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レビュー

ブックガイドシリーズ 基本の30冊 文化人類学
松村圭一郎

題名のとおり、文化人類学の文献の中から、基本書や重要文献だけ三十冊選んだ本。ブックガイドシリーズというのは、この本しか読んでいないが、この本の出来を見る限り、けっこういいシリーズなのではないだろうか?

サーリンズの「石器時代の経済学」があったのはおどろいた。
経済学の本だとばかり思っていたのだが、文化人類学の本だったのか!
この本は、昔は休むひまもなく働いていたと思われるかもしれないが、実はそうではなかったのだという内容で、現代の過剰労働に対しての批判の文脈で使われることがある。

ターンブルの「ブリンジ・ヌガク」は、ターンブルの「豚と精霊」が面白くて本屋さんでばばばっと立ち読みかつ流し読みをしたので、名前にひかれた。
あまりにも貧困なため、弱者をしいたげ、困っている人をあざわらい、自分本位に生きるしかなくなっている部族が、それはわれわれの未来の姿、あるいは現実に存在する一部なのではないか?ということにまで話がすすむらしい。
文化人類学は、近代社会ではない社会を見ることで、近代社会の悪いところをあきらかにするという効果があるが、まさにそういうタイプなのでは。

スミス、ウィスウェルの「須恵村の女たち」、これは、貞淑というような概念は近代的なもので、農村はもっと性におおらかだったよというところが興味深い。避妊はちゃんとしたほうが、より幸せな生活をおくれると思うのだが、それはともかく、性のあり方として、貞淑がさけばれ、性の乱れが言われる近代社会においては、それ以外の、もっと別のよりよいあり方があるのではないか?という示唆をあたえてくれると思う。

グレーバー、デイヴィッド・グレーバーの「価値の人類学理論にむけて」、ここでこの名前を聞くとは思わなかった。ぼくは、彼をアナーキズムやら労働否定の社会構築での論客(たとえばポール・ラファルグの怠ける権利と関係しているような)として、この人の名前を聞いたことがあったわけだが、そうか、人類学者だったのか!

他にも、おもしろい話や、おもしろい本がいっぱいある。
ぼくが一番興味を持ったのが、上の本であるが、ほかにも面白そうなものはいっぱいあった。
このブックガイドシリーズは、案外おすすめかもしれない。
高校生や、大学初年度や、それ以上でも新しく何かを学ぼうとする人は、とりあえずここでめぼしい本を見つけておくといいかも。