きっかけ

 ある年配の方から、「お前の行ってきたトレーニングについて、レポートにまとめたらどうや?みんなに広めたらどうや?」と一声がありました。
実は、私が大人になってから水泳を再開したのです。それが24歳のとき。そのときにお世話になったコーチに「自分は若いから、水泳の練習を工夫すれば日本のトップレベルにもなれますよ」と言われました。
 うまい口車に乗ったといえばそれまでですが、せっかく練習をしているのだから、少し泳ぐのが速くなればいいかなと思っていました。
 水泳を始めて4・5年がたったとき、100m自由形で中学生の水泳部の子に勝てるようになりました。県のトップレベルの子には勝てませんが、予選にのみ出場しているような子には勝てるようになりました。また、記録も飛躍的に伸びました。
 その私の記録の伸びかたに疑問を感じたのが、先に出てきたある年配の方なのです。何でそんなに記録が伸びたのだろうか。

わたしの内心は「こんな私がやってきた方法をレポートとかにまとめるとして、それは誰が見るのだろうか?」とずっと考えていました。というのも私がした行動は当たり前のことだと思っていたからです。悪く言えば、そのレポートを公開したとすれば、「本で金を儲けるのか?」と言われるのではないだろうか。またそう思われないか。と不安がありました。

 実は、水泳を必死で泳いでマスターズを上位(一応!) を狙っている人間の傍ら、ランニングのコーチをさせていただきました。ランニングの練習では、水泳トレーニングで覚えたものをそのままランニングの世界に残す、いや取り入れるようにしました。その結果、中学・高校生の記録が大きく更新したものが多かったのです。中には陸上で県大会も出られないと考えられてきた子も、何人かは出場することもできました。また、ちょっと運動能力が高い子が、私の下で練習をした結果、県の選抜に選ばれるようになった子もいます。また、60歳の方でもマラソンの記録がよかった。楽に走れるようになった。体の調子がよくなった。自己ベストが出たなど、いい報告が来るようにもなりました。

これらの結果は、自分たちができるだけ良いものを取り入れて、「実行⇒反省⇒計画⇒行動」の繰り返し行ってきたからだと思います。

ある時、16歳の高校生からこんな一言を言われました。
「人のため、世間の皆さんの健康ため、役に立つものであれば残せばいいのではないでしょうか。本当に人のために役立つものなら、お金なんて考えなくていいですよ。」

 確かに。年下である高校生からこんなことを言われる私は、非常に情けない人間なのかと自分自身を反省したものです。しかし、嬉しいことばでもありました。それは、高校生にもかかわらず、「お金」という欲望を捨てているからです。その思考ができるようになった子どもが、私の下から出たことが非常に嬉しいです。また、年下の人から「残して欲しい」と言われたのが私より確実に後に死ぬ人間ですから、そういう人たちのためにと思います。

「コーチの考えが本当にいいものなら、消滅するのは怖いと思いますよ」

日本には1億人の人間が住んでいます。そのうちの一人でも成長したり、健康になるのであれば私は光栄であります。多少、世間の常識とかけ離れているところもありますが、若年の私が経験したことですから、良い悪いは皆さんの判断に委ねます。