出会いは一瞬だった



 その一瞬が頭にこびりついた





 囚われたのはどちらだろうか…?








カルマの坂 ―2―








 「……じゃ後は食料品を揃えるだけでいいんだよな。」
 「あぁ。」
 「お腹すいたっすよ〜」
 ある日の昼下がり、俺と渋沢は買出し+偵察に来ていた。
 初めから二人で行く予定だったのに、何故か馬鹿犬もついてきている。
 ウザイことこの上ない。
 大体さっきから飯の話しかしてねぇんじゃねえか?このガキ!
 渋沢は渋沢で藤代を野放しにしているからまたウザイ。
 ってかその微笑みがもはや気持ち悪い。
 渋沢は日々変態へと進化していっているようだ。
 しかしそれを口に出すと後が怖いので三上は見て見ぬ振りを決め込む。
 その鬱憤の行き場は間違いなく藤代である。

 「黙れこのタコっ!お前が勝手について来たんだろっ!!!」
 「だって朝から何も食べてないんですもん〜。」
 「では食料を揃えたらそのまま食事にしようか。」
 「まじっすかっ!!!やったぁ!!!ちょー嬉しいっす!!!」
 「……・・・。」
 甘い…甘すぎる。
 俺たちにとっての食事とは命がけなんだぞ!(死ぬ気もないけど)
 金なんかないんだ!
 盗むんだぞ!!!
 大体が食事なんて一日ニ食出来ればいいほうだってのに!!!
 三食も四食も食ってられっかってんだ!

 そう心の中で突っ込みまくっていると隣から生ぬるいオーラを感じた。
 「食べたくないなら食べなくてもいいんだぞ、三上。」
 「人の心を読むんじゃねぇ!!!」
 「ほう、何かやましいことでも考えていたのか?」
 「っ!!!」
 駄目だ……疲れた。
 やっぱり何も反論しないほうが身のためだ。
 「……おっ俺もお腹すいたなぁ〜。」
 「そうっすよね三上センパイvvじゃあさっさと盗んできちゃいましょう!」
 「じゃあ30分後に此処で。」
 「おっけぃ。」






 渋沢達と別れてから俺はまっすぐ目的の店に向かった。
 雑貨やら洋服やら食料やらが所狭しと並んでいて、盗みには絶好の場所だ。
 店番もトロクサイ大人ばかりで、もし見つかっても簡単に逃げられる。



 盗むことに罪悪感なんて感じない。
 否、感じていたら生きてなんかいけない。








 盗みを終え、待ち合わせ場所に戻る。
 まだ渋沢も藤代も来ていないようだ。
 広場の方に人だかりが見える。
 (人売りか…?)
 人売りは大人が子供達を売り買いする酔狂なアソビだ。
 売られる子供に人権はない。
 好き勝手アソバレテそのままステラレル。
 かつて仲間が何人か大人に捕まってそのまま売られた。
 (胸糞わりぃ…)
 嫌悪感でいっぱいになりながら野次馬に紛れて近づいてみる。
 もしかしたら仲間が売られているかもしれない、と。

 近づくと、3人の子供達が大人に囲まれていた。
 可哀想に靴は履かされず、ボロ布を纏わされているだけ。
 とりあえず知っている連中はいない。
 ほっと一安心し、集団から抜け出そうとすると、いきなり隣の大人が崩れてきた。
 かすかに漂う酒の匂い。
 この酔っ払いがっ!と怒りがこみあげてきたが、こんなところで騒ぎをおこすわけにもいかない。
 なんとか怒りを鎮めてその場を立ち去ろうとした時、売られている子供の中の一人と目があった。



「――――っ!!!!!」



 射抜かれた、と思った。
 体が動かなかった。
 その瞳から目が離せなかった。


 
 真っ直ぐな瞳に浮かぶのは涙。
 それが零れることはない。
 窺える強い意志。
 どんなに粗末な格好をしていても気高さは失われていない。




  その瞳にとらえられた。














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