0077菖蒲沢の薬師さま

菖蒲沢の薬師は、十三塚の薬師、旧新治村東城寺の薬師、真壁・椎尾の薬師と共に「筑波四面の薬師」の一つでした。

 菖蒲沢はかつての小桜村にあり、フラワーパークから土浦方面に続くフルーツラインの最後の信号を右に曲がった辺りです。イチゴ直売のお店が数件ある十字路に近い集落で、製材所を過ぎて少し行くと右斜めに分かれる細い道があり、そこを上っていくと終点が菖蒲沢公民館になります。

 公民館には数台の駐車スペースがあり、道路を挟んだ反対側には古い木造の旧公民館が建っています。

 薬師堂へ行くには、その旧公民館の脇の細道を山際に沿って徒歩で上っていきます。道の両側には竹や樹木が生い茂り、丸太の階段がしばらく続きます。途中、稲荷神社が左手上方にあり、そこを過ぎる辺りから道は少しずつ広くなって行きます。さらに進むと、突然幅の広い下りの石段が現れます。その先は、広場になっていて、左手には何と池がありました。石灯籠も立っています。

 入口の狭さに比べると、驚くほどの空間が広がっています。広場の先には、さらに幅の広い登りの石段が続き、その上にお堂が建っています。

 昭和29年発行の「小桜村史」には、次のように記されています。

「不動院東光寺 菖蒲沢字薬師にあり、桑柄山中腹に奥の院薬師堂あり。筑波四面薬師中、規模広大を以て知られたるも、正保十年および天保十年二回にわたり火難に躍り、現在の堂宇は天保十三年の再建なり」

 薬師さまは大規模で、かつては大変な参拝者で賑わったそうです。そのことは、お堂を囲む境内の広さからも容易に想像できます。薬師堂の前に立つと、大きな薬師如来像に驚かされます。2度の火災を生き延びてきた薬師さまの台座から脚もとにかけて、金箔が残っていて、暗がりの中でもその慈悲深さが伝わってきます。左右には仁王像もあり、かつてあった仁王門のことも想像させてくれます。

 山中に静かにたたずむ薬師堂とその本尊、木漏れ日が優しく境内を照らしていました。


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