0044聖人の爪書き阿弥陀

高浜は、古くから霞ケ浦水運の要衝の地でした。その町の中ほどに、西光寺の阿弥陀堂が建っています。建立は、平安時代のものと伝えられています。

 その昔、親鸞聖人が鹿島神宮へ参詣をするときは、たびたび高浜を通っていました。

 ある日、親鸞聖人が阿弥陀堂の前にさしかかった折、一人の男が病気で苦しんでいるという話しを聞き、治してあげることにしました。

 その男は、腫れ物がひどく、苦しんでいましたが、「おまえのような、得体の知れない坊主に治せるものか……」とバカにしました。

 しかし、聖人が静かに念仏を唱え、病人の身体をさすっていると、不思議なことに痛みが薄れてきました。さらに続けると、今度は腫れ物が消えてゆきました。

 男は驚いて、聖人に心からお詫びを言い、お礼に小麦の焼餅を出して持て成しました。聖人が鹿島へ渡るため船着場へ行くと、その男は「お陰で体の痛みは治りました。どうぞ心の悩みや未来の苦しみも除いてください」と聖人にお願いしました。

 すると聖人は 「極楽往生を願うなら、常に念仏を唱えることだ。そなたの庭にある石には、阿弥陀如来が宿っているから、それを信心せよ」と言って船に乗ってしまいました。

 男が家に帰って石を見ると、そこには阿弥陀如来の尊像が、聖人の爪で書いたように表れていました。

 男はそこにお堂を建てて、朝晩に念仏をとなえるようになりました。名前も常願坊と改めて、親驚聖人の弟子になりました

 高浜に残る阿弥陀堂は、このような言い伝えが残っていることから「爪書き阿弥陀」と呼ばれ、地域で大切にまつられています。


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