エアクリーナーについて
アフター品のエアフィルターについて
●マフラー等と同様、エアクリーナーも社外品で様々な種類が売られています。
純正互換がいいのか、それともむき出しタイプがいいのか、あるいはスポンジタイプか
ルーバー(ジャバラ折り)タイプが良いのかと選択に迷うことも多いと思います。
もちろん、市場にすべてのタイプがあることからもわかるように、それぞれ一長一短がある
わけで、要はユーザー側が何を重視するかによって決まってきます。
ただ、ここでは特定の製品に片寄った書き方をすると変なところからクレームのメールが
来るのは嫌なので、あくまでも私個人の考えとして書きます。
●その前にまずエアクリーナーの基本についてです。
基本的なこととして「フィルターによる吸気抵抗は少ないほどいい」と言うことができます。
たまに「吸気抵抗が少なすぎるとかえって低速トルクが落ちる」などと書かれている文面も
見ますが、これは多くが吸気抵抗が減って空気の流量が増えた分、空燃比を修正せずに結果と
して空燃比が薄くなったことに起因するものですので、エアクリーナーが悪いわけではありま
せん。 ECUを書き換えるなどで空燃比を補正すれば以前よりトルクは上がるはずです。
(なお、これは主にNAエンジンの話になりますが、たとえばメーカーがサクションパイプ部で
トルク特性のチューニングをしている場合や、レゾネーターボックスをインテークチャンバー
として利用している場合、むき出しタイプのエアクリーナーをつけるためにそれらを取っぱらっ
ていたずらに太く短いサクションパイプに変えてしまうなどすると慣性過給効果や脈動効果が
減少し、実用域でのトルク性能が低下することがありますが、これは今回のテーマであるエア
クリーナー本体とはまた別の話ですので今回はそれについては話題にしません)
とにかく、エンジンにとって空気がエアクリーナー(フィルター材)を通過することは必ず抵抗
(圧力損失)になり、それは必ずトルク(もちろん結果として馬力も)を低下させることに
繋がりますので、フィルターによる抵抗は少ないに越したことはないのです。
大雑把な計算になりますが、たとえばK6Aをはじめ660ccのターボエンジンがどのくらいの空気
を吸っているか考えてみます。
前提として、シリンダーの容積効率を100%とし、エンジン回転数を7500rpmとします。
4サイクルエンジンは2回転に1回吸気しますので、1分間に2475リッターの空気を吸います。
しかし前提はターボです。 ターボの場合、たとえばブースト圧が1.2kg/cm^2の場合、大気圧
を含めた絶対圧では2.2倍となりますので、そうすると1分間に5445リッターもの空気を吸って
いることになります。 1秒間で約90リッターです。
(注意:もちろん同じブースト1.2kでも、ノーマルタービンの1.2kとビッグタービンの1.2k
では吸気量がまるで違いますので、上記数値はあくまでも効率を100%とした場合の値です)
これをたとえば私のジムニーで考えますと、レッドゾーンまで回したときが8500rpmで、
ブーストを仮に1.5kg/cm^2としますと、上記計算では毎分7012リッター、1秒間では117
リッターとなるわけです。
この数値は一般的な2000ccのNAエンジンの全開時に匹敵する吸気量ということになります。
「たかが軽自動車」と言っても、それなりに過給をかけると660ccという排気量からは想像も
つかないほどの大量の空気を吸気をしていることになるのです。
ですので、とくに大幅にブーストアップをしていたり、タービン交換をしている場合は「軽だ
からエアクリーナーは小さくても充分」とは考えずに、むしろワンサイズ大きめの余裕をもった
サイズのエアクリーナーを選ぶべきだと私は考えます。
そういう意味では、エアクリーナーが大きすぎて害になることはまずありませんので、できる
だけ大きなサイズ(表面積の大きい)のクリーナー(フィルター)のほうが有利です。
ただし前述しましたように、吸気抵抗が小さくなるほど空燃比の補正が重要になってきます。
●具体的な選択
様々なエアクリーナーのタイプがありますが、それぞれの長所、短所を書いてみたいと思います。
まずは形態から。
●純正ケース使用の互換タイプ(エレメントタイプ)
これがもっとも手軽で、吸気音も気にならず、サクション系も変更しないことからトルク特性
にも大きな変化を与えずに全域で「ノーマル+α」という感じになると思います。
水による害や吸気温度についても純正経路を使用しますのでもっとも安全と言えます。
また、吸気抵抗も極端には少なくなりませんので、空燃比の補正も殆どの場合必要ありません。
ただ、このことは逆に言うと体感的な変化はあまり望めないことを意味します。
仮にエアクリーナーだけ替えたところで2馬力や3馬力上がったとしてもその程度ではまず体感
できるようなレベルではないと思いますので。
●むき出しタイプ
いわゆるキノコ型と呼ばれるものですが、これは製品による性能差が激しいです。
また、アダプターパイプ(サクションパイプ)の長さや形状、径などによってトルク特性が
大きく変化するので、そのへんも性能差を生む要因となりますのでフィルター本体ともども
選択が難しいところです。
むき出しタイプは一見、効率が良さそうに見えるものですが、中には純正フィルターよりも
実質的な吸気面積が減ってしまうようなお粗末なものもあるので注意が必要で、もしこの
ようなお粗末なフィルターだと、純正よりも低速トルクも最高出力もダウンしてしまうという
最悪のケースもあります。
それとはまったく逆に、製品によっては極端に吸気抵抗が少なくなるものもありますので、
その場合は程度にもよりますが空燃比の補正をする必要が出てきます。
また、よく言われることですが、むき出しタイプはエンジンルームの熱気を吸ってしまって
吸気温度が上がり、酸素密度が低下してかえってトルクダウンしてしまうこともありますので
その場合は遮熱板をつけるとか、クールエアを導くホースをつけるなど、ユーザー側で工夫が
必要になることがあります。
また、むき出しタイプはボックスによる消音効果がなくなるため、吸気音は大きくなります。
次にフィルター材(濾過材)による違いについてです。
●スポンジ(ウレタンフォーム)タイプ
誤解を恐れずに言ってしまうとスポンジタイプは意外と抵抗が大きいです。もちろん表面積
を稼ぐ等で純正よりは低抵抗になっている製品が多いですが、一般にスポンジは厚みがあり
ますのでその厚さを通過するうちに空気の流速が落ちてしまうこと、何よりスポンジそのもの
が柔らかい(剛性が低い)ため、吸入時の大きな負圧でスポンジ自体が圧縮され潰れることで
目が詰まり、このことがさらに吸気抵抗を増やしてしまうという厄介な現象がおきます。
つまり、大きなパワーを必要とするような、大量の空気を吸入する状況になるほど潰れやすく
変型が起きて抵抗が増してしまう悪循環のような傾向があるということです。
(よく簡易なフローテストなどでフィルターの抵抗を比較をすることがありますが、実際の
エンジンが最大出力時に吸気するようなもっと強い吸引圧をかけないと本当の比較はできない
と私は考えています)ですので、スポンジタイプのフィルターの場合このへんの対策がしっかり
考慮され設計、製作されている確かな製品を選ぶ必要があります。
●不織布のルーバータイプ
個人的にはこのタイプのほうがスポンジタイプよりも吸気抵抗と濾過のバランスが良いのでは
ないかと考えています。
まず、一般にフィルター材が薄いため、上記スポンジタイプよりも空気の流速が落ちにくいと
いう利点があり、また、ルーバー(ジャバラ折り)とすることで表面積を稼ぎ、吸入負圧
に対する強度も確保しやすいというのがあります。 金属メッシュなどで補強してあるタイプ
ならなお良いでしょう。
ただ、あまりに表面積を増やすことにこだわりすぎて、ルーバーの折り間隔が密になり過ぎて
しまって、かえって抵抗を増やしてしまっているような製品も一部に見受けられます。
目安としては、使用後のフィルターの汚れ具合で判断することができます。 ルーバーの「山」
と「谷」の部分が均等に汚れていれば、まんべんなく表面積を有効に使っていると言えますが、
ルーバーの山だけが汚れて、谷の部分があまり汚れてない場合は、谷の部分では有効に空気を
吸えていないと言うことができます。この場合は折りピッチが密すぎるのが原因でしょう。
ルーバーの「折りピッチ」は狭からず広からずが良いようです。
※この他にフィルター材にステンレスメッシュを採用している製品もありますが、ステンメッシュ
だけでは目が粗すぎてフィルターとしての濾過性能が満足ではないため、短時間のレースならまだ
しもストリートでの長期使用には適していないため、ここではあえて除外させていただきました。
→ステンレスメッシュフィルター類についてはこちらのページで触れています。
なお、スポンジタイプ、不織布タイプともに何も染み込ませていない「乾式」とオイルを
染み込ませた「ビスカス式」があります。(よくビスカス式を「湿式」と書いている方が
いますがこれは正確には間違いです)
<参考> →湿式エアフィルターについてはこのページの最後で触れています。
基本的には低抵抗性能としては乾式のほうが優れています。 逆にビスカス式のほうは
防塵性能および耐水性が優れています。
とくに乾式のむき出しタイプは場所によっては雨の時などに水を吸ってしまい極端に吸気
抵抗が増えてしまうことがありますので注意が必要です。

↑むき出しスポンジタイプの代表格でもあるHKSのパワーフロー。(古い写真ですみません)
初期のものは緑色の植毛を吸込んでしまう等のトラブルもありましたが、現在はそういう不都合
はありません。 フィルターは乾式とビスカス式の2種類があるようです。
パワーフローには200φと150φがありますが、私は軽自動車でもターボモデルなら、まして
ブーストアップやタービン交換をしているなら200φでもオーバーサイズではないと思います。

↑私が現在使用しているキノクニのRUN-MAXエアフィルター。
不織布のルーバータイプで、ステンレスメッシュによる補強もされています。 ビスカス式で、
軽量、洗浄再使用ができ、ルーバーの折りピッチも狭すぎず広すぎずでちょうど良い位でしょう。
個人的には総合的に見てむき出しタイプの中ではかなり性能バランスの良い製品だと思います。
ただ、残念ながら現在このラージサイズ(200φ)はカタログ落ちしてしまい入手できません。
●吸気抵抗低下と防塵性能のトレードオフについて
たとえば市販の社外エアフィルター、とくにスポンジタイプを陽にかざして裏から見てください。
細かい穴がたくさん開いているのが見えると思います。 これは言い方を変えるとそれだけ
その穴を通過して塵、ゴミがエアフィルターを通過してエンジンに入ってくることを意味します。
それに対して、純正の紙フィルターは同じように陽にかざしてもほとんど穴などは見えないと
思います。 つまり、それだけ細かい塵を通さずにエンジンを汚れから保護できるわけです。
要するに、社外のエアフィルターの多くはその低吸気抵抗と引き換えに、純正フィルターより
も多くゴミ(大きなゴミと言ったほうがいいでしょうか)を吸込むことを許しているわけです。
そもそも、基本的に吸気抵抗を減らすには「フィルターの表面積を増やす」か「フィルターの
目を粗くする」の2つしかないわけですので、社外品は限られたサイズで吸気抵抗を低減する
ためにも当然ながら後者の手段を取らざるを得ないというわけです。
もちろん、そのことがただちにエンジンを壊すことには繋がりませんが、吸込んだ細かい塵、
砂塵などが燃焼室に入り、バルブシートやバルブガイドを磨耗させたり、ピストンリングで
エンジン内にかき落とされ、確実にエンジンオイルを汚しエンジン各部を磨耗させていきます。
ですので、たとえば5万キロ、10万キロと距離を走った際のエンジン性能の劣化度合いに差が
出てきてしまう可能性は否定できないわけです。
ですので、こういった性能上のトレードオフが許せない人、とにかくエンジンを大切に永く使い
たいという人、また、オフロード(未舗装路)走行が多い人等は社外エアクリーナーではなく、
純正フィルターを使用したほうがエンジンのためには安心かもしれません。
逆に言えば、社外のエアクリーナーを使用して少しでも吸気抵抗を減らしたいというのならば
多少のエンジン寿命等への悪影響は理解のうえでという覚悟が必要になるということです。
また、前述しましたように吸込んだ塵がエンジンオイルを汚すことにも繋がりますので、社外
フィルター(とくに目の粗いもの)をつけた場合は、早めのオイル交換とオイルフィルター
交換を心掛けると良いと思います。
注)もちろん、すべての社外フィルターが純正より防塵性能が劣るということではありません。
あくまでも吸気抵抗低減に主眼を置いた製品の「一般的な傾向」として捉えてください。
●エアクリーナーの洗浄再使用について
エアフィルターには1回使い捨てのタイプと、洗浄してリユースできるものがあります。
ただ、洗浄したからと言っても実際にはまったくの新品と同じ性能に戻るということはなく、
だいたい9割がたの性能に回復する程度と考えたほうがいいと思います。
しかも洗浄をくり返す都度に繊維も痛みますし、染み込んだ汚れも蓄積されますので、洗浄
する度に性能が低下していくのは避けられません。
また、HKSのパワーフローのような一部のスポンジタイプは洗浄再使用を推奨していませんが、
これは素材であるスポンジ(ウレタンフォーム)は空気中の水分と反応して「加水分解」して
次第に強度が低下し、最悪はボロボロになってエンジン内部に吸い込まれてしまう危険性が
あるためです。 ですので、そうなる前に定期的に新品に交換することを推奨しているのです。
<ついでに> ラム圧過給について
よくレーシングカーや一部の市販車、スポーツバイクでは走行中のラム圧(動圧)を取り込
んでそれによる過給効果を狙っているものがあります。
これが実際にどの程度の効果があるかについてですが、実際の効果としてはターボのような
ブーストというよりも、エアクリーナーのダーティーサイド、つまり外側の圧力を高めること
によってエアクリーナー通過時の圧力損失をできるだけ減らしてやろうという程度のものです。
とはいえ、これまで書きましたようにエアクリーナー通過時の抵抗は少なければ少ないほど
良いことは間違いありませんので、「利用できるものは利用する」という観点から考えれば
決して無駄なものではないと思います。
ただ、ラム圧システムにはデメリットもあり、あまりにその効果ばかりを狙いすぎるとかえって
空気抵抗の増加につながることもあり、「エンジンパワーは上がったはずなのに、空気抵抗が
増えたために最高速は逆にダウンしてしまった」などという結果もありえるので注意が必要です。
実際のところ、市販車のラムエアーシステムは過給よりも「冷たいエアーを吸入できる」こと
のほうが現実の効果としては高いのものと私は思いますので、その意味ではストリートスピード
程度でも効果があると考えても良いのではないかと思います。
ちなみにF1マシンなどのラム圧利用では300km/hほどで5%前後パワーに差が出るようです。
<参考> →ラム圧過給のメリット、デメリット等の詳細はこちらのページを参照してください。