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レビュー
死を超えて生きるもの 霊魂の永遠性について
What Survives? Contemporary Explorations of Life after Death
死後生存について、いろんな見解があることがわかる。
個人的には、シャーマンの死生観に興味を持った。
チベット仏教であれば、記憶はあまり残らないかのような説明だったが、シャーマニズムはそうともいえないようなので。
ただ、チベット仏教の活仏(トゥルク)であるソギャル・リンポチェが、この本の270−171ページで言っている、人間には善なる性質が本質的にそなわっていて、この善性にしたがわないことが苦しみをうむ、人生がつらいのは、この善性にしたがっていないからだ…というのは、納得できる部分がある。
すべてのつらさが、自分の善性に(仏教でいうなら、仏性だが)したがっていないからだとは思わない。
けれども、自分の善性あるいは本性(本性が善性でないという考えもあるが)にしたがっていないと、つらさや苦しさを感じるというのは、自分の体験からもそうだろうなと思う。
自分の心が望んでいないことをするのは、つらい。
自分の精神がガリガリけずられているときは、きっと、自分の心が望んでいないことをしているのだろうと思う。
ぼくは、どちらかといえば、無理をするほうで、心の声にしっかり耳をかたむけていない、かたむけてもまだ大丈夫と思い込むたちだと思うから、心よりも先に、体に不調が出ることが多い気がする。
この本は、いろいろな筆者が、自分なりの信念や価値感などにもとづいて、いいたいことを書いたアンソロジーである。
だから、同じような研究を引用していても、解釈が違っていたりするし、同じ宗教や考え方について話すときでも、違うとらえかたをしているところが多々ある。
そこがおもしろいと思うのだけど、このような本の性格から、どちらかといえば、案内書、「これからの読書案内」のように読むのが一番いいのではないかと思う。いろんな考え方、捕らえ方が紹介されているので、興味のある分野をほりさげるのにはいいのでは。
いちおう、目次をのせておくので、面白そうな論考を書いている著者や、訳者について、興味をもった人は、この本だけでなく、関連する文献も探してみるといいと思う。
第一章では、ロゴの論考が、なかなか面白かった。死者と出会うという話については、奇妙なことに今までそこまで注意をはらっていなかったが、なんというか、かなり心にうったえかけるものが強い。
ぼくは理論構築にはあまり関心がないのだが、二章のシェルドレイクの記憶の理論、脳に記憶がたくわえられているわけではないという理論は、かなり刺激的だった。あと、あのワイルダー・ペンフィールドが、記憶は脳の皮質の中には存在しないといったというのははじめて知った。(Penfield, The Mystery of the Mind, 1975, Princeton University Press という本の中で述べているらしい)
三章では、チベット仏教の考え方がわかったのは興味深かったし、ケネス・リングの心像界の話も面白かった。しかし、フォイヤースティンのタントリズムやハタ・ヨーガの説明のところに出てくる、「世界の全体性のみが存在し、実際、それは無常なる世界を越えてあるものではない」という話だ。この論考では深く触れられていないのだが、悟っていない人には、まるでこの世界ではないどこかに、永遠のすばらしい世界があるものと思えるが、実のところ、永遠の世界とこの世界は一緒であって、表層的にしか見られないためにまるでこの世界がそのすばらしい世界とは別物に見えるのである…ということらしい。この考えは、もっと調べることができれば、面白い考えになりそうに思う。
四章は、シャーマニズムについての論考が自分にとっては目新しく面白いと思う。
上にも書いたが、やはりいろいろな方向から議論されているので、自分なりに自分の考えをまとめる必要があると思った。この本を読んで、なにかの統一見解にいたるということはなく、いろいろな考えがわかり、その上で自分の死生観や、この方面の読書の方向性を見出すのに便利なのではないかと思う。
目次
謝辞
はじめに
第一章 死後生存の証拠
コリン・ウィルソン 「より広大な世界の瞥見」
スタニスラフ・グロフ 「死後の生―現代の意識研究から」
ロバート・アルメダー 「生まれ変わりについて」
アーサー・S・バーガー「死者との交信実験」
F.ゴードン・グリーン+スタンリー・クリップナー 「パノラマ的ヴィジョンー幻覚か、道への架け橋か」
D.スコット・ロゴ 「死者との遭遇―悲哀(グリーフ)カウンセリング、社会学、超心理学の観点から」
第二章 唯物論の挑戦
デイヴィッド・ロリマー 「科学、死、目的」
ルパート・シェルドレイク 「記憶は脳の死後も存在しうるか?」
マーク・B・ウッドハウス 「二元論と物質主義を超えて―死後存続の新しいモデル」
チャールズ・T・タート 「誰が死を超えていきつづけるのか?―現代の意識研究との関係」
第三章 永遠の哲学における死と死後の世界
ラム・ダス 「死の瞬間の思考」
ゲオルグ・フォイヤースティン 「不死と解脱―インド的観点から」
ケン・ウィルバー 「死、生まれ変わり、瞑想」
ソギャル・リンポチェ 「死を超えて生きつづけるものは何か?―チベット仏教の教え」
ケネス・リング 「シャーマンの通過儀礼、心像界、死後の光」
第四章 死の超越
スティーヴン・レヴィン 「死を超えて生きつづけるものは何か?」
リサ・アン・マーツ+ローリン・W・スミス 「子どもたちが泣いている場所―死後の世界でシャーマンがすること」
マイケル・グロッソ 「死後の世界にたいする恐怖」
デイヴィッド・ファインスティン 「死についての個人的神話とその発展」
ゲイリー・ドーア 「死者の国への旅―シャーマニズムとサマーディ」
エピローグ―何を信じるべきか?
訳者あとがき
原注
翻訳者とその担当翻訳(訳者名で検索すると、面白い訳書にあたるかもしれない)
井村宏治(いむら・こうじ) グリーン+クリップナー、ロゴ
上野圭一(うえの・けいいち) ロリマー
笠原敏雄(かさはら・としお) 謝辞、はじめに、アルメダー、バーガー、タート、リング、グロッソ
鹿子木大士郎(かのこぎ・だいしろう) 各章序文、フォイヤースティン、ソギャル・リンポチェ、マーツ+スミス、ファインスティン、ドーア、エピローグ
菅靖彦(すが・やすひこ) グロフ、ラム・ダス、ウィルバー、レヴィン
中村正明(なかむら・まさあき) ウィルソン
橋村令助(はしむら・れいすけ) シェルドレイク、ウッドハウス
英語が読める人が、ネットやらで著者の最新の論文や書籍を検索したいと思う場合もあるかもしれないので、いちおう執筆者の英語表記ものせておく。
Chapter1. THE EVIDENCE FOR SURVIVAL
COLIN WILSON
STANISLAV GROF
ROBERT ALMEDER
ARTHUR S. BERGER
F. GORDON GREENE/STANLEY KRIPPNER
D. SCOTT ROGO
Chapter2
DAVID LORIMER
RUPERT SHELDRAKE
MARK B. WOODHOUSE
CHARLES T. TART
Chapter3
RAM DASS
GEORG FEUERSTEIN
KEN WILBER
SOGYAL RINPOCHE
KENNETH RING
Chapter4
STEPHEN LEVINE
LISA ANN MERTZ/LORIN W. SMITH
MICHAEL GROSSO
DAVID FEINSTEIN
GARY DOORE