彼女は『目』が怖いと言った。
目。
いつまでそこに、閉じこもっているつもりだい?
僕が聞いたら肩を震わせる彼女。
どうしよう。わたし、どうしたらいい?
そう、消え入りそうな声で、こぼす事しか出来ないこの小さな女の子は。
なんとびっくり、ボクより強い能力者だ。
そんな彼女をそっと抱き寄せて。
普段の僕を知っている人間が見たら失神しそうな光景だろうなと思いつつ。
頭を撫でながら、大丈夫だよ、と言う。
そうすると、初めて彼女は「ほう」と溜息をついて。
ゆっくり目をあけるのだ。
いつも、いつも。
「ヒソカの目はあったかいね」
「みんな、気持ち悪いって言うよ」
「嘘。私にはあったかいよ」
そんなことを言う彼女を、理解は出来ないけれど。
そうしようと思うことは出来ると思う。
僕に、こんな笑顔をくれるのは彼女だけ。
忌むことも、畏怖することも、呪うことも、怯えることもない。
純粋に、自分を求める瞳。
「私、人間が嫌いよ」
「どうして?」
「ああ、ヒソカは特別。ヒソカの目。あったかくて、大好き」
「・・・」
毎度毎度、嬉しい言葉をかけてくれる。
僕だって人間な訳だから、こういう温かい言葉は大好きだ。
でも、と言葉を濁す彼女。
「人間が、私を見る目が嫌いなの」
ぎゅうと、腕をの手の平が握る。
肩が震えている。どうしたんだろう、いつもは。
僕が抱きしめると、笑顔が戻るのに。
「ヒソカ」
「ん?」
呼ぶ声が、力弱いもので。
少し心配だと思った。
「ヒソカ」
「なんだい?」
ばっと、彼女が僕から離れる。
不意打ちで、あっさり彼女を離してしまった。
「いつだって、私に優しかった。あなたが大好き。大好きよ」
「待て、どうした?」
どうも、様子がおかしい。
目を瞑ったまま、話を始める。
「私、自分の言葉、自分の心。いつも、消してきた」
「うん」
「でも、ヒソカは、私の欲しいもの、望む物をいつも探してくれた。聞いてくれたわ」
「そう、よかった」
若干、遺書のような、遺言のような香りが漂う。
まずいな、彼女を死なせたらどうしよう。
「私、うれしかったの。感情が、戻ってきたみたいで。不快が、なくなる感覚が新鮮で」
「目を」
気付けば、彼女の顔を両手で包んでいて。
「目をあけて」
びっくりするような、剣幕で。
目をあけるよう乞うている自分。
彼女は目をあけて、僕を見た。
「目を、開けれるようになったのは。あなたのおかげよ」
やわらかく、微笑む。
目に色が、蘇る。
でも、僕はそれに納得できないでいた。
「さっきから、どうしてそんなに悲しい言葉を僕に聞かせる」
「お礼が言いたかったの。悲しく聞こえたのだとしたら、私の心が泣いているからよ」
そっと、彼女の頭を抱く。
ふわりと、僕が贈った香水の香りがする。
「泣かないで欲しい」
「泣いてないわ」
ないてる、声がするような気がする僕は、おかしいのだろうか。
「泣いてる」
「…そうね。でも、嬉しくて泣いてると思う」
自分のことなのに、他人の事を語るように話す。
彼女をこうしたのは、環境のせいでもあるが。
君が、悪いんだよ。
君が、優しすぎるから。
「僕も泣きそうだ」
いつまでも、そうだから。
「そうね。大好きよ、ヒソカ」
泣かないでとは言わない彼女は、僕の最愛の人。
人間の目が怖い。脆い人。
僕の目があたたかいと言う。変な女の子。
優しすぎて、自分を責めてしまう。かわいそうな女の子。
「ずっと、君のそばにいるよ」
「ありがとう。望んでくれるなら、私はずっとあなたのそばにいます」
望んで欲しいのは、僕のほうだよと言わなかったのは。
end...
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アトガキ
ヒソカも人間っぽくあってほしいなって。
そんなこと、失礼ですけど。
こんな、ヒソカがいてもいいかなって思いました。
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