大径オルタネータープーリー製作と発電ロス低減について

オルタネーターのパワーロス低減をいかに図るか思案してみました


 

●市販自動車のオルタネーター(ジェネレーター)は通常、一般によく使用される回転域で充分な電圧

および電流が発生できるように設計されており、エンジンにもよりますが、軽自動車の場合でも2000rpm

以上回っていればよほど電装品を過度に使ってない限りは充分まかなえるだけの発電をしてくれます。

しかしこれは逆に言えば、高回転域では発電量がオーバーしすぎるためレギュレーターがそれ以上の発電

を制御して抑えてしまうだけなので、とくに高回転域ではオルタネーターはただ無駄に速く回っているだけ

でエンジンにとってはただの回転抵抗、つまりパワーロス、フリクションロスになってエンジンの足を

引っ張っているだけの無駄な存在なのです。

 

↑このグラフはエンジンの摩擦損失の例ですが、見てのように補機類(オルタネーターやウォーターポンプ等)

の抵抗の損失は低回転から高回転までほぼ一定で変わらないことがわかります。 ただ、実際には高回転になれ

ばなるほどベルトとプーリーの摩擦抵抗やブラシとスリップリングの抵抗は増加していくものと推測できます。

具体的に言いますと、普通に考えると軽自動車あたりのオルタネーターの発電量はせいぜい50Aから60A程度

なので約14Vで計算するとおよそ0.7kw、馬力に換算すればわずか1PS程度のロスしかないはずですが、それは

あくまでも発電による磁力負荷のみの話で実際は機械摩擦部分、たとえばベアリングやカーボンブラシ、ベルト

などの摩擦損失のほうが高回転域ではずっと大きなウエイトを占めるようになるわけで、恐らく合計で2〜3PS

程度かそれ以上馬力を食われているものと推測できます。

実際に、あるバイクのレース屋さんで聞いたところ、オルタネーターの有無で最大5PSもシャシダイ上で差が

出たことがあるそうです。 オートバイ(大型バイク)でそんなに差が出るのなら電力消費の多い四輪車なら

もっと差が出てもおかしくないわけです。 ですので、ほんのわずかでもオルタネーターの回転抵抗を減らして

やることは高回転では、とくに排気量が小さくて非力な軽自動車のエンジンではメリットが大きいのではないか

と考えるのです。 もちろんこれは燃費改善にも貢献します。

これは余談ではありますが、本当か嘘か知りませんが、自動車メーカーは10.15モードやJC08モード試験の

ときには補機類のベルトの張り(テンション)をめいっぱい緩めにするらしいです。 つまり少しでも発電機を

はじめとする補機類のフリクションロスを減らして燃費データを良くしようとするわけで、こういう話を聞くと

補機類のベルトによる駆動抵抗を少しでも減らすことは有効ではないかと考えられるのです。

 

これではもったいない、ということで今回は少しでも高回転でのパワーロスを少なくしようということで、

オルタネーターのプーリーを大径化してプーリー比を減速する(減速比を大きくする)方向にして僅かながらも

パワーロスを減らそうという試みです。 ただ、私の車はサーキット専用車じゃありません。 普通に街乗りで

使う車ですので、過度に直径を大きくしすぎるとオルタネーターの回転数が落ちすぎてアイドリングや低回転での

発電量が不足してしまい最悪バッテリー上がりをおこしてしまいます。 そこで「どのくらいの大径化が最適か?」

ということですが、実は私のJA22ジムニーに積まれている初期型(旧規格)K6AエンジンにはISCバルブの

ソレノイドデューティー比を調整するためのスローエアポート用のアジャストスクリューがついていまして、

これを利用して若干ですが手動でアイドリング回転数の調整ができます。 私の車は現在も純正指定基準よりも

200rpmほど高い1100〜1150rpmくらいに上げています。

つまり、純正の950rpmよりも約20%ほどアイドリング回転を上げていますので、この範囲内で大径化するぶん

には発電量の不足はカバーできることになります。 これが大径化のひとつの目安となります。

さらにヘッドライトも純正のハロゲン55/60WからHID35Wに変更していますしテールランプやブレーキランプ、

ウインカー類もLED化しているので全体の消費電流もノーマルよりかなり少なくなっています。

 

これらをいろいろ勘案した結果、デメリットを最小限にし、あまり冒険しすぎない範囲で大径化するなら、まずは

10%程度が妥当だろうという結論に達しました。 しかもこの程度の大径化ならば純正のリブベルト(Vベルト)

のままでもテンショナーで充分調整可能な範囲なので、ベルト変更の必要もなく、まさにボルトオンで装着OKと

いうわけです。 ということで「純正比10%大径プーリー」を製作することにしました。

 

<補足>ダイナモとオルタネーターの違い

現在のオルタネーター(交流発電機)のことを今でもダイナモ(整流子発電機)と呼称する人が多いのですが、これは

決して間違っているわけではありません。 そもそもダイナモというのは整流子を使用した発電機の総称であり、

オルタネーターはその派生として開発されたものなので、オルタネーターも立派なダイナモの一種なのです。 ただ

現在ではオルタネーターとダイナモを区別して呼ぶのが一般的になっています。 総称してジェネレーターですね。


●製作したアルミ製オルタネータープーリー

↑向かって右が製作した10%大径化したプーリー。 材質は超々ジュラルミンA7075です。 左は純正プーリー。

オルタネータープーリーはクランクプーリーと違ってねじれ振動防止の慣性マス質量には関係ないので、軽量化

しても害はありません。 ですので、できるだけ軽くしたいことからこの材質を選びました。

<参考> →クランクプーリー軽量化の弊害についてはこちらのページを参考にしてください

ちなみに重量はノーマルプーリー(外径55φ)が210グラムなのに対して新規制作したプーリー(外径60.5φ)

は105グラムと半分の重量になっています。 素材の比重から考えればもう少し肉抜きして軽量化も可能では

ありますが、剛性面を考えあまり無理はしませんでした。 いくら超々ジュラルミンと言ってもその剛性

(縦弾性係数=ヤング率)は一般的なS45C等のスチールの1/3程度しかありませんので、過度な肉抜きをする

と耐久性に問題が出かねないので、レース用でもない限りはあまり無理な設計はしないのが私の主義です。

 

↑表面処理は超硬質アルマイトである「スーパーハードアルマイト」を施しました。

スーパーハードアルマイトは通常の硬質アルマイトよりも表面硬度が高く耐摩耗性に優れていて、とくに通常の

ジュラルミン(高力アルミニウム)のA2017よりもA7075との相性が良好です。

→スーパーハードアルマイトについての詳細はこちらのページへ

 

●装着・・・の前に

さっそくこの完成した大径プーリーをつけようと思っていたのですが、その前にこの考えについて普段から

お世話になっている緑整備センターの社長さんに相談したところ「意味ないんじゃないか?」と言われました。

社長曰く、ようするに普段から高回転でぶん回してるのなら有効だが、街乗りで低い回転域を多く使う場合、

オルタネーターの回転を下げたぶん、そのままでは発電量が低下するためにかえってオルタネーターは発電量

を増やそうとするため、仮にプーリー減速比を大きくして機械抵抗を減らしても、実用域では電気的負荷増大

による磁力抵抗増加によって、差し引き相殺されてしまうというわけです。

この話を聞いてたしかに「なるほど、たしかに理論的にはそうだ」と思いました。 確かに、仮に高回転域では

パワーロスが軽減されたとしても、そのはね返りとしてとくに街乗りの信号などでの発進時によく使う2000rpm

以下の回転域ではオルタネーターの発電量が充分ではないため、オルタネーターの回転数を落とすと、この

極低回転からの加速時に電圧が安定せず、スパークプラグの点火力の低下や、インジェクターのレスポンス悪化

によりかえってトルクダウンしてしまう可能性があるということになり、これでは本末転倒です。

少し前にCAOSバッテリーに替えた際、それだけでも低回転でのトルクアップが感じ取れたくらいですから、

この逆パターンで考えると、極低回転域では微妙な電圧の低下でもけっこう大きなトルク低下につながる可能性が

あると考えてもおかしくありません。 わずかコンマ数ボルトの電圧の降下でも低回転でのトルクやレスポンスに

想像以上に大きな影響を与えかねないわけです。これはストリートメインで使用する車では避けたいところで、

ましてや私のジムニーのように大きめのタービンをつけて低速トルクが少しでも欲しい車ではなおさらです。

 

以上のような理由を考慮し、とりあえず今のところは今回のこのプーリーの装着は保留することにしました。


●では、どうすれば発電量を犠牲にせずにオルタネーターの抵抗を減らすことができるか?

 

ここで考えられるのは、ひとつは「大容量オルタネーター」にして、そのうえでこの大径プーリーをつける

というものです。 たとえば、純正より10%ほど発電量が多いオルタネーターを装着し、そのぶんプーリーで

10%回転を落とせば理論的には発電による負荷は同じまま、純粋に機械抵抗によるパワーロスのみを減らせると

いう訳です。

いや、もっと10%以上の容量アップしたオルタネーターにした場合、たとえ磁力抵抗が若干増えたとしても、

それ以上に電圧、電力の安定が達成できれば、その抵抗を上まわるトルクアップ効果によってかえって低中速域

のトルクアップにつながる可能性さえあります。 もちろん、過度な容量アップは磁力抵抗の増加でかえって

パワーロスが大きくなってしまいますが、たとえば純正が55Aだとしたら65Aから70A程度までの容量アップで

あればむしろプラスの効果のほうが大きいかもしれません。 それ以上の容量になるとかえって磁力抵抗のほうが

大きくなりネガティブ要素のほうが増える可能性がありますので、このへんのバランスが難しいところです。

 

さらに積極的な方法として、最近の純正新型車に多く採用されている「セグメントコンダクターコイル(SCコイル)」

を使用した低抵抗オルタネーターに替えてしまうことでもっと抵抗を減らすことが可能となります。

このセグメントコンダクターコイルというのは、従来の丸(円形)断面のコイルではなく角断面(スクエア)の

銅線をコイルに用いた発電機で、より高密度、高効率な発電をする最新鋭のオルタネーターです。 これは最近の

充電制御車に多く採用されているオルタネーターで、同じ発電量の場合、従来のオルタネーターに比べて約50%

ほど発電による抵抗が少なくなるそうで、単純に言えば同じ発電量なら抵抗が半分になるということです。

↑従来のコイルとセグメントコンダクターコイルのステーターの違い。 左が従来の丸コイル、右がSC角断面コイル。

見てのように従来コイルに比較して、SCコイルはより高密度に巻線され、全体の寸法もコンパクトになっています。

 

ただ残念ながら今のところ、私のJA22WジムニーのK6Aエンジンに適合するSCコイルオルタネーターを売っている

業者は無いようですが、現行のK6Aエンジン用、さらにはF6Aエンジン用でも売っているので、需要次第では電装屋

さん、あるいはリビルトメーカーさんに製作してもらえる可能性もないわけではありません。

ただ、このSCコイルオルタネーターは相場がだいたい4万円から5万円以上するので果たしてコストパフォーマンス

に見合うかどうかという点では微妙ではありますが。

 

●というわけで、せっかくプーリーは作ったものの、今回のプロジェクトはここで一時中断となりますが、考え方

自体は間違っていないと確信していますので、なんとかいろんな方法を模索してこの「オルタネーターの低抵抗化」

をそのうち何らかの形で実現できればと考えております。

 

<業者様へ>

ちなみに私の車の純正オルタネーター品番は31400-50E11ですが、このタイプでセグメントコンダクターコイル

のオルタネーターを製作可能な業者様がおられましたら連絡いただけると幸いです。

おそらく同じタイプの旧規格K6Aエンジン(前期型)を積むEA21Rカプチーノや、HA21S/HB21Sアルトワークス

とも共通部品だと思いますので、それなりに需要はあるのではないかと思いますので。


ブラックオルタネーターについての留意事項

なお、最近「ブラックオルタネーター」という商品名で低抵抗でなおかつ大容量なSCオルタネーターが販売されて

いるようですが、安易に使うにはどうも問題があるようで、あまりお薦めできる製品ではないようなことが書か

れていましたので、参考までに以下のみんカラブログを見てみてください。

→http://minkara.carview.co.jp/userid/772083/blog/27335359/

これを読む限りでは私はとても使う気にはなれませんね。 電圧が上がりすぎるのは電装品全体に過度な負担を

かけるだけですから、車にとって良いことは何ひとつありません。 オルタネーターからの出力電圧は高くても

14.4Vくらいで安定してもらわないといけません。 この記事をそのまま信じるならば、こんな怪しい製品を使う

くらいならまだ他車種からの純正流用(最近の主流のセグメントコンダクターコイル使用の低抵抗オルタネーター)

のほうが信頼できるのではないでしょうか。

↑ブラックオルタネーター。 写真はEA11Rカプチーノ用。

もし上記みんカラの記事のように、15Vをはるかに超える高い電圧が出力されるようでは、最悪はECUをはじめ、

車両の電装部品関係が短期間で、あるいは一瞬のうちにダメージを受けて破壊されてしまう危険性があります。

実際、いくつかトラブルの実例もあるようですし、こんなリスクの高い製品私はとても恐くて使えませんね。

現在、すでにこのブラックオルタネーターを使用されている方は、ちゃんとした電装屋さんで負荷や回転数に

よってきちんと正規のボルテージ(電圧)でレギュレートされているかどうか確認したほうがいいと思います。


●蛇足ですが、プーリー径の変更の話のついでに

たまにいるのですが、ウォーターポンププーリーの直径を小さくしてポンプの回転数を高くすることでより冷却効果

が高まると考えている方がいるようですが、たしかに低回転〜中回転域のみをメインに考えた場合は、ウォーター

ポンプの回転を上げることは冷却水(LLC)の循環量を増やすことができますので「普通に街乗りしているぶんには」

それなりに有効かもしれません。(ただ、水ポンプのパワーロスが増えますので燃費は悪化する可能性はありますが)

しかし、サーキット走行や最高速ステージなどで走るようにチューニングしたエンジンで、レッドゾーン付近

の高回転を多用する使い方をする場合はこれはかえって逆効果になる可能性が高いので気をつけてください。

ウオーターポンプのプロペラ(ベーン)には効率よく水を吐出するための最適な回転域と限界の回転数があり、

それを超えるとプロペラの羽根の裏側が過度な減圧を起こし気泡(いわゆるキャビテーション)が発生し、泡(気泡)

ばかりを送ってしまいかえって水を送ることができなくなってしまうのです。 つまり、ウォーターポンプがあまり

速く回りすぎると逆に水の吐出量が減ってしまい、かえってオーバーヒートの原因になってしまうこともあるのです。

ですので、サーキットや最高速で高回転を多用するエンジンでは、むしろ逆にウォーターポンプの回転数を下げる

ためにプーリー径を若干大きく(5%〜15%程度)してポンプがキャビテーションを起こさないよう過回転にならない

ようにすることのほうが有効なことさえあります。 実際、私も過去にRB26DETTエンジン用に13%ほど大径化した

ウォーターポンププーリーを設計製作した経験があり、これはサーキットの全開走行で絶大な効果を発揮しました。

このように、各補機類の回転数というのはその使用するステージによって最適なプーリー比(減速比、増速比)という

のがあるので、自分の車をどういうステージをメインに使うかによって臨機応変に考えなくてはなりません。


えんいー! ヽ(´ー`)ノ~~~