閉じ込めた気持ちが呼ぶのは幸か不幸か 小さな暗闇に小さな光を燈すことが出来るのなら… クローゼット 多分ばれてはいない。 大丈夫、気付かれるわけがない。 そんな風に誤魔化しかけて、いつも思う。 そんなに言い聞かせなきゃいけない程、笠井の存在が大きいのか? ちょっと自分でも信じ難い。 「何やってんですか。」 冷静に、語尾を震わすこともなく言い放つ。 突然のその声に、三上は内心ビクビクしながら振り返る。 ぶつかったのは、冷めた眼差し。 ポーカーフェイスは得意だぜ。 「笠井の部屋はどんなんだろうと思って。案外綺麗に片付けてんのな。」 「誠二は…あぁ、渋沢先輩のとこですか。」 「そ。別に勝手に入ったわけじゃないぜぇ?藤代にごゆっくり〜とか言われたし。」 ま、ゆっくりする気もねぇけど。 心臓が早鐘を打っているのを全身で感じる。 馬鹿か。 落ち着け。 「そうですか。……誠二のヤツ。」 聞こえないように声を落として言ったつもりらしい最後のセリフは、ばっちり聞こえてしまった。 どうやら思っていた通り、大人しいだけの優等生とは一味違うらしい。 顔がにやけそうになって、慌てて直す。 怪しまれる気は更々無い。 「一軍。」 「はい?」 「昇格だってな。おめでとう。」 心臓の音がドラムのように大きく早い。 煩い。 「どうも…ありがとうございます。」 多分そんなことを言われるなんて予想外だったんだろう。 笠井はただでさえ大きい猫目をさらに大きくした。 また口端が上がりかける。 頬の筋肉がつりそうだ。 「俺からお祝いやるよ。ただし見つけられたら、な。」 そう、その為にこの部屋に来たんだった。 「お祝い?」 更に大きく見開かれた目に自分が映っているのが分かる。 それだけで少し、体温が上昇するような気がした。 重症か? 「この部屋の中に隠したから。見つけられたら、お前のもんだ。」 じゃあな、頑張れよ笠井。 やっと、この部屋から抜け出せる喜び。 もっと、共有したかった空間への名残惜しさ。 ドアが閉まる瞬間、見えた笠井の表情は。 期待通りの困惑顔。 今はまだ、仕掛けたもん勝ちだろ?