0059長峰寺の十一面観音

市立中央図書館のある大通り・長峰寺通りを西に向かい、突き当たる手前100mの路地を右に折れると、そこに朱塗りの観音堂があります。小さな境内には、石岡車馬組合が建てた馬頭観音の碑や石仏群があります。お堂には、県指定の有形文化財・十一面観音像が安置されています。像の高さ12m、寄木造りのこの立像は室町時代の作で、かつてあった長峰寺の寺宝だったと伝えられています。

 本来、十一面観音の頭上には化仏(けふつ)と呼ばれる11の仏頭が乗っていますが、この観音様には中央に一つしかありません。

 十一面観音の化仏は、観音様の様々な法力・功徳が困っている衆生のために働こうとして、ロケットのように発射する瞬間の状態を表現しています。正面の三面は優しく説法している菩薩相、右側の三面は分かってくれない人々に涙ながらに説得する相、左の三面は説法を邪魔する悪魔を追い払う憤怒の相。後頭部には、やっと分かってくれたかと泣いて喜ぶ大笑相、そして中央に深い慈悲の心を表す如来相が飛び出しています。

 長峰寺の十一面観音に残っている化仏は、如来相のみ。あと10面があったら、どんなに素晴らしかったかと惜しまれます。しかし、500年という気の遠くなるような歳月を漂流し、化仏以外ほぼ完全な形で保存されていることを考えると、やはりこれは貢重な文化財です。 

 昭和41年に、観音堂は木造のお堂から朱塗りのものに建て替えられました。当時、周囲は桑畑でした。観音様の管理は若松七部で続けられています。この細い道は昔の宇都宮街道で、大勢の人が馬を連れてお参りに来たそうです。毎月18日が縁日で、118日が初観音として大祭を行っています。

 遠い丑日に廃寺となり、地名のみに残る長峰寺。それを示すただ一つの遺産が、この十一面観音だったのです。


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