漆の辞典updated on 2005.04.28

◆漆

  • 漆の木
    ウルシ科の落葉高木。中央アジア原産。高さは10m以上になる。樹皮は灰白色。葉は3〜9対の小葉をもつ奇数羽状複葉で秋に紅葉する。かぶれ易い。六月頃葉腋に黄緑色の小花を多数総状に開く。雌雄異株。果実はゆがんだ扁平の核果で、十月頃成熟して黄褐色となる。果を乾かした後しぼって蝋を採る。樹皮に傷をつけて生漆(きうるし)を採る。中国、朝鮮、日本で古くから広く栽培される。
  • 漆の産地
    日本産と中国産の漆はどちらも主成分がウルシオールで同じものだが、日本産の方がウルシオールの含有量が10%程度多い。台湾産やベトナム産の漆は主成分がラッコール、ビルマ産は主成分がチチオールで日本産の漆とは違う。また、東南アジアの漆はゴム質の含有量が多く、被膜が柔らかくて弾力がある。現在日本で使われている漆は主に中国からの輸入品で、日本産のものは1%程度。
  • 漆が乾くと云うこと
    漆が固まることを「乾く」と云う。漆の成分はウルシオール(50〜70%)糖蛋白(2%)ゴム質(5〜10%)水分(20〜40%)で、ここに少量のラッカーゼと云う酵素が入っている。この酵素の働きでウルシオールの酸化重合が進み漆が乾く。漆が乾くためには、適当な温度と湿度が必要。この反応はゆっくりと進み3年ほどたつと完全に成熟する。
  • 不乾漆(ふかんうるし)、焼き漆(やきうるし)
    乾かない漆。漆を加熱して沸騰させると、ラッカーゼが働かなくなって、漆は乾かなくなる(焼き漆)。また古くなると乾きが悪くなる。乾きの早すぎる漆に混ぜて使い、乾く時間を調節する。不乾漆でも、焼付け法では乾く。
  • 焼付け法(やきつけほう)
    120℃〜170℃程度の高温にすると、漆は短時間で乾く。陶磁器や金属に漆を塗るときに使う方法。
  • 漆掻き(うるしかき)
    漆の木に傷を付けて漆液を採取すること。季節は6月から10月くらいまで。10年生の木から採れる漆液は150g程度。
    • 殺掻き(ころしがき)
      1年で漆を採り尽くし、その木は伐採する。切り株から芽が出てくれば、10年ほど管理して、又漆を採取する。
    • 養生掻き(ようじょうがき)
      漆の採取を数年に分けて行う。農作業の比較的に暇な7、8月の夏の盛りに漆掻きを行う。また実から蝋を採取できる。
    • 辺漆(へんうるし)
      辺掻きと云う方法で6月から9月にかけて採取する漆で初期のものを「初漆(はつうるし)」と云う。盛夏のものを「盛漆(さかりうるし)」と云い最も品質が良い。9月のものは「末漆(すえうるし)」と云う。
    • 裏目漆(うらめうるし)、止漆(とめうるし)、瀬しめ漆(せしめうるし)
      10月に幹を半周するほどの長い傷を付けて掻取る漆が「裏目漆」。10月末に幹を1週する傷を付けて掻取る最後の漆が「止漆」。切り倒した木の枝から掻取る漆が「瀬しめ漆」。これらの漆は辺漆に比べて品質が落ちるので下地に用いる。
  • 生漆(きうるし)
    漆の木から採取した樹液は荒味漆とよばれ、これを濾過してゴミを取り除いたものが生漆で、接着、下地、摺り漆、蒔絵などに使う。色は乳白色で外気に当たると茶色から こげ茶色と色が濃くなる。上等なものは、生正味漆(きしょうみうるし)とか生上味漆(きじょうみうるし)と呼ばれる。
  • なやし
    精製作業の一つで、桶に入れた生漆を攪拌又は摺り交ぜて漆の粒子を細かくし、成分を均一にする。塗り上げた漆器の表面の光沢や塗り肌が良くなる。
  • くろめ
    精製作業の一つで、40℃程度に加熱、攪拌し、水分を蒸発させて生漆の水分を減らす工程。できた漆を「素ぐろめ漆(すぐろめうるし)」とか「くろめ漆」と呼び、透明な茶褐色の飴状の漆。
  • 透漆(すきうるし)
    生漆を精製(なやし、くろめ)した漆が透漆で、呂色塗り用の「梨地漆」「木地呂漆」「赤呂漆」「透箔下漆」などと、塗立(花塗)用の“油”を加えた「朱合漆」「透艶消漆」「春慶漆」などがある。油としては、荏油(えのあぶら、エゴマ油)桐油(とうゆ、アブラギリ油)、亜麻仁油(あまにゆ、アマ油)などの乾性植物油が用いられる。
  • 黒漆(くろうるし)
    生漆の精製過程で鉄分を加えると、鉄の酸化と漆の成分との化学反応により黒漆が出来る。黒漆にも無油漆の「黒呂色漆」「黒中塗漆」「黒箔下漆」と、有油漆の「黒塗立漆」「黒艶消漆」などが有る。
  • 彩漆(いろうるし)
    彩漆は透漆に顔料を混ぜて作る。古くは黒、茶(潤(うるみ))、朱、黄、緑の五色だけであったが、今では酸化チタンを染めて作ったレーキ顔料を使う事により多くの色が作れる。

◆素地(きじ)

  • 木胎(もくたい)
    木を素地に使った漆器を木胎漆器と云う。木地は加工法により指し物、挽き物、刳り物、曲げ物がある。木や竹をテープ状に加工し、少しづつずらしながら巻き上げて器に加工したものは棬胎(けんたい)と云う。
  • 藍胎(らんたい)
    竹や籐を編んで素地としたものが藍胎漆器。
  • 乾漆(かんしつ)
    布を素地としたもので、木型や石膏型に麻布などを糊漆で貼り重ねて作る。成形後、型を抜き取る脱乾漆と、仏像などのように木芯に布を貼り重ねていく木芯乾漆がある。
  • 紙胎(したい)
    紙を素地としたもので、一閑張とも云う。型に和紙を糊漆で貼り重ねて成形した後、型を抜き取った“張抜き”と、竹篭や木の素地に和紙を貼った“和紙貼り”がある。
  • 漆皮(しっぴ)
    皮を水に浸して柔らかくし、木型にはめて乾燥させて成形する。外側に漆を塗った後で型から外し、内側に漆を塗って仕上げる。
  • 金胎(きんたい)、陶胎(とうたい)
    金属に漆を焼付けたものを「金胎」、素焼きをした陶磁器に漆を焼き付けたものを「陶胎」と云う。

◆用具

  • 定盤(じょうばん)
    漆を練ったり、下地を調整したりするときに使う板。漆用と、下地用の2枚必要。箱型で引き出しの付いたものなど。
  • 箆(へら)
    下地を調整したり、付けたりする「付箆(檜)」。彩漆などを練り合わせる「合せ箆(ニレ、チシャ、マユミ)」。刻苧掻いに用いる「刻苧箆(竹)」。
  • 塗師刀(ぬしがたな)
    小刀。箆を削ったり、漆刷毛を切り出したり、その他いろいろな場面で使用する。
  • 漆刷毛(うるしばけ)
    通し刷毛とも云う。毛髪を糊漆で固め、檜の薄板ではさんで作ってある。刷毛が磨り減ってくれば、板を塗師刀で削って毛先を出す。
  • 濾し紙(こしがみ)
    漆の中のごみを取り除くために用いる。吉野紙、麻布紙などを数枚重ねて使う。現在では、化学繊維の合成紙も使う。
    ・吉野紙(よしのがみ);奈良県吉野地方で作られるコウゾを原料にした和紙。
    ・麻布紙(あざぶがみ);山形県上山市高松で作られるコウゾを原料にした和紙。
  • 漆風呂(うるしぶろ)
    漆を乾かすための戸棚または箱。埃を遮断し、内側に霧を吹いて湿度を高め、寒ければ暖める。漆室(うるしむろ)。

◆下地

素地の肌を見せる塗り以外では「下地」を施す。下地は、素地の補修、“痩目”を防ぐために、補強のために施す。
  • 渋下地(しぶしたじ)
    漆の代わりに柿渋を使って施す下地。安価。
  • 痩せ、痩目(やせ、やせめ)
    素地が木の場合などでは、長年使っていると木が縮んで年輪や接合部などが表面に浮き出てくる。これを“痩せ”と云う。
  • 刻苧(こくそ)
    繊維屑と木粉と糊漆(糊+生漆)を混ぜて硬く練ったもの。
  • 刻苧かい(こくそかい)
    素地の補修のために、素地の傷や接合部などを少し彫り(刻苧彫り)、そこに刻苧を刻苧箆で詰め込む。
  • 引込み地(ひきこみじ)
    刻苧かいが乾いて痩せた部分に切り粉地を箆付けする。
  • 布着せ(ぬのきせ)
    麻、絹、綿などの布を糊漆で素地に貼り付ける。痩せ対策や素地の補強のために行う。主に、天縁、高台縁、内見付けに施す。薄くしたいときは、布の代わりに和紙を着せる。(紙着せ)
  • 地の粉(じのこ)
    粘土を焼いた瓦などを粉末にしたもの。輪島地の粉;輪島で産出する珪藻土を蒸し焼きにし、粉末にした地の粉。
  • 砥の粉(とのこ)
    砥石の粉。錆漆や胴擦りの研磨材として用いる。
  • 錆土(さびつち)
    木曽奈良井で産出する土。錆漆に用いる。
  • 地(じ)、地付け(じつけ)
    地の粉を糊で練り、生漆を混ぜたもの。(地の粉は水で練っても粘土状にはならないので糊で練る。)
  • 切り粉、切り粉地(きりこ、きりこじ)
    地の粉と砥の粉を糊又は水で練り、生漆を混ぜたもの。地と錆の中間の荒さ。
  • 錆、錆漆(さび、さびうるし)、錆付け(さびつけ)
    砥の粉を水で硬く練り、これに生漆を混ぜたもの。
  • 木地固め(きじかため)
    生漆又は溶剤で薄めた生漆を、箆または刷毛で木地に塗り、吸い込ませ、余分な漆は拭き取る。
  • 錆地(さびじ)
    次の工程で行う簡易な下地。@木地固め A錆付け B錆研ぎ
  • 本堅地(ほんかたじ)
    次の工程で行う堅牢な下地。@刻苧彫り A木地固め B刻苧かい C引込み地 D布着せ E地付け F地研ぎ G錆付け H錆研ぎ
  • 蒔地(まきじ)
    次の工程で行う堅牢な下地。@刻苧彫り A木地固め B刻苧かい C引込み地 D布着せ E粉蒔き(生漆を薄く塗り、その上に地の粉などの下地用粉末を蒔きつける。) F粉固め(薄めた生漆を塗って粉を固定する。) G粉を順に細かいものに変えて2,3回蒔く。 H研ぎ
    素地の表面に彫刻や凹凸のあるものに用いる。

◆塗り

漆を刷毛で塗り、漆風呂に入れて乾かす。塗り重ねる場合は、塗りと塗りの間に、「研ぎ」を行う。最後の上塗りには、有油の塗立て漆を用いる事もあるが、それ以外は無油の呂色漆を用いる。
  • 拭き漆、摺り漆(ふきうるし、すりうるし)
    下地をせずに、木地に生漆を摺り込み、余分な漆を拭き取って仕上げる技法。必要に応じて目止め、着色を施し、数回から10回程度摺り込み、拭き取りを繰り返す。木目の美しい木地に用いる。
  • 木地溜塗、木地呂塗(きじためぬり、きじろぬり)
    摺り漆を施した上に透漆を刷毛で塗り、塗り立て仕上げ、又は呂色仕上げにしたもの。厚みのある漆の塗膜を通して木地が透けて見える。
  • 春慶塗(しゅんけいぬり)
    木地溜塗のひとつ。特に透明度の高い透漆(春慶漆)で上塗りをする。着色により「黄春慶」と「紅春慶」がある。「飛騨春慶」「能代春慶」「粟野春慶」「木曽春慶」
  • 目はじき塗(めはじきぬり)、柿合せ塗り(かきあわせぬり)
    欅、栓、栗などのように導管のはっきりした材を素地に使い、軽く目止めを施し、木地固め、摺り漆をした後、刷毛で上塗りをする。導管の部分の漆がはじかれ、木目にそって小さな穴があく。木地固め、摺り漆を、漆の代わりに柿渋で行うものを「柿合せ塗り」と云う。
  • 下塗り(したぬり)
    下地の上に塗る最初の塗り。傷があれば錆を付けて補修する(傷見、傷錆付け)。
  • 中塗り(なかぬり)
    下塗りを終えた後、黒中塗漆、黒呂色漆、や上塗りと同じ色漆を塗る。厚くする場合は数回塗り重ねる。
  • 上塗(うわぬり)
    • 塗立、花塗(ぬりたて、はなぬり)
      上塗りの表面を研磨せず、塗り放しで仕上げる方法。油を混ぜた塗立漆で塗れば艶が多く、呂色漆で塗れば艶が少なく仕上がる。厚く塗る場合は、漆が垂れないように、器物を回転させながら乾かす(回転風呂)。
    • 呂色塗、蝋色塗(ろいろぬり)、呂色磨き(ろいろみがき)、呂色仕上げ(ろいろしあげ)
      上塗りの表面を研ぎあげ、摺り漆を施し、磨いて仕上げる。
    • 溜塗(ためぬり)
      中塗りを色漆で塗り、上塗りを透漆で塗ったもの。普通は、中塗りを紅柄漆、又は朱漆で塗った「朱溜め」。中塗りを黄漆で塗ったものは「京溜め」と云う。

◆加飾(かしょく)

  • 平文、平脱(ひょうもん、へいだつ)
    金属の板を文様の形に切って貼り付け、漆を塗って埋め、研ぎ出す技法。
  • 漆絵(うるしえ)
    彩漆で絵や文様を描く技法。
  • 箔絵(はくえ)
    金箔、銀箔などを貼って絵や文様を表す技法。
  • 螺鈿(らでん)、青貝細工(あおがいざいく)青貝塗(あおがいぬり)
    貝殻を切って貼り付けたり、埋め込んだりする技法。厚貝(厚さは1mm程度)を用いたものを螺鈿と云い、薄貝(厚さは0.1mm程度)を用いたものは青貝細工、青貝塗と云う。
  • 彫漆(ちょうしつ)、彫彩漆(ちょうさいしつ)、堆朱(ついしゅ)、堆黒(ついこく)
    漆を何層にも塗り重ね、そこに彫刻を施す技法。多種の彩漆を塗り重ねたものは彫彩漆。朱漆を塗り重ねたものは堆朱。黒漆を塗り重ねたものは堆黒。
  • 沈金(ちんきん)、沈金彫り(ちんきんぼり)
    漆面に沈金刀で文様を彫り、その中に生漆を摺り込み、そこに金箔を貼り入れたり、金粉や色粉を蒔き入れる技法。
  • 蒟醤(きんま)
    漆面に文様を彫刻し、そこに色漆を充填し、研ぎ出して仕上げる技法。
  • 存清、存星(ぞんせい)
    漆面に彩漆で文様を描き、乾いたところで、文様の輪郭線や葉脈などを線彫りする技法。
  • 堆錦(ついきん)
    顔料と漆を固く練り合わせ餅状にしたものを薄く伸ばし、文様に切り、器物に貼りつけ、その上でさらに筋入れ彩色を施す技法。
  • 木彫彩漆(もくちょうさいしつ)
    器物に彫刻を施し、朱漆などを塗ったもの。鎌倉彫り、高岡彫り、村上堆朱など。
  • 蒔絵(まきえ)
    漆で文様を描き、その上に金、銀などの粉を蒔いて加飾する技法。
    • 消し蒔絵(けしまきえ)、色粉蒔絵(いろこまきえ)
      金箔や銀箔をすり潰した消し粉(けしふん)を蒔いたもの。彩漆に使う顔料粉(色粉)を蒔いたもの。
    • 平蒔絵(ひらまきえ)
      細かくした金属粉(平粉、丸粉)を蒔いたもの。
    • 高蒔絵(たかまきえ)
      文様を高く盛り上げ、消し粉や丸粉をまいたもの。
    • 研出蒔絵(とぎだしまきえ)
      中塗り研立ての上に蒔絵を施し、薄めに上塗りをして、乾いたら、文様を研ぎ出し平らに仕上げる。
    • 切金(きりがね)
      研出蒔絵の文様のなかに金属片を置く技法。
    • 肉合研出蒔絵(ししあいとぎだしまきえ)
      高蒔絵と研出蒔絵を組み合わせたもの。
    • 木地蒔絵(きじまきえ)
      木の素地に蒔絵を施したもの。
    • 地蒔(じまき)
      文様以外の余白部分に蒔いたもの。粉の種類などにより「消し金地」「金地、銀地」「平目地(ひらめじ)」「梨子地(なしじ)」「沃懸地(いかけじ)」などがある。
    • 高台寺蒔絵(こうだいじまきえ)
      京都東山にある高台寺の霊屋や調度品に施された蒔絵。技法としては、「平蒔絵」で「蒔放し」「針描」「絵梨子地」。図柄は秋草が多く伸び伸びとした作風。
      ・蒔放し(まきはなし);漆で描いて、金、銀粉を蒔いただけで、粉固めや磨きは省略する。
      ・針描(はりがき);金、銀粉を蒔いた後、漆が乾く前に、針で引っ掻いて文様を描く。
      ・絵梨子地(えなしじ);地蒔きの技法である梨子地を、文様の中で用いる。

◆変り塗(かわりぬり)

漆の性質を応用したさまざまな塗り方。江戸時代に刀の鞘塗りとして発展した。

絞漆(しぼうるし)を用いたもの

  • 絞漆(しぼうるし)
    漆に牛乳、卵白、豆腐、ゼラチンなどの蛋白質を少量加えて、粘りを出したもの。
  • 刷毛目塗(はけめぬり)
    上塗り漆(黒漆、彩漆)を絞漆にし、硬めの刷毛で塗り、刷毛目を付ける。
  • 叩き塗(たたきぬり)、印伝絞塗(いんでんしぼぬり)
    絞漆を塗り、その上を、綿を布でくるんだタンポで叩いて縮緬皺を付ける。タンポの代わりにゴムローラーを使うこともある。
  • 唐塗(からぬり)
    穴を開けた箆を使って、器物に彩絞漆の斑点を付け凹凸の面を作る。次に、彩漆と透漆を交互に塗り重ねる。その後、文様を研ぎ出し、摺り漆をし、磨いて仕上げる。津軽塗。

錆漆(さびうるし)を用いたもの
 錆漆を使って表面に変化を付けたもの。「竹塗(たけぬり)」「桜皮塗(さくらかわぬり)」「松皮塗(まつかわぬり)」「綾文塗(あやもんぬり)」など、竹や木や織物などに似せて塗る技法。

布や紙を用いたもの

  • 布貼り布目塗(ぬのはり ぬのめぬり)
    下地の上に布を貼り、錆漆をしごき入れる。下塗り、中塗り、上塗りを施し、塗り立て又は、呂色仕上げにする。日にちが経つと、錆漆が痩せて布目がはっきりしてくる。
  • 紙貼(かみはり)
    中塗り研立ての上に和紙を貼り、生漆を刷り込み、和紙の表情が出るように薄く上塗りをする。

粉を用いたもの

  • 石目塗(いしめぬり)
    下塗り研立ての上に、薄く漆を塗り、乾漆粉や炭粉を篩を使って蒔く。粉固めの後、研ぎ、摺り漆をし磨いて仕上げる。表面がザラザラとして石肌になる。
  • 紋紗塗(もんしゃぬり)
    中塗り研立ての上に、呂色漆または絞漆で厚めに文様を描く。乾いた後、全面に薄く漆を塗り、もみ殻炭(紗)を蒔く。粉固めの後、文様を研ぎ出し、摺り漆をし磨いて仕上げる。文様の所は艶有りに、背景(もみ殻炭)は艶無しになる。

種や葉を用いたもの

  • ななこ塗
    下塗り研立ての上に任意の彩漆を塗り、その上にナタネを播く。乾いた後、ナタネを払い落とすと、ナタネに吸い上げられた漆で円い文様が出来る。上塗りをし、円紋を研ぎ出す。摺り漆をし、磨いて仕上げる。
  • 虫喰い塗(むしくいぬり)、金虫喰い塗(きんむしくいぬり)
    呂色漆を厚く塗った上に、水気を含んだ籾殻を蒔きつける。乾いた後で、籾殻を払い落とす。虫喰い文様を研ぎ出し、摺り漆をし、磨いて仕上げる。籾殻を払い落とした後に、金箔を貼り、透漆を塗って同様に仕上げたものを「金虫喰い塗」と云う。
  • 紅葉塗(もみじぬり)
    中塗り研立ての上に、彩漆を付けた楓葉を貼り付け、すぐに葉を取り除き、葉文様を転写する。乾いた後で、透漆を塗り、研ぎ出し、摺り漆をし磨いて仕上げる。
  • 棕櫚毛塗(しゅろげぬり)
    呂色漆を塗った上に、1cm程度の長さに切った棕櫚毛を蒔く。乾いた後、上塗り、研ぎ出し、摺り漆をし磨いて仕上げる。

吸い上げによるもの
漆を塗って1週間程度の間に、塗り面に不乾漆で文様を描くとその部分の下の漆が吸い上げられて文様が隆起する。

  • 布目塗(ぬのめぬり)、夜桜塗(よざくらぬり)
    呂色塗の工程で、上塗り研ぎ、胴擦りまで終えた塗り面に、不乾漆を塗った紗を乗せて、紗文様を不乾漆で転写する。2,3日して不乾漆を溶剤で拭き取ると、下の漆が吸い上げられて隆起した紗文様が残る。摺り漆をし磨いて仕上げる(布目塗)。
    不乾漆で桜文様を描いて同様に仕上げたものを「夜桜塗」と云う。

塗りによるもの

  • 根来塗(ねごろぬり)
    黒漆で中塗りをした上に朱漆で上塗りしたものを根来塗りと云う。長く使っていると朱漆が磨り減って下の黒漆が見えてくる。最初から黒漆が見える様に研ぎ出したものは「研出根来」とも云う。
  • 曙塗(あけぼのぬり)
    上塗りに、黒漆あるいは透漆を、部分的に洗朱漆を塗り、境目をぼかしたもの。
    又は、研出根来の色を逆にして、朱漆中塗りの上に、黒漆を塗り、朱漆を研ぎ出したもの。

その他

  • 青貝微塵塗(あおがいみじんぬり)
    中塗り研立ての上に、薄く漆を塗り、その上に微塵貝を篩や紛筒を使って蒔く。粉固めの後、呂色漆を塗り、研ぎ出し、摺り漆をし磨いて仕上げる。

◆漆器の産地

  1. 津軽塗(つがるぬり)
    本堅地による下地と、「唐塗」「ななこ塗」「錦塗」「紋紗塗」などの研出し変り塗。実用漆器が多い。
    青森県漆器協同組合連合会
    〒036-8061  青森県弘前市大字神田2-4-9  Z-0172-35-3629
  2. 秀衡塗(ひでひらぬり)
    内側を朱漆、外側を黒漆で塗り、彩漆で雲形、草花などを描いた漆絵に菱形や短冊形の切箔を貼った秀衡椀など。
    岩手県漆器協同組合
    〒029-4102  岩手県西磐井郡平泉町平泉字衣関1-8  Z-0191-46-5305
  3. 川連漆器(かわつらしっき)
    椀、重箱などの実用漆器。挽き物素地が多い。
    秋田県漆器工業協同組合
    〒012-0131  秋田県雄勝郡稲川町三梨字中野141  Z-0183-42-2410
  4. 鳴子漆器(なるこしっき)
    挽き物素地に拭き漆や木地呂塗を施した椀、菓子鉢、盆など。
    鳴子漆器協同組合
    〒989-6822  宮城県玉造郡鳴子町字新屋敷1401  Z-0229-82-2026

  5. 会津塗(あいづぬり)
    日本最大の産地で、渋下地に花塗の実用漆器が多い。会津消し蒔絵。
    会津漆器協同組合
    〒965-0042  福島県会津若松市大町1-7-3  Z-0242-24-5757
  6. 村上堆朱(むらかみついしゅ)
    木彫彩漆。木彫を施した朱塗りの漆器で細かく深い彫りが特徴。
    村上堆朱事業協同組合
    〒958-0032  新潟県村上市松原町3-1-17  Z-0254-53-1745
  7. 新潟漆器(に いがたしっき)
    磯草塗、竹塗などの変り塗。
    新潟市漆器同業組合
    〒950-2021  新潟県新潟市小針藤山16-9  Z-025-265-2968
  8. 高岡漆器(たかおかしっき)
    木彫彩漆(高岡彫り)。唐風の勇助塗、青貝細工。
    伝統工芸高岡漆器協同組合
    〒933-0909  富山県高岡市開発本町1-1  Z-0766-22-2097
  9. 輪島塗(わじまぬり)
    輪島漆器商工業協同組合
    〒928-0001  石川県輪島市河井町24部55  Z-0768-22-2155
    丁寧な仕事で良質な漆器として有名。輪島地の粉を使用した本堅地。
  10. 金沢漆器(かなざわしっき)
    加賀蒔絵と呼ばれる豪華で繊細な蒔絵。美術工芸品。
    金沢漆器商工業協同組合
    〒920-0918  石川県金沢市尾山町9-13  Z-076-263-1154
  11. 山中漆器(やまなかしっき)
    椀や棗などの挽き物加工で有名。糸目挽き。合成樹脂を素材とした近代漆器も。
    山中漆器連合協同組合
    〒922-0111  石川県江沼郡山中町塚谷町イ268-2  Z-0761-78-0305
  12. 越前漆器(えちぜんしっき)河和田塗(かわだぬり)
    実用漆器。挽物、指物。合成樹脂を素材とした漆器も。
    越前漆器協同組合
    〒916-1221  福井県鯖江市西袋町37-6-1  Z-0778-65-0030
  13. 若狭塗(わかさぬり)
    研出し変り塗。硯箱、重箱などの指物、箸。
    若狭漆器協同組合
    〒917-0061  福井県小浜市玉前区57  Z-0770-52-1069
  14. 鎌倉彫(かまくらぼり)
    木彫彩漆。木彫を施した朱塗りの漆器。
    伝統鎌倉彫事業協同組合
    〒248-0014  神奈川県鎌倉市由比ヶ浜3-4-7  Z-0467-23-0154
  15. 小田原漆器(おだわらしっき)
    盆、椀、皿などの挽き物素地に拭き漆や木地呂塗を施した物。
    伝統小田原漆器協同組合
    〒250-0014  神奈川県小田原市城内1-21  Z-0465-32-5252
  16. 木曽漆器
    (きそしっき)
    木曽特産の錆土を用いた本堅地。木曽春慶、木曽堆朱。曲げ物。
    木曽漆器工業協同組合
    〒399-6302  長野県木曽郡楢川村平沢長瀬2272-7  Z-0264-34-2113
  17. 飛騨春慶(ひだしゅんけい)
    春慶塗
    飛騨春慶連合協同組合
    〒506-0858   岐阜県高山市桜町115  Z-0577-32-0373
  18. 八雲塗(やくもぬり)
    漆絵の上に透漆を塗り、研ぎ出し、呂色仕上げにしたもの。
    島根県八雲塗振興会
    〒690-0887  松江市殿町191  Z-0852-22-5758
  19. 京漆器(きょうしっき)
    茶道具、華道具など優雅なもの。
    京都漆器工芸協同組合
    〒606-8343  京都市左京区岡崎成勝寺町9-1  Z-075-761-3460
  20. 大内塗(おおうちぬり)
    朱の地塗りの上に、秋草、雲形を描き入れ、大内菱を金箔で貼り付けたもの。秀衡塗に似る。
    大内塗漆器振興協同組合
    〒753-0034  山口県山口市下竪小路74  Z-083-928-3333
  21. 香川漆器(かがわしっき)
    蒟醤、存清、彫漆、後藤塗、象谷塗(ぞうこくぬり)など。
    香川県漆器工業協同組合
    〒760-0101  香川県高松市春日町1595  Z-087-841-9820
  22. 琉球漆器(りゅうきゅうしっき)
    朱塗りが美しい。堆錦、螺鈿、沈金、箔絵など。
    琉球漆器事業協同組合
    〒901-0144  沖縄県那覇市当間1-1  Z-098-858-7608
  23. 江戸漆器(えどしっき)
    茶道具、座卓。そば道具、うなき重箱などの実用的な業務用漆器。
    東京都漆器商工業協同組合
    〒104-0045  東京都中央区築地2-15-17  Z-03-3541-0151

◆50音順

 4年間、木曽漆芸学院で漆塗りの実技の勉強をしてきました。そこで学んだ事柄を辞典という形にまとめてみました。まとめるにあたり下記の図書を参考にさせて頂きました。          2005.04.28

参考図書
うるし工芸辞典光芸出版編集部 光芸出版
漆・進化する樹液株式会社INAX INAX出版
漆芸の伝統技法佐々木 英理工学社
漆芸品の鑑賞基礎知識小松大秀・加藤寛  至文堂
やさしく身につく漆のはなし  丸山高志  日本漆工協会