だって、俺しかいないでしょう?
 
 
 
 
 
それはある晴れた日の出来事。
 
 
 
 
 
 
 
 
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だ〜か〜らっ、なんで俺なんだよっ!?」
「お前しかいないだろう。」
「そうっすよ〜。頑張って下さいっ!三上先輩!!」
「ここまで言われてるのに断るんですか?情けない・・。っていうかこれ以上延々と話し合うのイヤです、俺。
しっかりして下さいよ。このっ、へたれっ!!」
「・・・。」
 
 
 
今日は晴天。明るい太陽に照らし出された武蔵森学園中等部は平和・・・のわけがない。
約一名にとっては。
今朝からず〜っとこの調子だ。悪友渋沢とその犬は諦める気配を見せない。
さっきまで黙って見ていた愛する後輩もついに口をはさんできた。
しかも言い方がキツイ。
三上は半泣き状態だ。
 
 
だから、なんで俺なんだよ・・・。
 
 
自分の運の無さには本当に感嘆する。が、こんなこといつまでもしていたくない。
だから三上はついに折れた。
否、折れるしかなかった。
 
 
 
 
今は夏季長期休暇中である。なんとも言いにくい呼び方をしているが、平たく言えば夏休み中だ。
そして本日はお日柄も良い。が、サッカー部にとっては数少ない休日となっている。
 
 
 
 
という事で、いきなりの提案をしたのは我らがエースストライカー兼渋沢キャプテンの犬、藤代誠二だ。
 
 
提案。すなわち。
 
 
 
「山っ!山登りましょうっ!!」
「・・・は?」
 
 
息があった。と思ったらそれぞれが別方向を向いて溜息をつく。
呆れかえった三人は咄嗟に何も言えなくなった。
そしてその沈黙を破ったのは藤代の親友、笠井だ。
 
 
「誠二、一体どうしたの?なんでいきなりそうなるわけ??貴重な休日だよ???」
「そりゃ行きたいからに決まってんじゃん!!!」
 
 
こんな明るい答えなど期待していない。一気に浴びせた言葉にこんなに明るく一言とは。
笠井は再び沈黙する。
 
 
「っていうか、一人で行って来いよ!このバカ代が!!」
 
 
すぐに三上も反論する。
ところが。
 
 
「あまり巻き込まれたくないのは事実だ。
だが、たまには違った動きをするのも良い運動にはなるかもしれないぞ。」
「わぁ〜いっ!!さっすがキャプテン!!!」
 
「もちろんお前らも行くんだぞ?」
 
そう言って渋沢は爽やかな笑顔を向けた。
 
「はぁ??俺やだし。」
「えっ・・・。いや、すみませんが俺はちょっと・・・。」
「行くんだぞ。」
 
「・・・・・。」
 
 
?マークが消えた・・・。
同時に反論した三上と笠井は有無を言わせぬ言葉に黙り込む。
 
 
はぁ・・・。こうなったらいつも行くしかないんだよなぁ・・・。
そして毎回平穏な日常とはかけ離されるんだ・・・・。
 
 
もはや笠井は溜息を出す術しか知らなかった。隣でむすっとした顔をしてる三上も何も言わない。
 
 
 
そういうわけで、藤代の望むがままに悪夢の山登りが始まろうとしていた。
 
 
 
 
 
 
 
 
山登り当日朝。
予定通り休日だというのに辛い早起きをした四人は渋沢と三上の部屋に一時集合する。
一人はしゃぎまくる藤代に三上は怨みのこもった視線を送るが全く気付かない。
それを見て三上の無意味な行動に笠井は溜息をつく。
渋沢は一人真面目な顔で今日登る山の案内図に目を通していた。
そして、一言。
 
 
「洞窟か・・・。」
「・・・は?」
「この山には洞窟があるらしい。何やら立ち入り禁止のようだが。ちょうど俺達の選んだルートから近いぞ。」
 
「・・・・・・・・・・・・・。」
 
 
何それ。   BY笠井。
・・・はい?   BY三上。
マジ!?気になるぅ!!   BY藤代。
 
 
 
しばしの沈黙。
暗い顔で先を予想する笠井と
心底意味がわからない、何の関係があるんだと訝しむ三上と
興味をそそられ行く気満々で武者震いする藤代を見て、
渋沢は言葉を続ける。
 
 
「ところがここに入る挑戦者が最近多いらしい。
皆途中で行き止まりだったと言って帰ってくるようだが二名帰って来ないそうだ。
この話が俺の正義感を揺さぶった。真実を確かめ行方不明者を救う。
それがせめてもの罪滅ぼしだと思わないか?」
 
 
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
 
 
何の??   BY三上。
何の罪滅ぼしですか、キャプテン。俺はちっともさっぱりわかりません。
しかも正義感って・・・・。うさんくさいですよ。   BY笠井。
 
 
「くぅ〜!!さすがキャプテン!!そう来なくっちゃ!!!」
 
一人喜ぶ藤代は二人のしらけた目にはやはり気付かない。部屋中を飛び跳ねている。
 
 
 
「さぁそこでお前の出番だ三上。」
「ってか勝手に話を進めるなよ!!!」
「俺が昨日調査した結果によると帰った者の一人が何か気付いたそうだ。
行き止まりの壁に何か小さく彫ってあったらしい。彼の記憶では3.14・・・・とあったそうだ。
さて、お前はこの数字に覚えがあるな?」
「・・・円周率・・・・・。」
「そうだ。そしてお前はよく覚えている。お前ならきっと先に進めるんだ。
先頭に立って真っ黒な洞窟の奥に入るのはおまえしかいない。」
 
「・・・・・はい?」
 
 
渋沢はさらに真面目くさった顔をして続ける。
 
 
「実は消えた二人は五人で出掛けていた。残り三人は入り口で気絶していたそうだが何も思い出せないらしい。
ここで問題なのは二人しか奥に進めないのかもしれないということだ。さて、三上とあとは・・・。」
「あっ、俺キャプテンいないならパス。」
「・・・・え?嫌ですよ!!」
 
 
ってか調べ過ぎ・・・・。
笠井はじっと見つめてくる渋沢と藤代の目を避けた。その背後で下を向いている三上は声のかけようがない。
 
 
「タク〜、愛する三上先輩じゃん!!タク以外誰がいるんだよ?」
「同感だ。途中までは俺達も行くから頑張れ、笠井。」
 
 
はぁ・・・。やっぱり穏やかな生活は訪れない。
そう思って笠井は覚悟を決めた。
 
 
 
 
 
結局三上を説得するためにお昼まで話し合った。
まっ昼間から登ろうとする山は今目の前に高くそびえたっている。といってもさほど高い山ではない。
学校からもそこまで遠くない。随分と手頃な山を見つけたものだ。
やけに張り切ってしまった渋沢は更に張り切っている藤代を爽やかな笑顔で見ている。
なんとか覚悟を決めた三上に笠井が話しかけて宥める。
そして全員で一歩を踏み出す。
 
 
 
 
 
今、ここに伝説が生まれる・・・・かもしれない。






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