GRID空燃比計 LM-1
GRIDより発売された低価格のリニアセンサー装備の空燃比計のLM-1を購入しました。
●以前は空燃比計はインテグラル社のDM-05Mを使用しておりましたが、全開全負荷など条件が
整っていれば05Mでも空燃比表示には問題はないのですが、やはり中間域などの排気温度の上下が
激しい領域や、実用域での詳細な変化を知りたい場合、また、素早い表示レスポンスが欲しい場合等
はどうしてもワイドバンド全領域センサー(リニアセンサー)搭載の空燃比計が欲しいところです。
実を言うと私もこのページで05Mを使用して、しばらくしてから知り合いにDM-20Mを借りて走行
したのですが、高速などの全開に近い走行ではほとんどその差はありませんが、やはり過渡域や
街乗りでの領域、あるいはそこから踏み込んだときの中間加速などの際はその差は歴然です。
ただ、これは私のセンサー取り付け位置がフロントパイプ後方であったことも大きく影響して
いますので、決してDM-05Mが役に立たないというわけではありませんので念のため。
ただ、これももう1年以上前の話で、その後排気系に触媒装着など小さな変更をくわえていきましたし、
そろそろ夏も終わりますのでもう一度空燃比を確認したいと思っておりました。
そこにちょうど GRIDよりリニアタイプセンサーを装備しながら50000円を切る価格でデータ出力も
可能な空燃比計が発売されました。 センサー、本体ともに国産品ではないのが気になりますが、
交換用リペアセンサーも非常に安く非常に興味をそそられましたので、この機会に購入し試してみる
ことにしました。

↑GRID社製(実際には輸入販売元ですが)の空燃比計。 342-LM1。
リニアタイプセンサー採用のモデルです。 排気温度に左右されずに計測することが可能ですが、
反面、高温ではデリケートなセンサーでもありますので、一般的なO2センサーに比べ耐久性等はやや落ち
ますので、とりつけ位置にもよりますが常時使用するようなものではないと考えたほうがいいでしょう。
基本的にはあくまでセッティング時のみの使用と考えています。
ただ、温度に左右されないとはいっても、使用温度上限は700度あたりまでで、さらに信頼できる数値を
表示できるのは500度〜600度程度までです。
これは意外に知られていないのですが「温度に左右されない空燃比計」と言うと全温度域で100%の信頼
があると思っている人も多いですが、実際には精度よく表示できる上限側の温度というのは意外に低い
ですので、センサーの取り付け場所もできるだけフロントパイプ下流につけたほうがいいです。
これはどこの会社のワイドバンド空燃比計(リニアタイプA/F計)でも同じです。 結局、本体は様々
ですが、肝心なセンサーを製造しているメーカーは限られていますので。
こういう場合、センサー部の温度が上がり過ぎてしまうケースがありますので、同社より発売されている
オプションパーツの「センサヒートシンク」を併用すると良いでしょう。
ちなみにこのLM-1に使用されているセンサーはBOSCH社製のUEGOリニアセンサーと呼ばれるもので、
最高耐熱温度は1020°Cまでとなっていますが、これはあくまでもセンサーが耐えられる限界の温度と
いう意味で、前述しましたように正確に測定できる温度はこれよりずっと低い温度でないとなりません。
なお、通常の排気温度(およそ800°C前後)であればセンサー耐久性は10万キロ以上持つらしいですが、
この最高温度付近(1000°C付近)で使用する場合はセンサーの寿命は極端に短くなり250時間程度と
いうことです。 なのであまりエンジンの排気ポートに近いところにつけるのは考えものです。
●取り付け
取り付けについては「メタルキャタライザーフロントパイプ」のページで記載しました触媒前のアダプター
に加工しておいたM18X1.5のネジ穴を使用します。

↑センサー取り付け状態。
このように通常は「触媒コンバーター前」にとりつけます。 触媒後でも測定できないことはありませんが、
触媒通過後は排ガスの酸素含有量が変化するので、空燃比が正確に出ません。
具体的には、触媒前にくらべ触媒以降ではA/F値がだいたい「1.0弱程度薄めに表示される」ということです。
なので、触媒より下流にセンサーをつけた場合はそのぶんを計算に入れて表示を読まなければなりませんの
で注意が必要です。
また、よくマフラー出口にセンサーをつけてセッティングをしている方もいますが、これはあまり信用でき
ません。マフラー出口付近は排気ガスの脈動(圧力変動)によって外気からの空気の環流があり、この大気中
の酸素濃度をセンサーが拾ってしまうために正確な排気ガス中の酸素濃度を検出できないのです。 ですので
このマフラー出口にセンサーをつける方法では正しい空燃比セッティングなどできないと私は考えています。

↑室内へはこのように仮固定です。 かっこよくありませんが、表示部を別に用意すればもっと綺麗に
まとめることが出来ます。
●準備
まずは説明書をしっかり読みます。 かなり重要なことが書いてありますので面倒がらずに。
それに従いセンサーの校正、電源投入してのメッセージの確認、それからセンサーを接続しての
ウォームアップの確認…など、まずは機能に問題ないことをすべて確認します。

↑大気状態でセンサーの校正が終了すると、このように大気中の酸素濃度を表示します。
この作業は最初の1回だけおこなえばあとは必要ありませんが、精密に測りたいときなどはたまに
再校正作業をすると良いようです。

↑これはセンサーのヒーターのウォーミングアップ画面。 毎回、電源投入後に30秒ほどをかけて
ウォーミングアップします。 また、同時にバッテリー電圧も表示します。
これが終了すると通常モードに入り、すぐに空燃比がリアルタイム測定されます。

↑これが通常の測定画面。 センサー電圧(ラムダ値)と空燃比の両方を同時表示するので便利です。
これは暖機後のアイドリング時に撮ったものですが、きっちり理論空燃比(ストイキ)となっています。
●走行してみて
今まで使用したことのあるインテグラルのものと比べますと、たしかに05Mとの差は大きく感じられます。
このLM-1はプロセッサが16ビットで、8ビットのDM-20Mよりも処理速度が速いというのも特徴でして、
サンプリングタイムも短いようで、表示にタイムラグがほとんどないという感じです。
しかし、DM-20Mとの差については、実際の表示のレスポンスなどはほとんど差はないと言えるでしょう。
センサー電圧(ラムダ値)と空燃比を同時に表示できることろもなかなか良いと思います。
ただ、全開走行中の絶対値そのものは05Mと比較してもそれほど差は感じられませんので、そういう意味
では全負荷時のみの安全確認に使っているぶんには05M程度でも充分なのかもしれません。
もともと、どんなに高性能を謳っている製品でも過信は禁物です。 NAエンジンならまだ良いですが、
ターボエンジンのセッティングは空燃比計だけで安全なセッティングができるものではありませんので。
必ず排気温度計などとの併用でおこなうことが重要です。
<参考> →排気温度について
ちなみに、私は購入しませんでしたが、外部接続できるアナログメーターもオプションでありますし、出力
電圧さえ合えばその他のメーターも使用できると思いますので、メーターを常設したい人はそれらを利用
しても良いのではないかと思います。
セッティング中のみとはいえ、この大きめの本体をどうやって仮固定するかはけっこう悩みますので。
それで実際の変化ですが、やはり以前の空燃比セッティングからだいぶ仕様が変わった関係もありけっこう
ズレてきてしまっていました。
大幅な変更はくわえませんが、これから気温が下がっていくこともありますので、全開時は少し余裕をみて
やや濃いめにしておきました。

↑とりあえずのSFC-MULTIの設定。
この状態でのセッティング結果はだいたい以下の通り。
●O2センサーフィードバック領域では14.7付近で安定している。
●アクセル1/2〜3/5程度踏み込んだ中間加速では13〜12.5付近と、ほぼ最高出力空燃比になる。
●もっとも極限状態となる5速全開で引っ張ったときでだいたい11付近で安定。 ちなみにそのときの
排気温度は850度弱というところです。
全開全負荷時は排気温度からするともうちょっと薄くしても良いのですが、走ってみてフィーリングで、
やはり触媒レスのときよりも高回転での伸びが若干感じられないこともあり、あまり無理させても仕方ない
だろうということであえて余裕をみて設定しておきました。

↑これは若干アクセルを踏み込んだところ。 理論空燃比から最高出力空燃比への途中です。
●それで、LM-1を使用してDM-05Mとの比較であらためて確認したことはだいたい以下の通りです。
1)アイドリングでもしっかりとA/Fフィードバックはされているようで、14.7付近を維持していた。
2)アクセルオフ時の燃料カットの状態がより詳細にハッキリと解るようになった。
3)前から気になっていた1、2速などの軽負荷時と、5速の高負荷時の全開時の空燃比の差は、やはり
多少はあるものの、実際は思ったほど大きくははないようだ。
4)中間加速など、アクセルの踏み方の違いでの空燃比の変化がよくわかる。
5)全開全負荷時など、温度が安定している状態では安価なモデルでも空燃比数値にあまり差は出ない。
以上のようになります。 やはり処理速度の速いワイドバンド空燃比計ならではの違いはあります。
●ちなみに、この空燃比メータロガーは回転数と空燃比の変化をプロットしてセッティングを出す
ことに利用できることが売りではあるのですが、これをうまく利用すると面白いかもしれません。
ここで重要なのは「負荷」で、たとえば2000rpmから8000rpmまでの全開加速でも、負荷の軽い
2速と負荷の大きい5速ではエンジンが要求する酸素量はまったく異なってきますので、各ギアで
それぞれデータを出して比較すると面白いと思います。
このページでも何度も書いていますが、K6Aの使用している吸気量計測は圧力センサーによるもの
ですので、負荷の変動による吸気量の変化を正確には検出できないのです。
つまり、エンジンを壊したくなければもっとも条件の厳しい5速全開で空燃比を合わせないと意味が
ありません。 その結果、2速や3速など負荷の軽いギアでは空燃比は濃くなります(フィードバック
領域外での話)が、これは妥協するしかないのです。
ですが、たとえばクローズドコースでの競技使用などで「ここでは4速までしか使用しない」ような
場合はそのコースでの全開、全負荷のかかる条件、たとえば4速全開で空燃比を合わせるといいで
しょう。 使用しない負荷域で合わせても無駄にしかなりませんので。
もちろん、その状態で5速全開をすることは危険ですので、そういった場合はまたリセッティングを
することになります。 言うまでもありませんが、これらは空燃比だけでなく、排気温度および
ノッキング音などとも併せてセッティングします。 空燃比だけで追っていくと大変危険ですので。
●最後にセンサーとのマッチングについて
最近、このくらいの価格の外国製A/F計をよく見かけます。
私がこの製品を選んだのは、GRID社であれば、昔からチューニングROM機材や基盤、解析などで実績
のある会社なので、今後のサポートなども考えると、少なくともただ安いだけで売っているところから
購入するよりは信用できそうな気がしたからです。
この手の空燃比計も安くなってきたとは言え、基本的には高いものですので、本当にサポート面で信頼
できるかどうか怪しいメーカーや輸入販売会社の製品については、センサーとのマッチングによる校正
についてなどもどうしているのかが心配な面もあります。
たとえば、空燃比センサーは消耗品ですのでセンサーが寿命になれば交換するのですが、その際ただ
交換しただけで本体との校正がとれるのかがちょっと気になります。
ちなみにこのLM-1は使用前、あるいは使用中でも適宜センサーの校正ができるようになっています。
私の知り合いでインテグラルのDM-20Mを使用している人は、センサー交換の際には本体ごとメーカー
に預けて、交換するセンサーの個体差による誤差を補正してもらっているとのことです。
空燃比計に限ったことではないのですがセンサーにはすべて個体差があります。 その誤差がこれと
いって問題ない範囲ならば気にするほどのことでもないのですが、わざわざ高性能なクラスの空燃比計
を買うのであればセンサー交換の際もちゃんと個体差補正しないと意味がないのではないかと思います。
いずれにしても、高値の華であったリニアセンサー空燃比計がこの値段で買えるようになったのは嬉しい
限りだと思います。
(2011/10/2 一部加筆修正)