(番外編)人とくるまのテクノロジー展2007
招待券が送られてきたので行ってみました。
●パシフィコ横浜でおこなわれた「人とくるまのテクノロジー展2007」に1日だけ、それも
駆け足でしたが行ってきました。
目玉となるような出展物は他の多くのサイトやメーカーのサイトでも取り上げられてるでしょう
から、個人的に興味のあったものだけいくつか載せておきます。
●機械式ラッシュアジャスター(NTN)

バルブクリアランスを自動的にゼロに調整するのは一般的には油圧ラッシュアジャスター(HLA)
ですが、ご存知のようにこれは高回転になると正確なバルブの追従性に劣り、固着を起こして機能を
失ったり、とくにダイレクトリフターのタイプではシステム全体が往復運動するため重量がかさみ、
また高さ方向へのスペースを取ることからヘッドまわりが大型化してしまうなどの問題があります。
私も正直HLAは好きではありません。
ですが、今回NTNのブースにはこうした油圧を使わない純粋なメカ式のラッシュアジャスター、MLA
が参考展示されていました。
見ただけではよく理解できなかったので担当者に解説してもらったのですが、要は「ノコ歯ネジ」と
いうワンウェイ的性格をもつネジの特性を利用して、バルブ側からカムに押し付けるときは軽く回り、
逆にカムでリフターを押し下げるときはロックがかかってガッチリとロックされるというものです。
まだ実用化の段階ではないようですし、個人的にもいくつか疑問点も残るのですが、こういうアイデア
賞もののギミックが好きな私にとっては非常に興味のあるものでした。
ただやはり個人的には昔ながらのシム調整式が堅実さの面から好きです。

●水平対向ディーゼルエンジン(スバル)
これはいろいろなところでだいぶリポートされているので今さら書くようなものでもないと思い
ますが、あらためて実物を見てきたのでいちおう載せておきます。

↑エンジン全体。 ターボチャージャーの下流にはディーゼル触媒が直付けされています。
しかし、これはスバルの水平対向エンジンすべてに言えることですが、もうちょっとヘッドを
コンパクトに、とくに高さ方向(シリンダーに対して)できないものなのでしょうか。
うまくカムやロッカーアームを配置して高さを低く抑える設計ができればストロークを伸ばす
こともできると思うのですが。 直打式リフターだとどうしても高さをとってしまいますし。
このあたりも水平対向のパイオニアとして独創的な技術を見せてもらいたいところです。

↑カットモデルです。 シリンダーブロック(クランクケース)はかなりガッチリした造りで
剛性は高そうです。 上部にはコモンレールインジェクションシステムの一部が見えます。

↑ピストントップの燃焼室形状。
ストロークを長くとりにくい水平対向エンジンでディーゼルの高圧縮比を達成するのはけっこう
大変なことだとは思います。

↑ヘッド側は当然ながらまっ平らです。
●LEDヘッドライト(小糸製作所)

言わずと知れたレクサスLS600hのLEDヘッドライトがやはりメインでした。
じつは私は今回これが見たかったというのもありますし、聞いてみたいこともありましたので。
実際に見た感じはやはり「明るい」というより「眩しい」という感じでしょうか。 ただ上方向へ
の光はしっかりカットされているようでライトの軸線より上であれば眩しいという印象はありません。
光の色もあたり前ですが真っ白ですし、これもあたり前ながら瞬間的に点灯します。
配光等は実際真っ暗なところで乗ってみないとわかりませんが、かなりシャープな配光のようです。
いくつか質問はしましたが、興味のあった消費電力については現時点では従来のHIDと同等だそうです。
LED素子は片側で合計5個(上部の3つ目に各1個づつ、下部のサイドに2個)使用とのこと。
考えてみればたったこれだけの数でこれだけの明るさを出すのですからやはりメーカーは凄いです。
ただ現時点でHIDに対してどういった点でメリットがあるのかは… 世界初なのでこれからでしょうか。
●MZRエンジン(マツダ)
これは今さら新しいものではありませんが、マツダは日本メーカーでは唯一と言っていいほど多くの
ガソリン直噴エンジンを幅広い車種のメインエンジンとして使用しています。
個人的にガソリン直噴エンジンの将来にはとても興味がありまして、実用エンジンだけでなく、
本格的なスポーツエンジン、とくにノッキングの心配が少ないことからターボエンジンでも圧縮比を
NAと同等に高く設計できますのでターボが充分に効かない領域でも低速トルクをNAと同等に出せます
し、高ブースト時にも無駄に濃い燃料を食わせる必要がない(当然これはCO2排出にも燃費にも有利)
ことから、スポーツカーに積まれるようなハイパワーターボエンジンでもこれから絶対に主流になる
と思いますし、理屈の上ではターボとの好相性、メリットが非常に大きいので期待しています。
実際、とくに2000年以降、一時的に排ガスの問題や燃費の問題から多くのメーカーがターボをやめ
代わりに排気量の大きいNAエンジンに移行しましたが、ここ数年、またターボエンジンが復帰の兆し
を見せているのもこの直噴との組み合わせによることが非常に大きいのです。
ただ重要なのは長期に渡って(たとえば10万キロとか10年以上とか)も安定した性能や信頼性を従来
のエンジンと同等かそれ以上にすることができるのかということが課題だと思います。
VW/AudiグループやBMWの直噴ターボエンジンもまだ実績は浅いので、特有の問題が出るまでには
まだ数年かかると思っています。
結局、このへんはまだどのメーカーも未知数で、トヨタや三菱、日産なども純粋な直噴エンジンからは
一時撤退しておりますが、直噴の優位性と見られていた成層燃焼が結局モノにならなかったGDIやD-4
以降、直噴化による圧倒的な優位性、とくにNAエンジンでは無理に直噴化する意味が見い出せない現状
では、無理してまで直噴を出すメリットは薄いということだと思います。
(D4-Sは好結果を得ているようですが、現時点では普及価格帯の車に使えるシステムではないですし)
そういう意味ではガソリン直噴はまだポート噴射に対して充分なメリットがあると言える段階ではない
かも知れませんので、長期的に考えていくべきではないかと思っています。

↑マツダMZRエンジンの直噴インジェクター
以前の直噴エンジンのピストンヘッドの形状はとくに成層燃焼時のシリンダー内の流れをコントロール
するため、けっこう複雑になったものですが、マツダのこのエンジンは均質燃焼に特化しているためか
直噴でありながらトップの形状は通常のポート噴射のエンジンとほとんど変わりありません。
これは現在のガソリン直噴エンジンに共通して言えることでもあります。
●その他、硬質アルマイトに変わる新しい表面処理や熱処理、高硬度皮膜など個人的に興味のあるもの
がいくつかありました。
あとはAMT、いわゆるセミオートマチックMTミッション/クラッチシステムを数社が展示およびデモ
しておりましたが、個人的にはレスポンスはいまいちかなという印象でした。
あとミッション関係ではやはりATがメインで、高効率トルクコンバーターやCVTなどかなりの数が展示
してあり、とくにジャトコはほとんどすべての展示物がCVTでした。
NSKは少し前まで日産が採用していたトロイダルCVTをより小型化、軽量化したものを展示しており
まだまだトロイダルの今後に期待していいのかなという印象を受けました。
しかしレクサスの8ATがコンパクトなので、それと比べるとまだまだ小型軽量化の必要がありそうです。
個人的に残念だったのはダイハツが例の軽2ストディーゼルエンジンを持ってきていなかったことです。
ぜひ間近で見てみたかったのですが…
あとの自動車メーカーもあまりパッとしたものはありませんでした。 このイベントはどちらかというと
メーカーがメインではなく各デバイスを研究開発、製造しているパーツメーカーが主役なので、これは
これで良いと思います。
もっといろいろ写真を撮ってきたかったですし、詳しく見てきたかったのですが、どうしても時間が
なくて駆け足になってしまいました。
ただ、このようなイベントは通常おこなわれる自動車ショーのような一般人に向けたPRではなく、業界
を対象にしたイベントなので、無駄な装飾や派手な演出が少なくて良かったです。