「笠三の日〜守れ、俺の貞操を!!!〜」 後編




疑問が解け、晴れやかな表情で部室を後にした仲間たちとは対照的に、三上の顔は真っ青を通り越してどす黒い。
真っ赤になっても真っ青になっても最終的にはどす黒くなるんだなぁなんて感心している暇はない。
三上の脳内は笠井で埋め尽くされている。
それも昨日までの笠井ではなく、攻めモードの笠井だ。
先程の友人達のいうとおり、笠井が攻めを狙っていたらどうしよう…。
元々、笠井は自分が受けになることを好ましく思っていなかったように今更ながら思う。
自分が強制的に役割を決めたのだ。
それに対しての笠井の意見は全く聞いていない。
もし、笠井がそれに不満を持ち、今日この日に役割交代をしようとしているのだとしたら・・・。
三上は自分の想像に真っ青になる。
笠井が自分を押し倒し、そんな笠井にメロドッキュン?
ありえないありえないありえない・・・。
寧ろありえそうで怖い。。。
どうすればいいのだ?
対格差はないも等しいので力ずくで攻めてきたら太刀打ちできないかもしれない。
今までがそうだったのだから。
一度押し倒されたら最後だ。
下に押し付ける力のほうが上に押し上げる力よりも強い。
力が入りやすいし、重力も味方してくれる。
「おいおい、洒落になんね〜よ。」
三上は自分の思考に陥っていた。
後ろから近づく気配にも気付くことなく・・・。


「何が洒落にならないんですか?」


「わぁぁあ〜!」
聞きなれた声が聞こえたと同時に首に感じたひんやりとした感触に思わず大声をあげる。
「かっ笠井?」
恐る恐る振り向くと、神様どうか笠井じゃありませんように、という願いも虚しく、笠井がにっこりと笑って立っていた。
にっこりというのもいつものラブリー(死語)なソレではなく、三上のデビスマに近いものがある。
頼むからその顔はやめてくれ〜!!!
へタレよろしくパニックに陥りそうな三上に笠井は更に笑みを浮かべ、手にしたポカリを差し出す。
「先輩、喉渇いてるんじゃないかと思って。ポカリのみません?」
確かに、動揺しすぎの発汗で喉が異様に乾いている。
笠井の好意をありがたく受け取ろうと、手を伸ばすと同時に気付く。
――こいつはその為だけにここにきたのだろうか?
想像力豊かな自分が恨めしい。
背中に新しい汗が流れるのを感じた。
「いっいや、やっぱ俺い〜や。お前飲めよ。」
「はっ?」
「えっ?」
笠井の顔がみるみる険悪なものにかわっていく。
こんな表情滅多にない。
というかみたことない。
猫目がみるみるつりあがる。
「折角もってきたんだから飲んでくださいよ。大丈夫ですって。へんなものははいってませんから。」
ということは変なものがはいっているということだろう…?
よくみるとポカリの口が開いている。
しかし中身は減っていない。
異物混入確立100%だ。
「でも俺あんまり喉渇いてないから―――っ!!!」
急にネクタイを引っ張られ、口付けられる。
キスはよくしていたけど、笠井から、というのは数えるしかない。
それもこんな濃いキスは初めてだ。
「ン…っ…んんっ・・・。」
いつも三上が主導権を握っていたため、主導権がないときの息継ぎがよくつかめない。
自然、声が洩れ、喘ぎのように聞こえる。
―――冗談だろ〜!!!
三上直伝とあって笠井のキスはものすごい。
反応する下腹部を抑えることができない。
「――っは!」
やっとのことで笠井は口を離す。
酸素を吸い込もうと息切れする三上を、やはりにやりと見遣る。
「やっぱり喉、渇いてたんじゃないですか?」
吸い付いてきてましたよ、と三上の耳元に囁く笠井は本当に笠井だろうか。
もしかしたら笠井の仮面を被ったエイリアンかもしれない。
本気でそう思った。
しかしすぐにその考えを打ち消す。
俺が竹巳を間違えるわけねぇ!
冷静に考えてみようと、そう思い直す。
今の笠井に何かおかしなところはないか?
おかしなところだらけだが・・・。それでも。
「もしかして…」
思い当たった考えに、笠井を引き寄せ、額に手をのせる。
掌に感じる体温はいつもよりも高い。
汗ばむ肌も先程のキスの所為だけではなさそうだ。
「わぁっ!!!」
有無を言わせず笠井を抱き上げ、部室を出る。
「何するんですか!?離してくださいよ!!!」
「馬鹿野郎!熱あんじゃね〜か!!!」
「熱なんかありませんよ!」
「ちょっと黙ってろ!」
バタバタと暴れる笠井に怒鳴りつける。
暴れることはなくなったが、その顔は憮然としている。
とりあえず無視して寮へと急ぐ。
保健室に行くよりか、寮のほうがいろいろと都合がいい。
周りの視線も一切無視していると、先程の仲間達が遠目から除いているのが見えた。
その顔は一様に、よかったな三上、と生ぬるい笑みを浮かべている。
あいつら後でぶっ潰す!
決意を新たにし、足を速める。


寮に着くと、とりあえず笠井をベットに放り込み、着替えをさせる。
その間に寮母さんのところへ行き、氷枕と薬をうけとる。
部屋に戻ると笠井は眠っていた。
その顔はかなりつらそうで。
体温計を口に突っ込んでやると、39度を越していた。
元々熱に弱い上、こんな高温では性格が多少(?)歪んでもしょうがないだろう。
何よりもそんな笠井にすぐに気がつかなかった自分が情けない。
ちっと舌打つ。
「ごめん、な。」
汗ばんだ額を撫でる。
後で体をふいてやらないと。
その前に薬と、口移しで薬を飲ませる。
壁時計は丁度昼休みが終わった頃をさしていた。
が、勿論授業にでる気はない。
きっとにやにやとこちらを見ていた仲間達がうまくフォローしてくれるだろう。
とにかく疲れた・・・。
いつの間にか三上も眠りについていた。





「…ぱい。三上先輩。」
体を揺すられ、重たい瞼をあげると、笠井がこちらを覗き込んでいた。
「っ!!!」
「?」
先程の恐怖を思い出し、ばっと飛び上がるが笠井は何やってんだこの人?といったふうに見つめてくる。
「俺、何でまだパジャマきてるんですかね?」
自分の格好を見下ろして不思議そうに尋ねてくる。
「竹巳?」
「はい?」
「お前、何も覚えてないの?」
「え?…そういえば俺今日何してたんだろう…?」
笠井曰く、朝からのことを何も覚えていないそうだ。
藤代を起こしたことも根岸を姫抱きしたことも、誰彼構わず抱かせろオーラを放ったことも・・・。
ぷち。
何かがキレる音がした。
「わぁぁ!!!」
「熱はもうなさそうだな。」
直接額と額をくっつけて確かめる。
先程の薬が効いたようだ。
「今日は手加減しないからな。」
「はぁぁ?」
意味がわからないといった様子の笠井ににっこりと微笑む。
どうだ!これが本家のデビスマだ!!!といわんばかりに。
俺の苦しみをうけてみろ!!!!!!!






次の日。
「笠井、39.0℃。三上39.5℃。…一体何をしたんだお前等は・・・。」
二人揃ってキャプテンの世話になることが決定した。










オチなし。
くすっ。
私のミカミンはへたれです。
受けです。
でも笠井には攻めです。


040615