Introduction aux études rousseauistes

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ルソーのテキスト

研究には、下記2点のテキストを用いるべきである。特別の理由がないかぎり、フォリオ版の使用は薦められない。

Œuvres complètes, éditions publiées sous la direction de Bernard Gagnebin et Marcel Raymond, Paris, Gallimard «Bibliothèque de la Pléiade», 1959-1995.

現時点では最高の全集。ただし、転記ミスや誤った執筆年代推定が多く、今後の改定が待たれている。「O.C. I, pp. 13-15」のような引用の仕方は、やや古風な印象を与えてしまう。現在のスタンダードは、「OC I, p. 13-15」である。
なお、2012年へ向け、Champion-SlatkineGarnierの両社が新全集を編集中である。

Correspondance complète de Jean-Jacques Rousseau, édition critique établie et annotée par R.A. Leigh, Genève, Institut et Musée Voltaire, et puis Oxford, The Voltaire Foundation, 1965-1998.

書簡全集。厳密には出版社、出版地はこれだけではないが、このような表記で充分であろう。「C.C. 12」や「C.C. I, p. 10」ではなく、「CC 12」と引用すべきである。

なお、以下のような邦語訳全集もある。

『ルソー全集』、小林善彦・樋口謹一監修、白水社、1978-1984年。

ほぼ全ての分野のテキストを収録しており、世界的にも珍しいものである。ただし、誤訳、情報のミスが少なからず認められ、そのまま引用するには注意が必要である。残念だが、研究上は参考資料としての利用にとどめるべきである。

電子テキストに関しては、フランス語、英語のものがネット上で多数公開されている。「アテナ」が有名だが、いずれも誤植や現代綴りへの変更などがあるため、引用などに際しては細心の注意が必要である。

ルソー関連のWEBサイト、及びパソコンなどの電子機器やインターネットの登場が研究にもたらした変化については、本サイト運営者による「インターネットと文学研究-新たなルソー研究空間-」(『藝文研究』98, 2010, p. 104-123)を参照。

必読研究書(洋書)

ガリカ」や「グーグルブックス」から入手可能なものも多いので、これからの研究者は、書籍や資料は電子版で揃えるようにしたい。

COURTOIS, Louis John, «Chronologie critique de la vie et des œuvres de Jean-Jacques Rousseau», Annales de la Société Jean-Jacques Rousseau, 15, 1923.

もはや古典となった『ルソー年代記』。ルソーの日々の行動が箇条書きでまとめられている。リーの書簡全集刊行前の作品であるため、下記のTrousson et Eigeldinger, Rousseau au jour le jourに役割を譲った感はあるが、注記や、参照されている20世紀初頭までの研究書の中には思わぬ有益な情報が含まれていることが多く、やはり研究には必須の文献である。

TROUSSON, Raymond et EIGELDINGER, Frédéric S., Dictionnaire de Jean-Jacques Rousseau, Paris, H. Champion, 1996.

ルソーによる作品や主要概念だけでなく、関連の地名や人物名などの項目がアルファベット順に提示されている、研究者必携の事典。項目は、基本的にはその分野の専門家によって執筆されているが、紙面の都合のためか出典や文献の提示は充分ではなく、また、内容や長さにはかなりのばらつきがある。参加していない重要な研究者もおり、そこからは個人や研究所間のライヴァル関係などが見えてくる。

TROUSSON, Raymond et EIGELDINGER, Frédéric S., Jean-Jacques Rousseau au jour le jour, Paris, H. Champion, 1998.

ルソーや関係の人々が、いつ、どこで何をし、何を書いたのかなどが一日ごとにまとめられている、もはや研究には不可欠な一冊。書簡集読み込みや情報整理の際に用いれば、大幅に時間を短縮することが出来る。出典の細かなミスはあるが、原典に当たりつつ用いれば気になるレベルのものではない。

必読研究書(訳書)

E・カッシーラー(生松敬三訳)『ジャン=ジャック・ルソー問題』、みすず書房、1979年。

ドイツ語ながら、ルソー関連の文献目録では必ず言及される研究書。
第一部では、その矛盾が指摘されることの多い、自由や法についてのルソーの考え方に統一的原理を見出すことが試みられ、特にカントのルソー評を参考に、「社会の責任」という概念が読み取られている。社会は、権力欲、所有欲、虚栄心といった諸悪を導くものではあるが、神による救済を待つのではなく、運命を自ら支配しようとするならば、真に人間らしい社会の構築は可能なのである。
第二部では、主知主義が支配する18世紀において、感情の力を対峙させたルソーの功績が分析されている。しかし、ルソーは感情を絶対的なものとするのではなく、理性や意志、倫理といったものの価値も認めており、それらは相互に結びつくべきものなのである。そして第一部で扱われたテーマが再度取り上げられ、自己決定の能力、完全性へと向かう資質こそ人間の本性とされていることが示される。その観点からルソーが社会に求めるものは、百科全書派的な功利主義(人間の幸福、安寧、悦楽を増大させること)ではなく、人間の自由を確保し、その真の使命に連れ戻すことなのである。
重要なテーマを正面から扱っており、その重要性は理解出来るのだが、より読みやすく、秩序立てて記述することは出来たはずである。全体的に、どうも文系の研究者は、「読者」というものの存在を蔑ろにし、自己陶酔へと向かってしまう傾向があるのではないだろうか?

必読研究書(和書)

川合清隆『ルソーとジュネーヴ共和国』、名古屋大学出版会、2007年。

ルソーとジュネーヴとの関係が、『社会契約論』を中心にしてまとめられている。M. Launay, Jean-Jacques Rousseau, écrivain politique: 1712-1762, Cannes et Grenoble, CEL et ACER, 1972を支えに、『社会契約論』で展開される学説が、ジュネーヴの政治的環境との接触なくしては成立しえなかったという見解から分析は進んでいく。
ルソーの政治思想を扱った文献は、しばしば読者を無視した不必要に難解なものになりがちであるが、本書は理路整然と問題の要点が端的に述べられており、研究者が目指すべきひとつのモデルを提示していると言えよう。ルソーの政治思想を理解するためには古代ギリシャ・ローマへの目配せが必要であり、その点の分析が充分でないなどの批判も予想されるが、本書はあくまでジュネーヴとの関係に的を絞ったものである点は理解しておきたい。また、専門家には納得のいかない説や解釈も見出されるかもしれないが、そうした細部で本書を批判すべきでもないだろう。ルソーのある一面を、入門者だけでなく専門家をも満足させる形で一通り分かりやすく、ツールとして便利なようにまとめるということを、日本の研究者はもっと行うべきなのではないだろうか。真に学術的なことは、査読のある海外の雑誌にフランス語や英語で発表し、より多くの専門家の審判を受ければよいのである。

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