A/F計での空燃比の確認、その4
圧力センサー式特有(?)の傾向と気がついたことなど。
●これまでの空燃比の確認作業の中でいろいろやってきたわけですが、ここでもうひとつ疑問が出て
きました、というか、傾向が見えてきました。
K6Aエンジンは基本的にサージタンクの圧力センサー、エンジン回転数、スロットルセンサーにて燃料
噴射量を決めていますが(その他水温や吸気温度の補正はありますが)、ということは、たとえば
「2速/全開/ブースト1.4k/7000rpm」のときと「5速/全開/ブースト1.4K/7000rpm」では
基本的に同じ量の燃料を噴射しているということになります。
だとしたら理屈の上では5速のときに空燃比を合わせると、5速よりもはるかに負荷の軽い2速のときは
5速ほど燃料を必要としないので、空燃比はかなり濃い(無駄に濃い)状態になるはずです。
(もちろんこれはO2センサーフィードバック領域外での話で、なおかつフルブーストに達する5000rpm
以上でのことです。 O2センサーフィードバック領域では各ギアでの空燃比の差はまったくなく、ほぼ
完璧に制御されていることが空燃比計の表示からよくわかります)
なんでこいういうことを書いたのかといいますと、現在の私のクルマがそういう傾向にあるからです。
下の図を参照してください。 正確な図ではありませんので、「こういう感じ」という見方をして下さい。

上の図でわかる通り、1速、2速でフルブーストで全開加速していくときに、O2センサーフィードバック
領域を抜けるとどうやっても10以下の濃い状態になっていき、負荷の高い3速以上のギアではじめて
ほぼ理想的な空燃比を表示するようになります。
つまり、この1速、2速での濃さ改善するためにSFC-MULTIで薄くなるようにすると、その上のギアで
ある3速以降が薄くなり、5速では空燃比、排気温度ともにとても危なくて全開できない状態になります。
逆に、全負荷状態である5速全開で合わせると、2速全開のときには前述のように濃くなり過ぎるという
状態になります。 (ただし、この状態で加速していても体感的な加速Gには不満はなく、フィーリング
的に「濃すぎる」という印象はありません。 もっとも、キッチリと合わせられれば違いは出てくるの
でしょうけど、これは後述の点火時期と合わせて考えないといけないですね)
で、仮に空燃比の表示が正しいことを前提としてこれらの理由を理論的に説明しようとすると、上で
書いたような理屈になるわけです。
K6AはDジェトロ、いわゆる圧力センサー式ですので、吸気量を直接計測しているLジェトロ、つまり
エアフロメーター式のエンジンと違い、圧力から吸気流量を推測して制御しているので、負荷の変動、
つまりギアや空気抵抗、走行抵抗の違いによる吸気流量の変化をセンシングすることができません。
それで、上記のように負荷の変化による空燃比の変動傾向があってもおかしくはないことになります。
もしこの考察が正しいとすると1速、2速での空燃比は気にする必要は無く、できるだけ高いギアでの
表示で合わせるようにすればOKということになるわけです。
逆に、2速や3速で空燃比を詰めていった場合は、5速全開のときは空燃比、排気温度ともに非常に危険な
状態にズレていくことになりますので、注意が必要です。
これがNAエンジンならインテークパイプ内の吸気量に従って負圧が高くなるので、ギアの違いによる負荷
に応じてわりと正確に吸気量を測れるのですが、ターボの場合はどのギアであっても回転数とブースト圧
が同じ状況であればECUは同じ吸気量と判断してしまいます。
ちなみにこのことは点火時期にも当然当てはまることで、回転はもちろん、本来は負荷や空燃比によって
進角も変わってきます。 ですので、このセンサーシステムではもっとも負荷の高い5速ギアで合わせる
しかありませんので、全てのギアで最適な点火時期を実現することは物理的に不可能ということです。
余談ですが、だいぶ前に分解されたスーパーバイクのヤマハワークスYZFのエンジンを見せていただいたの
ですが、これはギアポジションセンサーによって、各ギアごとに細かく進角が設定できるようになって
いました。 つまり、単一の進角パターンしかできない場合は点火時期をトップギアであわせるしかないので
たとえば2速や3速といったコーナーの立ち上がりでは最適な点火時期を外してしまい本来のパワーを発揮
できないのですが、各ギアで最適な進角特性が設定できることによって立ち上がりに差をつけることができる
というものです。
ワークスマシンとプライベートマシンのひとつの差でもありますね。 もっとも、何年も前の話ですので
現在では市販のインジェクションのバイクもこのようにしているものがあると思います。
私が知っている限り4輪ではこうした制御をしている市販車は知りません。 やっているとしてもギア
ポジションをECUが管理しているAT車くらいなもんでしょうか。
ちなみに純正の圧力センサーって何kg/cm^2まで測定できるのでしょうかね。 K6Aのノーマル
ブーストが基準1.1kに対して±0.2k程度のバラツキがあると考えると、1.5kあたりまでは測れてくれ
ないといけないとは思うのですが。
いずれにしても、いろいろ考えると意外と純正コンピューターというのは実用域以外の領域ではけっこう
アバウトな制御をしている気がします。 ということは、純正コンピューターをベースに書き換えるタイプ
のチューニングコンピューターはもちろん、これに接続するサブコンの類も、所詮は純正のECUと同等の
制御までしかできないわけですから、意外に自由度が少ないものであるとも言えます。
先にも述べましたように、NAエンジンであれば吸気管内負圧は基本的に吸気量(壁面流速)に比例するの
で圧力センサー式でもわりと負荷に応じた計測ができると思いますが、ターボの場合は1速であろうが5速
であろうがブースト1kは同じ1kなので、すべての負荷域でのベストなセッティングなんていうのは物理的
に不可能ということになるのではないでしょうか。 そう考えると非常にもったいないという気がします。
まぁ、私はECU制御についてはまったく素人ですので、あくまで推測で言っているだけですので、あまり
信用はしないでください。
結局、セッティングというのはどこで妥協点を見い出すかという作業になると思います。
極端な話、レースエンジンのようにその時に極限まで詰めてベストな状態にもっていったとした場合、たとえば
翌日になって気温が数度変わってしまったらもうセッティングはズレてしまうわけです。
市販車の場合は、夏から冬まで晴の日も雨の日も、また気圧や湿度の違いがある程度あっても、エンジンは
1年中支障なく動いてくれなくては困るわけですから、結局、いい意味での妥協が必要です。
調整項目が多くなればなるほど、また、調整の精度が上がれば上がるほど、この妥協点を見い出すのが難しく
なってくるので(人間の心情として、どうしても「あとちょっと…」という心理がありますからね)個人的には
競技にでも出るのでなければ適当なところで満足しておくのがいいのではないかと思っています。