ステンレス製ボンネットヒンジ取り付けと軽量ボンネットについて
ヒンジ可動部の錆びが酷くなり動きが悪くなったので交換しました

●旧型ジムニーのボンネット、ドア、リアゲートの各ヒンジ(蝶番)は車体表面にむき出しとなっていて、
これはオフロード車としてのジムニーに質実剛健でヘビーデューティーなイメージを与えるデザイン的な
アクセント要素となっています。
ですが、デメリットとしてヒンジがむき出しで雨ざらしということで、当然ながら可動部が錆びてきて、
最悪は固着して動かなくなってしまうという事態になりかねません。 実際、とくに普段から自分で整備
しない人、たとえば女の子のジムニーオーナーさんなどは普段ほとんどボンネットを開けないので、この
ボンネットヒンジがサビ付いて固着し、最悪は「ボンネットが開かない!」という事態になることもある
ようです。 これは旧型ジムニーの意外なウィークポイントですね。
私の場合はチューニングエンジンということもあり、メンテナンス等でわりと普段から頻繁にボンネットを
開けているほうなので、この16年間そういったことはなかったのですが、最近はチューニングも落ち着いて
きて弄ることもなくなってきたこともあり、気がつけば1カ月以上もボンネットをまったく開けていませんで
した。
それで、何気なく「たまにはオイル量でもチェックしてみるか」とボンネットを開けたところ、いちおうフロント
ガラスに当たるまで全開にはなるのですが、なんとなく今までより重いというか、フリクション感があり、
どうもいまいち動きが渋いなと感じたのです。「ついに私の車も噂に聞くジムニーの持病、ヒンジ錆び発症か!」
となったわけです。 決してボンネットが開かないほどではないのでまだ「軽症」だったので良かったのですが、
これ以上悪化しては困るのでとりあえず応急処置として水置換性浸透防錆潤滑剤、いわゆるCRC5-56のような
オイルスプレーをヒンジの可動部に吹き付けておきます。

↑使ったのは石原薬品/ユニコンの「強力浸透ねじ緩め411」。
これはCRCやラスペネなどよりも浸透力が強く、吹き付けた油が泡のようになって付着するもので垂れにくく、
錆び付いて固着したボルト、ナットを緩めるのにかなり効果的な製品で、以前、緑整備センターさんに教えて
もらい購入しておいたものです。

↑説明書きにもねじ緩めの他、今回のようなヒンジの潤滑にも適していると書かれていますので、まさに最適な
ケミカルです。
とりあえず応急処置としてはこれを吹き付けながら何度もボンネットを開け閉めしているうちに動きは軽く
スムーズになりました。 旧型ジムニーオーナーさんは最低でも2週間に1回〜1カ月に1回はボンネットを開けて
エンジンまわりの点検がてら、ボンネットヒンジを動かしておいたほうがいいと思います。 また、定期的に油を
さしておくと良いでしょう。 完全に錆び付いてボンネットが開かなくなった場合、強引に開けるとボディ側の
取り付け部分まで変形させてしまうことになったら大変ですからね。 ほんと、ジムニーは意外なところに手間の
かかる車です。
もちろん、この錆による固着の症状はボンネット以外の左右ドアやリアゲートのヒンジでも同様なことが起こり
得るわけですが、左右ドアやリアゲートはわりと普段から開閉しているでしょうから、まず固着するほど悪化する
ことは少ないんじゃないかと思います。 しかし、万が一同様の症状が出たら対処方法は同じです。
●ステンレス製ボンネットヒンジへの交換
ジムニーという車はほんとにアフターパーツが豊富で、当然のように今回のような事態に対処するための社外品の
ステンレス製ヒンジがあるので購入してみました。

↑メタルワークスナカミチ製ステンレス製ボンネットヒンジ。
旧型ジムニーはJA11型まではヒンジがボンネットに熔接されていて交換できないのですが、JA12、JA22、JB32
になってからはヒンジがボルト留めされて、この部品だけで単品で交換可能な構造になっています。
そこで、今回の経験をふまえてまた錆びて動きが悪くなるのも嫌なので社外品のステンレス製ヒンジに交換しました。
仕上がりもバフポリッシュ仕上げで美しく、外観上のドレスアップ効果も期待できます。
材質はSUS304、板厚は純正より薄く3mmしかありません。実用強度的にはギリギリ問題ないレベルかと思われます。
しかしながら願わくば純正と同じ板厚で製作してほしかったところです。 SUS304の破断強度は決して高くはない
(引っ張り強さではSS41材よりわずかに上ですが、降伏点ではSS41よりも20%近く低い)ですから最低でも純正同等
の強度は確保して欲しいところ。 しかも、このヒンジは純正ではベース部とヒンジ部が一体になっていますが、この
メタルワークスナカミチ製のものはヒンジ部とベース部が別々で溶接によって接合されているため、この溶接部が弱く、
事故の際にはここから破断する恐れがあります。

↑ステンレスヒンジの溶接部。強度的にはここがいちばん弱いと思われます。
ヒンジ板部のもっとも弱い部分(穴の空いた箇所の最小断面積)での強度比較をしますと、純正は材質がSS400相当
だと思いますので引っ張り強さは41kgf/mm^2、厚さ4.5mmですので、計算上は3137kgありますが、メタル
ワークスナカミチの製品は材質がSUS304で引っ張り強さは53kgf/mm^2、厚さ3mmですので、計算上2703kg
しかありません。 つまり、このメタルワークスナカミチのヒンジは単純計算で純正比86%の強度しかないという
ことです。 この点は詰めが甘く残念なところではあります。せめて厚さ4mmは欲しかったところですね。
「ボンネットヒンジの強度なんてとくに必要ないのでは?」と思われる方も多いと思いますが、実はボンネットヒンジ
の強度は安全上重要で、ボンネットは事故の際にはへの字に折れ曲がってくれないと困るため、このヒンジの強度は
安全上かなり大切で、もし前面衝突の際、ボンネットが曲がるより先にヒンジがちぎれてしまうとボンネットが車内
に飛び込んできて大惨事になりかねないからです。 よくJAFがおこなっている前面衝突実験のクラッシュテストの
画像を見ている人ならこれはよくわかると思います。 どんな車でも必ずボンネットはヒンジから外れることなく
「へ」の字に折れ曲がって潰れることでボンネットがキャビンへ突入する被害を防いでいますからね。
自動車メーカーはしっかりそこまで考えて強度設計しているのですが、ナカミチのこのヒンジは残念ながらそこまで
は考えてないようです。 旧型ジムニーのボンネットは両サイドが折れ曲がってリブ形状のようになっているため、
一般乗用車のフラットなボンネットよりも折れ曲がりに強いため、よりボンネットヒンジの強度が必要になるのです。
まぁ、この業者は車が専門ではなく、一般金属加工の傍らついでに趣味半分でジムニーパーツを作っているだけみたい
なので、そういう専門知識が不足しているのでしょう。 自動車部品を製造販売する以上はもっとしっかり自動車設計
の基本について勉強していただきたいところです。
たまに適当な薄いペラペラな鋼板材でボンネットリフトブラケットを作っている人がいますが、ちゃんと強度計算を
したうえで製作しないと万が一の際に危険なのですよ。 プロのショップでも僅か2mmという薄いペラペラな材料
でボンネットリフトブラケットを販売しているのを見ますが、これでは明らかに強度が足りません。 私から言わせ
ればよくこんな危険なものを平気で客に売れるものだなとその無知蒙昧さに呆れます。旧型ジムニーの場合、SS400
材やSUS304材なら最低でも板厚4mmはないと安全強度を確保できません。
●ステンレスボンネットヒンジの取り付け
まぁ、若干の強度上の不満はありますが仕上がりは綺麗な製品ですし、せっかく購入したので装着します。 装着
は完全ボルトオンでノーマルと交換するだけでOKで、製品精度は高く申し分ありません。

↑装着し裏側から見たところ。
取り付けは本当なら2人いたほうが楽にできると思いますが、1人でも支えながら片方づつおこなえば可能です。
ただ、取り付け作業中にボディに誤って傷をつけないよう塗装面に養生しながらおこないます。 片側ボルト4本
のみですので、作業自体は難易度はそれほど高くありません。 ただ、左右のヒンジの軸アライメントをちゃんと
出しておかないとスムーズにボンネットが開かないのと、ボンネットキャッチ(ボンネットラッチ)とのセンター
も合ってないといけないので、いきなりボルトを本締めしないで最初は仮締めし、位置合わせはしっかりおこなう
必要があります。 あと、ジムニーの純正ボンネットは重量が約14kgありますのでその点は気をつけて指を挟んだ
りケガをしないよう注意して作業してください。

↑ボンネットキャッチ(ボンネットストライカー)のセンターをきっちり合わせることを忘れずに。私の場合は
すんなり1回でバッチリ合いました。

↑あと、キットに付属していたステンレスボタンボルトも強度的に問題あるのですが、このステンレスヒンジの
バカ穴がかなり大きく(M6のボルト径に対して10φもある)、付属ワッシャーの外径13φ、厚さ0.5mmでは
とても頼りないものだったため、私は外径16φ、厚さ1mmのものを別途用意して使用しました。 このくらい
の径と厚みがないと面圧(圧力分散)、強度的に不安です。

↑ちなみに純正は強度区分7のボルトに外径16φのワッシャーを使用しています。 7Tというと引っ張り強さで
いうと70kgf/mm^2相当の材料で、けっこうな高強度のボルトを使用していることからも、ボンネットヒンジの
強度がどれほど重要かということがこれを見てもよくわかります。 ですので、メタルワークスナカミチの
ステンレスヒンジもこのボルトの強度も純正に準じていただきたかったところ。 こういう細かい点についても
やや詰めが甘い製品であると言えます。 ボルトも強度のしっかりしたものを使う必要があるのです。

↑装着して表から見たところ。
露出面積はそれほどでもないので思ったほど目立たない感じですが、ワンポイントのアクセントにはなっている
でしょうかね。 オールステンレスなのでこれでもう錆びついて動かないなんてこともないので安心感はあります。
いちおう可動部にはシリコンオイルスプレーを吹いておきました。
●取り外した純正ボンネットヒンジ

↑左側のヒンジはわりとスムーズに動くのですが、右側のヒンジはかなり錆で固着しており、この状態では手で
動かすことは困難なくらい動きが重くなっていました。 このままだとボディ側取り付け部にかなりの負担をかける
ことになっていたでしょうから、やはり今回交換して良かったです。 なお、純正ヒンジの板厚は4.5mmもあり、
かなり頑丈にできています。
<電食(電蝕)について>
厳密に言えばですが、今回のように通常のスチール(鉄板)にステンレスやアルミニウムのような異種金属を直接接触
させた場合、そこが雨など水分が付着するとその素材によって異なる電位差で生じる微弱電流の影響で錆びが生じる
ことがあります。 これを「電位差腐蝕」と言います。 いくら錆に強いオーステナイト系ステンレスのSUS304でも
この電位差腐食には案外弱く、接触面に赤サビが生じることがあります。
これを防ぐために、本来は間に樹脂のシートやワッシャーを挟んで電気的に絶縁し、直接異種金属が接触しないよう
にするのがベストです。 私が昔乗っていたR32 GT-Rもボンネットとフロントフェンダーがアルミ製だったので、
純正では樹脂のワッシャーが挟まれて電蝕対策されていました。 なので、錆びが気になる方はボディとの接触部分
に樹脂のシートを挟んだりして対処してもいいかと思います。 とくに、海の近くに住んでる人や、冬季に融雪剤
(塩カル)などを撒くようなただでさえ車が錆びやすい地域に住んでる人はそうしたほうがいいかもしれません。
今回、私の場合は残りの車の寿命を考えれば今後5年や10年はまったく問題ないレベルだろうと考え、とくに何も
しませんでした。 実際、今までもあと付けフォグランプのマウントにスチールのボルトにステンレスのナットを
組み合わせて使ってかなりの年数経ちますが、とくに錆びや腐食が進行したということもありませんので、実際には
それほど神経質になるほどのことでもないのかもしれません。 ただ、ボルトのネジ部分にはスレッドコンパウンド
を塗って締めました。 まぁ、ここは2度と外すことはないとは思いますが、念のための錆びつき防止処置です。

●メタルワークスナカミチ製のステンレスヒンジの総合評価
前述しましたように、多少の強度的不安や細部に詰めが甘い部分があることが残念ではありますが、仕上げは非常に
美しく丁寧な逸品です。 これによってヒンジ錆による固着の心配から解放されることを考えれば、見た目の美しさ
とともに、機能面、美観面での合格点はあげられると思います。 また、価格も1万円以下と品質のわりに良心的で
コストパフォーマンスも良く非常に満足度の高いものと思います。
ただ、今回気づいた点で、できるならメーカーに今後改良していただきたいポイントは以下の3点。
(1)破断強度向上のため、板厚を現在の3mmから4mmに厚くしてもらいたい。
(2)付属ボルトをステンレスボルトの中でも比較的強い強度区分A2-70クラスのボルトにしてもらいたい。
(3)付属ワッシャーを現在のφ13×0.5tから純正と同じφ16×1tにしてもらいたい。
●ジムニー用軽量ボンネットについて
実をいうと私もこのクソ重いノーマルボンネットを社外のFRP製あるいはカーボン製に替えたいと常々思っている
のです。一番の有力候補はRV4ワイルドグース製のもので、純正ボンネットより9kg以上軽くなるというものです。
ボンネット、つまり鼻先が9kgも軽くなったらハンドリング性能など、相当体感的にも変わるはずで、しかも価格
もFRP製で3万円台、カーボン製でも5万円程度とリーズナブルなので大変魅力的な製品なのです。

↑RV4ワイルドグース製JA12/JA22用カーボンボンネット
カーボンファイバー製とは言っても表面の1プライのみがCFRPで、内側は普通のグラスファイバー製です。
もちろんドライカーボンではなくウェットカーボンです。 表面は光沢クリアゲルコート仕上げ。
この製品をそのまま使ってもいいのですが、問題はその強度というか剛性なのです。 ジムニーをオフロード車
として本来の使い方で使ってる人にはまったく問題ないでしょうけど、ご存知のように私のJA22Wは最高速度が
170km/h〜180km/h程度出ます。 はたしてこのスピードで走っても風圧などで問題が出ないかどうかが心配
で、それで軽量ボンネットにするのをためらっているのです。 ワイルドグースもジムニーでそこまでスピード
を出すことなんて想定して作ってないと思いますので、高速走行中にボンネットがバタバタとたわんだり、
ボンネットピン部が割れて開いたり、最悪は飛んでいったりしたら大事故になりかねません。
たまにヤフオクでも2万円くらいの格安FRPボンネットが出品されているのですが、実際にそれを使ってるユーザー
レビューだと60km/h〜70km/h程度のスピードでもうバタついてたわむらしいので、とても私の車には使えそう
もありません。 かといって、それに耐えうる補強をすると当然重くなり、軽量化の恩恵が薄くなってしまいます。
あと、このワイルドグース製のボンネットでひとこと苦言を言いたいのは、ショップで販売されている専用ヒンジ
がボンネット後端を浮かせる「10mmリフトアップヒンジ」しか用意していないこと。
この「ボンネット後端浮かし」ってのは実は効果がないってこと、なぜ今だに無意味だということがわからない
無知な人が多いのでしょうか。 たしかに空気というのは暖気が上に、寒気は下に移動するので、低速でチンタラ
走ってるぶんには熱気は下から上に抜けるのですが、車速がある程度の高速(80km/h以上)になるとシャーシ裏側
の負圧の方がずっと強くなるので、エンジンルームからの熱気は主にシャーシ裏側から吸い出されるように抜けると
いうのが車の空力の常識です(シャーシ裏がアンダーフロアパネルで完全に塞がれている車は除く)。
ましてや旧型ジムニーはフロントウインドウの角度が立っているので、ボンネット後端部では熱気を抜くのに必要
な負圧よりもフロントウィンドウでせき止められた正圧のほうが勝ってしまうため、ほとんど熱気は抜けません。
これは撥水コートをしたフロントガラスについた雨粒の動きを見ればよくわかります。 このような理由から、
高速走行時にはこのボンネット後端を浮かせるというのは実はほとんど意味をなさないのが現実なのです。
それにボンネット後端を浮かせると、その隙間からバルクヘッドに雨水が入ったり、雪が積もったときにもそこから
溶けた水が入ってくるのでトラブルの元になりかねません。 バルクヘッドには点火コイルをはじめいろんな電装
関係のパーツがついているので水に濡れるのは好ましくないことくらい車のプロならわかって当然と思うのですが。
実に考えがあさはかというか、これも詰めが甘いと言わざるを得ません。
以上のような理由から、RV4ワイルドグースには是非ともリフトしないタイプのボンネットヒンジも用意して
もらいたいです。 できることなら裏骨の位置を工夫してJA12/JA22/JB32の純正ボンネットヒンジが使える
設計に改良してもらいたい。 私以外にもリフトしないボンネットヒンジを望んでるユーザーも多いはずですので。
さらに個人的要望を言えば、多少値段が高くなってもいいので、純正ボンネットストライカー(ボンネットキャッチ)
もボンピンと併用できるようになっているとさらに高速走行時の安心感が増すんですけどね。
これらがいまだに私がボンネットを社外品に交換したくてもできない理由です。 ただ、機会があればいつかは
軽量ボンネットに交換したいと思っています。 以前、APIOがJA22用のFRPボンネットを販売していたのですが、
あれはけっこうガッチリした造りでした。 ただそのぶん重く、純正比-5kgほどの重量だったと記憶しています。
●旧型ジムニーのボンネット全開時の様子。

↑旧型ジムニーはボンネットステー(つっかえ棒)をかけなければこのようにフロントガラスに当たるまでボンネット
が全開になり整備性が高くなります。 これがけっこうエンジンルームの奥の方を弄るときなどに重宝する機能なん
ですよね。 もちろん、この状態でエンジン本体を吊り上げ、脱着することも可能です。
最近、流行りのパーツで、よくジムニーにボンネットダンパーをつける人もいるようですが、あれってかえって邪魔
で整備性の悪化にしかならないんじゃないかと私なんかは思うのですけどね。
ちなみに、写真でとなりに写っているのは知人のJB23-8型ジムニー(フルノーマル)です。 オーナーは女の子
なのですが、ジムニーが好きなようで、このJB23の前はJA11スコットリミテッドに乗っていたんですよ。