HT07タービンのコンプレッサーホイールについて

最近、数件の問い合わせがあったもので。


●ここのところ、何人かの方からメールをいただいたのですが、コンプレッサー側をバラして比較した

ところ、スズキスポーツのHT06と流用でよく使用されるHT07を比較するとスズスポHT06のほうが

コンプレッサーホイールの径が大きいので、かえってスズスポHT06のほうがパワーが出るのではないか?

と言うものです。

しかし、現実には様々なショップさんのデータでもHT06よりもHT07改のほうがパワーが出ている(出やすい?)

のは確かなようなので、こうした寸法の違いが設計上どういったものなのかに興味のあるところです。

 

もちろん、この件については私も少し前から独自に調べてはいるのですが、ご存知のようにコンプレッサー

の風量というのはエグゾースト側同様、ハウジングA/Rやトリムサイズが大きく影響しており、一概に

ホイールのサイズだけでどのような違いが出るのかというのは現時点では答えが出ておりません。

また、HT07と一言に言っても、ワゴンRプラス(ワイド)純正のもの、各ショップやリビルトタービン

メーカーオリジナルのHT07「改」、さらにはスズキスポーツのHT07と多種多様なので、1つや2つの

07タービンを見てもそれがすべてにあてはまるとも考えられないからです。

とりあえず、私の手持ちのHT07タービン(スペシャルハイフローではなく、ごく標準的なラージコンプレッサー

仕様のもの)を分解してハウジングとホイールの関係について寸法を当たってみました。

 

ちなみに、コンプレッサーホイールの外径寸法だけで比較しますと、スズキスポーツのHT06(おそらくスズキ

スポーツのHT07も同じと思われる)がφ51mm、通常のHT07がφ46mm、スズキスポーツのRHB31FWがφ40mm

となっています。 ちなみに純正タービンはφ37mmです。


●コンプレッサーホイールとハウジングのクリアランス

タービンの効率についてある程度知識をお持ちの方ならよく知っていると思いますが、コンプレッサー

側の効率を高める要素として、このコンプレッサーホイールとハウジングのクリアランスを限りなく狭く

することが重要となります。

IHIのタービンの中にはインデュース内径部にコンプレッサーホイールの外径よりもわざと径の小さい樹脂

スリーブをつけ、コンプレッサーホイールの回転によってそれを削ることでクリアランスを限りなくゼロに

しようとしているものもあるくらいです。

さて、HT07タービンの場合ですが、実際にいろいろ調べたところ、このクリアランスが維持されているのは

インデュース部から引き込まれたR部分のみまでで、その奥の外周側の部分は実測上1mm〜1.3mmほど

クリアランスが開いていました。

これだけクリアランスが開いていると、とくに全開時にはほとんど効率的には影響の出にくい部分と言えます

し、やはり個人的には同じタービンホイールの羽根形状の場合はインデュース口径およびハウジング容量

の違いのほうが絶対吸気量が稼げるので、少なくともパワー的にはやはり入り口径の大きいほうが有利では

ないかと考えています。

↑HT07タービンのコンプレッサーホイールとハウジングのクリアランスの関係。

青い線がハウジング内壁と考えてください。

図で言うとクリアランスが保たれている(約0.3mm程度)のはR部のみまでで、それ以降、とくに42mm径

より外周部はハウジングとのクリアランスが大きいので、効率に与える影響は内径ほど大きいものではない

のではと思います。

また、もし単純に同じ回転数でのホイールの風量に若干の違いがあったとしても、それはそのぶん回転で補え

ばいいだけの話と言えます。

とくにHT07は本来1000ccクラス用のタービンですので、これを660ccのエンジンに使用するということは

(カムのスペックなどエンジン本体のチューニングの違いにもよりますが)同じブースト圧、同じエンジン

回転数であればそのぶん、タービンシャフトの回転数は下がることになります。

ですので逆にいうと、660ccに装着した場合、よりブーストをかけてやる余裕がタービンにはあるということ

になります。

この点が、私がHT07はよりハイブーストで楽しんだほうが面白いと言っている理由でもあります。

 

●コンプレッサーハウジングサイズ

実際のところ、やはりHT06とHT07の一番の差はこれに尽きると思います。

精確な数値はわかりませんが、HT06とHT07ではこのハウジング容積のサイズの違いが、特にハイブースト時

に風量の余裕となって現れます。

 

なお、この件について(株)スズキスポーツさんにもメールにて問い合わせてみました。

それに対して、以下のような返答がきました。(概要)

>HT06とHT07のコンプレッサーサイズについてですが、今井様のご指摘の通り外径はHT06の方が大きいです。

>ただし、入口側と出口側の径の比を比較すると、HT07の方が大きい設定となっています。

>この為HT07の方が高風量設定となっています。

>このようにサイズの大小だけでなく、ハウジングやブレードの組み合わせが大事で他の要素も絡んでターボ

>エンジンの出力特性を左右します。

当然と言えば当然なのですが、結果としてはやはりHT07のほうが風量は大きいとのことです。


●まとめ

個人的な主観になりますが、以下のようになると思っています。

スズスポHT06はコンプレッサーホイールの径を限界まで大きくし、それでいてHT07よりも1サイズ小さい

コンプレッサーハウジングを使用していることから、ボルトオンとして大きめのサイズながらもできる限り

低中速域での効率を落とさないように工夫したものと思います。

要するに、可能な限りタービンシャフトの回転数の低い領域から効率良くブーストを立ち上げたいという

設計思想があるものと思います。

 

逆に、HT07のほうは本来の高風量タービンとしてコンプレッサー内部容量を大きめにとっているために

そのままではHT06よりもレスポンスの低下を招きやすいこともあり、コンプレッサーホイールの慣性マス

を減らすためにもやや径を落としているのではないかと思います。

ただそれでも、とくに660ccのエンジンにつけた場合などは、コンプレッサーハウジングの容量の関係から

タービンシャフトの回転数がある程度以上に上がるまで(=風量が発生するまで)はややHT06に負ける

部分があるものと思います。

私がはじめてHT07をつけたときに感じたレスポンスの若干の低下は、ホイールサイズによるものでなく

こうしたことが原因であったものではないかと推測しております。

喩えで言いますと、よく純正よりかなり大型インタークーラーをつけると一瞬ですが充填に時間がかかる

ことからレスポンスが低下することがりますが、これと同じ理屈です。

このへんがもともと1000ccクラス用のコンプレッサーであることのあらわれではないかと思います。

ただ、タービンシャフトの回転数が上がってしまえば、口径が大きく内部流路に余裕のあるHT07のほうが

有利になるのは明らかで、これは現実に乗っていてもトルク感などからそう感じます。

 

とはいえ現実にはスズスポHT06はそのホイール径による慣性マスから、また、 HT07はコンプレッサー

サイズが大きいことから、それぞれ低中速域でのレスポンスをロスしている部分がありますので、結果と

して似たりよったりの性格になってしまっているのはなんとも皮肉な感じがします。

 

ちなみに、現在私がつけているスペシャルHT07はブーストの立ち上がり回転数が300rpmほど今までの

HT07よりも高めになっていることから、コンプレッサーホイールサイズも通常のHT07よりも大きいのでは

ないかと推測しております。

 

これはかなり大雑把かつ個人的な意見ですが、たとえばブーストを1.3k以下で使用するのであればHT06の

ほうがオールマイティーに使え、1.3k以上で使用するのであればHT07のほうが全開時のパワー感は上回る

という感じです。 (※すべて排気側A/Rが同じ場合の比較です。 HT07の多くは排気側A/Rが9のことが

多いので、その場合はスズスポHT06よりも低速から立ち上がります)

 

ただ、これはあくまでも全開時の風量という側面のみですので、たとえば実際に走るステージや目指すべき

目的で重視する領域は変わってくると思いますし、また組み合わせるエンジン仕様についてはまたいろいろ

検討していただく必要があるのは言うまでもありません。

こういうのは「どれが一番か」というのは十人十色なので、結局、各自の目的や仕様によって最適なタービン

を選択していただくしかないと思います。

 

ただ、HT07にしてもHT06にしても所詮はボルトオンでつけられるタービンのレベルの比較ですので、実際の

差はたいして議論するほどのものではないのではないかと思います。 ある意味、燃調等のセッティングの違い

で埋まってしまう程度のものでしょう。

本当に圧倒的なパワーが欲しい場合はエンジン内部をキッチリ仕上げたうえで、もっと大きいサイズのタービンを

選択する必要があります。


えんいー! ヽ(´ー`)ノ~~~