どうしよう。
スカート。
母の日の、お買い物を終えて。
機嫌も宜しく、自転車をこいで帰路を急いでいました。
お母さん喜んでくれるかな。
今度行ったらあのセイロンティ買うぞ。
と。
「ばつん?」
奇妙な音がしたけれども、気にせず走行。
そして、数分後事件が発覚する。
自転車に乗りながら、自転車で道を行く。
この自転車、結構かわいいでしょ。
そんなことを心の中で自慢しながら。
マンションが見えるなと思ったとき。
ふと、声をかけられた。
「あれ??」
声がしたので、スピードを緩めてそっちを見る。
自転車を止める。
「あ、ヒソカ」
ヒソカだった。
いつもの営業用じゃなくて、プライベートな装いだった。
「何、買い物?」
今行ってきたんだけど、と買い物袋を持ち上げる。
ヒソカが買い物袋。はっ、いやいや。
「あ、違うの。今日母の日でしょ?」
「母の日?」
「え、知らないの?」
「いや…知ってるけど」
ちょっとの間、黙って。
あ、自転車しまいに行こうかと言われて。
降りて自転車を押しながらヒソカと歩く。
「ねぇ、その母の日の贈り物ってさ」
「うん?」
また、間。
なんなんだよう。言ってくれよもどかしいなぁ!
「もう渡しちゃった?」
ちょっと拍子抜け。なんだ、そんな事?
「ううん、まだだよ。今から渡しにいくところ」
いったん家に帰って、ヒソカに言ってから行こうと思ってたんだ。
そういうと、少しほっとしたように。
「じゃあ、ボクも行くよ」
「ええ?」
自転車置き場に到着。
驚きつつも3044番(30階の44号室だから)に自転車を置く。
ヒソカは結婚式のとき(地味婚なんです、ウチ)親類を一人も呼ばなかった。
よって、私は友達数名と母親のみ(誘わなかったのについてきた)で披露宴をしたわけだが。
母親が。
ヒソカを親のない人だと勘違いして。
私のことをお母さんだと思って!
などと。言ったからか?
まあ言わなくても、義理の母親なわけだし。
気を遣ってくれてるんだろうなぁ。
家に帰って、ヒソカの持っていた買い物袋の中身を冷蔵庫に収納して。
母に連絡を入れる。
ヒソカが車の鍵を持ってポケットに入れた。
どこやったっけとよく言うので、覚えとかなくてはとおもったりして。
でもいつも決まってポケットに入れてる。ワザトなの?
母が電話に出て2、3会話。
ヒソカを呼ぶ。
「晩御飯どうだ?って」
「あ、今日お刺身買っちゃった」
「あ、お母さん?お刺身…あ、聞こえてた?」
変わって、という手をされる。
受話器を渡す前に、かわるね、という。
「はい」
「ありがと」
いつもおもうけど。
お母さんと旦那の会話って不思議。
二人して、なんかかしこまったみたいな。
「ああ、ご無沙汰してます。ええ。」
ええ、って。ええ?!
ヒソカが?!
ちょっと意外だったので驚いちゃったりして。
「さっきね、ああ。でも、今日は」
彼の電話中の声を背景に、冷蔵庫をのぞく。
さっきそこにしまったのに、全く覚えてなかった私は何を買ったのだろうと。思って。
おさしみ。ブラックタイガー。
めかぶ。豆腐。その他モロモロ。
今日は、海鮮日和らしい。
「そうなんですよ。必要なものありますか」
とんとんとん、とペンを打ちつける音がして振り向く。
通話中に呼ぶとき、お互いこうしているからだ。
目が合う。
小声で『メモ』といっている。
ああはいはい、とあわててメモを持っていく。渡す。
ありがと、と小声。
うふふ、きちんとしててすてき。とちょっと喜ぶ。
ヒソカは何か書きはじめた。
私はホットミルクを作りに行った。
メモ。いつもは電話の横に置いているのだけれども。
母の日に買うものを書くため、机に持ってきていたのデス。(戻そうよ)
「じゃあ、これらを持ってから伺わせてもらいます」
はい、はい。がちゃん。
「ふう」
「お疲れ様。お母さんなんて?」
はい、とコップを渡す。
「ん?気を使わなくていいよ。ってさ」
ありがと。受け取る。
お刺身とかを袋に入れておいたので。
いつでもいけるよと、袋の入ったかばんを見せた。
「うん」
保冷剤入れた?と言われたので。
入れたよ、と言う。
コップを持ってない手をつかんで、かばんに手を入れさせた。
「冷たい」
「ね?」
入ってるでしょ
家を出て、駐車場。
ヒソカはちょっとレトロな国内車に乗っている。
私がかわいいよね、といったからだ。
「お母さん何かいるって言ってた?」
「ああ、洗剤としょう油」
「へ?」
なにその、え?パシリ??
「家に買い置きあったから、持ってきちゃったけど」
だめだった?と。
だめじゃないけど。
「気が利くねぇ」
ほんと関心関心。
そうしてシートベルトを締めてた私に、ヒソカの顔が近づく。
きゃあ。久々なキスだわ。
と思いきや。
「ねえ。、スカート」
へ?
と、スカートに目を落とす。
太もも、みえてますけど。
「ええ?なんで?!」
「…もしかして」
その格好で…。と、言葉を切るヒソカ。
嫌ああ恥ずかしすぎる!!
あ、きっとアレだ!!自転車の時の変な音だ!!
それからだと、15分位このカッコでウロウロ…
クラリ、とめまいを覚える。
「気づかなくてごめん」
何故か謝る旦那。
「いや、ありがと。よかった早めに気づけて」
そう言って、シートベルトの留め金をはずされて。
降りるよう促され、車を出ると。
ヒソカに横抱きされた。
「きゃあ」
「スカート、押さえてて」
と、来た道を返す。
「待って、かばん車の中」
「鍵なら、持ってるよ」
さすが。
今度は引っかからないようなスカートに履き替えて、やっと出発。
あ。
高速に乗った頃に思い出す。
「あたし、母の日ギフト持ってきたっけ?」
冷や汗。何しに行くんだっ!ご飯ごちになりに行くのか?!
「スカートで戻ったときに、気づいてないみたいだったから持ってきたよ」
ああ、ヒソカったら素敵。
うっとり。
「花は?」
ぎく。ま、まだ買っていないわ。
「うん。行く前に買おうと」
「うん、だろうと思った」
忘れてたんでしょ、と目が言ってる。そうですよ。
「ごめんね。先に言っとくべきなのに」
「いいよ、大体わかるから」
にこりと、フロントを見ながら笑う。
あ、この顔優しい。
実家に着き、インターホンを押す。
「ひ、ヒソカ君が」
「うん、さっき電話あったでしょ」
「そうなのか?」
インターホン越しにお父さん、混乱気味。
きっとヒソカ、緊張してるから。
こっそり、腕に手を回した。
ら、目が合った。笑う。
ほっと、一息ついてた。やっぱ緊張してるんだ。
家で、親と久々に会った。
晩御飯、ヒソカあんま食べないのかとおもったけど。
お父さんと打ち解けて、結構喋ってた。
「いっぱいどうだ?」
お父さん、車で着たのにビールを勧める。
「いや、車なんで」
と、きちんと断るヒソカ。
お母さんが、えらいわねと感心していた。
私も、飲酒しないし。(ヒソカに悪いし)
お母さんはまだすることがあるし。
お父さん、一人で飲酒。
母の日の贈り物を渡すと、お母さんは泣いてしまった。
帰り道。
車で窓から外を見ていた。現場発見。
「あ、この辺でスカート破れたんだ」
「結構、あるね」
家までの距離。
「うん、ホントに」
でも、スカート破れてなかったら贈り物忘れてたし。
ちょうどよかったって言ったら変だけど。
「気、遣わせちゃったね。おなかいっぱいになった?」
「うん。それに、楽しかったよ」
ヒソカ、家族でこういう団欒?とか。
あんま知らないような感じが、そのときした。
「…」
「んー?何?どうしたの」
ふと、運転するヒソカの顔に触れていた。
はっとして恥ずかしくなる。
「ご、ごめんね」
ぱっと腕を引っ込める。
「いやあ、なんか」
って、と言ったところで。
信号は赤。
車体が止まる。
「いっつも、触れてほしいときに触れてくれるね」
そう言って、こっちを向いた。
目が合った。
どきんとした。夫婦暦、まだ浅いからかな。
恋人気分。
「邪魔になってないなら、いいや」
「今日さ」
信号が変わったので、言葉が切れた。
車体が走り出す。
走る。
走る。
ヒソカ、喋り出さない。
もどかしくて、声が聞きたくて、気になって。
はしたないとは思いつつも、聞いてしまう。
「ねぇ、今日、何?」
「えっ?あ、ああ」
ちょっと一瞬戸惑ってた?
かわいいんだけども。
「一緒に寝ようか誘おうとしたんだけど」
見るな、というように。
左手で私の顔を窓側に押す。ゆるい力でだけど。
「タイミング逃してから、恥ずかしくなったんだよ」
あ、赤い。顔。
なんだ、友達は『あいつは危険』とか言ってたけど。
彼が作った人格に、惑わされて?っていうか。
うまい事表現できないけど…
ホントの彼を、誰も知らないのかも。
あ、私今ちょみっと知ったから、第一号??
うれしくなって、えへへぇと声が漏れる。
「うん、寝よう!」
手が、肩にぽとんと落ちた。
手が離れて、首から上が自由になった。
彼は、左手で顔を覆った。見るなということなのだろうか。
「…明日の朝、和食がいい」
「わかった」
話題を変えるとことか、なんかかわいいなぁ。
そんなことを思いながら、車は走る。
end...
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アトガキ
こんな旦那さん欲しい。
ていうか、ヒソカが旦那さんだったら。
ふふーん(鼻歌)
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