間宮社中 伝承里神楽一覧

 里神楽の演目は「古事記」など日本神話に基づくものがほとんどです。下記の表のうち1〜26までは「古事記」の中の物語です。35「紅葉狩」、36「土蜘蛛」は能・歌舞伎を元にしています。

  演目 別名 通称 内容
1. 天之浮橋(あめのうきはし)               イザナギ・イザナミによる神産み・国産み。最後に生まれた火の神によりイザナミは死んでしまう。
2. 黄泉醜女(よもつしこめ)               イザナギは黄泉の国で、黄泉醜女と変じてしまったイザナミを桃の精に退治させる。
別バージョンとして「綱引醜女」がある。
3. 禊三筒男(みそぎみづつお) 墨之江大神(すみのえのおおかみ)       イザナギが黄泉の国で穢れた体を清めると、墨之江大神(住吉三神)が現れる。(さらに天照大御神とスサノオが生まれる)
4. 神逐蓑笠(かむやらいみのがさ) 五穀本現(ごこくほんげん) 勘当、勘当場 天照大御神に、稲荷神から五穀を貰ってくるよう命じられたスサノオは稲荷神を殺してしまう。スサノオは天つ国を追放(勘当)され、天照大御神は岩屋に籠ってしまう。別バージョンとして「機織勘当」がある。
5. 天之岩戸(あめのいわと)              岩屋に籠った天照大御神をウズメの舞と田力男の力で再び外に出す。
6. 八雲神詠(やくもしんえい)         大蛇 追放されたスサノオは、毎年娘を食うヤマタノオロチを退治する。
7. 剣玉之誓(けんぎょくのちかい)           天つ国にもどったスサノオが、オロチから得た剣を天照大御神に差し出し、代わりに御玉をもらう。
8. 因幡之白兎(いなばのしろうさぎ)           白兎はワニザメをだまして川を渡ろうとする。怒ったワニザメに赤裸にされた白兎を大国主(スサノオの子孫)が助ける。
9. 高天原神集(たかまのはらかみつどい)           大国主が治める豊葦原中つ国を平定することにした天つ神たちは集まり誰を派遣すべきか相談する。(国譲りの言い付けの場)
10〜12の3座を総称して「国譲り」という。           
10. 天菩比之上使(あめのほひのじょうし) 天菩比之天使(あめのほひのてんし)   第一の使者として遣わされた菩比命は、大国主の子建御名方に酒をすすめられ酔ってしまい使命を果たすことができなかった。
11. 天之返矢(あめのかえしや)           第二の使者若日子は、大国主の娘、下照姫に一目ぼれしてしまい、夫婦になる。雉が迎えにくるが若日子はこれを射殺してしまう。この返し矢によって若日子もまた死んでしまう。おかめともどき(従者)による掛け合いの所作(たり)を付け足して幕。
12. 幽顕分界(ゆうげんぶんかい)
 (三神和合)(さんじんわごう)
          第三の使者建御雷之男神は、大国主の子建御名方を力比べで負かす。その後大国主と和合の舞を舞い中つ国は天つ神のものとなった。
13. 天孫降臨(てんそんこうりん)           天照大神の孫、ニニギの命が中つ国に天下る。迎えに来た国つ神猿田彦はニニギの命に随行してきたウズメと夫婦になる。
14. 笠狭桜狩(かささのさくらがり)           ニニギの命は、木花佐久夜姫と姉、石長姫を妻に迎えるが、石長姫を離縁する。ニニギを呪って醜女の姿に変わった石長姫はニニギの随身によって退治される。
15. 山海幸易(さんかいこうえき) (幸替え)          ニニギの子、海幸彦・山幸彦は、それぞれの得物(釣竿と弓矢)を交換する。釣り針をなくした山幸は海幸に返せと云われ龍宮に向かう。龍神の助けを借り釣り針を取り戻した山幸は海幸を懲らしめ家来にする。
16. 産屋(うぶや) 海神之宮(かいじんのみや)   龍神の娘、豊玉姫は夫、山幸を追って来て、山幸の子を産むため産屋に籠った。産屋をけっして覗いてはならないと云われていたにもかかわらず覗いてしまう。産屋の中にいたのは大鰐であった。本当の姿を見られた豊玉姫は海に帰って行く。生まれた子はウガヤフキアエズノミコト。
17. 神武東征(じんむとうせい) 熊野之難戦(くまののなんせん)   ウガヤフキアエズノミコトの子、のちの神武天皇が東国を平定する。以下の3幕に分けて上演。
17−1   孔舎衙坂(くさかざか)           カムヤマトイワレビコ(後の神武天皇)は、兄五瀬命とともに東征に向かう。途中長髄彦により傷を負った五瀬命は死んでしまう。イワレビコも剣を奪われてしまう。
17−2   高倉下(たかくらじ)
(布都御魂出現)(ふつのみたましゅつげん)
          イワレビコは高倉下を訪ねる。イワレビコの夢枕に天つ神が現れ、建御雷之男神の神剣・布都御魂を授かる。
17−3   長髄彦征伐(ながすねひこせいばつ)           高倉下とともに長髄彦を倒したイワレビコは初代神武天皇となる。
18. 三輪神杉(みわのかみすぎ)           活玉依姫(いくたまよりびめ)のもとに毎晩通ってくる若者がいた。どこの誰かをつきとめようとある夜若者に糸をつけて帰した。それを辿っていくとその若者は三輪山の大物主神であった。大物主は姫を連れて行ってしまう。この後大物主の従者(もどき)による両面踊りがある。
19. 稲城之城(いなぎのしろ) 狭穂稲城、狭穂之雨(さほいなぎ さほのあめ)   垂仁天皇の后、狭穂姫の兄、狭穂彦は天皇の座を得ようと狭穂姫に天皇の暗殺を命じた。狭穂姫は天皇を殺そうとするが、どうしてもできずすべてを打ち明ける。天皇は狭穂姫を離別し、狭穂彦の城を攻め反乱を治める。
20. 大碓勘当(おおうすかんどう) 日代之宮(ひよのみや)   景行天皇は、長男大碓命に熊襲征伐を命じるが大碓命が断ったので勘当し、弟ヤマトヲグナに命じる。
21. 熊襲征討(くまそせいとう)           女装して熊襲の館に入ったヲグナは、熊襲建くまそたけるを征伐する。
22. 焼津之野火(やいづののび)           東方の征伐を命じられたヤマトタケルは焼津で野火責めに遭うが、叔母倭姫から授かった剣で草を薙ぎ払い、火打石で向かい火を放ち難を逃れる。
23. 酒折連歌(ささおりれんが)           東国を平定したヤマトタケルは、山道で炭焼きの老人と会い、連歌を交わす。
24. 伊吹山(いぶきやま)           ヤマトタケルは恋人宮津姫の元に戻ってきたが、すぐに伊吹山の荒ぶる神を退治に向かった。その際剣を宮津姫の元に置いていったヤマトタケルは荒ぶる神の妖気に当てられ病に倒れる。後を追ってきた宮津姫が抱き上げるが、ヤマトタケルは白鳥になって去ってしまう。
25. 八幡山(やわたやま)
(八幡山黒尉)(やわたやまこくじょう)
          神功皇后は、老臣建内宿禰を従え海の向こうの国を征伐に行く。いざ発とうとすると皇后は産気づく。が、帯を締めなおし征伐に向かう。(その後墨之江神(黒尉)が現れ航海の安全を祈願し舞う。)
26. 産屋(うぶや)           神功皇后のお産の場。
27. 稲荷山(いなりやま)           稲荷神は弓の名手、紀千箭きのちのりに、人心を惑わす鬼を退治するよう命じる。千箭は発弓の舞を舞う。
28. 悪鬼退治(あっきたいじ)         稲荷山の悪鬼が二匹で踊っているところへ、千箭が現れる。千箭は鬼を弓で撃ち、もう悪事をしないよう誓わせる。鬼の滑稽な仕草、かけあいが見所。
29. 神剣幽助(しんけんゆうじょ) 神剣貢、(しんけんみつぎ)
三條小鍛冶(さんじょうこかじ)
  一条天皇に守り刀を作ることを命じられた三条小鍛治宗近。宗近が祈ると稲荷大神が現れ、刀に魂を込め刀は完成する。
30. 美穂崎遊漁(みほがさきゆうぎょ)           大国主の子、事代主神ことしろぬしのかみが出雲美穂崎で釣りをする。塩椎神に波を鎮める祈祷をさせ、蛸や河童を釣る。
31. 敬神愛国(けいしんあいこく) 恵比寿・大黒によるおめでたい演目。恵比寿の舞・・・釣り竿で鯛を釣る舞。鈴隠しの舞・・・大黒と恵比寿の二人の従者による滑稽な舞。大黒の舞・・・小槌の舞。最後に小槌から小判を出して撒く。前項の「美穂崎遊漁」を元にして、事代主を恵比寿にして、大黒(大国主)を登場させたもの。
32. 熱田神剣(あつたしんけん)           ヤマトタケルの草薙の剣は尾張の国に奉られていたが、噂を聞いた悪僧が剣を盗もうとする。番人に見つかり立ち回りの末、悪僧は捕まってしまう。
33. 兄弟探湯(けいていたんとう)           建内宿禰の弟、甘美内宿禰が兄に逆心ありと帝に訴える。帝はその真偽を確かめるため探湯(くかたち)を行なうよう兄弟に命じた。まづ兄が熱湯に手を入れるが何の怪我もなく清廉潔白。次に弟が熱湯に手を入れると大怪我をし逆心が顕れてしまう。
34. 神明種蒔(しんめいたねまき) 神田種蒔(しんでんたねまき)   狐が畑を耕し種を蒔くと、もどきが来て種を食べてしまう。二人で餅を搗くがもどきは餅をつまみ食いする。もどきが狐の芸を見様見真似でやって失敗したり、二人の掛け合いが面白い。
35. 紅葉狩(もみじがり)           平維茂は戸隠山で美しい姫(更科姫)を見かける。姫に酒の相手をさせ姫の舞を見ているうちに眠ってしまった維茂は夢で戸隠の神に早く山を降りるよう云われる。目が覚めると姫は鬼女に変わっていた。維茂は鬼女を退治し引き上げる。
36. 土蜘蛛(つちぐも)            
37. 山神(さんじん) 山の神(やまのかみ)   神楽の奉納の一番最後に行う一人舞。

 <用語解説>
もどき…「日本の各種の芸能で、主役をからかったり動作をまねたりして、主に滑稽を演ずる役」(「広辞苑」第5版)。里神楽では従者としてもどきが出ることが多い。
たり …付け足しの意。「天之返矢」の主人公の死のように、暗い場面で終わる場合に、もどきなどによる滑稽な場面を付け足し、明るい終わり方にする。
さちがえ(幸替え)…「獲物を取る道具または獲物を互いに交換すること」(「広辞苑」第5版)
さち(幸) …「(一説に、朝鮮語のsal(矢)と同源。矢の霊力をサチといい、さらに矢の獲物、転じて幸福をもいうようになったとする)
(1)獲物を取る道具。古事記(上)「―を相易へて用ゐむ」
(2)漁や猟に獲物の多いこと。また、その獲物。「山の―海の―」 (3)さいわい。幸福。」(「広辞苑」第5版)
えもの(得物)…「得意の武器。自分に適した武器」(「広辞苑」第5版)
ゆうぎょ(遊漁)…「水産物を捕獲する行為のうち、営利目的や調査・研究のためではない、レクリエーションとして行う釣りや潮干狩のこと。」(「広辞苑」第5版)
くかたち(盟神探湯・探湯・誓湯)…「神明裁判の一。古代、裁判上、真偽正邪を裁くのに神に誓って手で熱湯を探らせたこと。正しい者はただれず、よこしまな者はただれるとする。」(「広辞苑」第5版)

 <参考文献>
『江戸東京の民俗芸能』1「神楽」 中村規著 (主婦の友社,1992)
「江戸の神楽を考える」 中村規著 (近代文芸社,1998)
『ふるさと東京』「民俗芸能」1 佐藤高著 (朝文社,1993)
「古事記を歩く」 佐藤高著 (光文社 知恵の森文庫,2000)
「古事記」新訂 (角川書店 角川ソフィア文庫,1977)
「古事記」 (角川書店 角川ソフィア文庫 ビギナーズ・クラッシックス,2002)

「広辞苑」第5版 (岩波書店) ネット版はこちら

 <ホームページ>
「古事記の世界」

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