インテークコレクタータンク
非過給域からの立ち上がり時のトルク特性、アクセルレスポンスの改善が目的です。
●このパーツは製作および装着していたものの、既に同様の市販品もありますし、載せる
意味もないだろうと見合わせていたのですが、エンジンルームの写真を見た複数の方から
詳細を知りたい、あるいは興味があるとのメールを多数頂いたこともあり、遅れましたが
理屈も含めて掲載することとしました。

↑インテークコレクタータンク
●考え方としてはNAエンジンのインテークチャンバーと同じですが、ターボエンジン
の場合はエアクリーナーからスロットルバルブまでの間にターボコンプレッサー、
インタークーラー、そしてそれらを繋ぐパイピングと中継物がいくつも存在し、当然ながら
これらはすべて吸気抵抗の要素となります。
とくに負圧状態からアクセルを開けはじめたときなど、ターボからの過給が充分に立ち
上がっていないNA領域では、ただでさえ大きくなるスロットルバルブ直前の吸入負圧が
それらの抵抗によってさらに大きくなることで、一時的にスロットルバルブ直前での空気
密度(=酸素密度)が低下することになります。
厳密には例としては適当ではないかも知れませんが、わかりやすい例で言うと、レーシング
エンジンなどによくある、各気筒ごとにスロットルバルブを設けた独立スロットルのエンジン
の場合、スロットルバルブの直前にサージタンク(コレクタータンク)があるのでスロットル
を開けた瞬間にそこに溜めてあった大量のエアがすぐにポートに入ってくるので、空気密度の
低下が起きにくく、スロットルの開閉に対してのトルクの立ち上がりが速くなります。
今回のこのタンクはいわばこれと同じ効果を期待するもので、非過給域からスロットルを開け
はじめた瞬間などに一時的に不足するエアをスロットル直前のタンクに予め溜めておくことで、
レスポンスとトルクの立ち上がり向上効果、とくに非過給域やパーシャル状態からスロットルを
開けはじめたときのトルクの立ち上がりを少しでも改善して、レスポンスの向上を図ろうとする
ものです。
ただし、連続全開状態の高風量時などに関しては、こうしたチャンバーの存在はかえって抵抗と
なるため、形状や配置などに注意しないとパワーダウンに繋がります。 連続流のときはやはり
単純なストレートパイプのほうが抵抗は少ないですので、たとえば最高出力や最高速度のみを考
えれば、かえってこうしたものはないほうが理想と言えるのです。
結局、どんなパーツでも必ずメリットとデメリットは共存するものですので、いかにメリットが
最大に、デメリットが最小になるように設計、製作するかがキモになります。
●ここは文字ばかりで説明してもわかりにくいと思いますので、以下で図と一緒に説明します。
赤に色別けされているのは、ごく大雑把に赤=密度の高い部分というイメージですが、あくまで
わかりやすいように色別けしているだけで実際とは異なる部分もありますので、単純に空気の流れ
や密度のイメージとして捉えてください。
●スロットル全開、高ブースト時

↑スロットルは全開で、すでにブーストが一定となっている状態を想定していますので、
インテークパイプ内の流れはほぼ定流に近い状態となります。
この状態ではタンクは何の役目もせず、吸気の絶対量はターボから過給される量以上には
増えないのでタンクの存在は無意味となります。
むしろ逆にこういう状況では空気がタンク内でいったん膨脹することから抵抗を生じます
ので、余計なものがないストレートパイプのままのほうが理想なくらいですので、こういう
状況のときにタンクが無駄な抵抗にならないように配慮して設計する必要があります。
●急激にアクセルを閉じた時

↑スロットルバルブが閉じられると、それまで流れていたターボからの高密度の空気は行き場が
なくなり逆流しようとしますので、その一部がコレクタータンク内に充満します。
また、その上流の空気はブローオフバルブによって放出されます。
ここで注意していただきたいのは、このコレクタータンクとブローオフバルブの位置関係です。
一般的にはブローオフバルブはスロットルバルブの直前がもっとも効果的なのですが、今回の
ようにタンクがある場合、そのタンク内部に空気を溜めたいわけですから、ブローオフバルブを
タンク本体につけるとせっかくタンクに溜まった高密度の空気が放出されてしまうため、コレクター
タンクの効果を最大限に活かせなくなってしまいます。
ですので、タンクの効果を活かすことを優先して考えると、下流側からみてスロットルバルブ→
コレクタータンク→ブローオフバルブという順番で配置するのがベターとなるわけです。
実際、独立スロットルのターボエンジンでもサージタンク本体にブローオフバルブをつけている
ことはまずありません。 多くの場合はサージタンクとインタークーラーを繋ぐ中間のパイプ
にブローオフをつけています。
●上図の状態からまたアクセルを急激に全開にした時

↑ここがコレクタータンクがもっとも効果を発揮する瞬間です。
つまり、急激にアクセルOFF→急激にアクセルONとしたとき、いくらブローオフバルブがついて
いるとはいえ、いったん落ちた過給はすぐには上がりません。 いわゆるターボラグです。
そこでこの瞬間、コレクタータンクに蓄えられた高密度の空気が活かされ、ターボからの過給に
よる空気がやってくるまでの僅かな間、多少でも密度の高い空気を供給してやるのです。
そうすることでアクセルを開けた瞬間のトルクの立ち上がりが向上し、レスポンスがよくなります。
このことが瞬間的とはいえ立ち上がりのトルク特性の向上につながり、ドライバーにはいかにも
絶対トルクが上がったような感覚をもたらし、実際にレスポンスの向上になるわけです。
もちろん、これは全閉から全開というようなシチュエーションに限らず、たとえば高速を巡航中
などのようなパーシャル状態から速度調節や追い越しのためにちょっと速度を上げたい場合など、
少しだけアクセルを開けたときなどにも効果はあります。
実際、街乗りや高速などでも完全にアクセルが一定であることのほうが少ないわけで、無意識
であっても常にアクセルの開閉はくり返しているわけですので、そういう意味では常にある程度
の効果を出していると言ってもいいかと思います。
●アイドリング時からアクセルを開けた時

↑信号待ちから発進するときなど、アイドリング状態からアクセルを開けたときです。
さすがにこのときは過給もされてませんし、コレクタータンク内の圧力もすでに下がっております
ので、ハイブースト時にアクセルのON/OFFさせた時ほどの効果は望めません。
ですが、それでもアクセルを開けて正圧に転じるまでの間、つまりターボが効きはじめる前の
もっともトルクが欲しいというところで、ターボからの空気がやってくる前にコレクタータンク
に溜められた空気が使われることによりスロットルバルブ直前の負圧による吸入抵抗を少しでも
減らす効果がありますので、ブーストが立ち上がるまでのトルクを改善できます。
また、このことは街乗りでくり返される発進時の吸入抵抗によるポンピングロスを多少なりとも
減らすことに繋がりますので、僅かとはいえ燃費にも貢献するものと思われます。
●長くなりましたが、以上がコレクタータンクの作用です。
これを視覚的に図にするとこのようになります。

つまり、このタンクはターボからの過給が立ち上がるまでの間の一時的な空気のリザーブタンクと
しての役割をするわけで、そのぶんアクセルを開けたときのトルクの立ち上がりが僅かとはいえ
早まるため、人間の体感としてはあたかも実トルクが上がったような感覚になるわけです。
逆に言うと、同じ程度の加速をしたいときなどは初期のアクセルを踏み込む量を減らすことができる
ので、うまく利用すれば省燃費走行にも寄与させることが可能になります。
ただし、実際の最大トルクの数値そのものはターボからの風量が変わるわけではないので、理論上
変わりません。
ただ、注意しなければならないのは、ターボエンジンの場合こうしたタンク(チャンバー)をタービン
とサージタンク間へ追加することは、インテークパイプを長くしたり大容量のインタークーラーをつけ
たのと同じでインテーク系統の容積増加になりますので、タービンのキャパシティに対して過度な容量
のものをつけることは過給の立ち上がりレスポンスを悪化させる要因に繋がり逆効果になりかねません。
このへんが純粋なサクション部へ装着するインテークチャンバーより微妙なところで、容量が小さく
ても大きくてもマイナス要因となりますので、サイズについては慎重に検討する必要があります。
●次に、実際に製作するまでに検討したタンクの設置位置によるメリット、デメリットを書きます。

↑私が製作しようとして検討した位置は上図の2種類です。
最終的にはBを選択したわけですが、それぞれの位置によるメリットとデメリット、そして
Bの位置に至った考えを書きます。
●Aの位置
まずAの位置ですが、これは最初に検討したもっとも基本の形態で、2ストエンジンのインテーク
チャンバーと似たような配置です。
この位置はスロットル全開時の抵抗はもっとも少ないと思われますが、同時にコレクタータンクからの
エアの放出時にインテークパイプの流れの方向に対して直角にぶつかることや、接続するパイプが
細いことから単なる共鳴室にしかならない可能性もあり、タンクの出入りに抵抗が大きく、結果として
コレクタータンクとしての効果が本当に発生できるかどうか疑問なところがありましたので、この形態
での製作はパスしました。
●Bの位置
次にBの位置ですが、これが総合的に考えて今回採用したものです。
これも全開時の抵抗の少なさという点を最優先に考え、構造としてはタンク出口側(サージタンクへ
の吸い込み側)にカールファンネルをつけることでタンク内の空気を効率よく取り入れられるように
してあります。
また、この配置ならばファンネル上部に充分な高さの空間を確保できることからファンネルの効果を
最大限に活かせること、そして最大のメリットとしてインテークパイプに対してインライン(直列)
に配置できることから、タンク内部でエアの流れの方向を変えずに済むため、タンクに溜まったエア
の放出、吸入がもっとも抵抗なくスムーズにできることなどから全域で考えたときにもっとも効率が
高いと考え、私の目的に合っていることから今回はこれを採用しました。
●Cの位置
最後にCですが、位置的にスロットルにもっとも近いのでレスポンスアップに関してはきわめて有効
な配置だと思います。 ただしJA22の場合はレイアウト上、2点ほど気になる問題があります。
1つめの問題は、JA22の場合、ボルトオンでつけるにはスペース的な意味で形状、サイズが制限され
るため、形状的にファンネル上部の空間に充分な容積を稼ぐのが難しいのが1つめの難点です。
ファンネルを活かす場合、その上部および周囲には充分な空間が確保されていないと、周囲の空気を
充分にかき集められないため効果が出ないばかりか、かえってファンネルが存在するせいで周囲の
空間が狭まることで乱流と抵抗が生じてマイナス効果になりかねません。 ファンネルはただついて
いればいいというものではないということです。
ターボ用サージタンクでも、社外品やレース用のものの多くは内部に突出したファンネルを備えて
いるものが多いですが、その場合はファンネル上部に充分な空間を確保したうえで設計されています。
もう1つの問題は、Cの位置だと見ての通りJA22のパイピングレイアウト上、この部分はちょうど
パイプのカーブ部分になるため、タンク内部でエア流れ方向を大きく変えることになってしまうので
連続全開時など高ブーストでの高流量時にはタンクに飛び込んできた空気がタンク内壁にぶつかり、
空気の流れが撹拌され乱流がおきることによって損失(抵抗)が発生し、もともとのカーブパイプの
時よりかなり吸入抵抗が大きくなってしまいます。 私はこれが最大の問題と考えています。
このようなことからタンク内で流れの方向を変えることは、全開時の抵抗の増大に繋がることになり
ますので、Cのようにタンク部で流れの方向を変えるよりも、Bのようにパイプと直列につけたほうが
私の目的からするとメリットは大きい(というよりデメリットが少ない)と考えたわけです。
●実際に製作したもの

↑インテークチャンバー本体
外径105φの円筒形で、内部容量はエンジン排気量とほぼ同等に設定してあります。
断面だけ見ると肉厚がかなりあるように見えますが、これはタップがある部分のみで、それ以降の
部分の肉厚は薄くなっております。 なお、この2つのパーツの合わせ面は液体パッキンを塗布
してから組みつけます。
出口側内部にはカールファンネルを備えてあります。 インテークチャンバーをはじめとしたタンク
類はただタンク状にすればいいというものではなく、このファンネルが大きな意味を持ちます。
ですので、上でも書きましたようにこのファンネルが活かせるような形状、容積であることが重要に
なります。 なお、インテークパイプへの取付けはパイプに軽く圧入してからバンドで締めつけです。

↑パイプとの接点にはOリングを入れてエア漏れを防止してあります。
素材はA5056の削り出し、表面はバフ掛けのみです。
●取り付け

↑装着したところ。 見た目はかなりものものしい感じではあります。
寸法については周囲のものと干渉しないギリギリのところを狙ってあります。 なお、ボンネット
裏に対してのクリアランスについても、エンジンの揺れを考慮した上でできるだけ詰めてあります。
タンクの外径が黒くなっていますが、これは周囲からの断熱を兼ねてシートを貼っているだけです。
とくに意味はありません。
なお、このタンクをつけたことによってオイルフィラーキャップ周りが狭くなり、今までのキャップ
ではを開けるときに手に力が入りにくくなったので、ホンダのインテグラタイプRの純正キャップに
換えました。 これははじめからメッキ仕上げで綺麗ですし、K6Aにそのままボルトオンで使えます
ので、エンジンルームのちょっとしたドレスアップにもなります。
実際の効果
●街乗り
まず、走り出してわかるのは、出だしから3000rpmあたりまでのトルク感がひとまわり上がった
ことがまず感じとれます。
もちろん劇的というほどの変化はありませんが、普段より1段上のギアでアクセルを踏み込んでみる
とその違いがわかるという感じです。 坂道発進や信号待ちからの発進、或いはギア一定の巡航状態
からの加速が若干ですが今までよりも楽になったかなという感じです。
ブーストが本格的にかかってくる領域になるとほとんど変化は感じなくなりますが、逆にデメリット
らしきものも感じません。 インターセプトポイントもとくに変化はありませんし、やはりこのタンク
による効果は主に負圧域から正圧域に転ずるあたりの領域がメインとなると考えたほうがいいでしょう。
また、アクセルの開け方でもその効果の感じられるシーンとそうでないシーンがあり、ゆっくり戻して
ゆっくり開けるような時よりも、一気に戻して一気に開けるときのほうが効果は感じられます。
これは理屈から考えても当然かと思います。
●高速
4速〜5速でのフルブースト加速でもとくに大きな変化はありません。 いちおう確認のため5速7000
rpmあたりまで回してみましたが、体感的にも今までととくに変化は感じられませんし、パワーメーター
iD上の表示もとくに差はありません。
理論上、全開時にパワーアップするようなパーツではなく、むしろ連続全開時には抵抗になってしまう
可能性もあるパーツですので、装着後も以前と変わらないということは、この形態であれば高風量時
でもほとんど抵抗にはならないということができると思います。
●結論
現時点では確かに効果は感じられるものの、手間をかけただけの効果があるかどうかという意味
では、コストパフォーマンスとしてはやや悪いかなというのが正直なところです。
もっとも、こういうのはよりノーマルに近い車のほうが効果を体感できやすいかも知れません。
私のクルマの吸気系統はほとんどノーマルの部分がないほど変わっており、入口から順番で書くと、
RUN MAXエアフィルター→純正ボックス利用のインテークチャンバー+カールファンネル→
内部拡大加工EA21R用サクションパイプ→HT07SSタービン→IMPSスーパーインタークーラー→
HKSレーシングブローオフバルブ→APIOインテークパイプ→ビッグスロットル…という感じです。
ノーマルパーツはジョイントホースくらいで、その他はすべて変わっている状態ですので、これでは
ノーマル状態との比較はできませんが、個人的にはサクション部分の改良(インテークチャンバー+
ファンネル+大径サクションパイプ)やビッグスロットルのほうがコストに対しての体感的な効果
は高く、またそのほうが全域で効果があると感じます。
ただ、いずれも劇的なパワーアップとかトルクアップとかに繋がるというよりは、低速、低負荷域
からの立ち上がり時のトルク特性の改善というのが主な効果ですので「これだけをつけたから大きな
効果がある」というよりも「他のパーツとの相乗効果と積み重ねで結果として大きな効果に繋がる」
と考えるべきかと思います。
そういう意味では、たとえ僅かでも体感できる変化を得られれば合格と考えるべきなのかも知れません。