読み書きの困難
文字が読むためには、文字の形を判別する。文字を目で追い続けたり、視覚でとらえた文字を音に変換したり、文章を適度のまとまりで区切って読み、その意味を理解するといったさまざまなプロセスを経なくてはならない。同じように書く場合も、書こうとする文字の形や書き順を思い出す。決められたマス目や行に文字がおさまるように、線や点の配置、全体のバランスなどに配慮しつつ、たえず自分が書いた形を自分の頭の中へフィードバックし、次に書く線や点をどの位置に書くか配慮し、目と手を協応させながら、細部(トメ・ハネ・ハライ)に注意しながら書いていく。このような過程において、記憶、動作等の情報処理のどこか一部に困難があると考えられる。具体的には下記のような要因が考えられるが、複雑である。
(1)背景・要因
@視知覚認知が弱い
・漢字・仮名の形の似た文字への読み違い、書き間違い
・細部の形を間違えたり、実際にはない字を書く
・この場合、美術・技術・図形問題も苦手
・空間の位置関係がとらえられないので、鏡文字を書くこともある
・罫線のない紙に書字する場合、まっすぐ書けず曲がってしまう、文字が重なったり、用紙の片隅に偏ってしまったりして、きれいに書けない
・地図が読めない
 
A単語についてどの音がどの順で並んでいるか(音韻認識)に問題
・仮名ばかり続く部分を読むと、前後の音を間違える、音をとばす、ない音を入れる、区切りがわからないでたどたどしい読みかたになる
・特殊音節表記のルールが分からず、拗音・長音・促音で読み間違えたり。書字でも同じ・日常生活においては、長い単語が覚えられない、単語の一部の音を間違える、話しの聞き間違えがある。
・言葉遊び(しりとりや逆さ言葉)は苦手。
 
B記憶
・聴覚性記憶(ことばを聞いて覚える)が弱い場合
文字と読みとを結びつけて覚えられない。仮名の場合は、文字と音が規則的に結びついているので覚えやすいが、漢字の音読みと訓よみの混乱し覚えることに困難さが見られる
・視覚性記憶(目で見た形や絵などを覚える)が弱い場合
文字の形が覚えられない。形に似ている文字との読み間違え、書き間違え。その場では視写できるが、後に思い出せない。板書を写すのにたくさん覚えられないので時間がかかる不正確となる(ワーキングメモリー)
 
CADHDや協調運動に問題がある場合
・字が乱雑。「とめ」「はらい」「はね」といった細部を正確に書けない。つまり細部に注意が届かない。力の入れ具合をコントロールできず、行きすぎてしまったり、すべてハネたり、線が重なったり、曲げる位置がずれたり、交差すべき線が交差しない。マス目に書かせても一部はみ出す。丸みを帯びた字を書く子もいた。□をほとんど楕円みたいな形に書く子もいた。
 
D注意
・ADHDでは、文末や助詞の部分の読みとばし、似た単語の読み誤り。読み飛ばしの場合は、眼球運動など「視機能」の問題もある(専門家にみてもらうしかない)
・書字では不注意な書き誤りが多い。指摘しても気にしてない子が多かった。
・テストでは問題をよく読まないですぐ答えをかく、問題をとばす、解答欄を間違える、整理整頓ができない、忘れ物が多い。
 
E言語理解
言語発達がゆっくりな場合、文字の習得が遅れる。知っていることばがすくない。仮名の羅列から単語を拾うのが難しく、まとまり読みや、たどたどしい読みになる。学習全般にわたって困難さが見られる
 
FPDD
・文字は早くから覚えているにもかかわらず、筆順や字の形のこだわりがあり修正が難しい
・他者の心情の推測がにがてや場面理解(空気が読めない)場合は、音読はできるが内容が理解できないことがある。(言語理解が発達していない場合もある)。作文も苦手、表現力、論理力あ弱く、短文は書けても長い作文は書けない。また、自分気持ちを表現することが苦手。会話がかみ合わず、他者と上手く遊べない。
・字義通りにしか受け取れないために、比喩やたとえ、慣用句、抽象的言葉が理解できな い
・意味よりも視覚的な処理が強い子が多い傾向にある。
 
(2)支援法(一般的なもので学校でできるもの)
・読み書きに障害がある場合は、読めないから読む練習、書けないから書く練習といった方法も必要だがそれだけでは効果はあがらない。例えば、空間認知が弱い子の場合、その弱い部分を引き上げるか、漢字の形を、言葉を添えて指導していくなど強い部分、を使って支援していく(バイパス法)かという方法が考えられる。
 
@視知覚が弱い場合
・形の方向(左右)、同じ形の弁別、線結びなど、図形や線分で練習する
・空間関係が苦手な場合は立方体積み木パズル等。図と地の困難な場合は「漢字の宝島」 (太郎二郎社)のようなパズル等。
・視覚的なゲームやパズルは、形の方向性、形に対する感覚や弁別を育て、図と地お見分 ける練習に なる。オセロ、パズル(間違えさがしやジグゾーパズルは地と図)、迷路
 マジックブロックは全体を部分に分解する力
・文字も似ている、似ていないの弁別練習
・仮名、漢字も形が簡単なものから複雑なものへ
・形の弁別が出来たら書字の練習(順番は上と同じ)
・マス目のある用紙に書く。必要に応じて、篇や旁のところに薄く点線の補助線を入れて おく
*形が取りにくい(空間認知)場合は、文字として練習するよりも点図形や線図形を位置関係を確認しながら写す作業、パズル間違え探し等を練習させ、形を取りやすくして、文字を覚えやすくする。
・パソコンソフトの使用
「ひらがな・漢字書字支援ソフト」(あいり出版)
「漢字学習支援ソフト」(北大路出版)
 
A音韻認識が弱い
・軽度の場合は、しりとり、逆さことばなどのことば遊びや、ひらがなカルタ、漢字カルタを用いる
・分かち書きの教材を用意
・文章を単語や文節で区切った教材を用意(一行ごとにマーカーで塗る)
・文末や助詞をマーカーで塗る
・読むところをわかりやすく提示(マークをつける、その行だけみせる工夫)
 
B記憶が弱い
聴覚性の記憶が弱い場合は、数唱、複数の単語を覚える(スリーヒントクイズ)。視覚性の記憶が弱い場合もカードを提示して覚える、また絵カードによる神経衰弱遊び等、直接的な支援も考えられる。記憶を強くすることが難しい場合は、次のようにバイパス法を用いる。
視覚性記憶が弱い場合は、聴覚性記憶で補う(聴覚法漢字を、たて、かぎ、よこ、よこ)と唱えてながら、さらに、空書きさせ手の運動記憶でおぎなう。漢字をパーツに分け語呂合わせで(聴覚的な記憶でおぎなう)覚える。例えば、「ごんべんと三本川で、訓」)
教材例
「漢字九九カード」(学研)「唱えて書く漢字練習ワーク」(偕成社)
その逆は、部首を覚えさせ、漢字を組み立てる。部品を使った漢字の足し算・引き算。つまり、基本的な形の漢字や部首を覚え、それを組み合わせて覚える。場面を提示し当てはまる漢字を当てる(湖、池、海はさんずいで水に関係している、土地の地は土へん)。漢字の成り立ちから覚える等。(同時処理が強いと仮定)
教材例
「漢字カード」(かもがわ出版)、「漢字トランプ」(太郎二郎社)「部首パズル」(奥野カルタ、太郎二郎社)またワークブックとして「漢字が楽しく覚えられる本」「漢字が楽しく覚えられるワーク」(太郎二郎社)
 
C目と手の協応運動をさせる(別紙参照)目で見ながら動きをコントロールする
・生活の場面で様々な作業をさせる。
 
D注意の問題
・Aと同じような対応、図と地の問題があるかも、読むべき所を分かるやすくする。一行だけ見えるスリット、定規をあてる 指さし(眼球の動きの問題が推測される場合は専門家に相談)
・全体的な言語の力を身につけさせると、思いこみで読んでしまうことも減る