欲しい物は、いつもひとつだけだった。
それは、けして手に入らないと思っていた。

ぼやいてみる。

右手を伸ばす。
彼の前髪に触れた。
そのまま下りて、唇に触れる。
あ、あったかい。
「ヒソカ」
「何?」
同時に声を発する。
あ、そっか。こんないきなり顔まさぐられて疑問感じないわけないもんね。
なんでもない、と。
手を引っ込めた。

手の届く範囲に、人がいる。
そんな、そんな生活が。
出来るなんて、思っていなかった。
だから。
目の前にいるのは、夢か幻だと思って。
手ごたえを確かめた、のでした。

引っ込めた手を、彼に引かれて前のめりに体が傾く。
「なんでもない、は、嘘だね」
ぎゅっと、抱きしめられた。
嘘じゃないよ。でも、嘘なのかもしれない。
触れて確かめたかったもの。あなたがそこにいること。
うーん、なんて返事しようかしら。

ココは正直に。

「うそじゃ、ないかもしれない」
「はは」
そう笑って、頭をぽんぽんと撫でられて。
身体が離れる。
離れる。
離れる。
のは、好きじゃない。
「待って」
「え何が?」
ヒソカがびっくりした風な声を出すから。
自分が何したのかわからなかった。
ヒソカの手を。
手首を、掴んでいた。何で手首?
まぁ、それはおいといて。
待って、ってちょっと違う気がする。
「じゃなくて、離さないで」
「…いいよ。おいで」
今度は、きちんと離さないでいられるように。
ソファとテーブルの間に二人して座る。
ヒソカがソファにもたれて。
私がヒソカにもたれて。
腰からヒソカの手がまわったので。
自分の手と、からめて。
「あったかい」
ヒソカの手、大きいよね。なんて思ったりして。
「冷房消す?」
耳より上の頭に、ヒソカのほっぺたの感触、かな?これは。
ぎゅっと、抱きしめられる。
あったかい、よ。
「冷房じゃないよ。除湿だよ」
「梅雨だもんね」
言われてみて、窓の外を見た。
ヒソカも見たっぽい。顔が動いた感覚が頭から伝わった。
ああ、真っ白。灰色の空。
憂鬱な気持ちになりかけたのは、これのせいなのかしら。
「そう、梅雨だもんね…」
耳を済ませると。
ヒソカの呼吸音と、あたしの呼吸音と。
雨の音。
さあさあ、さあさあ、ざざざ、ざざ…
「で、消す?」
布ずれの音がして、ヒソカがさっきみたいに頭にほっぺを押し付けて聞いてきた。
「いい。あったかいから」
大好き。大好き。
「そう、ありがとう」
伝わったのかな、なんておもったりして。

心も身体もほんのり温かくなったところで。
なんとなく、ぼやいてみる。
「ヒソカ」
「んー?」
語尾が上がり気味の応答。
「あたしね」
「んー」
語尾が下がり気味の応答。
「1人でいるのは好きだけどね」
あ。
こんな、ぼやき。
ききたくないかもしれない。
今になって気付く。ああ、だめだだめた。
ヒソカがしんどいきぶんになっちゃう。
「ん。けど、なに?」
声を出せない。
なに?おしえて、と。言ってもらって。
ぎゅってしてもらって。
ぽろり。
ありがと。
「独りぼっちが、だいっきらいなの」
ぽろり。
顔が梅雨。
止まらない、雨。あめ。涙。

「そう」
さあさあ、さあさあ、ざざざ、ざざ…
すん、と鼻が鳴く。
雨はまだまだ止まらない。
「よかった」
声がして。
ぽん、と。
頭に手の感触。
なで、なで。してもらう。
「もう独りぼっちじゃないよ」
ぼくがいるからね、と。
やさしい声。
に。
安心、して。
「うぇえ…」
声を出しながら泣く。泣く。
雨が止まらない、家の外も、中も。
、何で泣く??」
顔をぬぐってもぬぐっても。
止まらない。止まらない。

「嬉しくて安心したのぉ〜」
母を求める子供のように。
振り向いて、ヒソカの首に抱きつく。
うぇええ、うぇええん、ざざざ、ざあざあ、さあさあ…
よしよし、と。
背中をさすってもらったり。頭を撫でてもらったり。
私は、何歳なんだろう。
心の冷静な一部が、そんな風にぼやいた。

落ち着いてきて、腕の中。
ヒソカの胸に耳をくっつけて。
とくん、とくん、心拍音に、安心。
「あ、でも1人でいれなくなるね」
くすり、涙は止まらないけれど。
小さな笑いが目を覚ます。
「うそだよ」
「ん?」
顔が近づく感じがした。
首に腕を絡ませて。
耳の下らへんの頚動脈らへんに。
ことんと頭をもたれさせて。
「ヒトリはやっぱり嫌いだもん」
ふ、と。笑うおと。
「だとおもった」

ざあざあ、さあさあ。
さらさら、ぱらら。
ぽた、ぽた。

ぽたん。


あめは、もう降っていない。

end...

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アトガキ

受験にストレスです。もう、勉強とかやるきになったときでいい!

あたしは文を書きたい!!

てなわけで、復活デス。

これからもよろしくお願いします…

0611 doppelt

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