なり、故に教相の次第・要用に依る可し唯大綱を存する時は余は網目を事とせず彼は網目・此れは大綱・彼は網目
18  の教相の主・此れは大綱・首題の主・恐くは日蓮の行儀には天台伝教も及ばず、何に況や他師の行儀に於てをや、
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01  唯在世八箇年の儀式を移して滅後・末法の行儀と為す、然りと雖も仏は熟脱の教主・某は下種の法主なり、彼の一
02  品二半は舎利弗等の為には観心たり、我等・凡夫の為には教相たり、理即・短妄の凡夫の為の観心は余行に渡らざ
03  る南無妙法蓮華経是なり、 是くの如く深義を知らざる僻人・出来して 予が立義は教相辺外と思う可き者なり、
04  此等は皆宿業の拙き修因感果の至極せるなるべし、 彼の天台大師には三千人の弟子ありて 章安一人朗然なり、
05  伝教大師は三千人の衆徒を置く 義真已後は其れ無きが如し、 今以て此くの如し数輩の弟子有りと雖も疑心無く
06  正義を伝うる者は希にして一二の小石の如し秘す可きの法門なり。
07   第六に住教顕観・七に住教非観・八に覆教顕観・九に住教用観・十に住観用教・此の五重は上の五重の如し思惟
08   す可し。
09  問うて云く 本迹雖殊不思議一・本迹の教に於て別して不思議の観理を顕わす故にと云云、 機情に約すれば本迹
10  に於て久近の異有る可し、 是れ一往の浅義なり、内証に約して之を論ずれば勝劣有る可からず再往の深義は不思
11  議一なり云云如何が意を得可けんや、 答えて云く住教顕観は煩悩即菩提・住教非観は法性寂然・覆教顕観は名字
12  判教・住教用観は不思議一・住観用教は以顕妙円と申す大事是なり、教観不思義・天然本性の処に独一法界の妙観
13  を立つ是を不思議の本迹勝劣と云う亦絶対不思議の内証・不可得・言語道断の勝劣は天台・妙楽・伝教の残す所・
14  我が家の秘密・観心直達の勝劣なり、 迹と云う名ありといえども有名無実・本無今有の迹門なり、実に不思議の
15  妙法は唯寿量品に限る 故に不思議一と釈するなり、 迹門の妙法蓮華経の題号は本門に似ると雖も義理・天地を
16  隔つ成仏亦水火の不同なり、 久遠名字の妙法蓮華経の朽木書なる故を顕さんが為に 一と釈するなり末学疑網を
17  残すこと勿れ、 日蓮・霊山会上・多宝塔中に於て親たり釈尊より直授し奉る秘法なり、甚深甚深秘す可し秘す可
18  し伝う可し伝う可し。
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01 摩訶止観七面口决とは依名判義・附文元意・寂照一相・教行証・六九二識・絶諸思慮・出離生死の一面已上、一切諸
02 法・従本已来・不生不滅・性相凝然・釈迦閉口・身子絶言云云、是は迹門天台・止観の内証なり、本門日蓮の止観は
03 釈迦は口を開き 文殊は言語す迹門不思議・不可説・本門不思議可説の証拠の釈是なり、亦三大部に於て一同十異・
04 四同六異之有り、 伝教仏立寺より之を口决す、一同とは名同なり、十異とは名同義異・所依異・観心異・傍正異・
05 用教異.対機異.顕本理異.修行異・相承異.元旨異、四同とは名同・義同.所依同・所顕同なり、六異とは釈異・大綱
06 網目異・本末異.観心異・教内外観異.自行化他異.是なり、今要を以て之を言わば迹本観心・同名異義なり始終・本
07 末共に修行も覚道も時機も感応も皆勝劣なり。
08 此の下.二十四番勝劣なり、彼の本門は我が迹門.彼の勝は此の劣・彼の深義は予が浅義・彼の深理は此の浅理・彼が
09 極位は此の浅位・彼の極果は此の初心・彼の観心は此の教相・彼は台星の国に出生す・此れは日天の国に出世す・彼
10 は薬王・此れは上行・彼は解了の機を利す 此れは愚悪の機を益す・彼の弘通は台星所居の高嶺なり・此の弘経は日
11 王・能住の高峰なり.彼は上機に教え・此れは下機を訓ず・彼は一部を以て本尊と為し・此れは七字を本尊と為す.彼
12 は相対開会を表と為し ・此れは絶対開会を表と為す・彼は熟脱・此れは下種・彼は衆機の為に円頓者初縁実相と示
13 し・此れは万機の為に南無妙法蓮華経と勧む・彼は悪口怨嫉・此れは遠島流罪・彼は一部を読誦すと雖も二字を読ま
14 ざること之在り・此れは文文句句・悉く之を読む・彼は正直の妙法の名を替えて一心三観と名く・有の侭の大法に非
15 ざれば帯権の法に似たり・此れは信謗彼此・決定成菩提・南無妙法蓮華経と唱えかく、 彼は諸宗の謬義を粗書き顕
16 すと雖も・未だ言説せず・此れは身命を惜まず他師の邪義を糺し三類の強敵を招く・彼は安楽普賢の説相に依り・此
17 れは勧持不軽の行相を用ゆ・彼は一部に勝劣を立て・此れは一部を迹と伝う・彼は応仏のいきをひかう・此れは寿量
18 品の文底を用ゆ・彼は応仏昇進の自受用報身の一念三千一心三観・此れは久遠元初の自受用報身 無作本有の妙法を
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01 直に唱う。
02 此れ等の深意は迹化の衆・普賢・文殊・観音・薬王等の大菩薩にも付属せざる所の大事なれば知らざる所の秘法なり
03 況や凡師に於てをや。
04  若し末法に於て 本迹一致と修行し所化等に教ゆる者ならば 我が身も五逆罪を造らずして無間に堕ち其れに随従
05  せんともがらも阿鼻に沈まん事疑無き者なり、此の書一見の人人は理普賢智文殊一言の薩タ.生死絶断の際.定光覚
06  悟の大菩薩なり、伝教云く「文殊の利剣は六輪に通じ十二の生類を切断す、一刀を下して妙法万方に勅するに自然
07  に由お三諦を出だす見聞覚知に明なり」 此の一言の三際を示すに一言に如かず、 若し未達の者も一頌を開くに
08  題目三般三諦同じく通知せざること無し、生仏自ら一現なる是を一言の妙旨,一教の玄義と謂う云云.天台の云く「
09  一言三諦・刹那成道・半偈成道」と云云、伝教の云く「仏界の智は九界を境と為し九界の智は仏界を境と為す境智
10  互に冥薫して凡聖常恒なる是を刹那成道と謂う、三道即三徳と解れば諸悪タチマチに真善なる是を半偈成道と名く
11  」今会釈して云く諸仏菩薩の定光三昧も凡聖一如の証道・刹那半偈の成道も我が家の勝劣修行の南無妙法蓮華経の
12  一言に摂し尽す者なり、 此の血脈を列ぬる事は末代浅学の者の予が 仮字の消息を蔑如し天台の漢字の止観を見
13  て眼目を迷わし心意を驚動し或は仮字を漢字と成し、 或は止観明静・前代未聞の見に耽り本迹一致の思を成す、
14  我が内証の寿量品を知らずして 止観に同じ但自見の僻見を本として 予が立義を破失して悪道に堕つ可き故に天
15  台三大章疏の奥伝に属す、 天台伝教等の秘し給える正義・生死一大事の秘伝を書き顕し奉る事は且は恐れ有り且
16  は憚り有り、広宣流布の日公亭に於て応に之を披覧し奉るべし、 会通を加える事は且は広宣流布の為且は末代浅
17  学の為なり 又天台伝教の釈等も予が真実の本懐に非ざるか、 未来嬰児の弟子等彼を本懐かと思うべきものか。
18  去る文永の免許の日爾前迹門の謗法を対治し 本門の正義を立て被れば不日に豊歳ならむと申せしかば 聞く人毎
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01  に舌を振い耳を塞ぐ、其の時方人一人も無く唯我と日蓮与我日興計りなり。
02 問うて云く寿量品・文底の大事と云う秘法如何、 答えて云く唯密の正法なり 秘す可し秘す可し 一代応仏のいき
03 をひかえたる方は理の上の法相なれば 一部共に理の一念三千迹の上の本門寿量ぞと得意せしむる事を 脱益の文の
04 上と申すなり、 文の底とは久遠実成の名字の妙法を余行にわたさず 直達の正観・事行の一念三千の南無妙法蓮華
05 経是なり、権実は理今日本迹理なり本迹は事久遠本迹事なり、亦権実は約智約教一代応仏本迹本迹は約身約位久遠本
                                                   迹亦云
06 く雖脱在現・具騰本種といへり、釈尊.久遠名字即の位の御身の修行を末法今時.日蓮が名字即の身に移せり理は造作
07 に非ず故に天真と曰い証智円明の故に独朗と云うの行儀・本門立行の血脈之を注す秘す可し秘す可し。
08  又日文字の口伝・産湯の口決・二箇は両大師の玄旨にあつ、 本尊七箇の口伝は七面の決に之を表す教化弘経の七
09  箇の伝は弘通者の大要なり、 又此の血脈並に本尊の大事は日蓮嫡嫡座主伝法の書・塔中相承の 稟承唯授一人の
10  血脈なり、相構え相構え秘す可し秘す可し伝う可し、法華本門宗血脈相承畢んぬ。
11       弘安五太歳壬午十月十一日               日 蓮 在御判
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産湯相承事    日興之を記す
01   御名乗りの事、始めは是生.実名は蓮長と申し奉る.後には日蓮と御名乗り有る御事は悲母梅菊女童女の御名なり
                                                   平の畠
02 山殿の一類にて御座す云云法号妙蓮禅尼の御物語り御座す事には、我に不思議の御夢想あり、清澄寺に通夜申したり
                                                  し時汝が
03 志真に神妙なり 一閻浮提第一の宝を与えんと思うなり、 東条片海に三国の太夫と云う者あり是を夫と定めよと云
04 云、其の歳の春・三月廿四日の夜なり正に今も覚え侍るなり。
05   我父母に後れ奉りて 已後詮方なく遊女の如くなりし時御身の父に嫁げり、 或夜の霊夢に曰く叡山の頂に腰を
06 かけて近江の湖水を以て 手を洗うて富士の山より日輪の出でたもうを 懐き奉ると思うて打ち 驚いて後・月水留
07 ると夢物語りを申し侍れば、 父の太夫我も不思議なる御夢想を蒙むるなり、 虚空蔵菩薩貌吉き児を御肩に立て給
08 う、 此の少人は我が為には上行菩提薩タなり日の下の人の為には生財摩訶薩タなり、 亦一切有情の為には行く末
09 三世常恒の大導師なり、 是を汝に与えんとのたもうと見て後御事懐妊の由を聞くと語り相いたりき、 さてこそ御
10 事は聖人なれ。
11   又産生まるべき夜の夢に 富士山の頂に登つて十方を見るに明なる事 掌の内を見るが如し三世明白なり、 梵
12 天・帝釈・四大天王等の諸天悉く来下して 本地自受用報身如来の垂迹・上行菩薩の御身を凡夫地に謙下し給う 御
13 誕生は唯今なり、 無熱池の主 阿那婆達多竜王・八功徳水を応に汲み来るべきなり、 当に産湯に浴し奉るべしと
14 諸天に告げ給えり、 仍て竜神王・即時に青蓮華を一本荷い来れり、 其の蓮より清水を出して 御身を浴し進らせ
15 侍りけり、 其の余れる水をば四天下に灑ぐに其の潤いを受くる人畜・草木・国土世間・悉く金色の光明を放ち四方
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01   の草木花発らき菓成る。
02   男女座を並べて有れども煩悩無く淤泥の中より出れども塵泥に染まず、 譬えば蓮華の泥より出でて泥に染まざ
03 るが如し、人天・竜畜・共に白き蓮を各手に捧げて日に向つて今此三界.皆是我有・其中衆生・悉是吾子・唯我一人.
04 能為救護と唱え奉ると見て驚けば則聖人出生し給えり、 毎自作是念・以何令衆生・得入無上道・速成就仏身と苦我
05 渧き給う。
06   我少し寐みし様なりし時.梵帝等の諸天・一同音に唱えて言く善哉善哉.善日童子・末法教主釈迦仏と三度唱えて
07 作礼して去し給うと寤に見聞きしなりと慥に語り給いしを聞し食しさては某は日蓮なりとの給いしなり。
08   聖人重ねて曰う様は日蓮が弟子檀那等・悲母の物語りと思うべからず即ち金言なり・其の故は予が修行は兼ねて
09 母の霊夢にありけり・日蓮は富士山自然の名号なり、 富士は郡名なり実名をば大日蓮華山と云うなり、 我中道を
10 修行する故に是くの如く国をば日本と云い 神をば日神と申し仏の童名をば日種太子と申し 予が童名をば善日・仮
11 名は是生・実名は即ち日蓮なり。
12   久遠下種の南無妙法蓮華経の守護神は我国に天下り始めし国は出雲なり、出雲に日の御崎と云う所あり、 天照
13 太神始めて天下り給う故に日の御崎と申すなり。
14   我が釈尊・法華経を説き顕し給いしより已来十羅刹女と号す、十羅刹と天照太神と釈尊と日蓮とは一体の異名・
15 本地垂迹の利益広大なり、 日神と月神とを合して文字を訓ずれば十なり、 十羅刹と申すは諸神を一体に束ね合せ
16 たる深義なり、日蓮の日は即日神・昼なり蓮は即月神・夜なり、 月は水を縁とす蓮は水より生ずる故なり、又是生
17 とは日の下の人を生むと書けり。
18   日蓮は天上.天下の一切衆生の主君なり父母なり師匠なり,今久遠下種の寿量品に云く「今此三界皆是我有主君の
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01 義なり其中衆生悉是吾子父母の義なり而今此処多諸患難国土草木唯我一人能為救護師匠の義なり」と云えり、三世常
                                                恒に日蓮は今
02 此三界の主なり、日蓮は大恩以希有事・憐愍教化利益・我等無量億劫誰能報者なるべし。
03   若し日蓮が現在の弟子並びに未来の弟子等の中に 日文字を名乗の上の字に置かずんば自然の法罰を蒙ると知る
04 べし、予が一期の功徳は日文字に留め置くと御説法ありし侭・日興謹んで之を記し奉る。
05   聖人の言く此の相承は日蓮嫡嫡一人の口決・唯授一人の秘伝なり神妙神妙とのたまいて留め畢んぬ。
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善無畏三蔵抄   文永七年    四十九歳御作   与義浄房・浄顕房    於鎌倉
01   法華経は一代聖教の肝心.八万法蔵の依りどころなり、大日経・華厳経.般若経・深密経等の諸の顕密の諸経は震
02 旦・月氏・竜宮・天上・十方世界の国土の諸仏の説教恒沙塵数なり、大海を硯の水とし三千大千世界の草木を筆とし
03 ても書き尽しがたき経経の中をも或は此れを見 或は計り推するに法華経は最第一におはします、 而るを印度等の
04 宗・日域の間に仏意を窺はざる論師・人師多くして或は大日経は法華経に勝れたり、 或る人人は法華経は大日経に
05 劣れるのみならず華厳経にも及ばず、 或る人人は法華経は涅槃経・般若経・深密経等には劣る、或る人人は辺辺あ
06 り互に勝劣ある故に、 或る人の云く機に随つて勝劣あり時機に叶へば勝れ叶はざれば劣る、 或る人の云く有門よ
07 り得道すべき機あれば 空門をそしり有門をほむ余も是を以て知るべしなんど申す、 其の時の人人の中に此の法門
08 を申しやぶる人なければ・おろかなる国王等深く是を信ぜさせ給ひ 田畠等を寄進して徒党あまたになりぬ、 其の
09 義久く旧ぬれば 只正法なんめりと打ち思つて疑ふ事もなく過ぎ行く程に 末世に彼等が論師・人師より智慧賢き人
10 出来して、 彼等が持つところの論師・人師の立義・一一に或は所依の経経に相違するやう或は一代聖教の始末・浅
11 深等を弁へざる故に専ら経文を以て責め申す時、 各各・宗宗の元祖の邪義扶け難き故に陳し方を失ひ、 或は疑つ
12 て云く論師・人師定めて経論に証文ありぬらん 我が智及ばざれば扶けがたし、 或は疑つて云く我が師は上古の賢
13 哲なり今我等は末代の愚人なりなんど思う故に・有徳・高人をかたらひ・えて怨のみなすなり。
14   しかりといへども 予自他の偏党をなげすて論師人師の料簡を閣いて専ら経文によるに法華経は勝れて第一にお
15 はすと意得て侍るなり、 法華経に勝れておはする御経ありと申す人・出来候はば思食べし、 此れは相似の経文を
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01 見たがえて申すか 又人の私に我と経文をつくりて事を仏説によせて候か、 智慧おろかなる者弁へずして仏説と号
02 するなんどと思食すべし、慧能が壇経・善導が観念法門経・天竺・震旦・日本国に私に経を説きをける邪師其の数多
03 し、 其の外私に経文を作り 経文に私の言を加へなんどせる人人 是れ多し、 然りと雖も愚者は是を真と思うな
04 り、 譬えば天に日月にすぎたる星有りなんど申せば 眼無き者は・さもやなんど思はんが如し、我が師は上古の賢
05 哲・汝は末代の愚人なんど申す事をば 愚なる者はさもやと思うなり、 此の不審は今に始りたるにあらず陳隋の代
06 に智顗法師と申せし小僧一人侍りき 後には二代の天子の御師・天台智者大師と号し奉る、 此の人始いやしかりし
07 時・但漢土・五百余年の三蔵・人師を破るのみならず月氏・一千年の論師をも破せしかば南北の智人等・雲の如く起
08 り東西の賢哲等・星の如く列りて 雨の如く難を下し風の如く此の義を破りしかども 終に論師・人師の偏邪の義を
09 破して天台一宗の正義を立てにき、 日域の桓武の御宇に最澄と申す小僧侍りき後には伝教大師と号し奉る、 欽明
10 已来の二百余年の 諸の人師の諸宗を破りしかは 始は諸人いかりをなせしかども 後には 一同に御弟子となりに
11 き、 此等の人人の難に我等が元祖は四依の論師・上古の賢哲なり 汝は像末の凡夫愚人なりとこそ難じ侍りしか、
12 正像末には依るべからず 実経の文に依るべきぞ人には依るべからず 専ら道理に依るべきか、外道・仏を難じて云
13 く「汝は成劫の末・住劫の始の愚人なり 我等が本師は先代の智者・二天・三仙是なり」なんど申せしかども終に九
14 十五種の外道とこそ捨てられしか。
15   日蓮八宗を勘へたるに法相宗・華厳宗・三論宗等は権経に依つて或は実経に同じ或は実経を下せり、是れ論師人
16 師より誤りぬと見えぬ、 倶舎・成実は子細ある上・律宗なんどは 小乗最下の宗なり、人師より論師・権大乗より
17 実大乗経なれば真言宗・大日経等は未だ華厳経等に及ばず 何に況や涅槃・法華経等に及ぶべしや、 而るに善無畏
18 三蔵は華厳・法華・大日経等の勝劣を判ずる時・理同事勝の謬釈を作りしより已来 或はおごりをなして法華経は華
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01 厳経にも劣りなん何に況や真言経に及ぶべしや、 或は云く印・真言のなき事は法華経に諍ふべからず、 或は云く
02 天台宗の祖師多く 真言宗を勝ると云い世間の思いも真言宗勝れたるなんめりと思へり、 日蓮此の事を計るに人多
03 く迷ふ事なれば委細にかんがへたるなり、 粗余処に注せり見るべし又志あらん人人は 存生の時習い伝ふべし人の
04 多く・おもふには・おそるべからず、 又時節の久近にも依るべからず専ら経文と道理とに依るべし、 浄土宗は曇
05 鸞・道綽・善導より誤り多くして多くの人人を邪見に入れけるを 日本の法然・是をうけ取つて人ごとに念仏を信ぜ
06 しむるのみならず天下の諸宗を皆失はんとするを叡山・三千の大衆・南都・興福寺・東大寺の八宗より是をせく故に
07 代代の国王・勅宣を下し将軍家より御教書をなして・せけどもとどまらず、弥弥繁昌して返つて主上・上皇・万民・
08 等にいたるまで皆信状せり。
09   而るに日蓮は安房の国・東条片海の石中の賎民が子なり威徳なく有徳のものにあらず、なににつけてか南都・北
10 嶺のとどめがたき 天子の虎牙の制止に叶はざる念仏をふせぐべきとは思へども 経文を亀鏡と定め天台・伝教の指
11 南を手ににぎりて建長五年より今年・文永七年に至るまで 十七年が間・是を責めたるに日本国の念仏・大体留り了
12 ぬ眼前に是れ見えたり、 又口にすてぬ人人はあれども心計りは念仏は生死をはなるる道にはあらざりけると思ふ、
13 禅宗以て是くの如し 一を以て万を知れ真言等の諸宗の誤りをだに留めん事手ににぎりておぼゆるなり、 況や当世
14 の高僧・真言師等は其の智牛馬にもおとり螢火の光にもしかず 只死せるものの手に弓箭をゆひつけ・ねごとするも
15 のに物をとふが如し、 手に印を結び口に真言は誦すれども其の心中には義理を弁うる事なし、 結句・慢心は山の
16 如く高く欲心は海よりも深し、 是は皆自ら経論の勝劣に迷ふより事起り祖師の誤りをたださざるによるなり、 所
17 詮・智者は八万法蔵をも習ふべし 十二部経をも学すべし、 末代濁悪世の愚人は念仏等の難行・易行等をば抛つて
18 一向に法華経の題目を南無妙法蓮華経と唱え給うべし、 日輪・東方の空に出でさせ給へば南浮の空・皆明かなり大
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01 光を備へ給へる故なり、 螢火は未だ国土を照さず宝珠は懐中に持ぬれば万物皆ふらさずと云う事なし、 瓦石は財
02 をふらさず念仏等は法華経の題目に対すれば瓦石と宝珠と螢火と日光との如し。
03   我等が昧き眼を以て 螢火の光を得て物の色を弁ふべしや、 旁凡夫の叶いがたき法は念仏・真言等の小乗権教
04 なり、又我が師・釈迦如来は一代聖教乃至八万法蔵の説者なり、 此の娑婆・無仏の世の最先に出でさせ給いて一切
05 衆生の眼目を開き給ふ御仏なり、 東西十方の諸仏・菩薩も皆此の仏の教なるべし、譬えば皇帝已前は人・父をしら
06 ずして畜生の如し、 尭王已前は四季を弁へず牛馬の癡なるに同じかりき、 仏世に出でさせ給はざりしには比丘・
07 比丘尼の二衆もなく只男女二人にて候いき、 今比丘・比丘尼の真言師等・大日如来を御本尊と定めて釈迦如来を下
08 し念仏者等が阿弥陀仏を一向に持つて 釈迦如来を抛てたるも 教主釈尊の比丘・比丘尼なり元祖が誤を伝え来るな
09 るべし。
10   此の釈迦如来は三の故ましまして他仏にかはらせ給ひて娑婆世界の一切衆生の有縁の仏となり給ふ、 一には此
11 の娑婆世界の一切衆生の世尊にておはします、 阿弥陀仏は此の国の大王にはあらず 釈迦仏は譬えば我が国の主上
12 のごとし先ず此の国の大王を敬つて 後に他国の王をば敬ふべし、 天照太神・正八幡宮等は我が国の本主なり迹化
13 の後・神と顕れさせ給ふ、此の神にそむく人・此の国の主となるべからず、 されば天照太神をば鏡にうつし奉りて
14 内侍所と号す、 八幡大菩薩に勅使有つて 物申しあはさせ給いき、 大覚世尊は我等が尊主なり先づ御本尊と定む
15 べし、 二には釈迦如来は娑婆世界の一切衆生の父母なり、 先づ我が父母を孝し後に他人の父母には及ぼすべし、
16 例せば周の武王は父の形を木像に造つて 車にのせて戦の大将と定めて天感を蒙り殷の紂王をうつ、 舜王は父の眼
17 の盲たるをなげきて涙をながし手をもつて・のごひしかば本のごとく眼あきにけり、 此の仏も又是くの如く我等衆
18 生の眼をば開仏知見とは開き給いしか、 いまだ他仏は開き給はず、 三には此の仏は娑婆世界の一切衆生の本師な
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01 り、此の仏は賢劫第九・人寿百歳の時・中天竺・浄飯大王の御子・十九にして出家し三十にして成道し五十余年が間
02 一代聖教を説き八十にして御入滅・舎利を留めて一切衆生を正像末に救ひ給ふ、 阿弥陀如来・薬師仏・大日等は他
03 土の仏にして 此の世界の世尊にてはましまさず、 此の娑婆世界は十方世界の中の最下の処・譬えば此の国土の中
04 の獄門の如し、十方世界の中の十悪・五逆・誹謗正法の重罪・逆罪の者を諸仏如来・擯出し給いしを釈迦如来・此の
05 土にあつめ給ふ、 三悪並びに無間大城に堕ちて其の苦をつぐのひて人中天上には生れたれども 其の罪の余残あり
06 てややもすれば正法を謗じ智者を罵り罪つくりやすし、 例せば身子は阿羅漢なれども瞋恚のけしきあり、 畢陵は
07 見思を断ぜしかども慢心の形みゆ、 難陀は婬欲を断じても女人に交る心あり、 煩悩を断じたれども余残あり何に
08 況や凡夫にをいてをや、 されば釈迦如来の御名をば能忍と名けて 此の土に入り給うに一切衆生の誹謗をとがめず
09 よく忍び給ふ故なり、 此等の秘術は他仏のかけ給へるところなり、 阿弥陀仏等の諸仏世尊・悲願をおこさせ給い
10 て心にははぢをおぼしめして還つて此の界にかよひ 四十八願・十二大願なんどは起させ給ふなるべし、 観世音等
11 の他土の菩薩も亦復是くの如し、 仏には常平等の時は一切諸仏は差別なけれども 常差別の時は各各に十方世界に
12 土をしめて有縁無縁を分ち給ふ、 大通智勝仏の十六王子・十方に土をしめて一一に我が弟子を救ひ給ふ、 其の中
13 に釈迦如来は此土に当り給ふ 我等衆生も又生を娑婆世界に受けぬ、 いかにも釈迦如来の教化をばはなるべからず
14 而りといへども 人皆是を知らず委く尋ねあきらめば 唯我一人能為救護と申して釈迦如来の御手を離るべからず、
15 而れば此の土の一切衆生・生死を厭ひ御本尊を崇めんとおぼしめさば 必ず先ず釈尊を木画の像に顕わして 御本尊
16 と定めさせ給いて其の後力おはしまさば弥陀等の他仏にも及ぶべし。
17   然るを当世聖行なき此の土の人人の仏をつくりかかせ給うに 先ず他仏をさきとするは其の仏の御本意にも釈迦
18 如来の御本意にも叶ふべからざる上 世間の礼儀にもはづれて候、 されば優填大王の赤栴檀いまだ他仏をば・きざ
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01 ませ給はず、 千塔王の画像も釈迦如来なり、 而るを諸大乗経による人人・我が所依の経経を諸経に勝れたりと思
02 ふ故に教主釈尊をば次さまにし給ふ、 一切の真言師は大日経は諸経に勝れたりと思ふ故に 此の経に詮とする大日
03 如来を我等が有縁の仏と思ひ 念仏者等は観経等を信ずる故に 阿弥陀仏を娑婆有縁の仏と思ふ、 当世はことに善
04 導・法然等が邪義を正義と思いて浄土の三部経を指南とする故に 十造る寺は八九は阿弥陀仏を本尊とす、 在家・
05 出家・一家・十家・百家・千家にいたるまで持仏堂の仏は阿弥陀なり、其の外木画の像・一家に千仏万仏まします大
06 旨は阿弥陀仏なり、 而るに当世の智者とおぼしき人人・是を見て・わざはひとは思はずして我が意に相叶ふ故に只
07 称美讃歎の心のみあり、 只一向悪人にして因果の道理をも弁へず 一仏をも持たざる者は還つて失なきへんもあり
08 ぬべし、 我等が父母・世尊は主師親の三徳を備えて一切の仏に擯出せられたる我等を唯我一人・能為救護とはげま
09 せ給ふ、 其の恩大海よりも深し其の恩大地よりも厚し其の恩虚空よりも広し、 二つの眼をぬいて仏前に空の星の
10 数備ふとも 身の皮を剥いで百千万・天井にはるとも涙を閼伽の水として千万億劫・仏前に花を備ふとも身の肉血を
11 無量劫・仏前に山の如く積み大海の如く湛ふとも此の仏の一分の御恩を報じ尽しがたし。
12   而るを当世の僻見の学者等・設ひ八万法蔵を極め十二部経を諳んじ 大小の戒品を堅く持ち給ふ智者なりとも此
13 の道理に背かば悪道を免るべからずと思食すべし、 例せば善無畏三蔵は真言宗の元祖・烏萇奈国の大王・仏種王の
14 太子なり、 教主釈尊は十九にして出家し給いき此の三蔵は十三にして位を捨て月氏・七十箇国・九万里を歩き回り
15 て諸経・諸論・諸宗を習い伝へ北天竺・金粟王の塔の下にして 天に仰ぎ祈請を致し給えるに虚空の中に大日如来を
16 中央として 胎蔵界の曼荼羅・顕れさせ給ふ、 慈悲の余り此の正法を辺土に弘めんと思食して 漢土に入り給ひ玄
17 宗皇帝に秘法を授け奉り 旱魃の時雨の祈をし給いしかば 三日が内に天より雨ふりしなり、此の三蔵は千二百余尊
18 の種子・尊形三摩耶・一事も・くもりなし、当世の東寺等の一切の真言宗・一人も此の御弟子に非るはなし、而るに
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01 此の三蔵一時に頓死ありき 数多の獄卒来つて鉄繩七すぢ懸けたてまつり 閻魔王宮に至る此の事第一の不審なり、
02 いかなる罪あつて 此の責に値い給ひけるやらん、 今生は十悪は有りもやすらん五逆罪は造らず過去を尋ぬれば大
03 国の王となり給ふ事を勘うるに 十善戒を堅く持ち五百の仏陀に仕へ給ふなり 何の罪かあらん、其の上十三にして
04 位を捨て出家し給いき閻浮第一の菩提心なるべし、 過去・現在の軽重の罪も滅すらん・其の上月氏に流布する所の
05 経論諸宗を習い極め給いしなり何の罪か消えざらん、 又真言密教は他に異なる法なるべし 一印一真言なれども手
06 に結び口に誦すれば 三世の重罪も滅せずと云うことなし、 無量倶低劫の間作る所の衆の罪障も此の曼荼羅を見れ
07 ば一時に皆消滅すとこそ申し候へ、 況や此の三蔵は千二百余尊の印真言を諳に浮べ 即身成仏の観道鏡に懸り両部
08 潅頂の御時・大日覚王となり給いき、 如何にして閻魔の責に豫り給いけるやらん、 日蓮は顕密二道の中に勝れさ
09 せ給いて我等易易と生死を離るべき教に入らんと思い候いて 真言の秘教をあらあら習ひ 此の事を尋ね勘うるに一
10 人として答をする人なし、 此の人悪道を免れずば当世の一切の真言 並びに一印一真言の道俗・三悪道の罪を免る
11 べきや。
12   日蓮此の事を委く勘うるに二つの失有つて閻魔王の責に予り給へり、 一つには大日経は法華経に劣るのみに非
13 ず涅槃経・華厳経・般若経等にも及ばざる経にて候を 法華経に勝れたりとする謗法の失なり、二つには大日如来は
14 釈尊の分身なり 而るを大日如来は教主釈尊に勝れたりと思ひし僻見なり、 此の謗法の罪は無量劫の間・千二百余
15 尊の法を行ずとも悪道を免るべからず、 此の三蔵此の失免れ難き故に諸尊の印真言を作せども 叶はざりしかば法
16 華経第二・譬喩品の今此三界.皆是我有・其中衆生・悉是吾子・而今此処多諸患難.唯我一人・能為救護の文を唱へて
17 鉄の繩を免れさせ給いき、 而るに善無畏已後の真言師等は 大日経は一切経に勝るるのみに非ず 法華経に超過せ
18 り、 或は法華経は華厳経にも劣るなんど申す人もあり此等は人は異なれども其の謗法の罪は同じきか、 又善無畏
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01 三蔵・法華経と大日経と大事とすべしと深理をば 同ぜさせ給いしかども 印と真言とは法華経は大日経に劣りける
02 とおぼせし僻見計りなり、 其の已後の真言師等は大事の理をも法華経は劣れりと思へり、 印真言は又申すに及ば
03 ず謗法の罪・遥にかさみたり、 閻魔の責にて堕獄の苦を延ぶべしとも見えず直に阿鼻の炎をや招くらん、 大日経
04 には本・一念三千の深理なし此の理は法華経に限るべし、 善無畏三蔵・天台大師の法華経の深理を読み出でさせ給
05 いしを盗み取つて大日経に入れ 法華経の荘厳として説かれて候・大日経の印真言を彼の経の得分と思へり、 理も
06 同じと申すは僻見なり 真言印契を得分と思ふも邪見なり、 譬えば人の下人の六根は主の物なるべし而るを我が財
07 と思ふ故に多くの失出で来る、 此の譬を似て諸経を解るべし劣る経に説く 法門は勝れたる経の得分と成るべきな
08 り。
09   而るを日蓮は安房の国・東条の郷・清澄山の住人なり、幼少の時より虚空蔵菩薩に願を立てて云く日本第一の智
10 者となし給へと云云、 虚空蔵菩薩眼前に高僧とならせ給いて 明星の如くなる智慧の宝珠を授けさせ給いき、其の
11 しるしにや日本国の八宗並びに禅宗・念仏宗等の大綱・粗伺ひ侍りぬ、 殊には建長五年の比より今文永七年に至る
12 まで此の十六七年の間・禅宗と念仏宗とを難ずる故に 禅宗・念仏宗の学者・蜂の如く起り雲の如く集る、是をつむ
13 る事・一言二言には過ぎず 結句は天台・真言等の学者・自宗の廃立を習ひ失いて我が心と他宗に同じ在家の信をな
14 せる事なれば彼の邪見の宗を扶けんが為に天台・真言は念仏宗・禅宗に等しと料簡しなして日蓮を破するなり、 此
15 れは日蓮を破する様なれども我と天台・真言等を失ふ者なるべし能く能く恥ずべき事なり。
16   此の諸経・諸論・諸宗の失を弁うる事は虚空蔵菩薩の御利生・本師道善御房の御恩なるべし。亀魚すら恩を報ず
17 る事あり何に況や人倫をや、 此の恩を報ぜんが為に清澄山に於て仏法を弘め道善御房を導き奉らんと欲す、 而る
18 に此の人愚癡におはする上念仏者なり 三悪道を免るべしとも見えず、 而も又日蓮が教訓を用ふべき人にあらず、
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01 然れども文永元年十一月十四日・ 西条華房の僧坊にして見参に入りし時 彼の人の云く 我智慧なければ請用の望
02 もなし、 年老いていらへなければ念仏の名僧をも立てず 世間に弘まる事なれば唯南無阿弥陀仏と申す計りなり、
03 又我が心より起らざれども事の縁有つて 阿弥陀仏を五体まで作り奉る是れ又過去の宿習なるべし、 此の科に依つ
04 て地獄に堕つべきや等云云、 爾時に日蓮意に念はく別して中違ひまいらする事無けれども 東条左衛門入道蓮智が
05 事に依つて此の十余年の間は見奉らず 但し中不和なるが如し、 穏便の義を存じおだやかに申す事こそ礼儀なれと
06 は思いしかども 生死界の習ひ老少不定なり又二度見参の事・難かるべし、 此の人の兄道義房義尚此の人に向つて
07 無間地獄に堕つべき人と申して有りしが 臨終思う様にも・ましまさざりけるやらん、 此の人も又しかるべしと哀
08 れに思いし故に思い切つて強強に申したりき、 阿弥陀仏を五体作り給へるは五度無間地獄に堕ち給ふべし 其の故
09 は 正直捨方便の法華経に釈迦如来は 我等が親父・阿弥陀仏は伯父と説かせ給ふ、 我が伯父をば五体まで作り供
10 養せさせ給いて親父をば一体も造り給はざりけるは豈不孝の人に非ずや、 中中・山人・海人なんどが東西をしらず
11 一善をも修せざる者は還つて罪浅き者なるべし、 当世の道心者が後世を願ふとも 法華経・釈迦仏をば打ち捨て阿
12 弥陀仏念仏なんどを 念念に捨て申さざるはいかがあるべかるらん、 打ち見る処は善人とは見えたれども親を捨て
13 て他人につく失免るべしとは見えず、 一向悪人はいまだ仏法に帰せず 釈迦仏を捨て奉る失も見えず縁有つて信ず
14 る辺もや有らんずらん、 善導・法然・並びに当世の学者等が邪義に就いて阿弥陀仏を本尊として一向に念仏を申す
15 人人は多生曠劫をふるとも 此の邪見を翻へして釈迦仏・法華経に帰すべしとは見えず、 されば雙林最後の涅槃経
16 に十悪・五逆よりも過ぎて おそろしき者を出ださせ給ふに 謗法闡提と申して二百五十戒を持ち三衣一鉢を身に纒
17 へる智者共の中にこそ有るべしと見え侍れとこまごまと申して候いしかば 此の人もこころえずげに 思いておはし
18 き、 傍座の人人もこころえずげに・をもはれしかども 其の後承りしに法華経を持たるるの由承りしかば此の人邪
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01 見を翻し給ふか善人に成り給いぬと悦び思ひ候処に 又此の釈迦仏を造らせ給う事申す計りなし、 当座には強なる
02 様に有りしかども 法華経の文のままに説き候いしかばかうおれさせ給へり、 忠言耳に逆らい良薬口に苦しと申す
03 事は是なり。
04   今既に日蓮・師の恩を報ず定めて仏神・納受し給はんか、各各此の由を道善房に申し聞かせ給ふべし、仮令強言
05 なれども人をたすくれば実語・ナン語なるべし、設ひナン語なれども人を損ずるは妄語・強言なり、当世・学匠等の
06 法門はナン語・実語と人人は思食したれども皆強言妄語なり、仏の本意たる法華経に背く故なるべし、日蓮が念仏申
07 す者は無間地獄に堕つべし禅宗・真言宗も又謬の宗なりなんど申し候は強言とは思食すとも実語・ナン語なるべし、
08 例せば此の道善御房の法華経を迎へ釈迦仏を造らせ給う事は 日蓮が強言より起る、 日本国の一切衆生も亦復是く
09 の如し、 当世・此の十余年已前は一向念仏者にて候いしが 十人が一二人は一向に南無妙法蓮華経と唱へ二三人は
10 両方になり、 又一向念仏申す人も疑をなす故に心中に法華経を信じ 又釈迦仏を書き造り奉る、是れ亦日蓮が強言
11 より起る、 譬えば栴檀は伊蘭より生じ蓮華は泥より出でたり 而るに念仏は無間地獄に堕つると申せば当世牛馬の
12 如くなる智者どもが日蓮が法門を仮染にも毀るは糞犬が師子王をほへ癡猿が帝釈を笑ふに似たり。
13       文永七年                       日 蓮 花 押
14     義浄房浄顕房
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佐渡御勘気抄    文永八年十月    五十歳御作   与円浄房    於佐渡
01   九月十二日に御勘気を蒙て 今年十月十日佐渡の国へまかり候なり、 本より学文し候し事は仏教をきはめて仏
02 になり恩ある人をも・たすけんと思ふ、 仏になる道は必ず身命をすつるほどの事ありてこそ仏にはなり候らめと・
03 をしはからる、 既に経文のごとく悪口・罵詈・刀杖・瓦礫・数数見擯出と説かれてかかるめに値い候こそ法華経を
04 よむにて候らめと、 いよいよ信心もおこり後生もたのもしく候、 死して候はば必ず各各をも・たすけたてまつる
05 べし、 天竺に師子尊者と申せし人は檀弥羅王に頚をはねられ提婆菩薩は外道につきころさる、 漢土に竺の道生と
06 申せし人は蘇山と申す所へながさる、 法道三蔵は面にかなやきをやかれて江南と申す所へながされき、 是れ皆法
07 華経のとく仏法のゆへなり、日蓮は日本国・東夷・東条・安房の国・海辺の旃陀羅が子なり、いたづらに・くちん身
08 を法華経の御故に捨てまいらせん事あに石に金を・かふるにあらずや、 各各なげかせ給うべからず、 道善の御房
09 にも・かう申しきかせまいらせ給うべし、 領家の尼御前へも御ふみと存じ候へども先かかる身のふみなれば・なつ
10 かしやと・おぼさざるらんと申しぬると便宜あらば各各・御物語り申させ給い候へ。
11       十月 日                                  日蓮花押
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義浄房御書
01   御法門の事委しく承はり候い畢んぬ、 法華経の功徳と申すは 唯仏与仏の境界・十方分身の智慧も及ぶか及ば
02 ざるかの内証なり、 されば天台大師も妙の一字をば妙とは妙は不可思議と名くと釈し給いて候なるぞ 前前御存知
03 の如し、 然れども此の経に於て重重の修行分れたり天台・妙楽・伝教等計りしらせ給う法門なり、就中く伝教大師
04 は天台の後身にて渡らせ給へども 人の不審を晴さんとや思し食しけん大唐へ決をつかはし給ふ事多し、 されば今
05 経の所詮は十界互具・百界千如・一念三千と云ふ事こそゆゆしき大事にては候なれ、 此の法門は摩訶止観と申す文
06 にしるされて候、 次に寿量品の法門は日蓮が身に取つてたのみあることぞかし、 天台・伝教等も粗しらせ給へど
07 も言に出して宣べ給はず 竜樹・天親等も亦是くの如し、 寿量品の自我偈に云く「一心に仏を見たてまつらんと欲
08 して自ら身命を惜しまず」云云、 日蓮が己心の仏界を此の文に依つて顕はすなり、 其の故は寿量品の事の一念三
09 千の三大秘法を成就せる事・此の経文なり秘す可し秘す可し、 叡山の大師・渡唐して此の文の点を相伝し給う処な
10 り、 一とは一道清浄の義心とは諸法なり、 されば天台大師心の字を釈して云く「一月三星・心果清浄」云云、日
11 蓮云く一とは妙なり心とは法なり 欲とは蓮なり見とは華なり仏とは経なり、 此の五字を弘通せんには不自惜身命
12 是なり、 一心に仏を見る心を一にして 仏を見る一心を見れば仏なり、 無作の三身の仏果を成就せん事は恐くは
13 天台伝教にも越へ竜樹・迦葉にも勝れたり、 相構へ相構へて心の師とはなるとも 心を師とすべからずと仏は記し
14 給ひしなり、 法華経の御為に身をも捨て命をも惜まざれと強盛に申せしは是なり、 南無妙法蓮華経・南無妙法蓮
15 華経。
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01       文永十年五月二十八日 日蓮花押
02     義浄房御返事
清澄寺大衆中    建治二年正月    五十五歳御作
01   新春の慶賀自他幸甚幸甚、去年来らず如何定めて子細有らんか、抑参詣を企て候わば伊勢公の御房に十住心論・
02 秘蔵宝鑰二教論等の真言の疏を借用候へ、 是くの如きは真言師蜂起の故に之を申す、 又止観の第一・第二・御随
03 身候へ東春・輔正記なんどや候らん、 円智房の御弟子に 観智房の持ちて候なる宗要集かしたび候へ、 それのみ
04 ならずふみの候由も 人人申し候いしなり早早に返すべきのよし申させ給へ、 今年は殊に仏法の邪正たださるべき
05 年か・浄顕の御房・義城房等には申し給うべし、 日蓮が度度・殺害せられんとし並びに二度まで流罪せられ頚を刎
06 られんとせし事は別に世間の失に候はず、 生身の虚空蔵菩薩より大智慧を給わりし事ありき、 日本第一の智者と
07 なし給へと申せし事を不便とや思し食しけん 明星の如くなる大宝珠を給いて右の袖にうけとり候いし故に 一切経
08 を見候いしかば 八宗並びに一切経の勝劣粗是を知りぬ、 其の上真言宗は法華経を失う宗なり、是は大事なり先ず
09 序分に禅宗と念仏宗の僻見を責めて見んと思ふ、 其の故は月氏漢土の仏法の邪正は且らく之を置く 日本国の法華
10 経の正義を失うて一人もなく 人の悪道に堕つる事は真言宗が影の身に随うがごとく 山山・寺寺ごとに法華宗に真
11 言宗をあひそひて如法の法華経に十八道をそへ 懺法に阿弥陀経を加へ天台宗の学者の潅頂をして 真言宗を正とし
12 法華経を傍とせし程に、 真言経と申すは爾前権教の内の華厳・般若にも劣れるを慈覚・弘法これに迷惑して或は法
13 華経に同じ或は勝れたりなんど申して、 仏を開眼するにも仏眼大日の印・真言をもつて開眼供養するゆへに 日本
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01 国の木画の諸像皆無魂無眼の者となりぬ、 結句は天魔入り替つて檀那をほろぼす 仏像となりぬ王法の尽きんとす
02 るこれなり、此の悪真言かまくらに来りて又日本国をほろぼさんとす。
03   其の上禅宗・浄土宗なんどと申すは又いうばかりなき僻見の者なり、 此れを申さば必ず日蓮が命と成るべしと
04 存知せしかども虚空蔵菩薩の御恩をほうぜんがために 建長五年四月二十八日安房の国東条の郷 清澄寺道善の房持
05 仏堂の南面にして浄円房と申す者並びに少少の大衆にこれを申しはじめて其の後二十余年が間・退転なく申す、 或
06 は所を追い出され或は流罪等、 昔は聞く不軽菩薩の杖木等を今は見る日蓮が刀剣に当る事を、 日本国の有智・無
07 智・上下.万人の云く日蓮法師は古の論師・人師・大師.先徳にすぐるべからずと、日蓮この不審をはらさんがために
08 正嘉・文永の大地震・大長星を見て勘えて云く我が朝に二つの大難あるべし所謂自界叛逆難・他国侵逼難なり、 自
09 界は鎌倉に権の大夫殿・御子孫どしうち出来すべし、 他国侵逼難は四方よりあるべし、其の中に西より・つよくせ
10 むべし、是れ偏に仏法が一国挙りて邪なるゆへに梵天・帝釈の他国に仰せつけて・せめらるるなるべし。
11   日蓮をだに用いぬ程ならば将門.純友・貞任・利仁・田村のやうなる将軍.百千万人ありとも叶ふべからず、これ
12 まことならずば 真言と念仏等の僻見をば信ずべしと申しひろめ候いき、 就中清澄山の大衆は日蓮を父母にも三宝
13 にも・をもひをとさせ給はば 今生には貧窮の乞者とならせ給ひ後生には無間地獄に堕ちさせ給うべし・故いかんと
14 なれば東条左衛門景信が悪人として 清澄のかいしし等をかりとり 房房の法師等を念仏者の所従にし・なんとせし
15 に日蓮敵をなして領家のかたうどとなり清澄・二間の二箇の寺・東条が方につくならば日蓮法華経をすてんと、 せ
16 いじやうの起請をかいて 日蓮が御本尊の手にゆいつけていのりて 一年が内に両寺は 東条が手をはなれ候いしな
17 り、此の事は虚空蔵菩薩もいかでかすてさせ給うべき、 大衆も日蓮を心へずに・をもはれん人人は天にすてられ・
18 たてまつらざるべしや、 かう申せば愚癡の者は我をのろうと申すべし 後生に無間地獄に堕ちんが不便なれば申す
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01 なり。
02   領家の尼ごぜんは女人なり愚癡なれば人人のいひをどせば・さこそとましまし候らめ、 されども恩をしらぬ人
03 となりて 後生に悪道に堕ちさせ給はん事こそ不便に候へども 又一つには日蓮が父母等に恩をかほらせたる人なれ
04 ばいかにしても後生をたすけたてまつらんと・こそいのり候へ、 法華経と申す御経は別の事も候はず我は過去・五
05 百塵点劫より先の仏なり、 又舎利弗等は未来に仏になるべしと、これを信ぜざらん者は無間地獄に堕つべし、 我
06 のみかう申すにはあらず多宝仏も証明し十方の諸仏も舌をいだして.かう候、地涌千界・文殊・観音・梵天・帝釈.日
07 月・四天・十羅刹・法華経の行者を守護し給はんと説かれたり、されば仏になる道は別のやうなし過去の事・未来の
08 事を申しあてて候が・まことの法華経にては候なり。
09   日蓮はいまだ・つくしを見ずえぞしらず、一切経をもつて勘へて候へば・すでに値いぬ、もし.しからば各各.不
10 知恩の人なれば 無間地獄に堕ち給うべしと申し候はたがひ候べきか、 今はよし後をごらんぜよ日本国は当時のゆ
11 き対馬のやうに なり候はんずるなり、 其の時安房の国にむこが寄せて責め候はん 日蓮房の申せし事の合うたり
12 と申すは偏執の法師等が口すくめて無間地獄に堕ちん事不便なり不便なり。
13       正月十一日 日蓮花押
14     安房の国清澄寺大衆中
15   このふみはさど殿と・すけあさり御房と虚空蔵の御前にして大衆ごとに・よみきかせ給へ。
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聖密房御書    建治三年    五十六歳御作
01   大日経をば善無畏・不空・金剛智等の義に云く「大日経の理と法華経の理とは同じ事なり但印と真言とが法華経
02 は劣なり」と立てたり,良ショウ.和尚.広修.維ケンなんど申す人は大日経は華厳経.法華経.涅槃経等には及ばず但方
03 等部の経なるべし、日本の弘法大師云く「法華経は猶華厳経等に劣れり まして大日経には及ぶべからず」等云云、
04 又云く「法華経は釈迦の説・大日経は大日如来の説・教主既にことなり・又釈迦如来は大日如来の御使として顕教を
05 とき給う これは密教の初門なるべし」或は云く「法華経の肝心たる寿量品の仏は顕教の中にしては 仏なれども密
06 教に対すれば具縛の凡夫なり」と云云。
07   日蓮勘えて云く大日経は新訳の経・唐の玄宗皇帝の御時・開元四年に天竺の善無畏三蔵もて来る、法華経は旧訳
08 の経・後秦の御宇に羅什三蔵もて来る其の中間三百余年なり、 法華経亘て後百余年を経て天台智者大師・教門には
09 五時四教を立てて 上五百余年の学者の教相をやぶり観門には一念三千の法門をさとりて始めて 法華経の理を得た
10 り、 天台大師已前の三論宗・已後の法相宗には八界を立て十界を論ぜず 一念三千の法門をば立つべきやうなし、
11 華厳宗は天台已前には 南北の諸師・華厳経は法華経に勝れたりとは申しけれども華厳宗の名は候はず、 唐の代に
12 高宗の后・則天皇后と申す人の御時・法蔵法師・澄観なんど申す人・華厳宗の名を立てたり、此の宗は教相に五教を
13 立て観門には十玄・六相なんど申す法門なり、 をびただしきやうに・みへたりしかども澄観は天台をはするやうに
14 て・なを天台の一念三千の法門をかりとりて 我が経の心如工画師の文の心とす、 これは華厳宗は天台に落ちたり
15 というべきか 又一念三千の法門を盗みとりたりというべきか、 澄観は持戒の人・大小の戒を一塵をもやぶらざれ
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01 ども一念三千の法門をば・ぬすみとれり・よくよく口伝あるべし、 真言宗の名は天竺にありや・いなや大なる不審
02 なるべし、 但真言経にてありけるを 善無畏等の宗の名を漢土にして付けたりけるか・よくよくしるべし、 就中
03 善無畏等・法華経と大日経との勝劣をはんずるに理同事勝の釈をばつくりて 一念三千の理は法華経・大日経これ同
04 じなんどいへども 印と真言とが法華経には無ければ 事法は大日経に劣れり、 事相かけぬれば事理倶密もなしと
05 存ぜり、 今日本国及び諸宗の学者等並びにことに用ゆべからざる天台宗共にこの義をゆるせり 例せば諸宗の人人
06 をばそねめども 一同に弥陀の名をとなへて自宗の本尊をすてたるがごとし 天台宗の人人は一同に真言宗に落ちた
07 る者なり。
08   日蓮・理のゆくところを不審して云く 善無畏三蔵の法華経と大日経とを理は同じく事は勝れたりと立つるは天
09 台大師の始めて立て給へる一念三千の理を 今大日経にとり入れて同じと自由に判ずる条ゆるさるべしや、 例せば
10 先に人丸が・ほのぼのと・あかしのうらの.あさぎりに・しまかくれゆく・ふねをしぞをもう.とよめるを、紀のしく
11 ばう源のしたがうなんどが判じて云く「此の歌はうたの父・うたの母」等云云、 今の人我うたよめりと申して・ほ
12 のぼのと乃至船をしぞをもうと 一字をもたがへず・よみて 我が才は人丸にをとらずと申すをば 人これを用ゆべ
13 しや、 やまかつ海人なんどは用ゆる事もありなん、 天台大師の始めて立て給へる一念三千の法門は仏の父・仏の
14 母なるべし、 百余年・已後の善無畏三蔵がこの法門をぬすみとりて大日経と法華経とは理同なるべし、 理同と申
15 すは一念三千なりと・かけるをば智慧かしこき人は用ゆべしや、 事勝と申すは印・真言なしなんど申すは天竺の大
16 日経・法華経の勝劣か漢土の法華経・大日経の勝劣か、 不空三蔵の法華経の儀軌には法華経に印・真言をそへて訳
17 せり、 仁王経にも羅什の訳には印・真言なし不空の訳の仁王経には印・真言これあり、此等の天竺の経経には無量
18 の事あれども月氏.漢土・国を・へだてて・とをく・ことごとく.もちて来がたければ経を略するなるべし、法華経に
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01 は印・真言なけれども二乗作仏・劫国名号・久遠実成と申すきぼの事あり、大日経等には印・真言はあれども二乗作
02 仏・久遠実成これなし、 二乗作仏と印・真言とを並ぶるに天地の勝劣なり、四十余年の経経には二乗は敗種の人と
03 一字二字ならず無量無辺の経経に嫌はれ、 法華経には・これを破して二乗作仏を宣べたり、いづれの経経にか印・
04 真言を嫌うことばあるや、 その言なければ又大日経にも其の名を嫌はず 但印・真言をとけり、印と申すは手の用
05 なり手・仏にならずは手の印・仏になるべしや、真言と申すは口の用なり口・仏にならずば口の真言・仏になるべし
06 や、 二乗の三業は法華経に値いたてまつらずは無量劫・千二百余尊の印・真言を行ずとも仏になるべからず、勝れ
07 たる二乗作仏の事法をば・とかずと申して劣れる印・真言をとける事法をば勝れたりと申すは 理によれば盗人なり
08 事によれば劣謂勝見の外道なり、 此の失によりて閻魔の責めをば・かほりし人なり、 後にくいかへして天台大師
09 を仰いで法華にうつりて悪道をば脱れしなり。
10   久遠実成なんどは大日経にはをもひもよらず、 久遠実成は一切の仏の本地・譬へば大海は久遠実成・魚鳥は千
11 二百余尊なり、 久遠実成なくば千二百余尊はうきくさの根なきがごとし 夜の露の日輪の出でざる程なるべし、天
12 台宗の人人この事を弁へずして 真言師にたぼらかされたり、 真言師は又自宗の誤をしらず・いたづらに悪道の邪
13 念をつみをく、 空海和尚は此の理を弁へざる上・華厳宗のすでにやぶられし 邪義を借りとりて法華経は猶華厳経
14 にをとれりと僻見せり、 亀毛の長短・兎角の有無・亀の甲には毛なしなんぞ長短をあらそい兎の頭には角なし・な
15 んの有無を論ぜん、 理同と申す人いまだ閻魔のせめを脱れず、 大日経に劣る華厳経に猶劣ると申す人・謗法を脱
16 るべしや、人は・かはれども其の謗法の義同じかるべし、 弘法の第一の御弟子かきのもときの僧正・紺青鬼となり
17 し・これをもつてしるべし、空海悔改なくば悪道疑うべしともをぼへず其の流をうけたる人人又いかん。
18   問うて云わく法師一人此の悪言をはく如何、 答えて云く日蓮は此の人人を難ずるにはあらず但不審する計りな
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01 り、いかりをぼせば・さでをはしませ、 外道の法門は一千年・八百年・五天にはびこりて輪王より万民かうべをか
02 たぶけたりしかども 九十五種共に仏にやぶられたりき、 摂論師が邪義・百余年なりしもやぶれき、 南北の三百
03 余年の邪見もやぶれき、 日本・二百六十余年の六宗の義もやぶれき、 其の上此の事は伝教大師の或書の中にやぶ
04 られて候を申すなり、日本国は大乗に五宗あり法相・三論・華厳・真言・天台、小乗に三宗あり倶舎・成実・律宗な
05 り、真言.華厳・三論・法相は大乗よりいでたりといへども・くわしく論ずれば皆小乗なり、宗と申すは戒・定.慧の
06 三学を備へたる物なり、 其の中に定・慧はさてをきぬ、戒をもて大・小のばうじをうちわかつものなり、東寺の真
07 言・法相・三論・華厳等は戒壇なきゆへに 東大寺に入りて小乗律宗の驢乳・臭糞の戒を持つ、戒を用つて論ぜば此
08 等の宗は小乗の宗なるべし、 比叡山には天台宗・真言宗の二宗・伝教大師習いつたへ給いたりしかども天台円頓の
09 円定・円慧・円戒の戒壇立つべきよし申させ給いしゆへに 天台宗に対しては 真言宗の名あるべからずとをぼして
10 天台法華宗の止観・真言とあそばして公家へまいらせ給いき、 伝教より慈覚たまはらせ給いし誓戒の文には 天台
11 法華宗の止観・真言と 正くのせられて真言宗の名をけづられたり、 天台法華宗は仏立宗と申して仏より立てられ
12 て候、真言宗の真言は当分の宗・論師・人師始めて宗の名をたてたり、 而るを事を大日如来・弥勒菩薩等によせた
13 るなり、 仏御存知の御意は但法華経一宗なるべし小乗には二宗・十八宗・二十宗候へども但所詮の理は無常の一理
14 なり、法相宗は唯心有境・大乗宗・無量の宗ありとも所詮は唯心有境とだにいはば但一宗なり・三論宗は唯心無境・
15 無量の宗ありとも所詮・唯心無境ならば但一宗なり、 此れは大乗の空有の一分か、華厳宗・真言宗あがらば但中・
16 くだらば大乗の空有なるべし、 経文の説相は猶華厳・般若にも及ばず 但しよき人とをぼしき人人の多く信じたる
17 あいだ、下女を王のあいするににたり、 大日経等は下女のごとし理は但中にすぎず、論師・人師は王のごとし・人
18 のあいするによて・いばうがあるなるべし、 上の問答等は当時は世すえになりて人の智浅く 慢心高きゆへに用ゆ
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01 用ゆる事はなくとも、聖人.賢人なんども出でたらん時は子細もやあらんずらん、不便にをもひ.まいらすれば目安に
02 注せり、御ひまにはならはせ給うべし。
03       これは大事の法門なり、こくうざう菩薩にまいりてつねによみ奉らせ給うべし。
04     聖密房に之を遣わす                     日蓮花押
華果成就御書    弘安元年四月    五十七歳御作   浄顕房・義浄房    於身延
01   其の後なに事もうちたへ申し承わらず候、 さては建治の比・故道善房聖人のために二札かきつかはし奉り候を
02 嵩が森にて よませ給いて候よし悦び入つて候、 たとへば根ふかきときんば枝葉かれず、 源に水あれば流かはか
03 ず、火はたきぎ・かくればたへぬ、 草木は大地なくして生長する事あるべからず、日蓮・法華経の行者となつて善
04 悪につけて日蓮房・日蓮房とうたはるる 此の御恩さながら故師匠道善房の故にあらずや、 日蓮は草木の如く師匠
05 は大地の如し、 彼の地涌の菩薩の上首四人にてまします、 一名上行乃至四名安立行菩薩云云、 末法には上行・
06 出世し給はば安立行菩薩も出現せさせ給うべきか、 さればいねは華果成就すれども必ず米の精・大地にをさまる、
07 故にひつぢおひいでて二度華果成就するなり、 日蓮が法華経を弘むる功徳は 必ず道善房の身に帰すべしあらたう
08 とたうと、よき弟子をもつときんば師弟・仏果にいたり・あしき弟子をたくはひぬれば師弟・地獄にをつといへり、
09 師弟相違せばなに事も成べからず 委くは又又申すべく候、 常にかたりあわせて出離生死して 同心に霊山浄土に
10 てうなづきかたり給へ、 経に云く「衆に三毒有ることを示し 又邪見の相を現ず我が弟子是くの如く方便して衆生

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