Do my best!!! vol.3 もやもやした気持ちは次第になりを潜め、友人としての奇妙な関係を安定させ始めた。 それはこの一週間のことだ。 三上にとって俺はどういう位置にいるのだろう。 とりあえず友人くらいにはなれたのだろうか。 すぐ傍にいる時ですら、愛情は決して消えないのに。 珍しく体調を崩した渋沢が保健室のベッドの上で考えたのは、 やはり三上のことだった。 誤魔化しはいつしかホンモノになり、それが空気に浸透して関係を築く。 同室にいながらようやくお互いにずばずば遠慮ない、しかし親しみを持った言葉を交わせるようになったこと、それは今までのどうしようもない余所余所しさと比べれば望ましいものだ。 しかし、距離が近付いても心がどこにあるか見えない。 二人の位置はどうしようもなく遠い。 とりあえずの友情を築いた今になってもまだ、渋沢はその想いを諦めようとは思っていなかった。 しかし告白をめげずに続ける渋沢に同じだけ真剣に返してくれる三上の言葉は、以前よりも厳しい。 「何回言えば気が済むんだ?『愛してる』なんて、言えば言う程嘘くさいっつーか… お前きっと思い違いしてんだよ。それはそういう意味の愛じゃねぇんだ、きっと。」 避けることはなくなった。 真正面から返って来る三上の言葉は、渋沢に避ける隙を与えず、ずぶずぶと突き刺すだけだ。 ずっと、望んでいたはずだった。 受け入れてもらえなくても、せめて真剣に心からの言葉を返してくれたら。 こうして今突き刺さる言葉は、渋沢にとってそれでも救いとなるはずだった。 嬉しいと、微笑むはずだった。 「お前にどんな風に受け止められようと、どうしても変わらないんだ。 俺だってそうじゃない、そういう想いじゃないって何度思ったか知れやしない。 それでも、変わらずに確かに…あるんだ。」 面倒臭そうな表情をするのは相変わらずで、こういう時の三上の渋沢に対する表情は以前とあまり変わらなかった。 ただ、あえて言えばほんの少し、目元に同情の色が出るだけで。 違うんだ、三上。 同情が欲しいわけじゃない。 うわべだけの優しさは、欲したものとは違っていた。 ただ、見えなかった。気付かなかっただけなのだと。 ようやく自覚した頃には遅かった。 もう壊せない。 壊したくない関係を築いてしまった。 ステップアップは苦しいと同時に嬉しいことだ。 渋沢はそう結論づける。 もしも三上の恋人となれたら、うまくいかなくても苦しくても、確固たる幸せがどこかに見出せる、と。 もしもこのまま振られ続け、決定的に想いをぶつけてしまったら。 その時は今の関係すら消え去ってしまうだろう、と。 全てが、終わってしまうのだと。 「もう帰んねぇと。夕飯食いっぱぐれるぜ。」 唐突に話を打ち切った三上は、冴え冴えとした目で空を見ている。 夕焼け色に染まっていたはずの綺麗な空はいつの間にか暗い青色に変わっていた。 片付けや自主練をしていたはずの部員達は、もうどこにもいない。 遠くから眺めていた陸上部の長距離ランナーも、見当たらなかった。 「そうだな。話が長くなってすまなかった。行こう。」 自然と口の端はまた上がる。 体はもう覚えている。 今の小さな幸せを壊さない術を、無意識に実行している自分がいる。 さっきまでの心の中と、明らかに矛盾している。 いつの間にか歩き始めていた三上が、何事も無かったかのように振り向く。 笑顔と裏腹に、体が底まで沈んでいくような感覚がした。 頬を撫でる風が、冷たい。