0082河口部・高浜入り

山王川を下流へ下っていくと、石岡駅の脇を過ぎ、やがてばらき台団地を右手に見ながら、東田中の集落に近づきます。

 川の近くに沖中不動と呼ばれる不動院がありました。このお不動様は、天台宗の寺院で、記録によればこの地の城主が深く沖中不動を信仰したそうです。

 本尊の不動明王は秘仏になっていて、理由もなく開くと目がつぶれるという言い伝えが残っています。

 この辺りになると、山王川は垂直のコンクリートの壁に挟まれた堀の形態になり、両側ともフェンスにおおわれた典型的な都市河川の風貌です。

 玉里村との境界にかかる所橋を過ぎると、河口部になります。川幅はぐつと広がり、流れはすぐそばに近づいてきます。水に濁りはあるものの、様々な生き物の気配が感じられ、水鳥たちも忙しそうに潜っています。

 山王川はこの先で霞ケ浦に注ぎますが、広大な河口部の自然は季節ごとに変化を見せてくれます。

 野生のハスが鮮やかな花を咲かせ、アシやマコモに混じってタコノアシやアサザなどの貴重な水生植物も□見ることができます。

 絶滅危惧種のオニバスを、かつてはこの周辺で容易に見ることができました。トゲのあるオニバスの葉は、大きいもので直径1.5mもあり、大群落が湖面を覆っていたこともありました。

 十数年前、絶滅したとされていたオニバスが発見されたのも、この山王川河口でした。近年は地元の有志たちが、休耕田を利用してオニバスの保存栽培を行っています。

 豊かな自然に包まれた山王川河口部ですが、江戸時代はこの高浜入りをたくさんの高瀬舟が出入りし、江戸と高浜を結んでいました。さらにさかのぼれば、常陸風土記に描かれた景勝の地でもありました。

 山王川という小さな川にも、過去から現在、未来へと語り継がれるいくつもの物語がありました。


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