0072清涼寺の古狢(ふるむじな) |
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昔、守木町の清涼寺に一匹の古狢が棲んでいました。その頃のお寺は、境内に大杉やカシ、ケヤキ、イチョウなどがうっそうと繁り、本堂北側は一面の大竹ヤブでした。その竹ヤブの中に小さな池があり、その側に穴があってそこに古格が棲んでいたのでした。 さて、その狢は夜になると大杉に登ってお月さまに化け、また、ある時は通行人に砂をかけるなどのいたずらをしていました。境内の南側に長屋があり、そこに鴉(からす)の長さんと云う人が住んで居ました。 ある晩のことです。長さんの雨戸をトントンと叩くものがあります。長さんが寝床で耳を澄まして居ますと、「鴉の長さん啼いて見な、鴉の噂き声やってみな」としきりに叩くのです。長さんは不審に思いながら雨戸を開けましたが、誰も居ません。 その翌晩も次の晩も雨戸を叩くものがあります。返事をすればいつまでも戸を叩き、黙っていればそのまま帰ってしまいます。 「さては狢の仕業だったのだナ」 と、長さんははじめてそれと悟ったのです。 それからです。近所の若者や子供が集まって唐辛子いぶしをかけて狢を退治することになりました。池の穴にいぶしをかけ、待ち構えていました。すると本堂の方から大きな怒鳴る声が聞こえるので、皆がその方へ駆け寄ってみると、お坊さんが本堂の正面に仁王立ちとなり、「コラ、お前たちは何をするか、本堂が煙でいっぱいじゃ」 その恐ろしい剣幕に、皆は驚いて一目散に逃げ去りました。それ以来、狢は何事もせず、姿も見せませんが、あのお坊さんこそ狢の最後の化け姿であったろうと、みんなの語り草になりました。
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