(番外編)K6Aエンジンのバルブタイミングダイアグラム
大まかですが、K6Aエンジンのバルブタイミングおよび作用角からダイアグラムを作成しました。
●このページでも過去にカムシャフトを実測したり、そこからK6Aエンジンのカム関係の寸法や角度を
記載してきましたが、その後、他の方からも情報提供をしていただき、それらをまとめてダイアグラム
とリフトカーブにまとめてみました。
なお、私も含めてこれらの基になるデータも基本的にすべて実測によるものですので、たとえば個体差
やタイミングチェーンの延び、計測誤差もありますので、絶対的な精度は保証できません。
あくまで参考程度に捉えてください。
●K6Aノーマルエンジンのバルブタイミングダイアグラム

↑以前の私の計測ではINカムの作用角は212°でしたが、どうも220°近辺が正しいようです。
また、見てもわかりますようにオーバーラップは16°あります。 私はオーバーラップはほとんど0
だと想像していたので、少ないながらもオーバーラップがあることがわかりました。
いずれにしても、かなりおとなしい数値であることに変わりはありません。
●K6AワークスRエンジンのバルブタイミングダイアグラム

↑これが私にはヒジョ〜に不思議なんです。
EX側はいいのですが、IN側のタイミングがなんか不自然ですよね。
通常はINバルブの開きは上死点前が当たり前なんですが、このタイミングだと上死点後2°過ぎてから
開くことになります。 これが何を意図しているのか、どういう効果を狙ったものなのかは私には
ちょっと理解できないところであります。
オーバーラップが標準のK6Aよりも狭い理由のひとつとして、ワークスRの圧縮比があると思います。
標準のK6Aの圧縮比8.4に対して、ワークスRは7.6とローコンプなので、オーバーラップが大きいと
吹き抜けが多く低速トルクが下がってしまうので、そのへんのバランスをとってのこともあると考えて
います。 あとは排ガス規制値も関係してるのでしょうか。
作用角については、ノーマルエンジンのカムとの差はIN側は8°ほど作用角は広いですが、排気側は
ほとんど同じですので、ワークスRカムはおもにリフトのほうで差をつけているようです。 個人的には
もうちょっと思いきったハイカムにしても問題ないのではないかという気がしますが、やはりこれも
排ガス規制の問題があってのことでしょう。
個人的には、このワークスRカムを標準カムと同じバルタイで使用したら面白そうな気もします。
●ノーマルK6AとワークスR K6Aのバルブリフトカーブ比較

↑実測値を元にしたバルブリフトカーブの比較です。
重要なのはタイミングもさることながら、このカーブで囲まれた部分の「時間面積」の違いです。
この面積の違いが即ちバルブ開口面積(時間×リフト)そのものですので、これを比較すれば
いかにワークスRカムのほうが「より多くの吸排気ができるのか」がわかると思います。
ちなみにバルブリフト量はどのくらい必要かという点についてですが、単純にバルブ傘外周×リフト量で
いわゆるカーテン面積を計算すると、リフト量はバルブ傘径の1/4あれば良いという話になるわけですが、
実際にはバルブの周りにはシリンダーの壁があったり隣のバルブと隣接して「マスキング」されてしまう
部分があるため、現実には径の1/4では足りず、それを充分に補うためにはバルブ傘径の1/3近くのリフト
が必要だと言われています。
このK6Aの場合で言うと吸気バルブ傘径が24.6φですので、1/4で6.15mm、1/3だと8.2mmとなります。
(ちなみに排気バルブでは傘径が21.5mmですので、1/4で5.38mm、1/3で7.17mmとなります)
この数字からするとワークスRカムのリフト量はかなりバランスの良いところなのではないかと思います。
●これらの基になる実測データについては「Teamカムルチー」のかむるち様に御協力いただきました。
ありがとうございました。
●まとめ
いずれにしても、意外にK6Aのカムは中低速重視であることがよくわかると思います。
おそらく、最新のJB23ジムニーなどはより実用域トルク重視および排ガス規制により作用角やタイミング、
インマニやポート形状が旧規格K6Aより低中速重視になっていると想像されます。
そういう意味では旧規格のK6Aのほうが高回転パワーは出しやすいのですが、それでもこのカムスペック
ではいくらタービンをサイズアップしてもおのずと限界があるわけで、たとえば10000rpmまで一気に
吹け上がるようなパワーフィールはとうてい望めません。
ちなみにF5AやF6A(DOHC)のようなIN230〜238°、EX248〜256°といった高回転向きのカムにしたら
面白いんじゃないかとも思うのですが、このF6AとK6Aのカムをリフトの面で比較すると、面白いことにF6A
エンジンはバルブリフトが5.9mm(カムリフトではなくバルブリフトです)しかなく、K6Aよりも約1mmも
バルブリフトが少ないのです。
バルブのサイズそのものは同じなので、K6Aはリフト重視、F6Aは作用角重視というような見方ができます。
これはエンジン設計年代の差もあり、F6Aの時代よりもK6Aの時代のほうがよりバルブの「加速度」の解析
が進んでおり「より早く加速させてゆっくり減速する」というようなリフトカーブになっていることも関係
していると思われます。
喩えて言うなら、F6Aはバルブのリフト量は少ないかわりに、長い時間バルブを開かせて吸排気効率を稼ぐ、
逆にK6Aはバルブの開く時間は短くても、バルブを多くリフトさせて吸排気効率を稼ぐという感じでしょうか。
(ここで上記リフトカーブ図の「時間面積」というのが重要になってくるのです)
もちろん、エンジンの設計年代も違いますし、リフトと開度は根本的に違うものであることは理解しています
が、エンジンの性格を決めるカムのプロフィールを比べてみると、タービンよりもさらに興味深いことが判る
ような気がします。
それと、一般的に同じエンジンならばターボよりもNAのほうが作用角は広めなので、NA用のカムを使用する
ことがありますが(よくF6AツインカムにF5BのNAカムを流用することがあるようですが)、 K6AのNAのカム
の作用角は今のところ不明ですが、リフトだけに関して言えば、IN側では約0.1mmとほぼ誤差の範囲ですが、
EXだと0.7mmもNAのほうがリフトが少ないので、仮に作用角がNAカムシャフトのほうが大きかったとしても
トータルでの性能はむしろ低下すると思われます。
●(参考)対称カムと非対称カムについて。
以前にも質問があったのでここでついでに書いておきたいと思いますが、カム山が頂点に対して対称のものと
非対称のものは何が違うのかということについてです。
これはバルブ駆動系の違いによるもので、たとえばK6Aのような「直動式」の場合はカム山(カムプロファイル)
がそのままバルブリフトカーブになりますので、通常は対称カムとなります。
それに対してF6Aのようなロッカーアームを使用したタイプはやや複雑で、ロッカーアームの揺動支点とカム
ノーズの接点の距離が常に変化しながらバルブをリフトさせる、つまりレバー比が変化しながら動くため、対称
カムでは結果としてバルブリフトカーブが対称になってくれないのです。
そのため、バルブリフトカーブから逆算してそれが対称となるようにカムプロフィールを作るため、カム自体
は非対称となるのです。 昔の日産L型エンジンもロッカーアームを使うため、非対称カムが当たり前でしたね。

↑1500ccターボF1時代のホンダRA168Eエンジン。 このエンジンもロッカーアーム使用のため非対称カム
が使用されていることが図からも解ります。
この「直動式」が良いか「ロッカーアーム式」が良いかはそれぞれにメリットとデメリットがあるので優劣は
つけ難いのですが、直動式はバルブの駆動剛性には有利ですが、リフターがこじられながらスライドするため
意外と摺動抵抗(摩擦抵抗)が大きいというデメリットがあります。
対してロッカーアーム式はバルブの駆動剛性という点ではやや劣りますが、摺動抵抗はむしろ直動式より少なく、
また、ロッカーアームの揺動部分の慣性質量もきちんと無駄なく設計すれば実質的には直動式よりも少なく作る
ことができるのではないかと思います。
とくにハイリフトカムになればなるほど、直動式はリフター(タペット)径を大きくしなければならないため、
ロッカーアーム式のほうが有利になってきます。 このへんがホンダがDOHCでもロッカーアーム式にこだわる
理由なのではないかという気がします。