スポーツエアクリーナーを通過する砂塵と燃焼カーボンの害について
実はエンジン内を傷つける大きな原因はエンジン内部から発生する「燃焼カーボン」にあります
●今年に入って様々なスポーツエアフィルターについて、集塵性能が高いとか低いとか書いてきました
が、たしかに集塵性能の低い吸気抵抗重視のエアクリーナーは空気中の細かい砂塵などをエンジン内に
吸い込みますので、それがシリンダーやピストン、ピストンリングの摩耗や傷つき、あるいはエンジン
オイルの汚損の原因になることは間違いありません。

↑目の粗い吸気抵抗低減を最重視したエアフィルターはどうしてもその裏返しで、空気中の細かい砂や
ホコリを吸い込んでしまいます。 スポーツエアクリーナーは吸気効率と集塵性能をいかに高い次元で
バランスさせるのかが難しいところです。
●しかし、実はそれ以上にエンジンにとって害なのは「燃焼カーボン」なのです!

↑これは私のK6Aエンジンをオーバーホールした際のシリンダーヘッド。燃料冷却(ガソリン冷却)
のため、全開時の空燃比(A/F)を濃いめにしているため、どうしても燃焼室には多量のカーボンが
堆積してしまいます。このカーボンが、実はエアクリーナーから吸い込まれた砂塵以上に悪さをする
のですが、案外これは見落とされがちです。

↑これも私のエンジンのオーバーホール時に取り出した排気バルブ。 見てのようにバルブフェース
面全体に「虫食い」のように細かい凸凹がありますが、これはすべてカーボンの噛み込みによるもの
です。

↑これも私のK6Aエンジンのオーバーホール時に取り出したピストンのサイドスラスト方向の縦傷。
この傷の主な原因も燃焼時に発生する燃焼カーボンによるものです。このカーボンに比べたら普通の
スポーツエアクリーナーを通過する微細な砂塵などは、ほとんどは燃焼室を通過するだけなのでまだ
無害なほうなのです。しかし空燃比を濃くしなければならないチューニングターボエンジンにとって
この燃焼によって生じるカーボンはエンジン各部、こういったピストンやバルブだけでなく、メタル
などの摺動部分、回転部分を傷つけるのでほんとうに厄介者です。 当然、オイルも汚します。
●燃焼時に発生し堆積したカーボンは「砂並みに硬い」
このように、燃焼時に発生したカーボンはエキゾーストバルブフェイス面やバルブのシートリング、
ピストン側面やシリンダーに傷をつけるほど硬いものなのです。 なにせ「炭素」ですからね。
なので、いくらターボエンジンの安全マージンを稼ぐためとはいえ、あまりに濃すぎる空燃比では多量
のカーボンが発生して、それが燃焼室やピストントップに堆積し、塊となって剥がれ落ちると、それは
もはや砂粒を吸い込んだのと同じことになり、内部からエンジンを傷つける大きな原因となってしまう
わけです。しかも、この多量の燃焼カーボン(すす)は吹き抜けたブローバイガスにも多量に含まれます
から、それがエンジンオイルに溶け込んでエンジンオイルを真っ黒に汚し、オイルフィルターを早期
に詰まらせる原因にもなるため、エンジンオイルとオイルフィルターの寿命を縮める要因ともなります。

↑リッチ空燃比で全開走行ばかりしているチューンドターボエンジンはどうしても燃焼室やピストン
トップにカーボンが堆積してしまいます。 しかも、この堆積したカーボンが厚くなりすぎると圧縮比
が上がったのと同じ状態になるため、ノッキングの原因にもなります。また、とくにスキッシュエリアの
クリアランス(ピストントップとシリンダーヘッドの平らな部分の隙間)の少ないエンジンでは堆積した
カーボンがピストンとヘッドに挟まれて当たって音を出す「カーボンノック」という現象を引き起こす
こともあります。いずれにしても堆積したカーボンは百害あって一利なしです。
●では、その燃焼カーボン発生を防ぐ方法はないのか?
NA(自然吸気)エンジンならターボエンジンほど最大出力時の空燃比も濃くないため、カーボンの発生
も少ないためそれほど大きな問題にはなりませんが、ハイパワーにチューニングされたターボエンジン
では、全開全出力時の燃焼温度の低下および排気温度の低下のためには、本来、燃焼に必要以上の濃い
空燃比にしなければならないため、ある程度は避けられないと言わざるを得ません。 それなら逆に
空燃比が薄ければカーボンが発生しないのかと言えば、これにも限度があり、希薄燃焼、いわゆる
リーンバーンでも今度はミスファイア(失火)による不完全燃焼によるカーボンが発生しますので、
やはり理想はストイキ燃焼、要するに理論空燃比による燃焼がもっともクリーンに燃えてくれるわけ
です。 あとは、これはユーザー側では対応が難しいところですが、少しでも良質なガソリンを使う
ことくらいでしょうか。質の悪いガソリンほど燃焼時のカーボンの発生が多くなりますので。 あとは、
あまり怪しいガソリン添加剤やオイル添加剤を使わないことも大切です。 また、ガソリンによる燃焼
カーボンだけでなく、オイル上がりやオイル下がりによって燃焼室に入ってきたエンジンオイルが燃焼
することでもカーボン、スラッジが発生し、それもエンジンを傷つける原因にもなります。 ですので
オイル消費の多いエンジンも燃焼室やピストントップに多量のカーボンが堆積していることでしょう。

↑ターボエンジンでも、O2センサーフィードバック領域の理論空燃比(14.6〜14.7:1)を多用して
走っていれば、カーボンもそれほど発生しないのですが、フルパワー全開走行時にはそういうわけにも
いきません。 私のジムニーもフルブースト全開全負荷走行時の空燃比は10.5:1くらいにセットしてい
ますので、どうしても燃焼カーボンは多めに発生してしまいます。
●マフラー出口のカーボンの状態でエンジンのコンディションもわかります

↑当然、マフラー出口にもカーボン(スス)はかなりつきます。チューンドターボエンジンで、濃いめ
(リッチ)空燃比にして全開走行ばかりしていればこればかりは避けようがないところですね。 よく
「たまには高速道路などで全開で走ればカーボン飛ぶよ」なんて聞きますが、たしかに負荷をかけて
燃焼温度を高めてやることで堆積したカーボンの一部は飛ぶかもしれませんが、同時にそれはとくに
空燃比が濃くセッティングされたターボエンジンでは「新たなカーボンの発生」を生むだけなので、
じつはあまり意味のないことだったりします。 ちなみにこのマフラー出口についたカーボン、これが
「乾いたカーボン」であればエンジンは正常です。逆にオイルで「濡れた、湿ったカーボン」であれば
エンジン、あるいはタービンから漏れ出たオイルが混ざっている証拠ですので、エンジンやタービンの
どこかに異常があるか、そろそろオーバーホール時期だと判断していいでしょう。 幸いにも私のJA22
ジムニーは乾いたカーボンなのでエンジン、タービンともにまったく問題はないと思われます。 なお、
エンジンを冷間始動して暖まりきるまでの間に出てくる水分による湿り気はまったく気にする必要はあり
ません。水が出るのはむしろ良好な燃焼の証しですので。

●市販の「ガソリン系統および燃焼室などのカーボン清浄剤」の使用について
こうした燃焼室やピストントップに堆積したカーボンを落としたり、インジェクターなどの燃料系統を
クリーニングするガソリン添加剤がよく売られていますが、たしかに「しっかりとした製品ならば」
効果はあると思います。 ただ、こういう製品はあまり頻繁に使えばいいということはなく、せいぜい
数万キロに一度(3万キロ〜5万キロサイクル)程度で充分なのではないかと思います。

↑効果的なカーボン除去性能を持つガソリン添加剤の「GA-01」。私は使用したことはありませんが、
知人のかなりの走行距離(20万キロ以上)を走った車に投入したところ、実用域での軽いノッキング
が収まったとのことですので、たとえば10万キロを超えるような過走行車にはかなり効果的なのでは
ないかと思われます。これの成分はPEA(ポリエーテルアミン)濃度100%だそうです。

↑こちらは上記のGA-01に優るとも劣らないカーボン除去性能を持つHKS製の「DDR」。
主成分はGA-01と同じPEA(ポリエーテルアミン)ですが、HKS独自の技術でより濃縮してあるとの
説明です。 HKSが出しているだけにチューニングエンジンには相性が良いかもしれません。

↑こちらは一般のカー用品量販店でもよく売られていることで有名なワコーズの「フューエル・ワン」。
これはGA-01やDDRに比べるとPEAの濃度が低いためカーボン除去効果(即効性)はやや劣るのですが、
逆に「穏やかな効き目」なためエンジンに優しいとも言えますので、一般的にはむしろフューエル・ワン
のほうが安心して使えるとも言えます。 この商品は上記GA-01やDDRよりも短いサイクルで定期的に
使用するのに適していると言えるでしょう。
<総合するとこう考えるといいかもしれません>
★ワコーズ フューエル・ワン →主に燃料ライン(インンジェクター、燃料パイプ、燃料フィルター)
の洗浄をメインに作用する。 燃焼室のカーボン除去能力は比較的穏やか。
★GA-01、HKS DDR →主に燃焼室、ピストントップ、バルブに堆積したカーボンの除去をメインに
作用する。 燃焼室のカーボン除去能力は比較的強力で即効性あり。
●この種のカーボン除去ガソリン添加剤の使用上の注意点
ワコーズのフューエル・ワンはPEA濃度が低いので比較的安心して使用できますが、GA-01やDDRはPEA
濃度が高く、カーボン除去効果が非常に強いため、作用が強力なぶん、大量に堆積したカーボンが一気に
剥がれ、これがピストンとシリンダーに傷をつけたり、バルブフェース面を傷つけたりとかえってトラブル
の元になりかねないので、とくにカーボンの堆積の多いエンジンに使用するときには注意を要します。
こういう場合、まずフューエル・ワンで1タンク走ってある程度カーボンの除去と燃料系統の洗浄をしてから
GA-01やDDRを使用するというのもひとつの方法ではないかと思います。
あと、これら燃料添加剤やそれによって落ちたカーボンは僅かとは言え、ブローバイガスに混ざってエンジン
内部に侵入し、エンジンオイルに混入してエンジンオイルを汚し、オイルの性能を落としてしまいますので、
こういう添加剤を使用しているときはハードな走行は控えましょう。サーキットや高速道路での全開走行など
もってのほかです。 そしてこれら添加剤の混ざったガソリンを1タンクフルに使い切ったら、エンジンオイル
とオイルフィルターを新品に交換したほうが理想です。

ちなみに、私はまだこの種のカーボン除去および燃料ライン洗浄のガソリン添加剤を本格的に使用したことは
ありません。フルオーバーホールしてからまだあまり距離を走ってないですからね。 でももし使うとしたら、
まずは穏やかな作用で安全性の高いワコーズのフューエル・ワンにすると思います。