ブレーキパッド交換
箱根の下りで純正パッドの限界を感じたので。
●私のジムニーのFブレーキはディスク素材を変えていることもあり、純正パッドでも
効きがノーマルよりもかなり良く、制動力自体はあまり不満はありません。
なので問題になるとしたら効きそのものよりも、連続ブレーキでのフェードのほうですが、
これについても今まで街乗りや高速を普通に走ってる限りは問題になったことはありません。
ですので、今後もブレーキに関してはこのままで充分問題ないと考えておりました。
ですが、たまたま沼津からの帰りに箱根の国道1号を下ってきたところ、普通に走れば問題
なかったのでしょうが、ちょっとペースを上げて走ったいたせいかしばらくして次第に
フェードしはじめたのを感じました。
その後はペースを落として様子を見ながら走っていたのですが、それでもやはり絶対速度
が低いためか思ったほどブレーキの冷却ができず、最終的には思いきり踏んでも完全に
は停止できないほどまでになってしまい、これ以上無理して走るのは危険と判断して退避
スペースで10分ほどブレーキを冷やさないとならないという事態になりました。
今までいろんな車に乗ってきましたが、ここまで完全にフェードさせたのは初めてです。
自分ではそれほど無理なペースで走ったつもりではなかったのですが、タイヤも含め
足まわりをかなりオンロード重視にモディファイしてきたこともあり、知らず知らずの
うちに本来ジムニーが持つオンロードで許容できる性能を超えていたのかもしれません。
そのしわ寄せがブレーキにきたのでしょう。

●ということで、今後の安全のためにもせめてフロントのパッドだけでも耐フェード性の高い
パッドに換えようと思い今回、交換することとしました。
くり返しになりますが、効きそのものは純正でも充分なので、希望としては「効きを良くしたい」
ということではなく「高温でもその効きをできるだけ維持したい」ということになります。
むしろ、今以上にフロントの効きが強くなりすぎるとリアとのバランスが崩れるだけですので。
あと重視するポイントとしては常用域でのローター攻撃性ができるだけ低いことくらいです。
その反面、ダストが多少多くても、磨耗が多少早くても、鳴きが多少出ても、それはあまり問題
にはしません。
ちなみにフェード現象というのはパッド材に含まれる主に樹脂成分が温度によって溶解、蒸散し
それがガス化することで、ローターとパッドの間に膜を形成してしまい、それが一種の潤滑剤と
同じ役目をしてしまうので、摩擦力が限りなくゼロに近くなってしまうのです。
スリットローターやドリルド(穴あき)ローターは、その溝や穴によってこのガス抜きをする
ことで、できるだけこの膜を形成しにくいようにする役目もあります。

↑購入したパッドはAPIO(旧オノウエ自動車)のものです。
はじめは今まで使用して好感触だったメーカーのものにしようかと思ったのですが、ジムニー
を得意としているショップがリリースしている製品がどのようなものか興味もあったので、今回
は代表格とも言えるAPIOのものを選択してみました。
もちろん、このパッドもどこか有名メーカーの製造のものだとは思いますが、さすがに製品を
見ただけではそこまではわかりません。
他にもいろいろ検討はしたのですが、結局は使ってみないとわからないので、耐フェード性重視
の製品の中から、今回はジムニーパーツでは信頼性のありそうなAPIOのものを選択してみました。
APIOくらいに商品ラインナップの多いところであれば、用途別に数種類のパッドを用意してても
いいのではないかという気もしますが、この1種類ですべてのフィールドをカバーしているという
ことなのか、この1種類のみです。 そのへんも含めて興味のあるところではあります。
●交換作業

↑パッド交換はタイヤを外せばキャリパーのスライドピンボルト1本を外すだけでできるので
とくに難しいものではありません。
ですのであえて注意点は書きませんが、ブレーキまわりのパーツですので、自信のない方は
無理に作業せずにプロに依頼してください。

あとは、キャリパーやピストンとの接触部にブレーキグリス(銅粉末入りの耐熱グリス)を薄く
塗って取り付けるだけです。
なお、純正で入っている鳴き防止用のシムですが、私は今回はなるべくダイレクト感が欲しかった
のであえて外して組みました。 ですが、特別な事情がない限りは取り付けたほうが良いことは
言うまでもありません。
ジムニーのシムは外側のみで、ピストン側にはついていませんので、外したことによる断熱性の
低下などについてはあまり気にしなくてもいいと思います。

↑おおまかな温度を把握するため、パッドにサーモステッカーを貼っておきました。
本来はキャリパーに貼るものですが、スポーツカーでサーキットを走るわけではありませんので、
キャリパー本体に貼ってもそこまで温度は上がらないでしょうから、ならばパッド裏板の温度が
どのくらいになるのか興味がありましたので。
ちなみに、ブレーキパッドは通常は残り3mm程度がメーカーの交換の基準となっていますが、
ハードに使用される方は新品時の半分の厚さを基準に交換したほうがいいでしょう。
パッドの残り厚が薄くなると、パッドの熱容量が減るために温度が上昇しやすくなってフェード
しやすくなりますし、パッドと裏板を接着している部分から剥離しやすくなったり、熱が伝わり
やすくなることで、裏板やピストンを通じてフルードの温度を上げてベーパーロックも起こし
やすくなります。 ですので、安全のためにも早めの交換をしたほうがいいです。
ちなみに、ジムニーのブレーキパッドには純正でもウェアインジケーターはついてませんので、
磨耗限界に達しても音では知らせてくれません。
●使用感
とりあえず500kmほどの距離をなるべく多めにブレーキを使うようにして走り、初期馴染みさせて
からの印象ですが、効き味そのものはフレキシブルで、軽く踏んでから少しづつ踏力を増していって
タイヤロックするまでの範囲が広くかつ穏やかなので、コントロールはしやすいほうです。
慣れれば「人間ABS」のような操作もわりと簡単にできるほどで、これは感心します。
私は軽く踏んでグッと効くよりも、軽く踏んだときは弱く、踏力を入れていくに従って強く効いて
くれるほうが好みなので(ABSがついてない車なのでなおさらです)この特性はいい傾向だと思い
ます。
単に踏力に応じて制動力が増していくだけでなく適度にソフトな感じですので、シビアさが少なく
あるポイントから一気にガツンと食いつくということはありませんので、純正パッドよりむしろ
扱いやすいです。
軽く踏んでガツンと強く効くブレーキ(俗にいうカックンブレーキ)というのは、素人感覚では
よく効きそうな印象を与えますが、たいていそういうブレーキは、それ以上踏み込んでも踏力に
シンクロして制動力が上がらないものも多いので、イメージ通りに効いてくれないことがあります。
また、ジムニーのようにホイールベース、トレッドともに狭く、かつ重心の高い不安定な車の場合
はあまり急激にガツンと効くタイプのブレーキですと挙動を乱しやすく、最悪は転倒するリスクも
あるので、そういう意味でもこのパッドは踏力に応じて効きを増していく感じですので、安全性と
いう意味からも好ましいと思います。 なお、ブレーキ鳴きは今のところ発生しておりません。
●さて、一番の目的であった耐フェード性の確認ですが、とりあえず普通に走ってる状態では
まずフェードさせるほど連続で効かせるのは不可能なので、前回、フェードしたのと同じ条件を
再現するために、また箱根に出向きました。
それで、同じように下りである程度のペース(決して「攻める」ほどのレベルではありません。
せいぜいタイヤスキールがする程度です)で走っていると、さすがに純正ではすでにプアーに
なっていたところまできても、しっかり効きは確保できています。
さすがに耐フェード性は高いようです。 温度変化に対しての効き(摩擦具合)も非常に安定して
おり、フィーリング含めて大きな変化はみられず、安定していました。
この種のパッドには共通のことですが、やはり冷えているよりも多少温まった状態をキープした
状態のほうが効きおよび制動力の立ち上がりレスポンスは良いです。
結局、下りきるまで制動力の低下はとくに感じられませんでした。 純正とは雲泥の差です。
また、高速でも前後に車がいないことを確認して120km/h→70km/h程度のブレーキを10回ほど
連続でくり返しましたが、さすがに若干ペダルが奥に入るような感じは出ますが、ここでもとくに
制動力の低下は感じませんでした。
総合して考えると、ストリート用のパッドでここまで持てば高温特性は充分ですし、フィーリング
も含めて私の求める性能からすれば充分に合格点です。
●ただし欠点が全くないわけではなく、2つほど気になる点はあります。
まず、この種のスポーツ系のパッドではある程度は仕方ないのですが、高温時の特性を重視する関係
で、完全に冷えているときと温まりはじめたときの「踏みはじめの食いつきの差」は多少感じます。
この種のパッドは程度の差こそあれそういう傾向があるのは仕方ないのですが、これはあくまでも
純正パッドとの比較という意味で、慣れればまず問題ないレベルのものです。
とは言うものの、今は夏場ですのでこの程度ですが、これが冬期のような氷点下になるくらい冷えた
ときに、温まったときとどの程度体感的な差が広がるものなのかは現時点ではわかりません。
そう考えると、冷えている状態の一発目から強い効きを望んでいる方や、超低温からの温度によるクセ
の少ないパッドを望んでいる方や、冬期、とくに寒い地域の方はもうちょっと低温寄り重視の特性の
パッド、あるいは純正パッドのほうがいいこともあるかも知れません。
次に、雨の日などのブレーキングではややシビアになる感じなので気を遣う面もあります。
いくらコントロール性が高いと言っても、やはり絶対的な制動力が上がっている以上、低μ路ではわり
と簡単にロックしてしまいますので濡れた路面ではやや神経を遣ったブレーキが必要な場面もあります。
とくに左右のタイヤのグリップバランスが崩れているときはステアリングが取られることもあるので
注意が必要です。

↑とりあえずひととおりのテスト走行を終えたところ、サーモステッカーの温度は143度のライン
まで変色して表示していました。 これは143度以上166度未満ということを意味しています。
裏板表面の温度がこのくらいですので、パッド接触面は軽くこの2倍から3倍以上はいっている
はずですので、仮に300度〜500度あたりと仮定した場合、純正パッドではフェードして当然と
言える温度です。
ちなみに、この温度が200度を超えるようなレベルになるとその熱がピストンを伝わってオイル
シールやダストブーツの機能を損ねたり、さらに上がると最悪はベーパーロックを起こしたり
することがありますので注意が必要です。
もっとも、ジムニーではまずそこまで温度が上がることはないとは思いますが、パッドの残厚が
薄くなると断熱性が損なわれて温度が予想以上に上がることも考えられますので注意が必要です。
●スポーツパッドについて
社外ブレーキパッドというのは、様々な種類があり各社いろいろな宣伝文句が書かれています
が、ひとつ言えることは「オールラウンダーは存在しない」ということです。
強いて言えばもっとも汎用性が高いのが純正パッドだと言えます。
対してアフターマーケットのスポーツ系パッドは、どんなパッドでも必ず、ある性能を引き
上げたメリットの裏返しとしてデメリットも存在しますので、それが自分の目的や好みに照らし
て許容できる範囲かどうかを見極めるのが重要です。
ちゃんとしたメーカーは様々なデーターや技術コメントを載せていますので、それらを見てある
程度はそのパッドの傾向を把握できますが、やはり数字やグラフではわからない、人間の感性の
部分がもっとも大きいですので、これはもう実際に使ってみるしか方法はないと言えます。
また、注意してただきたいのは、同じパッドでも組合わせるブレーキローターの材質や車の仕様、
使用するタイヤのグリップ力、ABSの有無などによってもとくに限界域での体感の印象は大きく
変わります。
私の車のブレーキ関係は、パッドだけでなく、ブレーキローター、ブレーキホース、マスター
シリンダーストッパー、そしてタイヤなど、非純正のパーツを組み合わせての結果ですので、全く
の純正状態の車両や、オフロード向けのチューニングがされた車両にこのパッドを組んだ場合は、
また印象が大きく変わることがあります。 ブレーキパッドはあくまでブレーキシステムの一要素
でしかないので、同じパッドでも他のパーツなどの影響で性能も特性も変わるということです。
●ローターの磨耗状態

このローターに換えてから約20000kmほど走りましたが、最初10mmのところ、9.92mmと、
大きな磨耗は見受けられませんし、ジャダー痕やレコード盤磨耗、クラックもありませんでした。
(ダクタイル鋳鉄ですのでクラックはよほどのことがない限りは発生しません)
効きと磨耗のバランスを考えると、素材の選択は良かったようです。
ただ、今回このパッドにしたことにより、純正パッドよりは磨耗量の増加はすると思います。