オートフリーホイールハブ

以前からどういう構造になっているのか気になっていたので分解してみました。


●私のJA22Wは1型なのでフロントのフリーハブはマニュアルハブです。

JA22は2型以降では現行のJB23と同じサージタンク負圧を利用してトランスファーと連動して

ロック/アンロックを切り替える「エアロッキングハブ」が標準装備となっているため、私の型が

事実上、最後のマニュアルハブ装着車となります。

当然マニュアルハブの場合は4駆、2駆の切り替えの度に車から降りてハブを手動で切り替えないと

ならないので面倒ではあるのですが、多くのジムニー乗りの人にとっては、何よりも確実なことから

このマニュアルハブのほうを好む人が多いです。

実際、今回記載する従来のオートハブはもちろん、現行のエアロッキングハブでさえ確実にロックされて

ないことも稀にあるため、機械的に信用できないというのが大きな理由です。

 

ただ、私のようにオンロードがメインで、4駆に切り替えるとしたらたまに降る雪や荒天時しかないような

使い方の場合は、走行中にトランスファーを2Hから4Hに切り替えると同時にハブロックがかかってくれた

ほうが何かと便利なので、オートハブにも以前から興味は持っておりました。

そんなこともあり今回は解体車外しのオートハブを安く入手できたので、内部構造と動作原理の確認をして

みました。

 

↑スズキ純正オートフリーホイールハブ。

JA12/22、JB32のOPのオートハブはこの年代のエスクードに純正装着のものと共通のようです。

参考までに、重量は1個あたり約1.7kgです。


●まずは分解してオートハブがどういう構造になっているのかを確かめます。

と言うのも私はオートハブについてはだいたいの仕組みは解っていたものの、動作上どうしても疑問が残って

いた部分があり、詳細まではよく解っていなかったのです。

 

さて、その構造のヒントはオートハブを車両にとりつけて作動させる際の手順にあります。

まず2駆から4駆に入れるときにはそのままトランスファーを4駆に入れれば自動的にハブはロックされます。

次に、ロックからフリーに戻すにはトランスファーを2Hに入れてからタイヤ1回転以上(実際にはそこまで

必要ないのですが、確実にリリースさせるためです)バックさせることで解除されます。

このことから、私はカム機構を利用してスプラインのついたリングをスラスト方向にスライドさせることで

ロック/アンロックさせるものなのだろうと考えておりました。

実際、それは正しかったのですが、疑問なのは4駆状態にするときはシャフト側、ホイール側ともに回転

している状態なわけですから、このような状態でどのようにカムを作動させるのかを知りたかったのです。

カムを作動させるには必ず固定側と可動側が必要になりますが、今回、現物を分解してみてやっとその疑問

が晴れました。

 

↑とりあえず途中まで分解したところ。

 

●作動原理

とりあえず図で説明しますが、実際の構造はけっこう複雑なので、かなり簡略化してわかりやすいように

動作部分のみを抜き出して描いています。

 

●フリー(アンロック)状態

駆動力を伝えるのはボディ(アウターボディ)側とシャフト側のスプラインです。

この状態ではボディ(赤色)は完全フリーとなっており、ドライブシャフトは停止した状態で

ボディ(アウターボディ)だけが空転しています。

 

●ロック開始状態

トランスファーを4駆に入れるとドライブシャフトが回転をはじめ、一緒に回転しているスプライン

についているカムの作用でスリーブ(緑色)のカム面に乗り上げ、スラスト方向に移動してボディの

スプラインと噛みおうとします。

しかし、それだけではスリーブも一緒に回転してしまうためカムに乗り上げることができません。

ここが私のいちばんの疑問だった点です。

そこで重要なのはその下にあるフリクションプレート(紫色)で、これはちょうどLSDのプレート

と同じように、僅かなイニシャルトルクでホーシング側の摺動面(接触面)に押し付けられています。

この抵抗はスリーブとフリクションプレートの間のカム作用によってさらに強くなり、クサビのように

なることで一時的にスリーブの回転がロックされ、ドライブシャフトと繋がったスプラインは押し上げ

られてボディ側のスプラインと結合するわけです。 この一連の動作原理は機械式LSDに似ています。

 

●ロック状態

さて、ロックされた後ですが、それだけでは問題が残ります。

それはスリーブとフリクションプレートの間のカムは回転している限り常に作用し続けるため、

そのままではフリクションプレートはずっとホーシング側(つまり固定側)に強い力で押し

付けられ続けることになってしまいます。

この状態のままでは回転の抵抗になるばかりか、最終的にはその摩擦熱で焼き付いてしまいます。

そこでさらによく考えられている機構がついているのですが、これは複雑になって図では描き

きれないために省略していますので、以下の写真で簡単に説明します。

これがその機構で、左側がスリーブASSY、右側がフリクションプレートです。

図で描いたカムはこのアウターカム(作動用)のみ描いてあるのですが、その内径にはさらに

もう一組のインナーカム(ロック用)があります。

詳細な作動は面倒なので(というより文章だけではうまく伝えられないので)割愛しますが、

4駆状態にロックされるとスリーブ側のロック用カムが数十度回転し、ここがフリクションプレート

のインナーカムとぶつかりフリクションプレートの回転を止めるような作用をし、アウターカムの

スロープ部にかからないようにブロックすることでロック後はフリクションプレートを押し付ける

力を発生させないようにしているのです。 実に巧妙なギミックです。

 

●解除時

4駆状態から2駆状態にするときにはトランスファーを2駆状態、つまりドライブシャフトの回転を

停めてから逆回転にすることで解除しますが、なぜ逆回転させないといけないかと言うと、これは

前述したインナーカムによってアウターカムがブロックされているためにフリクションプレートと

スリーブの間にカム作用が利かないため、前進状態のままではただ一緒に回転してしまうだけで

ロック状態のままになってしまうからです。

そこで逆転させることで、ブロックされていない側のフリクションプレートとスリーブの間のカム

を作用させることによって摩擦力を発生、スリーブの回転が停められることでドライブシャフト側の

スプラインのカムが作用し、元に戻ることでロックを解除するわけです。

文面だけではよくわからないと思いますので、興味のある方は現物を手にしながら考えれば解ると

思います。

 

●バック時

さて、ここで疑問が生じるのは「トランスファーが4駆状態のまま(つまりドライブシャフトに駆動力が

伝わっている状態)でバックしたらどうなるのか」ということですが、上記の解除のところでもある程度は

想像がつくと思いますが「いったんロックが外れてフリーになり、逆方向でまたロックになる」という

プロセスになります。 ちょっと笑ってしまいますが、そういう構造なのですから仕方ありません。

つまり動作プロセスとしては、バックしてロックが外れるところまではトランスファーが2駆でも4駆でも

同じなのですが、その後はトランスファーが2駆(即ちドライブシャフトの回転が停止した状態)ではカム

作用が働かないのでそのままフリーになりますが、トランスファーが4駆(即ちドライブシャフトが回転して

いる状態)では上記作動原理の図で説明したようなプロセスで再び反対方向でロックされるということです。

 

しかしこの構造がクセモノで、よく悪路でのスタックからの脱出時に前進と後進をくり返す、「もみ出し」

をするとハブのロックが外れっぱなしになり、2駆状態になってしまうというのを聞きます(オートハブが

嫌われる最大の要因の一つでもあります)が、これはバックに入れて一旦ロックが外れた状態から小刻みに

前後にゆするような動作をすると、タイヤ(およびドライブシャフト)がロックするのに必要な回転まで回ら

ないため、結果としてずっとフリーの状態になってしまうからです。

ハブロックに必要な回転は理論上は半回転以上あれば充分なはずなのですが、たとえ回転が充分であったと

しても、ごく低速ではカムによるロック力が充分に働かずにロックしてくれないことがあります。

構造は異なりますが、わかりやすい例で言うとシートベルトのロックと似ていて、シートベルトのロックは速く

引っぱるとロックして、ゆっくり引っぱるとロックせずにフリーになりますが、これと似たようなものです。

あまりゆっくりすぎるとフリクションプレートの摩擦面(接触面)がズルズルと滑ってしまい、カム作用による

摩擦力、つまりクサビ効果が充分に高くならず、ロックしてくれないこともあるのです。

これは、オートハブが回転に伴うカムと摩擦力の絶妙なバランスによって作動する原理である以上、その摩擦

力を発生させるためには最低限のスピード(というか勢い)も必要になるからです。

 

マニュアルハブは一度ロックさせれば機械的に直結ですので、前後進を切り替えてもその瞬間から確実に

駆動力を伝えるのですが、オートハブはある程度の「回転と勢い」がないと駆動力を伝えてくれない構造です。

オンロードメインで使用している分にはほとんど問題になりませんが、悪路でのスタック脱出などを試みるとき

などには状況によっては致命的な欠点になる可能性がありますので注意が必要です。

このような構造を考えると、本格的なオフローダーの方にはこの構造のオートハブはあまりお薦めできません。

 

それと、個人的に気になる点がもうひとつあります。

それはフリクションプレートにかかるイニシャルトルクです。 これは2駆状態(トランスファー2H、

ハブはフリー)では回転は停止しているので問題はないのですが、4駆状態にしたときにはこのフリクション

プレートはイニシャルトルクがかかった状態で常に摩擦しながら回転しているのです。

このイニシャルトルクはたしかに僅かな力ではあるのですが、これはパワーロスと同時にこの部分はグリス

だけの潤滑ですので摩擦熱の発生なども気になります。(もっとも、4駆状態でそんなに高速走行はしない

とは思いますが)

また、フリー状態の時に空転する際、スリーブ外径とボディ内径が摩擦するのですが、この面積がけっこう

大きいため、この部分でもけっこうなフリクションロスになるのではないかと思います。

とはいえこれが燃費や高速性能に影響するほどのものとは思えませんが、とりあえず確実に言えることは

オートハブはマニュアルハブに比べ、ロック状態でもフリー状態でも無駄なフリクションロスが大きい構造

となっていることだけはたしかです。


●今回、オートハブを分解したことでいろいろ解ったのですが、私のようなクルマの使い方からすれば

たしかに便利で優れたメカニズムではあるのですが、やはり動作の確実性に欠けることや動作の条件が

あること、また、けっこうな重量があること、それにマニュアルハブに比べてフリクションロスが大きい

ことなど、機械的に気に入らない点が多いことから装着はやめました。

 

また、個人的に最大の問題は「現在フリー状態なのかロック状態なのか外観から判別がつかない」ことが

あります。 ただ、これはフタの部分を加工するなどして内部が見えるようにしたり、スプラインの移動

量を測れるよう簡単な加工をしてインジケーターをつけることなどで不可能ではありませんが。

これは現行のエアロッキングハブでもそうですが、確実さに疑問が残るメカニズムだからこそ、外観から

現在フリー状態なのかロック状態なのか物理的に(電気的ではなく機械的に)判別できるような仕組みが

欲しいところです。 そうすることで安心感がだいぶ上がると思いますので。

 

●やはり機械としての信頼性、確実性という意味ではマニュアルハブに優るものなしというところでしょう。

ただし、これはオートハブが悪いという意味ではなく、便利なものほどその特性を理解して使用することが

大切だということです。

フリーハブのオート化は世界中の自動車メーカーがさまざまな方法を試していますが、にもかかわらずいまだ

にこれが決定版といえるようなものがないというのはある意味おもしろいものだと思います。


えんいー! ヽ(´ー`)ノ~~~