出会いの話。

「松下先輩、もう無理ですっ」
「我慢しなさい!あ、ほら、トイレ!」
今日、私は先輩二名と女の戦場ことバーゲンに来ている。
松下先輩は、高校時代からの縁で現上司。
坂井先輩は、大学時代からの縁で現上司。
そんな私は、現在OLなりたて。
初給料で両親に旅行をプレゼントし、今回二ヶ月目の給料。
そう、夏・春物バーゲン!に、ちょっと使うのを楽しみにしていたのでした。
で、その最中。猛烈にトイレに行きたくなったわけで。 それを発見してくれたのは、坂井先輩でした。 「戦艦の轍?変わった名前の食べ物やさんね」
トイレの前で、先輩が立っている。 「うう。坂井先輩、トイレそこ!どいてください」
「ああ、ごめんね?!」
ばたん。

ふう。 「いや、すいません」
と、言いながら出たものの。
出たはずなのに。
そこは店内?みたいな装い。
いらっしゃいませ、と2、3人の店員がパラパラ言う。
「あやや。中はいっちゃったな」
とりあえず、出口を探す。
狭いテーブルの隙間。人が一人通れるか通れないか、そんな階段を登る。
でも、出口がない気がするのは何故?
また、狭いテーブルと客の間を歩いていく。
とん、と。
お客さんの引いた肘に足を小突かれて。
変わった人の背中に手を置いてしまった。
「…?」
「あっ、すいません!」
パッと手を放す。
「…君、何か食べないの?」
いや、馴れ馴れしいなぁとか、ちょっと思ったけど。
顔を見上げると、うん。
「た、食べ、ます」
超美形!(なんかピエロみたいだけど)
「うん、じゃあ」
彼は階段の下のカウンターに身体をひねり向けて。
「注文言うよ『サーモンのカスピ海風サラダ』あと『韮ニンニクの卵綴じ』と『お好み焼き風チヂミ』」
はいよーと、マスターっぽい大きなヒゲ眼鏡なオジサマが大声で返事をする。
ていうか、私にメニュー見せてくれなかったよ。
ていうか、ニンニクはオンナノコにきついよ?
「ここ座りなよ」
「え、でもあの」
テーブル、ゴッサ汚いで?
「ここセルフだから。片付けは自分でしなきゃなんだよね」
そう言って、私の席であろうところの机の上を片付け始める。
「あ、できます!ありがとう」
そう言って、机を片付ける。
「…ねぇ」
「よし!布巾かりてこよ。え?呼びました?」
店員さんから布巾を受け取り、ピエロっぽい人のテーブルから自分の周りのテーブルまで拭く。
「ありがとう」
店員さんに布巾を返すと、やんわり笑ってくれた。
ZARDの人を細くしたみたいなかんじ。
「君、名前は?」
「お待ちどうさまでーす。『サーモン』と『卵とじ』と『チヂミ』ご注文のお客様あー」
一瞬、むかついたような顔したよこのピエロさん。
「…」
左肘をテーブルについて、体はこっちを向けてるので、右手を上げる彼。
遠慮ない店員。きっと新人だ。
「はい、じゃあ彼女さん!サーモンでーす!!」
「かっ?!彼女?!」
受け取るけど、ちょっとびっくり。
こんな男前の彼女に見えるんだ。きゃは。
「じゃあ旦那さん!卵と焼きでーす」
次は旦那かい。
無言でお皿を受け取る彼。
割り箸を二個置いていく店員さん。あ、おしぼり今お持ちします!と去っていく。
言うなれば、お水も出てませんよ。
「にぎやかな、店員さんですね」
「本当にね」
と、小皿がない。大皿つつくのは、ちょっと。いや、相手が拒否りそう。
「あのぉ、小皿って」
横を向くと、卵とじを食べてた。
あ、ニンニクの匂いしない。これ、雑魚入ってるよ?
ああ、作る人が間違えてるんだなぁ。
「ん、必要?」
「はい、あ、いや、えっと」
わ、なんか恥ずかしいな。
「僕なら気にしないから、そのままドウゾ」
そう言って、お皿を近づけられる。
「ど、どうも」
サーモンだぁー!超スキ!超スキ!!
ぱく付いて、一瞬思い出す。
「あ、名前、でしたよね?」
こっち向いてチヂミ食べながら、頷く彼。
あ、かわいい。大の大人にこう思ったのは久々。
です。
外人さんチックだったからか何でか知らないけど。
英語言いしちゃった。
「ふぅん。
わ、名前よびすてっすか。
得した。今日いいことありすぎ。
ていうか、何か忘れてるような。
「さっきから外で待ってるのは、先輩かな?二人いるけど」
「あああ!!」
忘れてた。もう15分位いるよねここに。
「あ、すいません私、先輩に」
スプリングコートとカバンを抱えながら、振り返る。
「うん。行っておいで」
お皿、もう何も残ってないし。
「あの、お代は」
「僕のオゴリ。ほら、早く行かないと」
「ごちそうさまでした、えっと。ピエロさん」
一礼をして、階段を上ったフロアのまま、出口が。
さっきは、なかったのに。
振り向くと、ピエロさんが手を振ってくれた。
不思議な人。

「何してたのほんとに」
坂井先輩に肩をつかまれる。
「真紀なんてね、あと追ってトイレはいったのよ?」
なのにいないから!と涙目の松下先輩。
「ごめんなさい〜」
なんか、OL三人で肩組んでちょっと抱き合う。
そんな光景、ちょっと怖いかもしれないけど。
私は、幸せ。
でも、と坂井先輩が言うと、松下先輩も頷く。
「「何で店の出口から出てくるの!!」」
知らないよ!この店不思議なんだよ!!
と、思うだけにとどめて。
「すいません」
と、謝る事にした。

end... **************
アトガキ
夢で見たんですよ。
こんな、不思議な。
坂井・松下サンていうのは
ミラクルタイプから。
名前お借りしました。 17.5.4