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ブライアン・イングリス著、笠原敏雄訳「トランス 心の神秘を探る」レビュー
および、イアン・スティーヴンソン著、笠原敏雄訳「虫の知らせの科学」レビュー(「トランス」のレビューの下にあります。)
および、ジョン・ベロフの「超心理学史」レビュー、ただし、前世療法に関してのみ。
正直にいえば、読みづらい本ではあった。しかし、内容が悪いというよりも、書き方の問題だと思う。
話の要旨や要点がよくわからないし、とくにまとまっているわけでもない。
しかし、内容には価値がある。
これは、通して読んで面白い本というよりも、むしろ資料集とみるべきなのではないかと思う。
あるいは、参考文献案内というか。
これは、「トランス」と呼ばれる、特殊な心理状態という一点のみから、関連する現象を、本当に片っ端から集めた本である。
ぼくが、一通り読んでみて、自分の興味関心から、押さえておいたほうがいいと思う内容を、ここに紹介する。
ほかにどんなものがあるかは、ネットのどこかに目次があるので、さらっと見てみるといいかもしれない。(たとえば、以下)
http://books.rakuten.co.jp/rb/%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%B9-%E5%BF%83%E3%81%AE%E7%A5%9E%E7%A7%98%E3%82%92%E6%8E%A2%E3%82%8B-%E3%83%96%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%83%AA%E3%82%B9-9784393361085/item/655695/
シャーマニズムに関して。
カルロス・カスタネダ、『呪術師と私 ドン・ファンの教え』(ドン・ファンは実在しない。合成された人格かも。ただ、それで内容が無意味になるわけではないのでは?と筆者は言う)
ピーター・T・ファースト編『神々の肉』Flesh of the Gods
R.ゴードン・ウォッソン
金枝篇で有名なフレーザーの研究の多くは、アンドリュー・ラングによって覆されているとか。
Lang, Andrew, Magic and Religion, London,1901.
集団ヒステリー、ルーダン、聖メダール
ルーダンの事件は有名で、ネットの検索でも書籍がヒットしたりする。
聖メダールではそうでもなさそうなので、補足。ヤンセン主義者、ウランソワ・ド・パリの死去が引き金となり、幻、異言、さまざまな物理的現象を発生させたと書かれてある。(本書46ページより)
アンリ・エランベルジェ(Ellenberger, Henri)
自閉症、ティンベルヘン
Tinbergen, Niko, Ethelogy and Stress Diseases, Stockholm, 1974.
チャールズ・タート(Charles Tart)
ウィリアム・サーガント(William Sargant) (トランスの研究、人類学者)
自己暗示に関して。
ドイツのシュルツ、フランスのクーエ(Coue, Emile, Self-mastery through Auto-suggestion, 1959. Coueの最後のeの上には、アクサン・テギュがついている)
クーエは、自己暗示の重要性や、偽薬が実際に効果を持つことを体験により知り、想像力の重要性を提唱。
ウィリアム・エヴァンズとクリフォード・ホイルは、1933年のQuarterly Journal of Medicineで、狭心症にも偽薬(重炭酸塩で作られたもの)が効果ありという結果の論文を載せている。
この二人が果たした役割は相当に大きいらしい。
シュルツの自律訓練法は、モントリオールのヴォルフガング・ルーテの1965年の論文により再び日の目を見る。
Lothe, W., Autogenic Training, New York, 1965.
血圧は自律神経の支配下にあるため、血圧を下げるには薬物投与しかないという考えに反論できる事実を提供。
他の参考文献として、ロバート・おーんスタインの『意識の心理』1972年、邦訳・産業能率大学、The Psychology of Consciousness
アイゼンク『心理学の効用と限界』1955年、邦訳、誠信書房、Uses and Abuses of Psychology
いぼを除去する方法、従来の治療より、「いぼを描き加え、それから一定の受おmンを唱えさせながら、いぼを囲む円を描かせ、絵の中のいぼが完全に消えてしまうまで、その縁を毎日よくしていく」という方法の方が効果的だとわかった。
アメリカのサイモントン夫婦、オーストラリアのアインスリー・ミアース、彼らの導入したような方法を用いれば、想像力を高めることを裏付ける大量の証拠があるという。
イギリスの自己催眠の中心的擁護者であるマシュー・マニング(Manning)の私信によれば、腫瘍を消すこともできるが、ただし、それは患者の想像力が十分高まった場合のみだという。
サイモントン夫妻のセミナーに出席したあと、バーニー・シーゲルは催眠を利用するように。
『奇跡的治療とは何か』Love, Medicine and Miracles、邦訳、日本教文社
ほか、重要だと思われる参考文献を。
Mesmer, Franz, Writings (ed. Bloch), Los Altos, California, 1980.
Myers, Frederic W. H.. Human Personality and its Survival of Bodily Death, London, 1907(1903). 人間の人格とその死後の生存
Gurney, Edmund, Frederic Myers and Frank Podmore, Phantasms of the Living, London, 1886. 生者の幻影
催眠について。
催眠状態の人に、犯罪を起こさせることはできるか?
この本の142から144ページに、このことに関する記述が。
「患者の中には催眠にかからないものがある」、「催眠誘導の可能な患者の比率の推定にはかなりのばらつきがあり、催眠にかかるかどうかは、患者のみならず施術者にも、さらには施術者が個々の患者とどの程度疎通しあっているかにも左右されたため、そうした推定が誤解をまねきやすいことも明らかになってきた。施術者が短気であったり、何らかの心配事のため気が散っていたり、何らかの理由で自信を喪失していたりすると、催眠への導入に失敗するのである」
被験者が催眠状態にあるときには、通常の意識状態ではしないことをするかという実験では、犯罪的なことをさせることは難しくないが、日常生活では喜んで行うようなことを拒絶する場合があるという混乱させる結果が出た。
ガーニーは、20ポンドを与えるといっても、電報配達を拒絶した被験者について報告している。被験者は、電報配達を非常に嫌っており、しかし、日常の意識では、そのお金をもらうために電報を配達するに違いなかったそうだ。(Gurney, Proceedings of the SPR, 1884, ii, p.287)
マイヤーズは、催眠の持つこうした側面に非常に興味をそそられ、このような証拠を広範にわたって検討した結果、何か非常に空想的な犯罪(紅茶にヒ素を入れる)のほうが、不都合ではあるが取るに足らない行為(公衆の面前でブーツを脱ぐ)よりも、誘導が容易な場合が多いように思われることが明らかになった。(Myers, Proceedings of the SPR, 1886, iv, pp.1-24; 1890-1, vii, p.354)
この逆説に対しては、「ヒ素とされているものは、実は砂糖壺から掬い出されたものではないかという疑念が被験者の心の隅にあるに違いない」という説明が、最も説得力を持っていた、と書かれてある。
モルによれば、催眠状態にある被験者が犯罪的なことをするように見えるのは、それが遊びだと知っているからではないかと言っている。(Moll, 1890, p.338)【本書の引用では、←の表記になっているが、巻末参考文献では、Moll, Albert, Hypnotism, London, 1889となっており、年代が一年違う。これ以外に、Mollの文献は巻末にないので、別の本を指すのか、誤記か不明】
フォレルによれば、「たとえ不謹慎な施術者が、患者を誘惑したり犯罪を犯させたりすることが、理屈のうえでは可能だとしても、本人が是認していない類のふるまいを求めると、患者は、予期に反して突然覚醒してしまうことがよくあるという事実を、経験豊かな施術者であれば誰でも知っていたため、その危険性は低いのではないかという。また、たとえ患者が、何が起こっていたのか全く想起できなかったとしても、その記憶は、他の施術者に催眠をかけられた時に呼び起こされる可能性もあった。不法な目的で催眠が使われた証拠がほとんど存在しないのは、その危険性が認識されている結果なのではないか、とフォレルは述べている」(Forel, 1906, pp.318-52)
このことについての参考文献は、以下。
Myers, Proceedings of the SPR
Forel, Auguste, Hypnotism, London, 1906(1889)
ちなみに、1888年に出版されたマックス・デゾイルの『現代催眠法に関する参考図書 Bibliography of Modern Hypnotism』には、800点を超える文献が列挙されており、その翌年に開催された国際催眠学会は、ヨーロッパ大陸全域で医療に用いられてきたのは、リエボーの技法を基盤としたベルネームの方法(つまりナンシー学派の方法)だと明らかになった。
上で挙げられているモル(ベルリン)とフォレル(チューリヒ)の本はこのころに書かれた。有益な調査報告であったそうだ。本書の109ページを参照のこと。
前世療法に関して。
アーサー・ガードハムによる、カタリ派(アルビ派)であったときのことを語った女の人の話。
フランスの専門家に調べてもらうと、彼女の話にあやまりは一か所だけで、他はすべて正確。
あとで、その誤りとされていた部分も、あらためて検討しなおした結果、正しいことが判明した。
参考文献は、
Guirdham, Arther.
The Great Heresy, Jersey, 1977.
We Are One Another, Jersey, 1974.
イアン・スティーヴンソン著、笠原敏雄訳「虫の知らせの科学」レビュー
上のレビューに比べると、内容はあっさりしたものになるだろう。
ESPに関する本だが、あまり焦点があたってこなかったタイプのESPに関する研究。
明確にイメージが浮かんだり、声が聞こえたりするものというよりも、なにかの印象を受けて、それが現実と(超常的に)一致するタイプのESP。
日本語でいう、「虫の知らせ」について書いたもの。(この題名のつけ方はかなり的を得ていると思う)
たとえば、「なんかいやな感じがする」とか、「なにかあの人が困っている気がするから、家に帰らなくてはならない」とか、そういう印象を持った事例。
あなたも、「どうしても飛行機に乗りたくない気がして、乗らなかったら、その飛行機が事故にあった」とか、「特に理由もないのに、すごく悲しい気持ちになったら、そのとき親が死んだのがあとでわかった」とか、そういうことを聞いたことがあるんじゃないだろうか?
この手の事例は、日本だけでなく、アメリカやイギリス、ヨーロッパなど、広くみられるらしい。
この本は、ただ、その手の事例を集めただけではなくて、ちゃんと確認を取っているところがすばらしい。
自分の感じた印象が、現実とつながっている、と知る前に、だれかに話していたとしたら、そのことが事実だと、そのだれかに署名入りで証言してもらっている。
たとえば、親が死んだという印象を持った人がいたら、その印象を家族のだれかに話して、そのあとで、本当に親が死んでいたということがわかったら、その印象を持った本人の証言を載せるだけでなく、家族のだれかにもインタビューして、その家族のだれかの証言や、本人の証言への裏付けをもらってきている。
証拠がない事例は、基本的に載せていないので、かなり真面目な研究だとわかる。
虫の知らせといったものが、あるのかないのか、ということに関する、決定的な証拠が、ここで扱われているわけではない。
これは事例研究であり、実験室で条件を整えたものではないから、そこに不満を持つ人がいるかもしれない。
しかし、人類学の事例研究が、実験室で行われていないから、価値がないとはいえないのと同じく、この研究も価値がないとはいえないと思う。
まったく別々の人が似たような体験をしていて、その特徴が似ている場合、それが、実験室で起こる現象でなく、再現性も低いものであっても、注目すべき事例なのではないだろうか?
もちろん、これを単なる与太話として片づけることもできるのだが、この証言が事実だとしたならば、それがかなり意味を持つものであることは確かだ。
一応、この本で扱われている「印象型体験例によって示された伝達(コミュニケーション)のプロセスについてのまとめ」を載せておく。
この本の、352−353ページに書いてある。
1.同一の受信者が印象型体験をすることも、イメージを伴った体験をすることもある。
2.印象型事例は、特定の人物が困難な状況にあることが明らかになり、さらにその人物の置かれている状況に関する情報が少なくとも一点は得られる、かなり鮮やかな体験からなることもある。また、それに伴って、発信者の置かれている状況にふさわしい情動や、行動に向かう衝動が起こることもある。
3.受信者が、異常に強い情動や身体症状、あるいは行動に駆りたてる衝動に気がつくだけで、認識的な要素が全く入らない、印象体験の「磨滅型」もある。
4.受信者の体験中の情動的要素と(それ以外の)身体的要素は、ふた通りの形態のどちらか一方をとることがある。つまり、発信者の情動ないし身体的状態をまねて、そえrと同じか非常によく似た症状を出す場合と、発信者の苦痛を(時には無意識のレベルで)知っていることから、それに反応して、発信者の症状とは似ていない情動や身体症状を発現させる場合とがあるのである。受信者は、超感覚的な伝達(コミュニケーション)に刺激されていることには気づかないながらも、発信者の死に対して、たとえば、気分が沈んでめそめそするといった情動反応を起こすこともある。
5.受信者が行動を起こす時には、細かい点は認識されにくい傾向があるようである。強い情動も、同じような抑制効果を持っているrしいが、この点についてははっきりしない。
6.もし、発信者が、自分の置かれている(ふつうストレスの多い)状況にいながら受信者のことを考えれば、受信者が自分の受けた印象(インプレッション)に基づいて行動を起こす可能性は高くなる。しかし、発信者が受信者のことを考えていた時の方が、受信者の意識に他の情報が浮かび上がりやすいわけではない。
7.印象体験は、主として、覚醒状態にある受信者に起こりやすい。覚醒状態の時にひとりでいても、細かい点が数多くわかるといった傾向は見られない。
8.それでも、受信者が、自分の心の中に注意を向けたままいられる時には、発信者の状況についての具体的な内容を意識の上にのぼらせることのできることもある。
この本の295ページには、何か悪いことが起こったという印象のあとに、より詳しい状況がわかるという二段構えが、受信者の報告から見て取れる、とある。
もし、特になんの理由もないのに、なにか悪いことがだれかに起こったというような情動などを感じたら、すぐに行動を起こさず、リラックスして、心の中を、最初にその印象を得たときのような感じにしておけば、さらに詳しい状況がわかる可能性がある。
もし、そういうことができるならば、適切な行動をとれる可能性が高まるので、この知識は有益だと考える。
ジョン・ベロフの「超心理学史」レビュー、ただし、前世療法に関してのみ。
上記の本のp236-257参照。
イリノイ州の臨床心理学者リンダ・タラジによる事例。
催眠で前世へ遡行すると、ローレル・ディルメン(LD)は、もっともらしいが明らかに架空の実にさまざまな歴史的背景を持った前世を創作する才能を示した。LDは、16世紀後半のスペイン女性、アントニア・ミチャエラ・マリア・ルイス・デ・プラドとしての話をしたが、「この被験者は誰かわからない人たちや場所について、詳細な情報をあまりに豊富に提供した」。
タラジはスペインや北アフリカやカリブ海に調査旅行を観光し、各地の図書館を訪ね、歴史学者に相談するなど、必要な研究に三年ほどを費やした。
その結果、はっきりしなかった百件を越える事柄や名前が事実であるとわかった。
その一部は古文書によって確認されたし、あやまりは一件もなかった。
Tarazi,L.(1990). An unusual case of hypnotic regression with some unexplained contents. Journal of the American Society for Psychical Research, 84, 309-44.
この本には、ブライディ・マーフィーについても書いてある。
ブライディ・マーフィーに批判的かつ優良な記事は、以下。
http://www.nazotoki.com/bridey.html
この記事では「事実とは判断できない」、「事実ではないとわかった」ことが列挙されている。
一方、この本では、「事実とわかった」ことが書かれてある。
たとえば、本当にあったとは思われない2ペンス硬貨が、1797年から1850年までの間にアイルランドで実際に使われていたことや、くしゃみをして「リネン」を要求するが、当時のベルファストでは、リネンがハンカチの意味で使われていたこと、などが書かれている。
とはいえ、この本ではブライディ・マーフィーが実在したと結論しているわけではなく(というか、ぼくの見たところ超心理学の本では前世療法は信頼できないとされている)、「ブライディ・マーフィーという人物が実在したと結論してよい確たる証拠はないけれども、催眠状態の中で、確かにヴァージニアは、尋常ならざる方法で、特定の時代および場所に関する知識を得たように思われる」と言っている。
この本では、注で、スティーヴンソンの真性異言についても書かれてある。イェンセン、グレートヒェン、シャラーダの三例がごくわずかだが触れられている。
この良書。