(番外編)チューニング用コンロッドはH断面が良いかI断面が良いか
NAならH断面も理解できますが、少なくともターボエンジンには絶対にI断面のほうが有利です
●社外のチューニングパーツの強化コンロッドというとなにかとH断面が多いですし、ユーザーもなぜか
H断面コンロッドが好きな人が多いようですが、純粋にコンロッドにかかる外力、とくに応力分散という
機械的強度に対しての優位性という点から考えると、どう考えてもH断面にメリットは見当たりません。
はっきり言って「H断面に何もメリットなし。I断面のほうが圧倒的に優れる」というのが私の持論
です。 とくに、同じ程度の最高出力のエンジンでもNAエンジンより最大トルクの大きいターボエンジン
ではコンロッドにかかる外部応力も大きくなるため、より一層I断面コンロッドのほうが有利になります。
100歩譲って軽量さを優先するNAエンジンならH断面でも理解できますが、トルクの大きいターボエンジン
でのチューニングでは絶対にI断面コンロッドを採用すべきです。

↑H断面コンロッドとI断面コンロッドのロッド部断面形状の違い。
●本当にH断面に「軽量化のメリットがあるのか?」という疑問
世間では、あるいはいろんな書籍では「H断面のほうが軽量化にメリットがある」などと書かれている
ことが多いのですが、では、同じ剛性で設計製作したH断面コンロッドとI断面コンロッドとを純粋に
比較してどの程度の重量的メリットがH断面にあるのかというのを「きちんとした理論数値で」証明
した文献を私は見たことはありませんし、このことを理論的に立証している技術者の納得できる意見
も聞いたことがありませんし、データも目にしたことはありません。 ようするに、世間では単純に
何の確証もなしにチューニング用コンロッド=H断面という「先入観、イメージ」だけで語られている
のが実情じゃないでしょうか。 こんなこと書くとチューニングパーツメーカーやH断面を信奉してる
人に怒られるかもしれませんが、私に言わせれば(とくにターボエンジンで)H断面コンロッドなんか
入れて喜んでるのは一部のミーハーで何も解ってない無知な人だけだと思わざるを得ません。
●では、なぜチューニング用コンロッドではH断面が多いのか?
このへんの実情は専門書を読んでみるとおおよその見当はつくのですが、単純に「作りやすいから」と
「スマートに見えるから」というのが本音です。H断面は純正に多いI断面よりも鍛造型が簡単で済み、
その後の機械加工もたいした手間ではないので、少量生産ではI断面よりも低いコストで製造できるの
です。 逆に、大量生産する自動車メーカー純正の場合は、多少、鍛造型が複雑になっても、その生産
する数でコストはペイできますので、より無駄のない設計ができるI断面が採用できるわけです。
このへんの事情がチューニングパーツでH断面が多い理由です。 しかし、実際の機能上のメリットは
間違いなくI断面のほうが優れています。 事実、本格的なレーシングエンジンではまずH断面コンロッド
なんて使われることはありません。 F1エンジンなどでは一部には「中空コンロッド」などと特殊な例
はありますが、無垢(中実)成形のコンロッドでは本格的なレーシングエンジン(F1、WRC、GTマシン
等)はほぼ100%がI断面コンロッドです。 あるいは、このI断面をベースにトラス状にリブを入れ補強
した形状のものも一部のF1エンジンなどでは使用されています。
トップカテゴリーの本格的なレーシングエンジンではH断面コンロッドなんてもの使っていません。
<例1> ホンダRA168Eエンジン

↑ホンダのターボF1エンジン、RA168E。この「RA16Eシリーズ」のエンジンは、ピーク期のRA165Eでは
予選でブースト圧6barで最高でリッター当たり出力1000馬力以上!(つまり1500ccで1500馬力、しかも
これは当時これ以上は測定不能だったので、実際にはもっとパワーが出ていたと言われています)にまで達した
「史上最強のF1エンジン」と呼ばれた名機ですが、見てのようにI断面コンロッドを使用しています。
今の若い人にはわからないと思いますが、当時を知っている私達からすればほんとにホンダの強さは圧倒的
で「ホンダエンジンでなければ勝てない」凄いエンジンだったんですよ。ちなみにIHIのターボチャージャー
もこのホンダF1での大活躍で一躍世界のトップブランドに躍り出て、フェラーリF40などにも純正採用されま
したね。
<例2> 日産VRH35Zエンジン

↑日産VRH35Zエンジン。 90度V型8気筒3.5リッターツインターボエンジン。 最高出力は決勝レース
でブースト圧1.2kg/cm^2で約840PS、予選でブースト圧2.0kg/cm^2で約1200PS。
90年代初頭に活躍した耐久レースの名機と言える国産エンジンで、ル・マンでは勝てなかったものの
デイトナ24時間レースでは見事優勝しました。 そんな名作エンジンですが、やはりこのエンジンも
コンロッドはオーソドックスなI断面を採用しています。 このエンジンを設計した林義正教授も「I断面
とH断面と両方を試したが、I断面のほうがトラブルが発生しなかった」と書かれています。
●ではなぜH断面よりI断面のほうが有利なのか?
1)ロッド外縁部にかかる曲げ応力の分散能力の高さ
コンロッドには常に「曲げ応力」がかかります。 モノにかかる外的応力というのは曲げであれ捻れで
あれ引っ張りであれその外皮部で最大になるので、このもっとも高い応力を受ける面積が多いほどその力
は分散され、局部的に大きな力がかからなくできるため、より座屈強度や剛性に対して有利になるのです。

↑見てのように、もっとも高い応力がかかる「外皮部」の面積が、H断面では非常に少ない面積で受ける
ため「座屈」しやすいのですが、I断面では広い面積で分散して受けるため単位面積あたりの力が低くなる
ことで、より一層大きな応力に対抗することができるのです。
つまり「I断面コンロッドはH断面コンロッドより曲げに強い」と言えるので、とくにトルクの大きい
ターボエンジンにはI断面が有利なのです。
また、これは小さなことではありますが、エンジンが高回転で回っているとき、コンロッドにかかる
「空気抵抗」もくぼみのあるH断面よりフラットなI断面のほうが少ないという空力的メリットもあります。
2)メタル部にかかる局部的応力の分散性能
これは小端部から大端部への垂直な力の伝達の経路と言ってもいいことですが、H断面では中央部の1本
のリブから直に大端部(子メタル)へ直接大きな力が局部的にかかってしまうため、メタルにかかる力が
分散せず局部的にメタルに負荷荷重がかかり、最悪は焼きつきが発生しやすいというデメリットがあります
が、I断面では、この力が大端部の左右に分散してかかるため、メタルにかかる応力も分散、平均化され、
結果、メタルにかかる荷重も局部的に高くなることがないため、メタルの耐久性に有利となるのです。
この意味でもトルクの大きいターボエンジンにはやはりI断面のコンロッドは有利です。

↑このように、小端部で受けた燃焼圧力がH断面では中央部に集中してかかってしまうのに対して、I断面
では左右に分散してかかるため、メタルにかかる力も分散され、より耐久性に有利になるのです。
●やはりコンロッドのロッド部断面はH断面よりI断面のほうが理想に近い
以上のような理由から、私はターボエンジンのチューニング用強化コンロッドには絶対的にI断面を支持
します。 はっきり言ってH断面なんてカタチだけで、まったくメリット、優位性なんてありません。
もし、私自身がコンロッド(正しくはコネクティングロッド)を設計するとしてもI断面か、あるいはその
派生型、変形型しか考えないでしょう。 H断面なんてはじめから候補から外します。

↑今は廃盤となったスズキスポーツ製のK6Aエンジン用強化コンロッド。 ベースは純正コンロッドです
が、きちんとI断面を使用しているところに共感がもてます。

↑JUNマシンショップ製のK6A用830ccキット。 これもコンロッドはちゃんとI断面を採用しているところ
には感心します。

↑これもJUNマシンショップのもの。鍛造I断面コンロッドの製作工程です。 手前が鍛造型から出した
ところ、中央が1次加工後、いちばん後ろが完成品です。 JUNマシンショップは考え方が私と近いのか、
I断面コンロッドにこだわっているようです。 値段は他社のH断面よりやや高めですが、コストがかかって
でも理想を追求したいというモノ造りの信念が伝わってきます。こういうこだわりは好きですね。
●なお、オートバイ用チューニングコンロッドの一部にはこのH断面とI断面を組み合わせ、大端部付近は
I断面、小端部にいくに従って形状をH断面にした「HI断面」というのもありますが、これもその断面形状
が変化した部分でかかる応力の力や方向が複雑になるため、とくに優位性があるとは考えられません。
コンロッドに限らず、力を伝達する部品の断面というのは可能な限りシンプルであるべきで、途中で断面
形状を変化させるなど複雑な形状にするほど無駄な二次的な力、たとえばねじれの力などが発生してしまい
かえって強度上不利になることがありますので。
●結論
もちろん、最終的には設計の良し悪しになりますので、一概にH型とI型のどちらが優れているというのは
言えない(たとえば、デキの悪いI断面よりはデキの良いH断面のほうがまだマシということもある)のです
が、少なくとも理論的には同じ剛性、強度で設計製作した場合、I断面のほうが絶対的に有利ではないかと
いうのが私の考えです。 ただ、一般論では「軽量化優先ならH断面、強度優先ならI断面」と考えて
いる方が多いようですが、きちんと無駄なく設計すればI断面のほうが軽量にできると私は考えています。
●コンロッドの表面処理について
●ショットピーニングやサンドブラスト、WPC処理
通常、ノーマルコンロッドは最終表面処理にショットピーニングという処理をおこなっています。
これは直径コンマ数ミリの鋼鉄球を高速で叩きつける処理で、これにより素材表面の金属組織が「締まり」
密度が高くなることで表層の強度を上げることができます。 これを「圧縮残留応力」と呼びます。
この「圧縮残留応力」は言ってみれば鍛造で作ったものをさらに「表面鍛造」するようなもので、この力
を生じさせることで、折損に対する強度アップと、金属疲労に対する耐久性向上の効果を出しています。
対して、社外品のコンロッドではもちろんこのショットピーニングをおこなっているものもありますが、
中にはサンドブラストやWPC処理をおこなっているだけのものもあります。 しかし、WPCは非常に
微細なセラミック粒子を叩きつけるだけなので、表面に生成される圧縮残留応力層の厚みがショット
ピーニングなどに比べて極めて薄いため、現実にはほとんど強度向上には貢献しません。 はっきり
言ってコンロッドにWPCは無意味と言い切ってもいいです。 コンロッド以外でもそうですが、多くの
皆さんはWPC処理について過剰な評価、期待をしすぎていると私は感じます。
●バフポリッシュ仕上げ、鏡面加工
それと、よくコンロッドの側面をバフ研磨(バフポリッシュ)して「鏡面仕上げ加工」すると応力集中
が避けられて折れにくくなるということでおこなわれることが多いですが、これも正直なところあまり
意味がある加工とは思えません。 いえ、ハッキリ書くと「コンロッドの表面を鏡面仕上げした
ところで強度なんかアップしません。むしろ強度の低下を招く危険があります」。
後述するコンロッドトラブルの写真でもわかるように、コンロッドの材料の硬さはHRc40前後なので、
普通、ポッキリと折れることはなく、たいていは「グニャッと曲がってから千切れる」というパターン
が多いので、側面を鏡面加工したからと言って強度上メリットが生じることは現実にはないと私は
考えています。 むしろ、ノーマルのコンロッドを研磨して鏡面加工すると、前述したショット
ピーニングによってせっかく作った残留圧縮応力による強化層を削り取ってしまう上に、研磨という
行為は逆に表面に引っ張りの残留応力を与えて、これがより応力に対して弱くなってしまうため、
かえって強度の低下を招くことになり、逆効果になりかねないのです。 ですので私はコンロッドの
鏡面加工については否定派です。 ただし、目に見えて深い傷があるような場合はそこを起点に破壊
に繋がる危険がある(専門的にはこれを切り欠き効果、またはノッチエフェクトと呼びます)ので、
この場合は傷周辺を滑らかに削るのはやむを得ないでしょう。 しかし、それ以前に傷があるような
コンロッドなんか使うべきではないのですが。
●コンロッドの材質および熱処理について
純正コンロッドの材質は炭素(カーボン)含有量0.4%前後のクローム鋼(SCr435、SCr440など)
の鍛造品が多いと思います。 これに前述したように焼き入れし、硬さロックウェルCスケールで
HRc35〜40程度の硬度にしてあるものが使われています。 このHRc40前後という硬さは絶妙な
硬さで、これより低いと曲がりやすく弱く、逆にこれより高いと脆くなってポッキリ折れてしまい
やすくなります。 つまり「硬さと粘り強さ(靭性)のバランスがちょうどいい硬度」がこのHRc
35〜40程度なのです。 ちなみに、一般によく使われる強度区分12.9のキャップボルトの硬さが
だいたいHRc35〜38程度、バルブスプリングやサスペンションのコイルスプリングがHRc40〜45
程度になっています。 ただ、一部の市販エンジンには鋳鋼品、つまり鋳造(鋳物)コンロッドも
存在します。 これらに最終的に表面処理としてショットピーニングが施されるわけです。
対して、アフターマーケットのチューニング用コンロッドでは、一般的に炭素含有量0.35〜0.4%の
クロームモリブデン鋼材、通称クロモリ鋼と呼ばれるSCM435〜SCM440が多く使われています。
さらに高級品になるとニッケルクロームモリブデン鋼材、SNCM439あたりも使用されます。 熱処理
としては純正と同じ焼き入れ硬さHRc40程度で、最終表面処理はサンドブラスト、あるいはWPCなど
をおこなっているものが多いように見えます。 さらに表面熱処理としてタフトライド、ガス窒化、
イオン窒化処理などをして耐金属疲労性を高める場合もあります。いずれにせよコネクティングロッド
はエンジンの中でももっとも強度が求められる部品のひとつなので、引っ張り強度で80kg/mm^2以上、
チューニング用、あるいはレース用では100kg/mm^2を超える強度を持つ材質が求められます。
さらにコンロッド本体とベアリングキャップを留めるコンロッドボルトにはさらなる強度、剛性が要求
されますので、引っ張り強度200kg/mm^2にもなる超高張力鋼材が使用されることもあります。
通常、車のボディやフレームに使われる鋼鈑が約40〜50kg/mm^2程度ですから、コンロッド本体や
コンロッドボルトに使用される材料がどれだけ強いものか想像できると思います。 コンロッドボルト
はおそらくエンジンの、いや、自動車を構成するパーツの中でももっとも強い素材で製作される部品
なのです。
●チタン合金製コネクティングロッド

↑ホンダNSXの純正チタン合金製鍛造コンロッド。 仮に同等の剛性でスチール(SCM材等)で製作した
場合に比べ、1本あたりおおよそ150g〜200gくらい軽くできています。
なお、本格的なレーシングエンジンコンロッドの材料にも高力チタン合金が使用されますが、一般的には
「64チタン」と呼ばれるTi-6Al-4Vという材質が使われます。 この素材はスチールの比重約7.8に対し
て比重4.5程度なので、単純に同じ形状で製作すれば約60%の質量でできる計算になりますが、実際は
そこまで軽くはできません。 というのもこの高力チタン合金というのは、引っ張り強さとしては上記の
SCMやSNCMとほぼ同じですが、ヤング率(縦弾性係数)がスチールの2/3程度しかないため、剛性という
点ではSCMやSNCMには劣るため、そのぶんを肉厚で稼がないとならないので、意外と軽くはならないもの
です。 私もつい先日、ヤマハワークスのチタン製H断面コンロッドを持ってみましたが、第一印象は
「あれ?思ったほど軽くないな」でした。必要な剛性を充分確保したうえで高力チタンで作ってもせいぜい
スチールの80%程度の重量にするのが精一杯とのことです。 H断面チタンでもそんなに軽くないのです。
なお、チタン材をコンロッドに使うときの設計上の注意点は、チタンは「摩擦面がかじりやすい、焼きつき
やすい」性質があるため、大端部側面のスラスト面には摩擦係数の低いモリブデンコーティングなどを施す
必要があること、それとチタンは熱膨張係数が一般的な鋼材の45%しかないため、SCMやSNCMなどと同じ
ベアリングクリアランスで作ると高温になったときにクリアランスがなくなって焼きついてしまうため、
常温では通常の鋼材製より50%ほど大きめの「ガタガタのクリアランス」で製作しておく必要があります。
●かなり特殊な例として「アルミ製コンロッド」というのもありますが、これはゼロヨン、ドラッグレース
などのごく短時間、短距離の競技専用で、「400M(1/4マイル)さえ持てばいい」と割り切って造られて
いるものですので、通常のレースやストリートでは使い物になりませんので一般的には考えなくていいです。
●コンロッドのトラブルの原因
コンロッドが折れたり千切れたりするトラブルは稀にあることで、とくに有名なのは大端部付近から
ロッドが折れて、シリンダーブロックを突き破る、いわゆる「コンロッドが足を出す」というものです。

↑これはK6Aエンジンの純正コンロッドが折れて足を出した写真の一例です。
この原因ですが、よほど無理のあるチューニングをしてない限り、コンロッドの強度不足で折れて
足を出すことはごく稀です。 ほとんどの破壊に至るプロセスは「大端部メタルの潤滑不良→メタル
の焼きつき→コンロッド大端部がロック→ロッドが折れる」というパターンです。
このプロセスが一瞬にして起こるわけで、こういった破損を防ぐためにも、エンジンオイルの油温管理や
高性能エンジンオイルの使用、きちんと定期的にエンジンオイルの交換、また、エンジンを組む際にも
適切なメタルクリアランスで組むなどの対策をしっかりおこなうことです。 とくに純正よりも高回転
まで回るようにチューニングする場合や、ボアアップなどで純正より重いピストンを組んだ場合は、
ピストンなどの強大な慣性力によってコンロッド大端部が引っ張られて楕円形に変型しメタル両側の
オイルクリアランスがなくなってそこから焼きつく「クローズイン」という現象が発生しやすくなり、
それがメタルの焼きつきに繋がりますので、純正の基準値よりクリアランスを広めに組むのもコツです。

↑コンロッドのクローズイン現象。 ピストン、ピストンピンなどが高回転になると生じる強大な往復に
よる慣性力で大端部が引っ張られ、ベアリング部が楕円形に変形し、サイドのオイルクリアランスがなく
なり焼きつき、最終的にはこれが原因でコンロッドが折れ、上記写真のように「足を出す」結果に繋がり
ます。 これを防ぐには、できるだけ軽量なピストン、ピストンピンの使用、充分な大端部の剛性を与えた
設計のコンロッドにすること、また、メタルクリアランスをやや広めにするなどの工夫が必要になります。
また、運転時もオーバーレブをさせないことはもちろん、とくに危険なのは超高回転から一気にアクセル
オフ、シフトダウンして強烈なエンジンブレーキがかかったときがもっともこのクローズイン現象が強烈に
現れるので、こういった運転は極力避けなければなりません。
●K6AエンジンのコンロッドとR06Aエンジンのコンロッドの比較

↑左がK6Aエンジンのコンロッド、右がR06Aエンジンのコンロッド。 見てもわかるようにR06Aは
徹底的な軽量化のために大端部の肉厚が極限まで削られているため、大端部の剛性が非常に低くなって
しまっているので、前述したクローズインに非常に弱いことがわかります。 ですのでR06Aエンジン
はF6AやK6Aのような高回転チューニングはこの剛性の弱いコンロッドでは不可能でしょう。
コンロッドにとって大端部の剛性というのは一番大切なポイントと言ってもいいくらいですので。
●小端部付近およびロッド中央部にかけての曲がり、および折損

↑このように、小端部付近から折れる、あるいは曲がるような場合は、これは純粋にそのエンジンの
発生するトルクに対してコンロッドの強度が根本的に不足しているケースが多いです。あとは、水など
を大量に吸い込んで生じるウォーターハンマー現象(正確にはリキッドコンプレッションと言う)に
よってコンロッドが曲がる場合もこういう曲がり方をすることが多いです。 つまり、コンロッドが
破損したときは、どの部分がどのように破壊したのかを観察することでだいたいの原因が掴めるわけ
です。 ただ「コンロッドが折れたのは強度が足りなかったからだ」なんて単純な考え方ですべてを
片付けてしまうようではいつまでたっても問題が解決しません。
●K6Aターボエンジンの純正コンロッドはどのくらいのトルク、パワーまで持つのか?
確証はありませんが、とりあえず純正ピストン、あるいは純正同等の重量の鍛造ピストンで、なおかつ
最高使用回転数を9000rpm程度までに抑えている限りは、馬力で150PSから180PS、トルクで15kg-m
から18kg-m程度までは充分ノーマルコンロッドで持つと思います。 コンロッドは破壊するとエンジン
全損に即つながる重要な部品ですので、ノーマルでもかなりの安全率(マージン)をとって設計、製造
されている部品です。 とは言え過信は禁物で、このレベルの限界近くまでパワーアップ、トルクアップ
をするとちょっとしたノッキング発生などの異常な高い燃焼圧力がかかった場合でも一発で曲がってしまう
可能性があります(もっとも、ピストンのほうが先に逝くでしょうが)のでフルパワー時のセッティング
は高速ノッキングが起きないよう慎重におこなってください。

↑K6Aエンジンのコンロッド長さ(芯間距離)は113.9mmですが、HB21SアルトワークスRの前期だか
後期だか一部ではやや短いコンロッドが存在するようです。 これは圧縮比を落としてローコンプにする
ためです。 ワークスRの圧縮比は標準車の8.4:1に対して7.6:1まで下げられていましたので。
<参考> →K6Aエンジンのコンロッド長と連桿比とエンジン回転数上限について