ブローバイサブタンク
エンジン内部の圧力低減と、ブローバイに含まれるオイルをリターンさせるものです。

●ブローバイガスについてはここでは詳しくは書きませんが、要するにシリンダーと
ピストンの隙間から吹き出すガス類(未燃焼ガス、燃焼ガス、排気ガス)の総称です。
(ブローバイガスについてはこちらのページで書いています)
通常ウエットサンプ式のエンジンの場合、このブローバイガスはクランクケース内に
入ったあと、ヘッドに設けられたブローバイガスのブリーザーパイプからサクションパイプ
やサージタンクへと吸い込まれることで処理されています。
問題はこのブローバイガスの量で、走行距離が多くシリンダー磨耗の進行したエンジンや、
設計上あるいは製造上もともとブローバイの発生量の多いエンジンなど、吹き抜けるガスの
量が多いエンジンの場合、このガスのせいでクランクケース内部の圧力が上がってしまうこと
があります。
また、このブローバイガスは生ガス分や燃焼時のカーボンを多量に含むため、それがエンジン
オイルを希釈したり汚したりするため、エンジンオイルを劣化させる最大の原因でもあります。
一方、エンジン内部ではピストンの上下動やクランクウエイト、コンロッドなどが回転
する際、クランクケース内部の空気(ガス)を押し退けながら動くため、ここで空気抵抗
が生じます。 この空気抵抗は当然ながら気圧が高くなるほど大きくなるため、ブローバイ
ガスが多い(つまり、クランクケース内部の気圧が高い状態)ほどその抵抗は増大します。
つまり、こうしたエンジン内部の無駄な抵抗をできるだけ低くするためにも、ブローバイ
ガスによる圧力をできるだけ下げてやることが重要となるわけで、これは即パワーロスの
低減に繋がります。
とくに最近のエンジンは軽量コンパクトにするためにクランクケース内部の容積が小さく
なっているため、より積極的にブローバイガスを抜いてやることは重要となります。
そこで、今回のブローバイサブタンクですが、これは単純な話、ヘッドだけではなく
クランクケースからもガスを抜いてやろうというわけです。
もちろんこの程度のパワーロスはたかが知れている(最高出力時で数馬力程度)のですが、
排気量が小さく高回転型のオートバイのエンジンや、軽自動車のようにもともと非力な
エンジンの場合、このクランクケース内の圧力は決して無視できないものと言えます。
また、ターボエンジンの場合はクランクケース内圧が高くなると、ターボからのオイル
リターンが悪くなるため、極端な例で言えばタービンの潤滑不良による焼き付きの原因に
なったり、そのガス圧に押されて排気側からオイルがリークしてマフラーからの白煙の原因
になったりします。
同様にエンジン本体についても、この圧力の働きによりクランクシールなどのオイルシールや
ガスケットからのオイル漏れの助長をすることにもなりますし、ヘッドからのオイルリターン
を妨げることにもなります。
ですので、ブローバイガスを積極的に抜いてエンジン内部の圧力を下げてやることは、結果と
してターボチャージャーやエンジン本体の保護などにも繋がるということにもなります。

↑ブローバイサブタンク本体
本体はオートスタッフ製の既製品でアルミ製です。 素地のままだったので軽くバフ掛け。
さらに、下部のホースニップル内径も7φドリルを通して拡大、サイドの2本のホースニップル
内径も13φを通して拡大、できるだけ効率を上げる加工をしました。
取りつけ要領は単純で、オイルレベルゲージ穴をブローバイ抜きに利用するわけです。
レベルゲージ穴はオイルパンよりちょっと上にありますので、ここからガス抜きをすること
でクランクケース内圧を下げてやろうということです。
ただしクランクケース内部はオイル飛沫の飛散やオイルジェットの飛沫、気化したオイルなど
で充満していますので、そのままブローバイホースに直結したのではヘッドからのブローバイ
とは比較にならないほどオイル飛沫を一緒に吸引してしまいますので、オイルキャッチタンク
をつけていてもすぐにオイルが溜まってしまいます。
そこでオイルキャッチタンクの前にこのサブタンクを設け、この部分で一旦、オイル分とガス分
を分離してからメインのブローバイパイプに合流、さらにメインのオイルキャッチタンクを経由
してからサクションパイプに繋がるという経路になります。
つまりオイルキャッチタンクというよりも気液分離器、つまりセパレーターと考えていただいた
ほうがいいと思います。

↑図であらわすとこうなります。
ただ、誰もが疑問に感じることだと思いますが「こんな細いパイプから抜いたって無意味だろう」
というのがあると思います。 実際、私も当初はそう考えていました。
レベルゲージ穴の内径はたいていわずか8mm〜10mmしかなく、こんな細いパイプから抜いても
たかが知れてるというのは当然です。
ただ、市販のエンジンを見てみると、たとえばトヨタのエンジンなどはヘッドにあるメインの
ブローバイホースでさえ内径が9mmとか10mmと非常に細いものが多く、こんな細いホースで
本当に大丈夫なのか?と感じるほどです。
GT-RのRB26などは20mmもあるホースが2本も出ている事などから比べると、ほぼ同クラスの
2JZ-GTEなどのブローバイホースはほんとにこんな細くて足りるのかどうか疑問にさえ思います。
ただ、そう考えるとわずか8mm〜10mmとはいえ、追加でブローバイ抜きが増えるということは
実はけっこう大きな違いになるのではないのではないかと考えることもできるわけです。
ましてや軽自動車のエンジンのようにクランクケース容積が小さいエンジンであれば、同じホース
径でも排気量の大きいエンジンよりも相対的に効果は上がりそうな気がしますし。
そういえば、日産のSR系エンジンには同じような目的のサブタンク(セパレーター)が純正で
ついていました。 SRはもともとブローバイの多いエンジンでしたから。
●取り付け

↑とくに説明は必要ないと思います。 見たままです。
ごくシンプルについていますが、実際はここまでいきつくのに何回か試行錯誤をしています。
タンクの位置はオイルが内部に溜まったときのことを考え、レベルゲージ穴よりも上にします。
サブタンクをレベルゲージパイプ直上にマウント、ヘッドからのブローバイパイプを繋ぎ、
サブタンク上部の仕切りパイプからのガスをメインのキャッチタンクへと繋ぎます。
これにより、ほとんどのオイル分はサブタンク部で分離され、溜まったオイルはレベルゲージ
パイプおよびヘッド側のブローバイホースを通して再びエンジン内部に戻ります。
ですのでサブタンクはもっとも高い位置に装着していないとならないわけです。

↑レベルゲージパイプの先端部分のツバの外周は、ホースをかぶせるためにR仕上げをして
おきます。 こうすることでホースのささくれ、傷つき、オイル漏れを防ぎます。
本来の取りつけ方法では、このパイプ内径部に付属のホースジョイントを差し込んで繋ぐの
ですが、このジョイントの内径はわずか4.5mm程度しかないため、その部分でかなりの抵抗
になってしまうのが嫌だったので、私はレベルゲージパイプの外径にホースを被せて、直接
サブタンクを取り付けることで、その効果を最大限に活かせるようにしました。

↑外したレベルゲージは、8φのホースをサヤ代わりにして通して、エンジンルーム内に仮設置
しておきました。
オイル交換時やオイル量点検時はいちいちサブタンクを外さないといけませんが、ホースバンド
2箇所を緩めるだけですので、最小の手間でできるように配慮したつもりです。
●効果
ブローバイガスの発生は高回転でフルブーストの時がもっとも多いですので、試すためには必然的
にできるだけブーストをかけての走行をする必要があります。
(ちなみにアイドリング時やエンブレ時などはPCVバルブ側からサージタンクにブローバイが流れる
ため、メインのブローバイ系統は逆に大気をクランクケースに吸引することで、クランクケース
内を換気していますので、ブローバイガスの流れは逆方向になります)
そのような状況である程度走ってみましたが、サブタンクによる分離は有効なようで1500kmほど
走ってもサブタンクからメインのキャッチタンクに向かうパイプにはオイルミストの付着はあるものの
キャッチタンクにオイルが溜まるようなことはありませんでした。
クランクケースから直にブローバイを抜くということは、かなりの量のオイルを一緒に吸い上げて
しまうのでヘッドからとは比べものにならないくらいキャッチタンクにオイルがいってしまうの
を心配していたのですが、レベルゲージパイプ側から吸い上げられたガスに含まれていたオイルミスト
は殆どサブタンクで分離され、うまくレベルゲージ穴を通ってオイルパンに戻されているようです。
さて、体感的な違いについてですが、さすがにこれは体感できるほどの差はありませんでした。
ただ、今回のテストのためにかなりブーストかけたり全開走行を続けたにもかかわらず、燃費
がリッター12km台と良かったのはちょっと意外でした。
もうちょっと長く走ってみないとわかりませんが、もしかしたらパワーロスの低減が若干、燃費にいい
影響を与えているのかもしれません。
それと、前述しましたようにハードな走りをした際のタービンなどの保護に少しでも貢献できれば
いいので、この手のパーツは決して体感できないから効果がないというものでもないと思います。
<追記>
クランクケース圧についてはこちらのページでも記載しています。 →クランクケース内圧について
●注意
冒頭でも書いていますが、このパーツはクランクケースからのガスをそのまま抜いていますので、
程度の差こそあれオイル飛沫も一緒に吸い出します。
正常な量の範囲であればサブタンク内で分離されて、オイルなどの液体分のほとんどはそのまま
オイルパンに戻りますが、ブローバイガスの発生量が多いエンジンはそれだけ多量のオイルも一緒
に出てしまいますので、オイルの飛沫分の一部はサブタンクで分離しきれずに一緒に吸い出されて
しまうことがあります。
その場合メインのオイルキャッチタンクやサクションパイプに余剰なオイルが行きますので、その分
エンジンオイルが消費されてしまい、エンジンオイルの減りが早くなります。
ですので、こまめにオイルレベルゲージでオイル量の確認をすることが必要になります。